フロント/話題と人ジル・ピータースさん(ベルギー VTM ニュース 気象キャスター)

2015年12月15日グローバルネット2015年12月号

気候変動についての人びとの関心を高めるために
奔走するユニークな気象キャスター

ジル・ピータースさん
ベルギーVTM ニュース 気象キャスター

「みんな私に、『そんなに危機感をあおらないでよ。怖くなるじゃない!』と言うけれど、今、行動を起こさないと人間は地球で暮らせなくなる!」と元気にワークショップを仕切っていたジル・ピータースさん。世界気象機関などが主催した世界の気象キャスターを集めたワークショップ参加のために来日した。

2000年にベルギーの民放テレビ局の気象キャスターになった。「明日の天気を当てられる気象キャスターはまるで魔法使いみたい」と、子どものころから気象キャスターになるのが夢だった。テレビ以外に、新聞にも毎日天気予報記事を書いており、ベルギーのフラマン語圏ではかなりの有名人だ。

2006年頃から気候変動について注目し始めた。極端な気象現象に疑問を持ち、IPCCの報告書を読んでみた。ベルギーは台風など来ない温暖な気候だが、今年の11月1日は、去年に引き続き1833年からの観測史上、最も高い気温を記録した。しかし、ベルギーの人びとは暖かいことを喜んでいる。関心事はサッカーのFIFAランキングや経済ネタ。気候変動に対する関心はメディアも政治家も低いと嘆く。その原因について「人間の脳は遠い先の脅威は無視するようにプログラムされている、と納得するようにしている」という。

気候変動による社会経済面への影響も大きいと語る。欧州に流入する難民は気候変動の被害者でもある。この難民問題もまだ始まったばかりだ。すでに欧州では経済への影響、差別の問題などが浮上している。

「気候変動問題をどうコミュニケートするか」ということに熱心に取り組み、さまざまな工夫をしている。時には踊ったり、歌ったり、さらには雑誌の表紙でボディーペイントはしているもののヌード写真まで披露し、「思惑通りかなり話題になった」という。それもこれも気候変動について人びとが考えるきっかけになればという一途な思いからだ。

パリで開催中のCOP21に参加し、1日に何度もTwitterを更新している。気候変動問題について「解決策は見つけられるはずだ」と希望を持ち、人びとが気候変動を理解してくれるよう、言葉や手段を工夫しながら奔走している。娘を3人持つ40歳。 (亜)