環境条約シリーズ 310船舶に対する入港国管理覚え書き

2018年01月16日グローバルネット2018年1月号

前・上智大学教授
磯崎 博司

船舶に対する入港国による規制管理(PSC)に関する覚え書きは、国際海事機関(IMO)の下で世界9地域で成立している。最初のパリ覚え書き(ヨーロッパ・北大西洋)に続いて、東京覚え書き(アジア・太平洋)(本誌1997年7月)、アクエルド・デ・ビーニャデルマール覚え書き(ラテンアメリカ)、カリブ海覚え書き、アブジャ覚え書き(西部・中部アフリカ)、黒海覚え書き、地中海覚え書き、インド洋覚え書き、リヤド覚え書き(ペルシャ湾)が締結された。この他、アメリカの沿岸警備隊が同様の規制管理を行っている。

これらのPSC覚え書きは、それ自体が規制内容を定めているのではなく、船舶に関する諸条約の規制内容に基づいて、入港船舶に対する検査、監視、取り締まりを行っている。2017年10月下旬にロンドンのIMO本部において、通算で7回目に当たる、PSCに関するワークショップが開かれ、協力、調和、情報共有の拡大強化など広範囲にわたる勧告が採択された。

情報共有との関わりでは、遵守年次報告や検査キャンペーン結果などのPSC情報がIMOの下の国際文書の実施に関する第3小委員会へ提供されれば、IMOにとって大きな助けになる。データの相互交換も、世界海運統合情報システム(GISIS)を通じてPSC情報が普及することにつながる。また、IMOおよび国際労働機関(ILO)での実効的なデータ管理のために、入港国への報告手続きの単一化が検討され、GISISを通じた単一窓口の構築に向けて、ILO事務局との連携を、IMO事務局に要請する勧告が採択された。

その他、統計分析作業の向上、その形式の共通化、および、黒・灰・白リスト方式を止めて個別船舶リスク記録方式へ移ることが合意され、国際基準未達成の船舶に関する共通リストの作成と維持が勧告された。また、IMOのPSC手続に含まれている「優良実行綱領」の支援のために「船長へのPSC書簡」の書式を策定することが第3小委員会に対して要請され、GISISを苦情申し立てに使うことも勧告された。

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