環境条約シリーズ 315北極科学国際協力促進協定

2018年06月15日グローバルネット2018年6月号

前・上智大学教授
 磯崎 博司(いそざき ひろじ)

北極評議会の第10回閣僚会合(2017年5月)において、北極科学国際協力促進協定が署名された。それは、参加者による指定地理的区域(IGA)における科学調査の円滑な実施(適時の考慮と決定を含み、すべての必要な手続きのできる限り迅速な処理)を確保するよう締約国に義務付けている。その参加者とは、締約国の科学機関(関係当局、研究所、大学)、および、締約国と共同でまたは代理として行動する契約者・許認可を受けた者・その他の共同事業者である。他方、IGAは附属書Iに示されており、北極海油濁事故対策協力協定(本誌2018年3月)と比べて、各国の対象海域は南へ拡大され、また、陸地が含まれている。さらに、北緯62度以北の公海部分も含まれており、とくに、ベーリング海は全域が対象とされている。

具体的には、以下について円滑化を図ることが定められている。すなわち、参加者の下の研究者・研究施設・資材・標本・データ・設備の入出国、民間研究施設の利用、設備や資材の輸送・保管サービスの利用、IGA内の陸域・沿岸域・空域・海域への到達、IGAにおける大気中の科学データ収集を必要とする共同科学活動、科学情報の取得、科学メタデータの完全で自由な取得、科学データ・データ産物・公表結果の自由取得、それらのデータの配布と共有、教育・研修・訓練の機会の提供と実施についてである。また、海洋科学調査のための申請手続きのできる限り迅速な処理も定められているが、それは、排他的経済水域での外国による科学調査への同意の遅滞防止を、国連海洋法条約が沿岸国に義務付けていることにも対応している。

なお、上記の協力活動にあたっては、知的財産権を保護し公正に配分すべきことが再確認されている。

北極評議会の加盟国(カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、アメリカ)以外の国の研究機関であっても、上記のように締約国との共同事業者であれば参加者として、または、一般的に締約国との個別合意に基づいて、上記の円滑化の恩恵を受けることができる。

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