フロント/話題と人田中 賢治さん(国土防災技術株式会社 緑環境事業部長 )

2016年02月15日グローバルネット2016年2月号

エコプロダクツ大賞優秀賞を受賞した虹松プロジェクトの推進役
国土防災技術株式会社 緑環境事業部長
田中 賢治さん

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右が田中賢治さん、左は現地のプロジェクト担当者の溝上由美子さん

「虹の松原」「フルボ酸」「シャンプー」と、連想ゲームのようなプロジェクトを展開して、建設コンサルタント、防災関連建設業大手の国土防災技術(株)が2015年度のエコプロダクツ大賞優秀賞を受賞した。  

受賞対象となった「虹松プロジェクト」の推進役が、同社の執行役員、緑環境事業部長でフルボ酸研究所の所長も務める田中賢治さん(50)。今話題のフルボ酸を量産する技術を開発したフルボ酸研究の第一人者だ。島根大学で森林計画を学び、同社に入ってからは地すべり対策の調査・設計が専門だった。地滑りの現場に足を運ぶたびに、荒廃地の緑化をもっと進めるべきだと危機感を持ち、土壌の研究を続ける中でフルボ酸の量産技術にたどりついたと言う。

フルボ酸は森林土壌の腐植層にある有機酸の一つで、植物や動物にミネラルを補給する役目を果たしているという。フルボ酸ブームの中で、「がんにも効く」などという風評があるが、田中さんは自著『大自然の生命の力 フルボ酸』の中で「がんに直接働きかける効力や作用は備わっていません」と、万能薬のように受け止めることにくぎを刺している。  

佐賀県唐津市にある虹の松原は、白砂青松の環境を守るために年間6,000人ものボランティアが松葉かきなどの作業に汗を流し、年間1,000トンもの松葉をごみとして処分していた。この松葉を、人工的にフルボ酸を製造する特許技術によって資源に変え、さらに身近なシャンプーの中にフルボ酸を取り込むことにも成功。シャンプーの売り上げの一部をボランティア団体に寄付している。エコプロダクツ大賞優秀賞の受賞理由は「一連の活動が一つの循環を形成しており、環境保全活動の推進が期待される」というもの。  

同社では、これ以外にも東日本大震災の津波で塩類が集積してしまった水田にフルボ酸の希釈液をまくことで除塩に成功し、お米の収量や食味のアップにつなげている。昨年12月に東京・ビッグサイトで行われたエコプロダクツ展では、田中さんが先頭に立ってフルボ酸の説明に当たり、国土緑化を夢見る研究者の情熱を発散していた。(H)

(写真は田中さん(右)と現地のプロジェクト担当者の溝上由美子さん)

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