ホットレポート1再生可能エネルギーの導入拡大における課題

2017年12月15日グローバルネット2017年12月号

環境省参与
奥主 喜美(おくぬし よしみ)

再生可能エネルギーの動向

再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出しない電源であり、資源の乏しいわが国のエネルギー自給率の向上と化石燃料の輸入削減にも寄与するエネルギー源として期待されている。2013 年の環境省の試算によれば、わが国全体の再生可能エネルギーの導入ポテンシャルは、二酸化炭素(CO2)に換算して21億CO2 t とされており、2015 年度のエネルギー起源CO2 排出量の約1.8 倍に相当する。

(1)導入状況

世界の再生可能エネルギーの導入量はこの10 年間で2 倍以上に拡大し、2015 年には1,965GW まで増加している。この5 年間でみるととくに風力、太陽光の導入量が拡大している。国別でみると、ドイツ、中国で導入が進んでおり、2030 年には再生可能エネルギーが占める割合は、中国で29.7%、ドイツでは50%になる見込みとなっている。

わが国では、2015 年7 月に策定された長期エネルギー需給見通しにおいて、2030 年度の再生可能エネルギーの導入水準を全体で約2,366 億kWh(総発電量の22 ~ 24%)、太陽光749 億kWh、風力182億kWh 程度を見込んでいる。現在のわが国における再生可能エネルギーの導入量は、固定価格買取制度(FIT)の導入以来、とくに太陽光発電を中心に急速に拡大しており、2015 年の導入量は全体で1,676 億kWh(総発電量の17%)であり、太陽光発電360 億kWh、風力53 億kWh となっている。

(2)経済効果

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によれば、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を2030 年までに2010 年比2 倍の36%にすると、世界全体のGDP は最大1.1%、金額にして約1 兆3,000億ドルが増加し、再生可能エネルギーによる雇用は、現在の920 万人から2,440 万人に増加すると試算されている。こうした効果は、とくに化石燃料の輸入国で大きくなると指摘されている。これに対応して、世界の再生可能エネルギーに対する投資額は、すでに火力発電を超えており、太陽光、風力への投資額が伸びている。国、地域別でみると、近年では、中国一国でヨーロッパを上回り、インド、アジア、オセアニアとともに、投資額が増加傾向にある。わが国では、FIT を契機として、再生可能エネルギーへの投資額は急速に拡大し、2015 年には3.67 兆円に達している。

2016 年の環境省の「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」によれば、わが国の再生可能エネルギー関連産業の市場規模(再生可能エネルギー売買を含まない)は、FIT を契機に急拡大し、2014 年度には、約5.1 兆円に達している。また、再生可能エネルギー関連の国内に帰属する付加価値額は、2014年度には約2.2 兆円となり、2 年間で2 倍以上増加した。太陽光、風力、水力、地熱などの再生可能エネルギーは、その導入ポテンシャルは、都市部より地方部において高く、その導入促進は、地方部におけるエネルギー収支の改善による足腰の強い地域経済の構築、再生可能エネルギーに関連する事業などによる新たな雇用創出など、経済的な波及効果も考えられる。

個別再生可能エネルギーの課題

再生可能エネルギーにはそれぞれ課題がある。例えば、風力発電は、再生可能エネルギーの中では経済性が高いものの、風力に左右されるため、適地が限られること、送電線の増強や系統不安定化に対する対策が必要となることなどが特徴として挙げられる。

太陽光発電は、事業準備期間が短く、事業リスクも他の再生可能エネルギーに比べ小さい点が普及の大きな要因となっている。また、発電の際にCO2 が発生せずそういった点では環境負荷が小さいが、日射量に発電量が左右されるため、系統負荷が大きい。

水力発電(FIT の対象となる3 万kW 未満のもの)は、施設の老朽化などにより発電量は停滞している。

バイオマス発電(植物由来のもの)は、太陽光発電や風力発電と異なり、人為的に発電量をコントロールすることが可能である。また、建築などに向かずに残される未利用材など、利用されずに捨てられる資源を有効利用できるが、その安定供給が課題となる。

地熱発電は、わが国は世界第3 位の地熱資源を有するとの評価もされており、長期間にわたる供給が可能となる。また、地熱エネルギーを使うため、太陽光や風力と異なり、天候や季節による発電量の変動が少なく、安定的な発電が可能である。他方、日本の地熱資源の約80%が国立・国定公園や温泉地域に立地しており、立地自体が規制を受けるとともに、住民説明や地熱資源の調査を含め、開発に長期間を要する場合がある。また、地熱資源量の把握が困難であり、開発のコストやリスクが高い。

以上、再生可能エネルギーは、それぞれのエネルギーごとに異なる特徴があるが、総じてみると、①系統の混雑②自然変動に対する調整③案件開発に伴う環境への負荷の増大、地元社会との不調和などが課題となる。

再生可能エネルギー導入の加速化に向けて

こうした課題を踏まえ、再生可能エネルギー活用を加速させる対策の方向性として、以下の点を本年8月に環境省として発表した(「再生可能エネルギー活用によるCO2 削減加速化戦略(中間報告)」)。

①系統や環境への負荷の少ない需要側で省エネ。畜エネ最大限導入を図ること②需要地と離れている再生可能エネルギーも含めて。わが国の豊富な再生可能エネルギーの供給ポテンシャルを顕在化させて、地域を越えて融通し、活用すること。そのために、洋上風力などの大規模電源から小水力まで、地域主導で自然環境や地元と調和した持続可能な再生可能エネルギー開発を促進すること。また、系統利用の合理化・系統の強化等も重要な課題であること。

①に関しては、「技術向上・コストインセンティブ」と「地域のエネルギー企業へのインセンティブや資源の投入」が課題とする。前者の技術向上などに関しては、ネット・ゼロ・エネルギー住宅・ビル(ZEH、ZEB)や省エネ改修への支援、自家発電自家消費のCO2 削減価値の評価、窒化ガリウムなどの革新的省エネ技術の開発・実装の支援、再エネ水素ステーションなど水素利用の促進、国立公園施設など直轄施設での率先導入などが、後者の企業へのインセンティブに関しては、民間資金を呼び込む財政支援、高い再エネ目標を掲げる企業(RE100 など)の事業参加の促進、地域のエネルギーセンターとしての廃棄物処理施設などでの発電の促進が挙げられる。

②に関しては、「地域の自然環境や地元と調和した持続可能な再生可能エネルギー事業案件の開発の円滑化」が課題となる。施策としては、質が高く効率的な環境アセスメントの実施、再生可能エネルギーのポテンシャルや環境に関する情報の整備、環境保全と両立した再生可能エネルギーの導入を促進するためのゾーニングの制度化を見据えた検討などが挙げられる。また、地域の再生可能エネルギーのポテンシャルを活用する技術の普及、事業リスクの軽減が必要であり、再生可能エネルギーの地域経済へのプラス効果や需給への影響などの分析ツールの整備、再生可能エネルギー事業の収益を地元に還元するメカニズムの構築、地域再生可能エネルギー資源の持続可能な利用の促進が挙げられる。再生可能エネルギーの導入促進については、これまでもさまざまな予算措置などを講じてきたところであるが、上記の中間報告も踏まえて、平成30 年度重点施策において、新規事業として、家庭部門からのCO2 削減を目指す「ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)化等による住宅における低炭素化等による住宅における低炭素化促進事業」や「太陽光発電の自立化に向けた家庭用蓄電・蓄熱導入事業」、民間資金の再エネ、省エネへの大量導入を促していく「グリーンボンドや地域の資金を活用した低炭素化推進モデル事業」、再生可能エネルギーの導入と適切な環境配慮を両立させることを目的とした「環境に配慮した再生可能エネルギー導入のための情報整備事業」を要求している。本稿が世に出る頃には、おおむね結論が出ていると思われるが、注目したい。

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