環境条約シリーズ 314ヨーロッパ景観条約議定書

2018年05月15日グローバルネット2018年5月号

前・上智大学教授
磯崎 博司

ヨーロッパ評議会(本誌1999年5月)は、世界に先駆けて景観条約を採択し(本誌2001年3月)、運用してきている。類似の内容を有する世界遺産条約と比べて、この景観条約は、国家性を薄めようとしている点に特色が有る。それは、この条約が、地元の固有性、伝統および日常性に価値を見いだしていること、また、地元参加を重視していることに現れている。

そのような地元価値と地元参加に基づく先駆性に鑑みて、この条約をヨーロッパ地域外へ広げることが求められた。そのような先例として、同じくヨーロッパ評議会の下のベルン条約(本誌1999年10月)には同評議会の外に広げるための規定があり、実際、ベラルーシ、ブルキナファソ、モロッコ、セネガル、チュニジアが締約国となっている。これに倣って、景観条約においても同様の取り扱いが可能となるよう、現行条文中でヨーロッパ地域に限定している語句を変更するための議定書が2016年6月15日に作成され、8月1日に批准などのために開放された。

具体的には、前文に「本条約において形成された価値と原則が、希望する非ヨーロッパ諸国へ適用されるようになることを望み、」という文言を追加するとともに、条約加入資格に関する第14条1項において、「ヨーロッパ共同体、および、ヨーロッパ評議会の加盟国ではないヨーロッパの国家」という語句を「ヨーロッパ連合、および、ヨーロッパ評議会の加盟国ではない国家」に変更し、ヨーロッパ限定を外した。

また、条約名称を「ヨーロッパ景観条約」から「ヨーロッパ評議会景観条約」に、目的規定の文言および第3章の表題において「ヨーロッパにおける協力」を「締約国間の協力」に、その他の規定においても、「ヨーロッパレベル」を「国際レベル」に、「ヨーロッパの」を「他の締約国の」にそれぞれ変更した。

この議定書は、すべての締約国による批准などから3ヵ月後の月の初日、または反対通知がなければ批准などの開放から2年後に発効する。今のところ、後者の条件に従い、2018年8月1日に発効の見込みである。

タグ:,