NSCニュース No.106/2017年3月NSC勉強会 報告(その1)

2017年03月15日グローバルネット2017年3月号

オルタナ総研所長・主席研究員、NSC幹事 川村 雅彦(かわむら まさひこ)

 

NSC主催の「第2回 中長期のCO2排出量削減目標設定企業事例報告」が2月13日、地球・人間環境フォーラム京橋分室にて開催された(25名参加)。当日は大成建設とコニカミノルタの事例が紹介されたので、その概要を報告する。

なお、次世代に向けて低炭素社会の構築を目指す全国各地の低炭素な活動を表彰する「低炭素杯2016」(小宮山宏委員長)において、2050年の二酸化炭素(CO2)削減目標をコミットした企業を表彰する「ベスト長期目標賞」を10社が受賞したが、両社はそのうちの2社である。

大成建設:建設業の環境サステナビリティとは?

ゼネコンは建造物を顧客に納入するが、製造業ではなくサービス業である。その要諦は「安全・品質・工期・コスト」であり、そこから経営と環境の関係を解きほぐして、環境目標を導き出した。近年、CSR・環境のさまざまな動きがある中で、「環境」の視点が大きく変わった(地域から地球へ、個の利益からサステナビリティへ)からである。

「安全・品質」は法規制要因であり、公害対応の法令順守から省エネ・環境税へと拡大した。他方、「工期・コスト」は環境面から工事計画・工法・調達に関わる物理的要因であり、災害・気象・気温にも考慮せざるを得ない。さらに、4項目すべてに関係するものとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資・非財務情報開示・第三者保証が外部評価要因として登場した。

この分析に基づき、「環境経営」の取り組み分野として低炭素社会、循環型社会、自然共生社会の実現を掲げた。その根底には、環境リスクの認識・分析⇒環境経営のPDCA⇒環境配慮技術・取り組みの推進⇒持続的な事業機会の創出という考え方がある。

「あるべき未来」の姿として、中長期目標「TAISEI Green Target」を2013年度に策定した。2050年の状況を想定し、分野別にバックキャストによるストーリーとして、2050年目標と2020年目標を設定した。2050年のCO2排出量については、施工と建物のいずれも1990年比80%削減を目指す。

コニカミノルタ:取引先や社会に広がる環境経営

コニカミノルタは、2050年を見据えた長期環境ビジョン「エコビジョン2050」を2009年に設定した。その要点は次の3点。すなわち、①製品ライフサイクルのCO2排出量を、2050年までに2005年度比80%削減②地球資源の有効活用の最大化と資源循環③生物多様性の修復と保全である。

CO2排出量の目標については、なぜ80%削減としたのか。まず2050年に人類全体が排出できるCO2量を、地球が許容できる自然吸収量(114億t)の水準に抑えることが前提となる。それを国連の予想世界人口92億人で割ると、年間一人当たり排出量を2004年の7.66t/人から2050年の1.24t/人に削減する必要がある。この削減幅が約80%となる。

このビジョンを実現するためのマイルストーンとなるのが「経営計画2016」に連動する「中期環境計画2016」である。CO2排出量については、2016年度までに2005年度比で40%削減することを目標としてきたが、これは達成できる見込みである。

なお、製品ライフサイクルでは調達・生産・物流・販売・使用の段階に取り組むが、実効性のある環境経営とするべく「3つのグリーン活動」、すなわち、グリーンプロダクツ、グリーンファクトリー、グリーンマーケティングを展開している。

(川村 雅彦/オルタナ総研所長・首席研究員、NSC幹事)

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