特集/再生可能エネルギーの普及における固体バイオマスの持続可能性とは?日本における固体バイオマス利用の現状と課題

2016年12月15日グローバルネット2016年10月号

2012年に固定価格買取制度(FIT)が開始して以来、再生可能エネルギー電力が増加しています。バイオマス発電についても、木質バイオマスを中心に、認定・導入ともに急増し、輸入バイオマスの需要が増えるなど、さまざまな課題が浮上しています。そこで本特集では、固体バイオマスの利用の現状と課題を概観し、さらに9月12日に東京で開かれたシンポジウム「固体バイオマスの持続可能性確保へ向けて~英国の事例と日本の課題~」での講演内容を紹介します。

自然エネルギー財団 上級研究員
相川 高信(あいかわたかのぶ)

日本における固体バイオマスの利用の現状と課題

日本では、輸入バイオマスを燃料とする発電の計画が急増し、本特集で論じられているように、さまざまな問題が発生している。しかし、輸入バイオマスの需要が増えてしまうことの背景には、国内のバイオマス資源の利用が進んでいないことと表裏一体の問題があるともいえる。そこで本稿では、国内資源の活用状況を分析し、欧州諸国との比較から、日本のバイオマス利用の発展の方向性について考察したい。

日本のバイオマス発電の特徴

実は日本では、発電だけを見れば、バイオマスのエネルギー利用は相当程度進んでいるといえる。最新の状況を見ると、固体バイオマスに相当する発電所について、RPS(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)分も含めれば、導入容量は約125万kWとなっている。認定容量だけでいえば、380万kWとなっているので、2014年のドイツの発電容量約200万kWを上回ることになる(表1)※1。 日本の固体バイオマス発電は、固定価格買取制度(FIT)開始前のRPS制度の時代に基礎が作られ、発展してきた。2003年から始まったRPS制度の中で、廃棄物のバイオマス分も含めたバイオマス発電所の容量は200万kW弱に達していた。当時のバイオマス発電の買取価格は7円/kWh程度と低く抑えられていたこともあり、廃棄物や、建築廃材や製紙工場の黒液などの木材産業の副産物を利用したものばかりだった。森林由来の残材はほとんど利用されなかったため、FIT制度により間伐材など未利用材の燃料利用に対し高いインセンティブが与えられた。その結果、FIT制度開始4年間で未利用材を使った発電所が急増しているが、2016年5月末時点で運転を開始したのは29件、約20万kWにとどまっている。

表1.日独のバイオマス発電容量の比較

 燃料種類 日本 ドイツ(2014年)
2016年5月(導入分) 2016年5月(認定分)
 気体バイオマス  メタン発酵ガス 32,165 67,233 4,560,000
 液体バイオマス  液体  ― 230,000
 固体バイオマス  未利用木質 222,079 435,531 2,040,000
 一般木質・農作物残さ 231,999 3,039,653
 建設廃材 341,216 366,876
 RPS(木質) 458,735 458,735
 小計 1,254,029 3,842,060
 廃棄物
(バイオマス分)
 FIT(一般廃棄物・木質以外) 862,142 940,131 1,960,000
 RPS(廃棄物) 811,265 811,265
 小計 1,673,407 1,751,396
 合計 2,959,601 5,660,689 8,790,000
資料:日本については、経済産業省ホームページより。自家発電分が計上されていない。RPSの容量は長期需給見通しの数字を用い、FIT認定に移行しておらず、廃棄物ではなく木質系バイオマスを用いている発電所を特定し、固体バイオマスの分類に含めた。ドイツについては、BMWi(2015)Development of renewable energy sources in Germany 2014より作成。

未利用材の需給バランスの現状とその確保のための課題

未利用材を使った発電所の容量は、日本全体から見れば決して大きなものではないが、国内林業にとっては十分に大きな数字であり、各地で燃料不足が懸念されている。そのため政府は、2016年5月に閣議決定された森林・林業基本計画において、2025年の総木材供給量を4,000万m3、うち燃料用材を800万m3(2015年度の利用量は270万m3)とする増産計画を発表している。ただし、この増産目標を達成するには、エネルギー需要だけではなく、バランス良く製材や合板・製紙などの他のマテリアル利用についても、同様に需要を増やす(輸入材からシェアを奪い返す)必要がある。 他方、800万m3という数字は、日本の木材供給量のちょうど2割に相当し、欧州諸国の割合と比較すると、むしろ控え目であるが、これまでの実績を踏まえれば妥当な目標設定といえよう(表2)。しかし、欧州の林業は高度に整備された路網などのインフラに支えられて高効率・低コストを実現していることから、日本においても同程度の水準での整備が必要である。

表2:欧州諸国と日本の森林系残材利用割合の比較

  オーストリア ドイツ フィンランド スウェーデン 日本(2025)
用材(針葉樹) 21.6 49.8 51.6 73.1
用材(針葉樹以外) 2.9 25.7 9.3 9.2
用材計 24.5 75.5 60.9 82.3 32
林地残材 4.2 20.1 13.2 22.6
樹皮 1 3.3 2.6 3.4
残材計 5.2 23.4 15.8 26 8
合計 54.2 174.4 137.6 190.6 40
残材割合 21.2% 31.0% 25.9% 31.6% 25.0%
資料:欧州についてはMantau et al. (2010) Real potential for changes in growth and use of EU forestsより作成。日本は森林・林業基本計画における目標値。

バイオマス利用の在り方の再考を

そもそも、第1に考えるべきバイオマスの利用は廃棄物利用である。その意味では、日本でも建築廃材や黒液の利用は十分に進んでおり、引き続きしっかりと有効利用していく必要がある。 他方、現在利用されていない固体バイオマスとしては、林地残材を除いては、樹皮や剪定枝などがある。とくに剪定枝は、都市部を中心に、年間50万dry-t(水分50%とすれば140万m3程度に相当)発生していると推計されており、堆肥などとして有効利用されている場合もあるが、多くが廃棄物として焼却処分されている※2。さらには、現在ほとんど利用されていない、稲わらなどの農作物非食用部も大きなポテンシャルを持っている※3。 このように、廃棄物利用、農業系も含めたその他の未利用の固体バイオマス利用の推進を、地域の事情に配慮した上で適切に実現していくことが必要である。

熱利用:固体バイオマス利用の進む道

さて本稿では、主に発電利用について検討を行ってきたが、本来、バイオマスは熱利用をメインに進めるべきものである。したがって、発電所の計画に当たっては、熱電併給を基本に検討することが望ましく、すでに建設されたものについても、熱利用を少しずつ進めていくことにより、20年後のFIT終了までに、熱の売り上げを増やし、発電コストを下げていくことが自立化に向けて必要である。 また、発電などの比較的大きなボイラでは、建築廃材や剪定枝など、質と価格が低いバイオマスを積極的に使っていくことで、発電コストを下げることができる※4。逆に森林由来のバイオマスには、建築廃材などと比較して、灰分が少ない、危険な化学物質を含まないなどの特徴があり、小規模なボイラの燃料に適している。イギリスでは再生可能エネルギーによる熱生産に対する補助を行うRenewable Heat Incentive(RHI)という制度により、すでに2万台のボイラが導入され、そのうち8割以上が200kW以下の小型ボイラとなっており、日本でも十分大きな市場が期待される※5。 このようなことを考えると、森林系バイオマスが多く存在する中山間地域では、小型ボイラを中心に良質のチップを供給するという戦略を採用することが理にかなっているといえよう。したがって、目指すべきは分散型の設備配置であり、市場形成のため、適切な技術普及のために、人材の育成、ボイラの規格化など総合的な政策が必要とされている。

※ 1  ドイツのFIT 制度(EEG) で支援されるのは2 万kW までであり、大規模なものや石炭混焼は含まれていない。また日本では、石炭混焼のバイオマス比率を考慮した容量が含まれていることに注意が必要である。
※ 2  都市由来植物廃材のエネルギー利用手法等に関する技術資料(平成27年3 月, 国総研資料第845 号)
※ 3  英国Ofgem の資料によれば、実際、イギリスでは400 万t もの麦わらが大規模なプラントで燃料利用されている
※ 4  ただし、発電所が大型化すればするほど、確かに発電効率は向上するが、廃熱の量が膨大となり、使い切ることが困難になることに注意が必要である。
※ 5  DECC(2016)Renewable Heat Incentive quarterly statistical release development to December 2015。ちなみに、日本の木屑炊きボイラの導入台数は2000 台程度である。