休耕田を利用した水質浄化

通年湛水・不耕起栽培の実践とその普及


地元小学校による生き物観察会
水田による栄養塩の除去

霞ヶ浦では富栄養化が進行し、水質汚染が深刻になっています。霞ヶ浦に流入する富栄養化の原因である窒素分は林地や雨水などの自然起源のものと、生活や農業からの人為起源のものに分けられます。これらのうち、人為起源のものについては霞ヶ浦への流入を防ぐ必要があります。

霞ヶ浦流域は上流の台地に畑や畜産農家があり、下流には谷津と低湿地が存在します。台地の畑などで使用された肥料などの窒素分は硝化菌によって硝酸塩となり、溶脱して地下水に溶け込み、湖に流れ込みます。その途中の湧水として流れ出た硝酸塩を下流の水田で脱窒して大気に戻すことで、湖への流入を防ぐことができます(図1)。下流の水田に1年を通じて水を張り(通年湛水)、代かきをせず田植えする(不耕起栽培)ことで、硝酸塩を脱窒分解しやすい還元的な環境をつくり、湖への窒素流入量の削減効果を評価しました。



図1 霞ヶ浦流域における窒素の移動経路とたんぼの役割

助成を受けて現地調査
 平成18~19年度にかけて土浦の自然を守る会が茨城県霞ヶ浦環境科学センターの助成を受け、専門家、小学校等とともに、休耕田を利用して通年湛水・不耕起栽培を実践し、霞ヶ浦流域で硝酸塩削減効果を評価しました。当フォーラムは栄養塩分析や窒素の収支計算、さらにはイベント開催を通じて当事業に関与しました。地域住民の湖沼保全への関心を具体的な活動につなげるために、観察会や収穫祭などのイベントを開催しました。

結果の概要
 圃場に流入・流出する湧水の硝酸態窒素を分析し、時系列変化を図2に示します。湧水(用水)の硝酸態窒素は期間を通じて約4~5mg/lと高濃度でしたが、排水は約1mg/lであり、その差分4mg/lが田圃で除去されていました。図には示しませんが、リンについても用排水を分析しましたが、リン酸態リンは湧水で10~50μg/l、排水で4~500μg/lでした。リンについてはあまり吸収効果はなく、場合によっては田からリンが排出されていることもありました。


図2 湧水(用水)と排水のNO3-N経時変化

休耕田を利用した栄養塩の除去
 畜産廃水、施肥、工場・自動車からの降下物により地下水の窒素汚染が広がっており、休耕田に地下水を導入することで、運転コストがかからず安価に硝酸性窒素の除去が期待されます。

作成日:2016年06月13日 15時08分
更新日:2017年07月06日 12時32分