環境研究最前線~つくば・国環研からのレポート第22回/使用済み電池の回収と安全性題

2016年06月15日グローバルネット2016年6月号

地球・人間環境フォーラム
萩原 富司(はぎわら とみじ)

われわれの身の回りには生活を便利にする小型家電が多くあり、そのほとんどに電池が使用されています。携帯電話にリチウムイオン電池が入っていることを知っている方は多いでしょうが、電気炊飯器の時計駆動用に電池が使われているのを意識したことはあるでしょうか。

電池には、使い切り電池(一次電池といいます)と充電式電池(二次電池といいます)があります。一次電池にはマンガン乾電池、アルカリ乾電池と小型のボタン電池(酸化銀電池、空気亜鉛電池)、円形でやや平たいコイン電池(リチウム電池)があり、二次電池にはニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの種類があります。

マンガン乾電池には水銀が含まれている場合もあり、不適切な廃棄方法によっては土壌などの水銀汚染が起こりますが、これら電池の廃棄について正しい知識を持っている人は少ないと思います。電池の回収とリサイクルは危険物管理と資源回収の観点から非常に重要です。わが国では昨年37.4億個の電池が生産されましたが(一般財団法人電池工業会WEBサイトより)、一次電池と二次電池を合わせた回収率はわずか26%となっています。

電池の回収、リサイクルに向けた課題

使用後の電池の廃棄には、危険物管理と資源回収の観点を配慮する必要があります。危険物管理の観点からは、強引な取り外しや破砕など外部からの力をかけた際の爆発、周囲からの加熱による熱暴走(外部加熱などで電池内部の特定部位が発熱、それがさらに他の部位の発熱を引き起こし、電池温度が増幅される現象)、短絡(電池同志のプラス極とマイナス極が接触して大きな電流が流れること)した際の爆発や火災、液漏れによる化学やけどなどの事故を考慮する必要があります。電池が装着されたままの廃棄物が、危険だという認識を持つことが重要です。また素材に用いられる水銀、鉛、カドミウムなどが放出された際は環境汚染を引き起こす可能性もあります。

資源回収の観点からは、高価で貴重な資源であるコバルト、貴重な資源であるニッケル、カドミウム、鉛、有用な金属である鉄、亜鉛などが電池の種類に応じて使われているので、それらを回収しリサイクルすることが求められます。

しかし、家電に電池が使われているかがわからず、あるいは忘れてしまい電池が装着されたまま廃棄処理に回るなど、現状は家電に使用された電池の適切な資源循環が十分に計られているとは言い難い状況です。

乾電池は自治体、充電式電池は販売店へ

「以前は電池に含まれる水銀が大きな問題でした。今でも安価な電池には水銀が含まれている可能性がありますが、電池に含まれる水銀には国内ではこれまで基準がなく、業界の自主規制に任されています。乾電池に水銀が含まれていたころ、自治体は逆有償(お金を払って)で企業にリサイクルを委託していましたが、水銀を含むものが少なくなった今は一般廃棄物として処分しています」と、安全で効果的な回収・リサイクルシステムの構築について研究をしている国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター副センター長の寺園淳氏は言います。

「乾電池などの一次電池は自治体の決められた場所に、二次電池は資源有効利用促進法により、電池業界団体JBRCの協力店の回収ボックスに出すことになっていますが(業界の自主回収)、種類ごとに回収場所が違うため、制度が十分機能していないと考えます。乾電池を廃棄する際には、安全のため、プラス・マイナスの両極にビニールテープなどを貼って絶縁処理することが電池工業会によって求められていますが、私たちが2013年にある自治体で調査した結果では実施率が2.0%でした。角形積層乾電池(9V)は端子が飛び出していて両極が近いため、短絡が起きやすく危険です(写真①)。これとコイン型リチウム電池を一緒に保管したとき、コイン型が角形の端子の間に挟まり、短絡して爆発、火災になった事故が多く報告されています」と、電池の適正な回収方法が周知されていない現状も語ってくれました。

写真1 角形積層乾電池。短絡防止対策として、マイナス側の端子には、絶縁樹脂が付いている。電池裏面には短絡に対する注意喚起と、廃棄・保管の際の絶縁処理を求める記載がある。

乾電池を廃棄する際には絶縁処理が求められ、また、二次電池は回収ボックスに出すことを知らなかったので、試みにつくば市内の回収ボックス設置店を調べてみました。インターネットで調べるとJBRCの協力店が大型電気店、ホームセンターなど5店ありましたが、電池を売っている店の数と比べるととても少ないことがわかりました。廃棄の際に、一次電池は両極の絶縁処理を行い、二次電池は回収ボックス設置店に持ち込んだ経験のある読者はいるでしょうか?

内蔵電池を廃棄する際の問題点

充電式懐中電灯を廃棄する際、カドミウムによる環境汚染を心配して、ニカド電池を取り出そうとしたことがあります。しかし工具で器具を開けてみても、電池の両極はハンダで電源回路に溶接されており、ニッパーで配線を切断して取り出したことがあります。この電池にはリサイクルマークが記されていました。

「消費者が交換可能な電池と、消費者による交換が想定されていなくて機器と一体化した内蔵電池があります。内蔵電池にリサイクルマークが付いているので話がややこしくなります(写真②)。このような場合は、リサイクルマークを表示して終わるのではなく、販売店で使用済み機器を受け入れるか、取り外し可能な製品設計とすることが必要です。さらに最近のスマートフォンの一部には内蔵電池型のリチウムイオン電池が使われていますが、二次電池廃棄目的での取り出しには特殊工具が必要なため、消費者自身で行うと電池を傷つけ、内容物と接触する恐れがあり、非常に危険です」と寺園氏は教えてくれました。

写真2 内蔵電池が装着された電気シェーバー。二次電池にリサイクルマークが表示されているが、固定されており、取り外しは難しい。外のカバーを開けるには小型ねじ回しで、長いねじ(写真左下)を外す必要がある。(写真は寺園氏提供)

小型家電の内蔵電池の廃棄については小型家電リサイクル法(2013年4月施行)により、電池を取り出さずにそのまま公共施設や小売店に備え付けの回収ボックスに出せることになっていますが、回収方法や対象品目は各自治体に委ねられています。

寺園氏は、「電池処理に手間とお金が掛かり、コストに見合う資源回収ができていないこともあって、JBRCの回収ボックスは店の奥の目立たないところに設置してあることが多いです。回収にインセンティブが働いていません」と指摘します。

電池は小型家電の動力源として私たちの便利な生活を支えています。しかし製造にあたっては機能面だけが重視されて、危険物管理と資源回収に向けた制度が不十分で、そのツケがすべて下流での処理に回されているように見えます。行政、電池・家電メーカー、販売店、回収処理業者などが一体となって電池の回収、リサイクルを含めた統一的な制度の確立を目指すべきです。また、消費者には家電購入時に廃棄を考慮した責任ある行動が求められます。

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