特集/次世代に向けた低炭素社会の構築を目指して~「低炭素杯2016」受賞団体の地域での取り組み環境大臣賞金賞/文部科学大臣賞の受賞事例の紹介長崎県立諫早農業口頭学校 生物工学部 新エネルギー研究班(長崎県諫早市)

2016年10月15日グローバルネット2016年8月号

環境大臣賞および文部科学大臣賞に選ばれた6団体のうち4団体の取り組みについて編集部がまとめた内容を紹介します。

グローバルネット編集部

環境大臣賞 金賞(学生部門)/オーディエンス賞
微生物を用いた未利用バイオマスの研究~地域で目指す実用化~
長崎県立諫早農業口頭学校 生物工学部 新エネルギー研究班(長崎県諫早市)

九州北西部、佐賀・福岡・長崎・熊本の4県に囲まれる有明海の中にある長崎県諫早湾の干拓地に群生するイネ科の植物ヨシが、二酸化炭素(CO2)を吸収し、水質を浄化するという機能に注目。バイオエタノールを生成し、バイオディーゼル燃料(BDF)の原料として活用することにより、さらなるCO2の削減を実現した。

干拓地でヨシを持った研究班のメンバー

研究班は2009年度、バイオマス燃料の開発を究極の目標として研究をスタートした。11年度から、地元の諫早湾干拓地に多く群生しながら利用されることのなかったヨシを原料とするバイオエタノールの生成実験を進め、13年度、ヨシに付着していた微生物により、エタノールの製造に成功した。

その後、県内の運送会社から「よりクリーンなエネルギーの利用を目指したい」との申し出を受け、連携して共同研究を開始。昨年、自ら生成したバイオエタノールを触媒として使ったBDFの製造試験を実施し、トラクターやバスでの実用化に成功した。

BDFは使用済み天ぷら油などの廃棄油をメタノールと反応させ、化学処理をして製造されるディーゼルエンジン用の液体燃料。燃焼時には化石燃料と同様CO2を排出するが、このCO2は元々原料である植物が成長過程で吸収したCO2として計算されるため、大気中のCO2を増やさない(カーボンニュートラル)とされる。つまり、このBDFの製造に工業用メタノールではなく、化石燃料の代替として植物由来のバイオエタノールを使うということは、より高度なCO2 の削減が可能となり、廃棄物のリサイクルにもつながるということなのだ。

100gのヨシから52%のエタノール溶液330?の生成が可能だという。研究班が作ったヨシ由来のエタノールでBDFの製造が可能になれば、諫早湾干拓地のヨシの量から計算すると、年間約114tのCO2が削減できることになるという。

さらに、研究班では「高校生でもできる活動」について話し合い、昨年5月から廃棄食用油の回収活動を始めた。地元の学校や幼稚園などに呼び掛けたところ、反響は大きく、予想以上に多く回収することができた。また、地元の団地でも住民たちが自発的に回収してくれるなど、「こんなに簡単にできる環境保全活動があるとは知らなかった」との声とともに、活動が地域全体に広がっている。

また、研究班ではエタノールの生成過程で副産物として大量に発生するヨシの残渣を利用して和紙を作り、生分解性育苗ポットの製造にも成功している。

「私たちが作ったBDFはとても小さな1滴かもしれないが、これが社会の恵みとなるよう、今後も取り組みを進めていきたい」と研究班のメンバーたちは抱負を語る。

1989年から始められた国の干拓事業により、周辺環境への影響が懸念される諫早湾だが、地元の高校生たちは地域の資源を生かして古里の環境を守ろうと、地元の企業や住民たちと連携して、低炭素社会の実現に向けた地域循環型まちづくりのための取り組みを進めている。

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