環境の本・送電線は行列のできるガラガラのそば屋さん?
・環境メディア・リテラシー 持続可能な社会へ向かって

2018年05月15日グローバルネット2018年5月号

送電線は行列のできるガラガラのそば屋さん?

著●安田 陽

京都大学大学院の特任教授で風力発電の系統連係問題の専門家である筆者が、再生可能エネルギー普及の壁となっている送電線の空き容量問題に実証的なデータを駆使して切り込んでいる。国際的に見ても立ち遅れているわが国の再生可能エネルギーの利用について、受け入れる電力会社から「送電線の空きがない」「つなげるには億単位の費用が必要」などの消極的な発言が続き、普及の遅れにつながっているが、筆者は「ガラガラのそば屋さん」と疑問を投げ掛けている。

全国の399 の基幹送電線の利用率、実際の空き容量を調べ上げ、「空きがない」というのは、単純にルールや考え方が「今まで通り」の古いやり方で、再エネという最先端の新規技術に対応できていないだけ、と結論付けている。(株式会社インプレス、1,200 円+税)

 

 


環境メディア・リテラシー 持続可能な社会へ向かって

著●ガブリエレ・ハード

筆者はオーストリア出身。米国のスミス大学を卒業し、1997年に来日。立命館大学、関西学院大学などで環境コミュニケーションなどを研究し、現在は関西学院大学社会学研究科教員。

オーストリアで経験したチェルノブイリ原子力発電所事故、来日して経験した2011 年の東京電力福島第一原子力発電所の事故を通じて、政府の秘密主義、電力会社がメディアに与える影響を思い知らされ、メディアに関する読み・書き能力であるメディア・リテラシーの重要性を再認識し、5 年にわたって重ねた研究をまとめたのが本書である。一人称で自らの見分、体験をやさしく紹介しながら、3 部構成で環境メディア・リテラシーの大切さを学術的にひも解いた力作。メディア関係者以外にもぜひ読んでほしい。(関西学院大学出版会、2,200 円+税)

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