INSIDE CHINA 現地滞在レポート~内側から見た中国最新環境事情第47回 新時代の中国の特色ある環境対策

2018年04月16日グローバルネット2018年4月号

地球環境研究戦略機関(IGES)北京事務所長
小柳 秀明(こやなぎ ひであき)

3月5日から開催された第13期第1回全国人民代表大会(「全人代」、日本の国会に相当)では憲法修正や国務院(日本の内閣に相当)の大規模な機構改革および関連人事が行われ、今後5年間の新体制が固まった。

憲法修正では序文に「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」という文言が追加され、毛沢東、鄧小平とともに憲法上にその名前が記されることになった。また、同じく憲法序文に「生態文明」という文言も新たに追加された。この理念は11年前に開かれた中国共産党第17回全国代表大会で初めて登場し、「この理念を(今後)全社会にしっかりと樹立させる」としていたが、6年前の第18回党大会では中国共産党規約に「生態文明の建設」の文言を追加し、昨年10月の第19回党大会では引き続き生態文明体制改革を加速することを明示し(本連載第17回2012年12月号および第45回2017年12月号参照)、そして今回の憲法修正へとつながっている。

政府機構改革では従来の環境保護部(日本の「省」に相当)を廃止して、新たに生態環境部を設置した。生態環境部はこれまでの環境保護部の業務に加えて、国家発展改革委員会の気候変動対策および(温室効果ガス)排出削減の業務並びに国土資源部など五つの政府部門から水環境保全に係る業務を加えた。また、国土資源部を廃止して自然資源部を設置した。これら二つの部の設置が生態文明体制改革加速の目玉といえよう。

汚染物質排出許可制度の施行

日本ではあまり報告されていないが、実は中国では汚染物質排出管理に関する総合的な制度樹立に向けて着々と整備が進んでいる。汚染物質排出許可制度がそれだ。今回は少し誌面を割いて紹介してみたい。

汚染物質の排出許可制度は水汚染物質の排出総量規制などを管理する重要な手段として古くから試行的に実施されてきた歴史を持つ。これらの経験を基礎に、2015年1月から施行された新環境保護法でも、国は法律規定に従い汚染排出許可管理制度を実施する(第45条)と規定した。また、大気汚染防止法、水汚染防止法でも汚染排出許可証の取得などに関する手続きを定めた。そして、国務院は統一的に実施するため、2016年11月に規制対象汚染物質に係る排出許可制実施計画に関する通知を出し、これを受けて早速環境保護部は同年12月に汚染排出許可証管理暫定施行規定を、そして今年1月には汚染排出許可証管理規則(試行)を公布施行した。

これがどのような制度であるか一口に説明するのは難しいが、私は日本の関係者には、昭和40年代にできた大気汚染防止法のばい煙発生施設設置届出制度や水質汚濁防止法の特定施設設置届出制度に似た制度だと説明している。こう言うと、何だ、中国は半世紀も遅れてようやくこのような制度ができたのかと軽んじられるが、日本の類似制度を数段階もレベルアップした精緻な仕組みで、日本のこれらの制度が50年近く経っても大した進歩がないことを思えば、中国の方が一歩も二歩も先に進んでいる気がする。以下に幾つか私が注目した点を紹介する。

1.重点管理と簡素化管理

汚染物質発生量・排出量の多い事業者には重点管理を行うが、その他の事業者の管理は簡素化し、管理事務を合理化する。

2.環境影響評価結果の許可証発行への反映

環境影響評価(アセス)文書で記載した関連内容および承認意見の中で出された汚染物質排出に係る主な内容を汚染物質排出許可証(以下、「許可証」)に盛り込まなければならないとした。この結果、アセス文書の内容と結果(承認意見)に法的拘束力が生じる。

なお、中国ではほとんどすべての建設プロジェクトがアセスの対象になっている。

3 .全国汚染物質排出許可証管理情報プラットフォームの構築と情報公開

環境保護部はプラットフォームの構築、運用、メンテナンス、管理を担当する。許可証の申請、受理、審査、発給、変更、延長、抹消、遺失再発給は同プラットフォーム上で行わなければならない、汚染物質排出事業者の自主モニタリング、実施報告および環境保護主管部局の監督管理法律執行情報は同プラットフォーム上に記載し、そして本規則の規定に基づき同プラットフォーム上で公開しなければならないとした。

4.許可証に記載されるべき内容

これは日本のばい煙発生施設や特定施設の届出内容とほぼ共通しているが、排出口からの排出以外に無組織排出源の位置や数、排出汚染物質の種類、許可排出濃度、許可排出量を記載させる点が興味深い。

なお、許可排出濃度は許可証を発給する地方政府環境保護部局が定めるとした。

5.モニタリング計画の作成など

汚染物質排出事業者は、許可証申請時に自主モニタリング技術指針により、自主モニタリング計画を作成しなければならないとした。計画には以下の内容が含まれる。

  • ① モニタリングポイントおよび見取図、モニタリング指標、モニタリング頻度
    ② 使用するモニタリング分析方法、サンプリング方法
    ③モニタリングの精度保証と精度制御の要件
    ④ モニタリングデータの記録、整理、保管の要件など
  • また、モニタリングの生データを保管しなければならないとした。さらに重点管理事業者に対しては、許可証の規定に基づき自動モニタリング設備を設置し、そして環境保護主管部局の監視設備とネットワークで接続しなければならないとしている。

    6.許可証の有効期限

    初回発給の許可証の有効期限は3年、延長更新した許可証の有効期限は5年とした。国務院などが合同で発表した産業政策リストの中に組み込まれ淘汰が計画されている立ち後れた製造プロセス設備または旧式製品に対して、許可証の有効期限は淘汰計画期限を超えてはならないとした。

    日本の届出制度では変更や廃止をしない限り永遠に有効であり、火力発電所などではリプレース時の排出枠稼ぎのため、休止などの姑息ともいえる措置を取ることがあるが、中国ではこれが許されない。

    7.重点管理事業者による事前自主情報公開

    重点管理実施対象の汚染物質排出事業者は許可証を申請する以前に、承諾書、基本情報および申請予定の許可事項を社会に向けて公開しなければならないとした。公開の手段は全国汚染物質排出許可証管理情報プラットフォームなどを含めた公衆の認知に便利な方式を選択しなければならず、公開期間は5業務日を下回ってはならない。

    8.実施報告の作成と公開

    汚染物質排出事業者は許可証が定めた実施報告(月報、四半期報、年報)の内容と頻度の要件に従って、実施報告を作成しなければならないとした。そして、毎年、全国汚染物質排出許可証管理情報プラットフォーム上で汚染物質排出許可証年度実施報告を記入、提出、公開しなければならないとした。

    9.その他

    環境保護主管部局の立ち入り検査の際の注意事項などを規定したほか、公衆やメディアなどが事業者の汚染物質排出行為に対する監督を行うことを奨励している。そして事業者は直ちに汚染物質排出情報を公表し、積極的に公衆の監督を受けなければならないとした。

    以上の措置を現在の日本の状況と比べるとどうだろう。全国管理情報プラットフォームの構築、重点事業者のオンライン監視と情報公開などは日本にもない進んだ制度だ。半世紀前、公害経験を経て形成された環境先進国日本の制度はもはや過去のものになろうとしている。これからの世界の主流と手本は「新時代の中国の特色ある環境対策」の時代に替わろうとしているのではないだろうか。日本の発憤を期待したい。

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