特集/持続可能な脱炭素社会を目指して~パリ協定の実現に向けた日米産業界の取り組み住まいと暮らしから目指す「環境負荷ネット・ゼロ」

2016年11月15日グローバルネット2016年9月号

株式会社LIXIL EHS推進部 部長
川上 敏弘

住まいと暮らしから目指す「環境負荷ネット・ゼロ」

LIXILグループは、窓・ドア・エクステリアなどの建材商品、トイレ・浴室・キッチンなどの水回り商品、ビルのカーテンウォール(ビル外側の非耐力壁)など、建物や住まいに関わる商品やサービスを提供しています。株式会社LIXILと、アメリカンスタンダード・ブランズ、グローエ、ペルマスティリーザなどの子会社を含めた従業員は約8万人、生活者視点に立ったテクノロジーにより世界中の人々の豊かで快適な住まいと暮らしを実現する事業を行っています。

住まいと暮らしに関わるCO2

2014年度の日本の二酸化炭素(CO2)排出量は約13億t弱で、これに占める割合が最も高い産業部門の排出量は省エネの取り組みなどで漸減しています。一方、業務その他部門と家庭部門は延床面積の増加やライフスタイルの変化などにより2005年比でそれぞれ9.2%、6.6%増加しています。  

この二つの部門を合計すると排出量全体の40%弱あり、見方を変えるとビルや住宅などの「建物」から40%弱が排出されているといえるでしょう。なお、ここには上水の送り出しや下水処理に係る電力は含まれていませんので、実際はさらに高い比率になります。  

日本は気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)の約束草案において温室効果ガスを2030年に2013年比で26%削減する目標を掲げました。この目標においては業務その他部門、家庭部門ともに約40%の削減が前提となっています。さらに中長期的には温暖化対策計画の「2050年に80%削減」やパリ協定の「今世紀末に実質排出ゼロ」まで見据えると、建材事業や水回り事業においてグローバルNo.1の規模を持つLIXILグループにとって、住まいと暮らしの低炭素化とその先にある脱炭素化は大きな意味を持っています。

LIXILグループの2030年環境ビジョン

LIXILグループは2015年度までの5ヵ年計画で、全事業所から排出されるCO2の半減を達成するなど環境活動に取り組んできました。日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan-CLP)などを通じて得られたグローバルな動向も視野に検討を進め、2016年度からは事業プロセス全体の環境負荷を低減するテーマに加えて、ビジネスの機会という視点で製品・サービスによる環境貢献を増大するテーマに取り組むことにしました。なぜなら、私たちの事業活動におけるCO2排出量(スコープ1、2、3の合計)のうち製品の使用に由来するものが全体の約6割強を占めているからです。  

私たちはこれまでも建材商品の断熱性能の向上やトイレの洗浄水量の削減などのイノベーションを追究してきました。これをさらに推進し、気候変動や水問題などの社会課題解決に「住まいと暮らし」の領域で貢献することにより、ビジネスの成長の機会を得ることができると考えました。  

環境ビジョン「ネット・ゼロ」の概念図。2030年に天秤のバランスを目指す
http://www.lixil.com/jp/sustainability/activities/environment.html

そして、2030年に向けた環境ビジョンとして「低炭素・節水といった製品・サービスによる環境貢献」が「事業活動によって生じる環境負荷」を超える「環境負荷ネット・ゼロ」を策定しました(右図)。私たちの事業活動により生じた環境面のマイナス影響は私たちの製品やサービスによるプラス効果でオフセットするという主旨です。

私たちがJapan-CLPの一員として参加したパリで開催されたCOP21ビジネスイベントでは、名だたる企業のトップたちは脱炭素社会に向かうトレンドを予見して、その変化の途上で生じるリスク対応と、ビジネスの成長戦略としてどう取り組むのか熱心に議論していました。この視点は私たちの新しい環境ビジョンと同じ方向を向いていることを会場の熱気の中で実感することができました。

事業を通じた環境貢献の取り組み

製品やサービスのイノベーションによる環境貢献の事例を紹介します。

①世界最高峰の断熱性能の窓  

写真1 5層構造の窓「レガリス」の断面。熱貫流率0.55W/m2・Kで壁と同等の断熱性能

光や風、眺望など、外界とのつながりをつくる窓は住宅に不可欠ですが、住宅の開口部は熱の出入りが激しい箇所で、夏の冷房時(昼)は熱の7割以上が流入し、冬の暖房時には約6割が流出します。このため暖冷房由来のCO2削減のためには開口部の高断熱化が効果的です。  

「レガリス」(写真1)は5層構造の特殊薄板ガラスとその間に封入した熱伝導率の低いガス、樹脂サッシにより壁と同等の断熱性能を実現した窓です。この製品の他にもアルミと樹脂を組み合わせて通常のアルミサッシよりも断熱性を高めたハイブリッド・サッシなど普及価格帯商品でも高断熱化を推進しています。 

写真2 アクアセラミックを使ったトイレ「サティス」。水の使用量は1回4リットルの超節水型

②新素材で100年クリーンの超節水トイレ  

新素材「アクアセラミック」(写真2)は水になじみやすい“超親水性”が特徴で、トイレに付着した汚れの下に水が入り込んで汚れを浮き上がらせます。また、アクアセラミックは陶器表面を覆うガラス質の釉薬と一体となっているため高い硬度を持ち、白さと輝きが100年以上続く革新的な技術です。この特徴により少量の洗浄水でもきれいに洗い流せることに加え、汚れが付着しにくいため、トイレ掃除の水も削減することができます。  

なお、トイレの洗浄水量は1990年比で73%削減しており、標準的な家庭では年間約5万5,000リットルを削減、上下水道に由来するCO2の削減にも貢献します。この技術は日本国内のみならず世界中の水リスク地域の環境課題解決に貢献できる可能性があると考えています。

2030年に向けて

昨年12月に経済産業省が公表したZEH(※1)ロードマップでは2020年までに新築住宅でZEHを標準仕様とし、2030年までに新築住宅平均でZEH実現を目指す方針が示されました。この柱が建物の高断熱化によるエネルギーロスの低減です。さらに建物の高断熱化は結露やカビ、ヒートショック(※2)の予防など、快適で健康的な暮らしの実現にも寄与します。  

生活者の皆さんが日々快適に健康的に暮らしながら地球環境に貢献することができる、この状態が当たり前のことになるようにLIXILグループは2030年ビジョン「環境負荷ネット・ゼロ」を推進し、パリ協定が目指す社会の実現に貢献していきます。

※ 1  ZEH(ゼッチ): Net Zero Energy House。住宅の断熱性と省エネ性能を高め、太陽光発電などで作ったエネルギーを利用することにより、年間の一次消費エネルギー量の収支をプラスマイナス・ゼロにする住宅のこと
※ 2  急激な温度変化により血圧が大きく変動して起こる健康被害

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