フォーラム随想医食同源

2018年07月13日グローバルネット2018年7月号

地球・人間環境フォーラム 理事長
炭谷 茂

健康や体力には小さい頃から自信がない。その割に60歳ごろまで健康には特別の注意をしなかった。官庁に勤務していた時は多忙だったが、入院治療が必要な病気にはならなかった。

しかし、60歳を境にがくんと体力が落ちた。何とか健康、体力を回復しようと思って健康に関する本や雑誌をかなり読んだ。

最近テレビでも健康番組は、やたら多い。私と同世代の人が見るからだろう。これで知った健康法を試しても、ほとんど長続きしなかった。

 その中で医食同源という考え方には惹かれた。これは自然の摂理に合致している。薬は、体にとって異物であるので、どんなによく効く薬でも副作用は、避けられない。食品は、この面では安全性が優れているし、取り組みやすい。

健康の3分の2は、毎日の食事によって決まる。若い頃は、無頓着な食生活だった。食べたい物を食べることが健康の証しだと思い込んで、体重の増加も気にしなかった。アルコールも飲んだ。そのツケを今払わされている。

本で勉強すると、食生活を正しくすれば、大きな効果が期待できると確信した。

アルコールは、65歳の誕生日以後一滴も飲んでいない。

砂糖、塩、油は、できるだけ抑制している。専門店のラーメンは、塩と油脂がたっぷり入っているので、10年以上縁がない。コーヒーは、ブラックでないと飲めなくなった。

これらは確かに健康に大変良い影響を与えている。「それで楽しいのか。酒のない人生なんて考えられない」と言う人がいる。しかし、慣れると、これはこれで満足できるものだ。

健康に良いとテレビで紹介された食べ物は、スーパーの売り上げが伸びるが、ひと月も経たないうちに元に戻るらしい。

私も試すことがあるが、効果を実感するうちに止めている。時々逆流性胃炎に悩まされるが、キャベツが効くという番組があった。そこで毎日キャベツを食べたが、改善しなかった。

食品の健康への効果は、体質や年齢など個人差が大きい。私にとって良いと思うことは、他人にも良いとは限らない。以下述べることは、あくまで私だけに当てはまることだ。

納豆の効果は、科学的に証明されている。血液をサラサラにし、血栓の形成を防止し、心筋梗塞や脳卒中の防止になる。

毎日食べているが、数年前、病院で血液の状態の検査を受けたとき、検査していた医師から、「血液をサラサラにする薬を飲んでいるんですか」と聞かれた。この時納豆の効果だと推測した。

8年前、1週間にわたって各地を転々とする大変ハードなスケジュールの出張をした時である。生活のリズムが不規則になり、便秘になった。出張の間、ずっと苦しんだ。移動中の電車の中では脂汗が出てきた。最後の予定地は、急きょキャンセルし、帰京した。初めての経験だった。

その後、便秘にらっきょうが効果的だと知った。あの時のような苦しい思いは二度と味わいたくないので、「駄目でもともと」という考えで試した。私には体質的に合致していたのか、その後便秘の苦しさを味わうことはない。

がんも怖い病気だが、食べ物で予防できればありがたい。

がん細胞は、毎日体で発生し、免疫細胞が攻撃して発症を防いでいる。免疫細胞は、大半が腸で作られるが、それを促すために発酵食品である納豆、ヨーグルト、黒酢と植物繊維である野菜や海藻を毎日たくさん食べている。

効果のほどは計測できないが、効果があると信じて続けている。

他人の野放図な食生活を見ると、「この人は〇〇がんが心配だ」、「脳卒中で倒れるのでは」と思うが、個人差があり、価値観に係るので、絶対に口にしない。

私は、私のために医食同源を実行しているだけだ。

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