NSCニュース No.99/2016年1月日本における企業への学生インターンシップの現状と課題

2016年01月15日グローバルネット2016年1月号

立教大学経営学部教育研究コーディネーター
竹本 徳子

インターンシップ(インターン)制度は20世紀初頭にアメリカのシンシナティ大学工学部で始まったといわれている。産学連携教育(コーオプ教育)として大学の授業と地元の工作機械工場での就労体験型学習プログラムを卒業まで交互に受けるシステムで、学問としての体系的な知識と同時に実践的・専門的な知識やスキルを身に付けることを目的としていたという。

全米コーオプ教育委員会のインターンの定義は「理論と実践を結びつける斬新な経験を提供する学生、教育機関、企業間の連携活動」とある。すなわち企業における即戦力の確保に寄与し、就職後のミスマッチ・離職率の低下に資すること、またアカデミックと実社会が連携し、教育内容の充実・改善が可能となり、情報を共有することで、人材の「売り手(大学)良し、買い手(企業)良し、世間良し」の三方良しとする制度ともいえるが、学生本人が一番メリットを享受できる制度設計が必要なことは言うまでもない。

 必ずしも人材育成を目的としないことも多い日本国内のプログラム

一方、日本では古くから医学や教育現場でインターン実習制度はあったものの、他分野で一般企業に普及するのは1997年、当時の文部省、通商産業省、労働省が合同で発表した「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」以降となる。日本の定義は「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」で、必ずしも人材育成を目的としないインターン・プログラムも多く、インターン生を無給の労働力とみなし、電話営業業務のみをやらせるようなブラック企業もあるので注意が必要である。

2015年度の実施状況

2015年度の日本のインターン実施状況は、経団連傘下企業か否かで異なるが、いずれにしても経団連の協定により、就職活動の解禁が昨年度までの12月から3月に後ろ倒しになった影響を直接受けた。1dayインターンや3daysインターンなどで代替する企業が激増、これを就活で有利になるパスポートと認識する学生も多く、とりあえず業界研究も企業研究もせず、やみくもにエントリー(応募)する学生も少なからずいる。これでは優秀な人材確保にはつながらない。

経団連傘下外の外資系企業、ベンチャー企業、コンサルティング企業などは採用に直結するインターンを実施し、有給であるケースも多い。中には学部3年次の夏のインターンで内定を出すケースも多く、早期囲い込みで優秀な人材を確保したいという明確な狙いがあるが、大手企業が学生に内定を出した時点で辞退されるリスクもある。

これまでは夏季休暇中に1~2週間程度のインターン・プログラムが主流で、大学側も正課授業(単位認定型)やキャリア支援(大学公募型)に力を入れてきたが、最近は大学が関与するインターンの参加者数は減少傾向にあり、個人で自主的に複数企業にエントリーする(自由応募型)学生は増え、冬季・春季インターンはさらにこの増加が予想される。プログラム内容もセミナー型、プロジェクト型、実体験型など多様化し、学生は何を選択すべきか迷うところだが、人気があるのは社員との交流が図れる実体験型といえる。

期待される多くの企業に「三方良し」のプログラム

このような状況下で、学生の主体性を重んじ、さらに教育効果の高い、大学の成果授業としてのインターンはどうあるべきかが問われている。2014年3月に実施された経済産業省とNPO法人ETIC.による「教育効果の高いインターンシップの普及に関する調査」によれば、①目的の明確化②プログラム設計③現場のリアル体験④適切なフィードバック⑤専門人材(コーディネーター)によるサポートの5点が重要だという。

また社会人基礎力の開発には最低3週間必要といわれている。立教大学経営学部ではこれらの調査結果と受講生のレポートや企業からの意見などを踏まえ、来年度より「長期実践インターンシップ」ベーシックコース(実習4週間以上/4単位)とアドバンストコース(実習4ヵ月以上/10単位)を正課授業として立ち上げる。事前研修を充実させ、各学生の希望と企業の希望を丁寧に聞きながら成果を上げていきたい。

多くの企業に「三方良し」となるインターン・プログラムにご協力いただければありがたい。

※ 2006年2月から経産省が提唱する「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の三つの能力(12の能力要素)から構成される「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」

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