環境条約シリーズ298植物遺伝資源条約下の標準素材移転契約(SMTA)の法律専門部会

2017年01月15日グローバルネット2017年1月号

前・上智大学教授 磯崎 博司

 

2016年11月14?15日にローマにおいて植物遺伝資源条約の下の標準素材移転契約(SMTA)の改正案(本誌2016年3月)について、法的観点から検討を行う専門部会が開かれた。

そこでは、以下の各項目が条約に適合するか否かが検討項目とされた。①SMTAの6条8の削除、②知財権設定の有無に基づく支払い料率区分、③個別資源支払いを含めず包括登録者制度(SS)の支払いに限定すること、④SSの支払い方式(過去3年間の販売額およびライセンス収入の平均に基づく年払い)、⑤登録簿情報の公開、および⑥原産地への復元移転にはSMTAは不必要とすること。

①については、条約12条4がSMTAには条約13条2(d)(ⅱ)を含めるよう義務づけているため、13条2(d)(ⅱ)を写しているSMTAの6条7または6条8の削除には、13条2(d)(ⅱ)の改正が必要との指摘もあった。最終的に、13条2(d)最終段落は12条に基づかない理事会の改正権限を黙示的に認めているため、条約改正なしに削除可能と判断された。また、その権限行使に関する「条約発効後5年以内」という条件は、5年以内に着手されていれば良いと判断された。

②については、知財権を設定した資源利用「方法」か否かに基づく支払料率区分は条約13条2(d)最終段落に適合しないが、そのような方法の資源利用「者」か否かに基づく区分であれば適合と判断された。

③については、SSは利益配分制度であり、個別資源支払いを含めず包括支払いのみにすることは条約適合と判断された。ただし、取得料の課金は条約12条3(b)が否定しているため、商業利用による利益の配分支払いであることを明確にすべきとされた。

④については、返金なしの前払いのような取得課金と見なされる方式は含めるべきではないとされた。

⑤については、登録者情報およびシステム運営上必要な情報の公開は問題ないと判断された。個別の利用情報は含まれないことも確認された。

⑥については、条約適合と判断された。

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