特集:目指せ 再生可能エネルギー100%~企業、大学、自治体の取り組み「自然エネルギー100%大学」を目指す!

2018年01月16日グローバルネット2018年1月号

千葉商科大学政策情報学部 教授
鮎川 ゆりか(あゆかわ ゆりか)

2017年11月13日、千葉商科大学は、市川キャンパスで使われているエネルギー量を、野田市に所有する旧野球部グラウンドに設置したメガソーラーの発電量と同量にすることを宣言した。2018年には電力量で、2020年にはガスや熱を含む全エネルギーの使用量を、野田のメガソーラーの発電量と同量にすることを目標に掲げ、「自然エネルギー100%大学」を目指している。

取り組みのきっかけ

2014年7月、大学の温暖化対策をアンケート調査で調べ、ランキングを行っていた環境NGOのエコ・リーグから、「千葉商科大学のメガソーラーは大学単体では日本一で、大学の消費電力の6割以上を発電する。こうした数字は他大学では見たことがない」と言われたことがきっかけである。

野田のメガソーラーは発電規模2.45MWで2013年に設置、2014年4月より稼働し、年間発電量予測では一般家庭777世帯分の発電量である。東京ドーム約1個分の面積にソーラーパネルが敷き詰められた大規模なメガソーラーは、青く光って、遠くから見ると池か湖のように見える(写真1)。

写真1 千葉商科大学が千葉県野田市に所有するメガソーラー

消費電力の6割以上に相当する発電量があるとしたら、100%にすることも可能ではないか。本大学は5学部しかなく、在学生・教職員合わせて6,462人(千葉商科大学概要(2017 年5 月) より)。この小規模な大学に日本一大きなメガソーラーがある、ということは最も「自然エネルギー100%」に近い大学といえる。

100%へ向けた「可能性調査」

2015年度に出た2014年度の発電量、電力消費量の実績値では、発電量は予想より高く、市川キャンパスの電力消費量の77%に相当した。いよいよ100%に向けた活動を本格化することにしたが、学生や私だけでは手に負えない。幸い経済産業省の「可能性調査」の補助金が得られたため、外部専門家の力も借りることにし、専門家委員会を設置。学長(当時)や政策情報学部長(現学長)、庶務課などもメンバーに入った。

学生は「学内インターン」の形でこの調査を行った。本大学の建物はすべて東日本大震災前に建てられたもので、LED照明は1本もない。これをすべてLED化したら、かなりの量の電力消費量を減らすことができる。そこで、学生はどんな照明がどこにいくつあるかなどを、目視で数えた。

その他、冷暖房期にドアや窓が開けっ放し、誰もいない部屋に照明がつけっ放し、というような「温湿度・無駄探し」を赤外線温度画像カメラや放射温度計などの機器を用いて、すべての建物で調べた(写真②)。使われていない教室の照明がつけっ放し、というのが最も多く、その他にも、さまざまな「無駄」を発見した。

写真2 学生による、赤外線温度画像カメラなどの機器を使った調査

補助金を得て行う省エネ対策はともすれば、高価なハードウェアの導入が条件になるが、こうした日常的なエネルギーの無駄な使い方や運用面での改善には目が向かない。しかしハードとともに重要なのは、こうした「省エネ」「エネルギーの効率的な利用」である。

学生は1年生を中心とした全学部700人以上の「省エネ意識アンケート調査」も行った。「省エネ」という言葉は大半の学生は知っていたが、実際に大学の中で「省エネを意識する」ことはない。また、「最も電気を多く使っていると思える建物」について聞いたところ、最も回答の多かったのは自分たちがよく使う建物で、実は毎日終日使われている事務棟や図書館が最大消費棟であることに気が付いていないことは興味深い結果であった。

さらに、省エネ活動を促すアイデアを出し、それに対して他のゼミ学生の考えを聞く「フォーカスグループ」を行ったところ、最も人気のあったのは、「節電週間」を定期的に設け、学生の省エネ意識を高めるというものであった。

学生は各調査に対し、それぞれ報告書を提出したが、多少の謝金が得られたこともあり、調査は「仕事」となった。学生活動を促すには何らかの「得」が必要だ。

一方、専門家委員会では、大学側から提供された各種データを精査し、現場調査などを行った結果、学生の省エネ活動を加えると「自然エネルギー100%大学」は実現可能、と最終的な結論を出した。

学長プロジェクトで全学的取り組みへ 地域エネルギー会社も設立

2017年度、原科幸彦(はらしな さちひこ)が学長に就任し、この取り組みは「学長プロジェクト」に指定され、全学部の教員、学生、大学事務局、理事会が一体となって取り組む体制ができた。また、この「自然エネルギー100%大学」達成を大学創立90周年となる2018年度までに実現させることになり、大学側の意思決定も一挙に進んだ。

まず、全建物の照明のLED化が9月に実現した。さらに、不足分を補うため、野田の敷地内のソーラーパネル増設が即決即断で理事会を通った。2018年3月までに設置される予定で、これが完成すると、大学が消費している電力量以上の発電量が見込まれ、まずは「電力だけ自然エネ100%大学」が実現することになる。

一方、LED化については国の補助金が得られたが、半分は大学が出資する。また、ソーラーパネルの増設にもお金がかかるため、大学側の負担を引き受けるリース会社として2016年5月に(株)CUCエネルギーを設立し、リース方式でこの事業を展開している。CUCエネルギーは、いずれ地域エネルギー会社として、地域のESCO事業や、地域にエネルギーを供給する事業への構想もある。本大学の得意とする「商い」をカギに、地域密着型の小規模分散型エネルギー社会の実現への第一歩を踏み出したのである。

今後の課題

この事業に学生が継続的に参加し、学生の学びの場とするため、学生が主体的に活動するための学生組織が何らかの形で発足する必要があるが、これをいかにして起こすかが次なる大きな課題である。

「学生の活動」による、キャンパス内のさらなるエネルギー消費削減努力がないと、教育機関である大学の取り組みとしては意味がない。エネルギー消費削減は、ハード面では資金さえ準備できれば可能だが、機器を上手に使い、エネルギーを効率的に利用し続けるには、大学というコミュニティで生活する人々が意識を持たないと、宝の持ち腐れになる。その意味で、学生による、エネルギーの効率利用に向けた全学への普及啓発活動は欠かせない。学生には、単位や資格、あるいは就活で大学で学んだ経験が「得」になることは、現鮎川ゼミ生は実感している。

また、スマホなどでゲーム感覚で参加できるアプリなどがあれば、活動が活発化し、定着する可能性がある。ITを用いた新たな「エネルギー効率利用の見える化」は、今まさに求められていることではないだろうか。今はそれらを模索している段階である。

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