環境条約シリーズ 304種の保存法の改正 象牙事業者には登録を義務付け

2017年07月20日グローバルネット2017年7月号

前・上智大学教授
磯崎 博司

絶滅のおそれのある野生動植物種(希少種)の保全については、近年、積極的な対応とそのための制度整備が求められている。

国際希少種については、違法個体への登録票の付け替えや無登録象牙の取引などの不正事例が指摘されており、取り締まりの強化や事業者登録制度の導入が求められている。この点は、ワシントン条約の第17回締約国会議(2016年)において採択された象牙の国内市場の閉鎖に関する決議とも関わりがある。その決議には、関連業者の許認可制度の導入が含まれていた(本誌2016年12月)。

他方、国内希少種については、その指定にあたっての科学性の確保と公衆の参加、違反の場合の取り締まりの強化、二次的自然に分布する種の総合的保全、調査研究や環境教育の場合の捕獲や譲り渡しは規制しないこと、また、生息域外保全への動植物園による協力体制の確立などが求められている。

こうした状況を受けて種の保存法が改正され、6月2日に公布された。国際希少種については、その個体登録に有効期限と更新手続きが新設された。象牙事業者については、登録を義務付ける「特別国際種事業者」の制度が新設された。また、実務上可能かつ必要な種には、個体識別のための措置が義務付けられた。

他方、国内希少種については、その指定の際の公衆提案のための制度、その保全に協力する動植物園を認定するとともにその譲り渡し規制を免除する制度、土地所有者の把握が困難な土地に希少種の保護のために立ち入る際の規定、科学委員会の助言を義務付ける規定が、それぞれ新設された。また、「特定第二種国内希少野生動植物種」が新設され、当該種の捕獲や譲り渡しは販売・頒布の目的でなければ認められるとされた。なお、以前より懸案とされてきていた措置、例えば、違反行為の対象とされた個体や当該行為で用いられた機器・設備などを没収する規定の導入には至らなかったが、捕獲や譲り渡しの規制に違反した場合の措置命令が新設された。

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