特集/持続可能な地域づくりを受け継ぐさらなる「ぐるみ運動」に向けて
~外から見た成果と課題

2017年04月07日グローバルネット2016年11月号

地球・人間環境フォーラム 中村 洋(なかむら ひろし)

地域ぐるみで環境問題に取り組む飯田市を日本国中に印象づけたのが、地域ぐるみ環境ISO研究会と「南信州いいむす21」の存在である。活動を支えたのは企業、行政など28事業所から参加する42人のスタッフたちだ。

地域ぐるみで環境問題の取り組みを点から面に広げようという萩本範文さんの高い理想を具体化してきた熱心なスタッフの存在を忘れてはならない。中心となってきたのは行政や他の企業との絆を深めてきた沢柳俊之さん(多摩川精機)、豊かな発想と行動力で活動を引っ張ってきた小林敏昭さん(飯田市)、そして研究会のメンバーたちである。彼らはISO 14001に比べて費用もあまりかからず、簡易に取り組める南信州独自の中小事業所向け環境マネジメントシステム(EMS)である「南信州いいむす21」を構築し、普及活動から認証時の審査や助言などを行い、イベント開催やメールニュースの発行などにより点から面へと活動を広げ、飯田市を環境モデル都市(2009年指定)として全国に知らしめる一翼を担ってきた。

量より質を追求

「南信州いいむす21」を取得したのは現在60事業所。全国展開している中小事業所向けのEMSと比べて数は多いとはいえないが、地域独自ならではの取り組みとなっている。例えば自動車教習所では、研究会メンバーがエコドライバーの育成を提案し、それが教習所のEMSに組み込まれたという。また、認証取得は公立高校にまで広がっているが、数年で生徒や教員が入れ替わってしまっても、認証取得時に在籍し、地域で就職した卒業生が研究会メンバーとなり、サポートを行うというサイクルが成り立っている。地域に住み、事業所の事情も知り、ISO 14001の審査資格を有する研究会メンバーが審査や助言をすることで、「南信州いいむす21」を地域独自の強みを生かした、質の高いEMSに育て上げてきた。

認証を取得するにも認証するにも苦労は大きい。そのため、認証取得時に南信州広域連合長である飯田市長から直接証書を受け取れ、新聞に掲載されることもあるなど達成感を得られるようになっている。また、研究会メンバーは異業種のさまざまな取り組みを知ることができるなど、苦労を上回る楽しさも得られるという。

さらなる「ぐるみ運動」に向けて

一方、課題も残されている。例えば認証取得数が60にとどまっているのは、量より質を追求しているため認証や助言を行える専門性の高い人材が不足しているためである。今後、活動を引っ張ってきた人から次世代にバトンが受け継がれていくと、さらに大きな課題となる。

「南信州いいむす21」には「初級」「中級」「上級」「南信州ISO宣言」の4段階あるが、今後は最上位の認証を取得した事業所は自社でのEMSを継続するだけでなく、他の事業所を支援し、面的に広める側に回ることが必要ではないだろうか。そのためには事業所の経営者が地域貢献の思いを強くし、「ぐるみ運動」を自ら引っ張るという気概が必要だろう。

また、研究会設立に関わった主要メンバーにも当時は飯田に本社があったが、別の地域に本社がある企業に吸収・統合されたり、地方工場の位置付けが下がるなどの変化が生まれている。そのような事業所は地域独自の意思決定がしにくくなり、地域貢献に時間や労力を割きにくくなっているという。地方に工場や事業所を持つ経営者は、地方の人材などの資源を使わせてもらっているのだから、地方のポテンシャルを高めることに積極的に貢献することは当たり前だという認識を強く持ってもらいたい。

さらに、飯田は公民館を中心とした地域づくりが活発である。しかし、地域ぐるみ環境ISO研究会では、企業や公的機関以外との連携はあまり行っていない。今後はEMSなど事業所による環境改善活動にとどまらず、公民館やNPO、小・中学校、農業団体、観光団体など地域の多様な主体と連携した、文字通り「地域ぐるみ」での環境問題への取り組みへと発展させる時が来ているのではないだろうか。

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