森林保全をめぐる国際的な取り組み

地球サミット以降の流れ〜IPFからIFFへ

平成15年度 森林生態系の保全管理に係る調査業務報告書(平成16年3月)


1)IPF行動提案

  1992年6月リオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED;地球サミット)において森林問題は、大きな争点となった。地球サミットでは、森林に関する2つの主要な表題が掲げられた。「全ての種類の森林の経営、保全及び持続可能な開発にに関する世界的合意のための法的拘束力のない権威ある原則声明」;「森林原則声明」(Forest Principle)とアジェンダ21の第11章「森林減少対策」(Combating Deforestation)である。このサミットを契機として、世界各国、各地域で持続可能な森林経営の達成に向けて様々な取組が展開された。  アジェンダ21の実施状況を監視し、必要な勧告を行うために1993年に「持続可能な開発委員会」(CSD)が設置された。また、1995年にはCSDの下に2年の期限で「森林に関する政府間パネル」(Intergovernmental Panel on Forests; 以下IPF)が設置された。IPFの任務は、持続可能な森林経営に関する地球サミットの提言のフォローアップを行うとともに、森林に関する重要な事案につき国際的なコンセンサスを築くことである。IPFは1997年2月に各国の森林プログラムの策定、世界的な森林資源調査の実施等を含む135の「行動提案」(下記表参照)を取りまとめ、このIPFの成果は1997年5月の第5回CSD会合で支持された。しかし、貿易と環境の調和政策、資金問題や技術移転問題、森林条約などの国際的取決め等、未解決事項も残った。  1997年6月、国連環境特別総会(UNGASS)は、IPFの報告を受け、さらにこれらの未解決事項を念頭に置き、CSDの下に新たに森林につい政府間の協議を続けていくため「森林に関する政府間フォーラム」(Intergovernmental Forum on Forests; 以下IFF)を設置した。(URL:http://www.un.org/esa/forests/documents-iff.html

IPF行動提案骨子
T.国連環境開発会議の森林に関する決定事項の国および国際レベルでの実施(部門および部門横断的な連携の検討も含めて)
1.1国家森林計画および土地利用計画の推進各国は各国の政策に合致し、地域住民の参加と協力などに配慮した国家的な森林計画を策定し、実行すべきである。
各国は、学際的な研究活動を森林計画に組み込むためのメカニズムを整備し、試行の上実施すべきである。
1.2森林の減少劣化の背景要因(underlying causes)の究明各国は、減少・劣化に対処するための国家戦略などの策定と実施、環境アセスメント等の手法の整備を行うべきである。
各国は、共通の「診断方法diagnositic framework」を用い、森林の減少・劣化原因に関するケーススタディを実施すべきである。
1.3森林に関する伝統的知識各国は、森林に関する伝統的知識の保護などに関する法的な枠組みや政策のあり方について検討すべきである。
各国は、森林に関する伝統的知識から得られる利益の公平かる公正な分配、伝統的知識の利用に関する技術的ガイドラインの作成などの検討を促進すべきである。
1.4砂漠化および大気汚染による森林への影響各国は、乾燥地や半乾燥地の生態系などを保全するための保護区を設定すべきである。
大気汚染に関する既存の地位レベルでのモニタリングを継続するとともに、それを他の地域に拡大すべきである。
1.5低森林被覆国等における森林保全対策の必要性FAOは、各国、関係国際機関などの意見を聴きつつ、すべての国に適用できる低森林被覆の実用的な定義を作成すべきである。
低森林被覆国は、保護林やバッファーゾーンなどの設定や拡張を行うべきである。
U資金援助・技術移転に関する国際協力/A.財政支援被援助国は、森林分野の活動への優先順位を高めるべきであり、援助国や国際機関は、森林分野へのODAの比率を高めるべきである。
開発途上告は、持続可能な森林管理のための魅力ある投資環境を整備すべきであるとともに、先進国は、開発途上国での持続可能な森林管理を促進するための助成手段を整備すべきである。
B.技術移転、能力育成、情報国連機関は、最も適切な技術と最も効率的な技術移転のあり方について調査を行うべきである。
V.1(a)すべての森林の多様な利益の評価と研究各国は、国家森林資源評価、森林関連統計などの分析と活用のための能力の向上を図るべきである。
FAOは、各国、国際機関などと協力して2000年世界森林資源評価を実施するとともに、その成果を国際的に共有すべきである。
V.1.(b)森林の有する多様な機能の評価手法各国、関係国際機関は、森林の評価手法の更なる開発を進めるべきである。
各国は国際機関と共同して、森林の価値のより適正な評価手法を使用すべきである。
V.2.持続可能な森林管理の基準・指標各国は、国レベル、地域レベルまたは経営単位・施業レベルで適用される基準・指標間の関連づけを行うべきである。
未だ基準・指標づくりの取り組みに参加していない国は、直ちに取り組みに参加すべきであるとともに、ドナー機関などは、このために必要な技術手金、資金的な援助を行うべきである。
W.林産物・サービスに関連する貿易と環境各国は、既存の国際的な義務と約束に従った市場アクセスの改善措置を実行すべきである。
関連国際機関はそれぞれのマンデイトに従い、自主的な認証・ラベリング制度につきさらに研究を進めるべきである。
各国、関係国際機関はすべてのコストの内部化のための手法を検討すべきである。
X.1国際機関の役割国際機関は、各国の協力の下でIPFで合意された行動提案を実施するとともに、各国の実施を支援すべきである。
関係国際機関は、国際機関間非公式タスクフォース(ITFF)」の活動を継続すべきである。

2)IFFでの検討

  IFFは@IPFの行動提案の実施促進、A持続可能な森林管理の進捗状況の把握、B資金・技術移転など、IPFでの未解決事項の更なる検討、C「森林条約」などの国際メカニズムの検討とコンセンサスづくりの促進−を行うこととされ、2000年に開催されるCSD第8回会合で、「森林条約」などの国際メカニズムに関する政府間交渉プロセスを開始するか否かを決定することが合意された。IFFは2000年までに4回の会合を開催する予定である。(すでに2回開催され、1999年5月第3回会合が行われる)。

IFF第1回会合の概要 
(1997年10月1日〜3日ニューヨーク)
 IFF第1回会合においては、@今後のIFFの作業内容、A将来の会合で、どのプログラム・エレメントを議論するかの割り当て、B将来の会合の回数、スケジュール、Cその他の関連会合−について決定された。IFFの今後の検討事項としては、以下の8項目(3グループ)が設けられた。

TIPF行動提案の実施
TaIPF行動提案の実施促進方策
Tb持続可能な森林経営の進捗状況のモニター
UIPFからの懸案事項の検討
Ua新たな国際基金の設立、及び資金調達方法
Ub貿易と持続可能な環境の調和政策
Uc持続可能な森林技術のための環境保全技術の移転方策
Udその他のIPF検討項目で更なる検討が必要な事項の検討〜森林減少・劣化の背景要因、伝統的な知識、森林のもとらす材・サービスの評価、重要な地域の森林被覆のモニタリングおよび植林、森林保全、森林についての研究、経済手段、木材・非木材森林生産物の将来の需要と供給など
Ue森林関連分野の国際的な取り組み等の分析
V.すべてのタイプの森林の管理・保全および持続可能な開発に関する国際協定、国際メカニズムの検討


IFF第2回会合の概要
(1998年8月24日〜9月4日ジュネーブ) 
 第2回会合では、第1回会合で決定された以下のような検討項目について討議を行った。
T.IPF行動提案の実施
 Ta PF行動提案の実施促進方策
  森林問題に関する今後の国際的な取組はIPF行動提案の実施が基本との考え方が共通認識となっており、各国、関係国際機関等が協力して本行動提案の実施促進を図ることとされた。特に、「6カ国イニシアチブ」(後述)が歓迎され、低森林被覆国における取り組み促進の重要性が指摘された。
 Tb 持続可能な森林経営の進捗状況のモニター
  IPF行動提案の実施促進のため、進捗状況のモニタリング、データ収集、評価、報告等について検討され、既存の報告システムとの重複を避けること、FAO、ITTO等関係国際機関の間で協力・調整を行うこと、実施のための費用を考慮し、特に途上国への国際協力や能力形成を図ること等が指摘された。
U.IPFからの懸案事項 
Ua 新たな国際基金の設立、その他の資金調達方法
 1992年の「森林原則声明」で合意された「新規かつ追加的な資金の供与」が途上国では実現されていないことを指摘し、新たな国際的な森林基金の設立を求めた。しかし、先進国は既存の資金メカニズムの活用等を求め、事務局が既存の国際的メカニズムの活用等について評価を行い、その結果を第3回会合に報告することとなった。
Ub 貿易と持続可能な森林経営のための環境保全技術の移転方策
 貿易問題に関しては、特に貿易自由化と持続可能な森林経営との関係について議論が紛糾し、今回は実質討議であったにも関わらず報告書全体が括弧付きとなった。第3回会合でも引き続き討議される予定。
Uc 持続可能な森林経営のための環境保全技術の移転方策
 途上国は環境上適正な技術が、有利な条件で途上国に移転されるべきことを主張し、技術移転を促進するメカニズムの設立を提案したが、EU等の先進国がこれに反対した。技術移転の報告書についても多くの部分が括弧付きとなり、第3回会合でも引き続き討議されるとなった。
Ud その他のIPF検討項目で更なる検討が必要な事項の検討
  その他の検討項目として、森林減少の根本原因、森林に関する伝統的知識、森林保全と保護地域、研究の優先事項等について事前討議が行われ、各国の認識や取組状況等について報告が行われた。
Ue 森林関連分野の国際的な取り組み等の分析
・ 国際協定、国際メカニズムの検討(V)に資するため生物多様性条約、気候変動枠組条約等の既存の森林関連の条約等、既存の森林関連の関係や関係国際機関の役割、活動内容等について討議が行われた。
・ 条約づくりに積極的なカナダは、現在の森林に関する取組が断片的であることを指摘したが、NGO等は、既に十分な国際的メカニズムが存在しており、必要なのは取組を着実に実施していく意思であることを指摘した。
・ 今後、事務局により既存の条約等に関しさらに詳細な分析が行われ、第3回会合で報告されることとなった。
V.国際協定及び国際メカニズムの検討
・ 森林条約等の国際的な取決めに関しては、具体的な内容についての議論は少なく、概念的な議論が中心となった。関係国の立場は、従来と基本的には大きな変化はなく、カナダやコスタリカがその必要性を支持し、EUも条約作成を促進する立場をとったが、アメリカ、ブラジル等は慎重な姿勢をとった。わが国は、現時点では検討すべき課題が多いため、国際的コンセンサス形成を指摘した。また、会合にオブザーバー参加したグリーンピース等のNGOは、すでに森林に関連した条約が数多く存在することと等を理由に、新たな条約等が数多く存在することを理由に、新たな条約づくりには懐疑的な立場をとった。
・ 国際的取決めの具体的な要素の検討に関しては、カナダ及びコスタリカが99年3月に専門家会合を開催してIFF第3回会合にその成果を報告することを表明し、多くの国がこのイニシアチブを歓迎した。
・ 今後Ueの森林関連条約に関して行う分析とあわせ、既存の取決めやメカニズムの役割、効果、関連等を明確にするための分析を行うこととなった。その結果や各国によるイニシアチブの成果をもとに、次回会合で実質討議が行われる予定。

今後の動向
 次回の第3回会合は、今年5月3日〜14日ジュネーブで開催される(議題は以下)。第4回会合は2000年2月〜3月にニューヨークで開催され、最終的な報告書がまとめられて同年のCSD会合でその結果が提出される予定である。
〈第3回会合議題の論点〉
Tb. 持続可能な開発の実施状況のモニター
Ua. 資金調達方法
Ud. IPF検討項目のさらなる検討の必要性
(森林減少の背景原因、森林に関する伝統的知識、森林保全、研究の優先権、森林価値と森林サービスの評価、経済的手段、課税政策と土地の保有期間、森林産物とサービスの木材と非木材の需要と供給、森林被覆のリハビリテーション)
V. すべてのタイプの森林の管理・保全および持続可能な開発に関する国際協定、国際メカニズムの検討

「国際機関間非公式タスクフォース」
the Informal, High Level Interagency Task Force on Forest; ITFF
 1995年4月のIPF設立に続き、「国際機関間非公式タスクフォース」が同年7月ジュネーブで、森林に関する一連のプロセスに国際機関から貫した関与を行うため設立された。
  ITFFは 次の機関で構成されている。
国際林業研究センターCenter for International Forestry Research(CIFOR)
国連食糧農業機関Food and Agriculture Organization of the United Nation(FAO)
国際熱帯木材機関the International Tropical Timber Organization(ITTO)
生物の多様性に関する条約事務局the Secretariat of the Convention on Biological Diversity(CBD)
国連経済社会局the United Nations Department for Social and Ecorinomic Affairs(UN/DESA)
国連開発計画the United Nations Development Programme(UNDP)
国連環境計画the United Nations Environment Programme(UNEP);
世界銀行(the World Bank)
 現在、ITFFの議長はFAOが務めている。当面の動きとして、ITFFは国際機関向けの、IPF行動提案の実行計画を準備し、「森林に関する国際機関間パートナーシップ;ITFFによるIPF行動提案の実施」と題して1997年6月UNGASSに提出した。

3)関連する国際イニシアチブ

 6カ国イニシアチブ
 6カ国イニシアチブとは、1997年から98年にかけてIPF提案の実施を国レベルで実施していくために行われたフィンランド、ドイツ、ホンジュラス、インドネシア、ウガンダ、イギリスによるイニシアチブである。
 このイニシアチブは1997年10月のIFF第1回会合の際にドイツにより南北の協力のもとにIFFの作業プログラムのエレメントTa(IPF行動提案の実施の促進)をサポートして必要があるとの発言に対し、他の5カ国およびIFF事務局、UNDP、FAOが同調したことに始まる。
 6カ国イニシアチブは、国レベルでのIPF行動提案の実施を促進し、各国の経験からIFF第2回会合で検討するためのIPF実施のための指針を作成することを目的として、@6カ国によるケース・スタディおよびレポートの作成、A国際専門家会合でのケーススタディを議論およびIPF提案の実施に関する勧告のための合意形成−の2つの段階に分けて行うこととされた。
 この第2段階の国際専門家会合(International Expert Consultation on "Putting the IPF Proposals for Action into Practice at National Level ")は1998年6〜7月にドイツのバーデン・バーデンで開催され、37カ国から109の専門家が出席して議論が行われた。この会合によって10項目の勧告が作成された。主な内容は以下の通りである。
[国レベルの勧告]
−各国は6カ国による実践を自国にも適用し、IPF提案の統合評価を国レベルの持続可能な森林管理プロセスの中で実施すること
−各国は国別森林計画または同種の計画で、測定可能な目標や指標、部門横断的な政策レビュー、適切な資源の配分等などを行い、調整された参加型の手法によりIPF提案を実施すること
等5つの勧告
[国際レベルの勧告]
−6カ国による実践の手法が他の諸国にとって利用可能なもののとなり、国の評価プロセスでの利用に適したもに改善されること。IFFはIPF報告およびその提案についての各国語のわかりやすいガイドを作成すること。
−国際社会は発展途上国、経済移行国のIPF行動提案の評価、実施を協力すること
IFFは京都議定書の持続可能な森林管理への関係について考慮すること
等5つの勧告

森林減少および劣化の背景要因に関するイニシアチブ

この項目は(財)地球環境戦略研究機関の森林プロジェクトの資料をもとにして作成しています
 
「森林減少・破壊の背景要因」(underlying causes of deforestation and forest degradation)はIFFの重要な検討事項として位置づけられており、特にNGOの関心が高い分野であった。IFF第1回会合において20のNGOがこのテーマに関してイニシアチブをとり国レベル・国際レベルの議論を行い、IFFに貢献する用意があるとの共同声明を行った。この提案は各国に歓迎され、コスタリカ等いくつかの政府はこのNGOプロセスのパートナーとなり、グローバルワークショップのホストとなることを表明した。
 このイニシアチブは次の3点を行うこととされた。

@ 7カ所の地域ワークショップおよび1回の先住民組織によるワークショップを通いた40以上のケース・スタディ
A 政府および国際機関等とのパートナーシップのもとに、森林減少・劣化の背景要因に関するグローバル・ワークショップを開催する
B 以上に関するレポートを第3回IFF会合に提出し、IFFにおける背景要因に関する議論の基礎とする

 背景要因に関するこのイニシアチブはWorld Rain forest MovementおよびIUCNオランダによる世界事務局により組織化され、運営委員会には、コスタリカ政府がホスト国として、UNEP がITFF代表として参加、その他、先住民組織、7カ所のフォーカル・ポイントおよび上記の世界事務局により構成された。
 地域会合は以下のような日程で行われた。

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  区分              開催時期/場所
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ロシア地域          1998年 7月29日、シベリア、クラスノヤルスク
オセアニア地域      1998年 9月28-29日、フィジィ
北アメリカ地域       1998年 10月1-2日、カナダ
ヨーロッパ地域       1998年 10月28-30日、ドイツ
ラテン・アメリカ地域    1998年 9月8-10日、チリ
アフリカ地域        1998年 10月26-28日、ガーナ
アジア地域         1998年 12月26-28日、インドネシア
先住民族          1999年 1月8-10日、エクアドル
世界会合          1999年 1月18-22日,コスタリカ
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(出典:「森林保全をめぐる最新の国際動向について」(1999年2月(財)地球環境戦略研究機関・山根正伸)

 これらの地域会合のうち、アジア地域会合はインドネシア・ジャワ島アンヤーで1998年12月4日〜6日行われ、東アジア、島嶼東南アジア、インドシナ半島、南アジアの4つのサブ・リージョンから背景要因に関するケーススタディが報告された。これらに基づく検討の結果、8項目が持続的な森林管理、森林破壊の背景的要因として抽出された
 また、1999年1月には、背景要因に関するグローバルワークショップがコスタリカ・サンホセで開催され、各地域ワークショップの統合報告、および世界7地域・先住民ワークショップの個別報告が行われ、テーマ別(@貿易と消費、A利害関係者の参加、B投資・援助・資金フロー、C森林の価値評価)の討論の後、最終日に次のような行動提案が出された。

1)土地所有制度・資源管理・利害関係者の参加;不平等な土地権利問題の解決、腐敗・軍事支配・独裁等による透明性と説明責任の欠如の解消、法制度の見直し
2)貿易と消費;持続可能でない生産消費パターンの変更、国際貿易の不均衡解消と持続可能な開発レジーム 
3)国際的な経済連関・資金フロー;開発モデル・構造調整プログラムなどの見直し、債務問題への対応、民間資金フローの適正化、法制度の整備
4)森林生産物・サービスの評価;文化的価値、地域社会の財産権、伝統的な森林利用、多面的機能への認識欠如の改善、非木材林産物の便益の地域住民への還元

カナダ・コスタリカイニシアチブ
 現在IFFでは、森林保全のための国際協定やメカニズム等についての検討が行われている。しかしこれまでのIFFでは他の議題や参加国が多く十分な時間がさけないことから条約の必要性についての実質的な議論が進んでいない状況にある。特に「国際協定、国際メカニズム」についての議論を行うことが難しいことをふまえ、条約作成を支持するカナダとコスタリカが森林保全に関する国際協定、国際メカニズムづくりの必要性のためのコンセンサスづくり、盛り込むべき要素についての検討を行うための一連の会合を行うことを表明した。
 1998年10月にコスタリカで準備会合が開催され、1999年2月に専門家会合が雄今割れた。今後、地域会合(アフリカ、アジア、ラテンアメリカ・カリブ、欧州等で1999年3月〜10月開催)が重ねられ、1999年11月カナダで最終会合が行われる予定である。ここではIFF第4回会合に報告する内容をとりまとめ、最終的に検討結果をIFF第4回会合に提出される。

 1999年2月22日〜29日にコスタリカ・サンホセで行われた専門家会合においては、次の5段階のステップが提案され、今回はstep1〜3が実施された。

ステップ1森林保全のための国際的取り決め要素を確定するため、国際的な森林問題のコアセットを特定する。
ステップ2そのコアセットの課題に対し既存の手段(生物多様性条約、ラムサール条約など)による措置レベルを分析する。
ステップ3課題の中で国際的な手段を通じて推進されるべき要素とそうでないものの特定。
ステップ4ステップ3で特定された可能な要素を取り扱うための法的拘束力がある手段と拘束力のない手段の範囲の特定。
ステップ5ステップ4で特定された法的拘束力があるものとないものの2つのオプション長所と短所に関する理解の促進。

 この手法については、同会合において、森林条約に慎重であるアメリカやNGO等から、今回提案された手法は、既存の手段の強化・統合による措置の可能性を排除したものであるという批判がなされた。今後、この議論をもとに、アジア地域を含め世界各地で地域会合が開催されることとなっており、地域の実情に応じた議論が進展することが期待される。


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