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“ソーラーシティ・光州”の建設−計画の概要および成果、今後の課題 リュウ・ヨンビン/光州広域市科学技術課 エネルギー担当事務官 |
1.はじめに
今日、多くの先進都市は、化石燃料の消費抑制や新・再生エネルギー普及の拡大によって石油高価格化時代に対応しながら、地球温暖化問題の主な原因とされる温室ガスの排出削減に寄与する環境調和的な都市建設に努力している。環境汚染およびエネルギー枯渇という問題が、単なる国家としての問題というより、国際的な問題として認識されつつある各種の国際環境協約(Green
Round)時代のなかで、今日われわれは生きている。とりわけ、地球温暖化防止のため1992年6月の国連環境開発会議で採択された気候変動枠組み条約で、環境汚染の主要な原因として示された温室効果ガス問題に対する国際的な協定に排出規制などが定められる場合、今まで準備を多少おろそかにしていた韓国は、それなりの経済的負担を強いられると思われる。
開発途上国として経済開発を最重要視しなければならなかった韓国政府は、その間の石油低価格化政策を通じて、産業優先政策を追求してきた。したがって環境調和的な都市建設といった政策は、エネルギーの節約と高効率化等に対する投資を障害する要因であった。しかし最近は、石油価格の高騰が続いているためにエネルギーに対する重要性を深く認識し、代替エネルギーなどの再生可能なエネルギー開発に関心を持ち始めた。これら中央政府のエネルギー政策(2011年までに代替エネルギー供給5%達成)の変化に伴い、光州市は地域資源を活かした自主的なエネルギー計画を策定、「ソーラーシティ・光州(Solar
City Gwangju)建設計画」に至った。
昔から光州は“光の都市”というローカルな名称で呼ばれており、光の利用と非常に密接な関係がある。現在でも、光州市の主力産業として推進している産業には、やはり“光”という文字が使われている。このローカルな名称とともに、韓国エネルギー技術研究院が太陽エネルギー蓄積量を調査した結果、1日の日射量の全国平均が4,441kcalなのに対し、光州市は5,394kcalと、平均より21%高いばかりでなく、日射量の減少も少ないという、太陽エネルギー利用の最適地という評価を受けた。
ソーラーシティ・光州建設計画は、このような地域内の自然環境条件を最大限に活用しつつ、都市自体を環境に調和的なグリーン都市として建設しようというもので、これを通じて光州を持続可能な地域としてつくりあげ、気候変動枠組み条約など21世紀の国際環境問題に能動的に対処していこうというものである。また、地域の特化産業として推進している光産業と連携させた新エネルギー関連産業の育成・施策を進め、未来産業に発展させるべく、環境調和的な先進都市建設に寄与しようというものでもある。
2.“ソーラーシティ・光州建設”計画
中央政府の新・再生エネルギー普及拡大政策に応えながら、2004年現在0.5%の代替エネルギー供給比重を2011年までに1%にし、2011年見込み需要の約8%の省エネルギーを達成させ、“21世紀、環境調和的な緑色都市建設”という計画の基本目標を提示し、これを実現するために、分野別の推進課題を提示した。
具体的な実現策として、4分野で14の課題を提示している。一つ目の分野として、未来成長産業として見込まれる新・再生エネルギー産業育成に努めている。最近IT・BT産業とともに年平均20〜30%の成長が見込まれ、21世紀の成長産業として急浮上している太陽光、水素、燃料電池産業を、光州市の地域特化産業として推進中の光産業と連結させるなど、新・再生エネルギー産業クラスター育成によって地域経済活性化に寄与する計画である。
二つ目の分野は、エネルギー節約である。光州市は脆弱な産業構造を見せている一方で、全国エネルギー消費量の約1.2%を占め、主要エネルギーの消費率は石油59.7%、電気21.4%、都市ガス16%となっている。また、最終エネルギーは産業部門が18.3%(全国55.7%)、輸送部門34,4%(全国20.9%)、家庭・商業部門44.1%(全国21.5%)、公共・その他3.2%(全国1.9)となっている。市民・企業の自発的参与と実践を通じてエネルギー節約型都市に転換する計画である。
三つ目は、新・再生エネルギーの普及拡大である。政府の新・再生エネルギー技術開発政策に合致した計画策定と産・学・研・官協力体系構築、インセンティブ付与、制度改善などを通じて普及拡大を推進する計画である。
四つ目の分野はエネルギー利用の効率化である。エネルギー利用の効率化を通じた省エネルギー型社会体系を構築するため、小型コジェネレーションシステムの導入と地域型集団エネルギー産業の本格的推進など、エネルギー利用効率の向上とエネルギー需要管理を積極的に推進する計画である。
このような部門別の重点推進課題、計画遂行のための各種支援プログラムの構築策を同時に提示し、また、必要財源を確保するため、中央政府との協力体系の構築策と自発的な市民の参加ムードの醸成策も提示した。
そして、計画の実施期間(2002〜2011年の10年間)に必要とされる投資額を、約1,939億ウォン(国庫補助金707、市負担243、民間負担989)と算定し、中央政府に支援を要請した。国からの全額支援は難しい状況であるが、毎年、地方自治体に支援する予算確保状況により、まずソーラーシティ建設作業に必要とされる予算を支援するという回答を受けている。
ソーラーシティ建設 投資実績および計画 | 単位:億ウォン |
区分 | 総事業計画 | 03年 | 04年 | 05年 | 06〜11年 | 備考 |
計 | 1,939 | 415 | 157 | 174 | 1,193 | 04年までに572億ウォン投資、05〜11年までに1,367億ウォン投資予定 |
国費 市費 民間 |
707 243 989 |
114 31 270 |
49 16 92 |
74 28 72 |
470 168 555 |
ちなみに、1996〜2004年まで中央政府から約172億ウォンの支援を受けており、国庫補助金の支援比率は、当初の要求額基準の約43%に達している。同時期に投入された市負担金と民間負担金額を合わせた場合、この期間に投資された金額が約725億ウォンにのぼるなど、基盤施設などを順次整えながら、ソーラーシティとして発展できる要素が整えられつつあると言える。
3.現在までの推進実績
2001年11月の基本計画策定後、太陽エネルギーのモデル都市指定と支援協約の締結を中央政府に要請した結果、国際エネルギー機関(International
Energy Agency:IEA)傘下のSolar City Programへの加入推進などと連携し、モデル都市の指定を検討するという意見とともに、まず財源の範囲内で必要な作業費を支援するという旨の回答を受けた。光州市ではこのような中央政府の意向に従い、基本計画を土台に、毎年度ごとの事業計画(地域エネルギー事業計画)を立てて政府に提出し、政府保証金などを確保したうえで事業を進行している。 また、地域内の約3,000坪の敷地に約53億ウォンを投資し、国内初となる太陽光150kW太陽熱1万5,000リットルを導入したグリーンビレッジ111世帯(単独11、3階以下のワンルームタイプ1棟35、3階以下のテラス住宅1棟65)を建設中で、2005年4月には完成の予定である。 |
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太陽エネルギー展示館(上)とモデル住宅・朝鮮大学寮(写真下) |
そして、新・再生エネルギー教育・広報館を朝鮮大学太陽エネルギー実証研究団地付近に約44億ウォン(国費15、市費9、自己負担20)を投じ建設している。2005年末に完成予定で、規模は、建物1000m2、BIPV(Building
Integrated Photovolatics:建物一体型太陽光発電)60kW、真空管式太陽熱温水器135万kcalを設置し、大型の市民教育・広報の場として活用する計画である。また光州市は、ソーラーシティとしてのイメージアップはもちろん、基盤施設に活用できる太陽エネルギー実証研究団地を中央政府から誘致し、2002年11月には基盤造成工事を完了した。研究団地は、地域内の朝鮮大学所有敷地の約5,000坪を活用して建設され、今後10年間、韓国内で太陽エネルギーシステムについての実証研究を担当する予定である。この事業には、約372億ウォン(国費298、市費5、民自79)の予算が導入される予定で、システムに対する実証試験とともに、基盤施設に実証試験場、管理棟、教育・広報館なども配置する予定である。
このような施設の拡充、および基盤造成事業とは別に、IEAの“Solar Heating
& Cooling Program”などへの加盟を通じて国際教育協力を促進し、ソーラーシティを中心軸として発展させるため、光州市の加盟意志を伝達することはもちろん、ワークショップに参加し、2004年7月1日付で「光州広域市太陽エネルギー市民条例」の制定・公表も行っている。この条例には、エネルギー節約型先進都市の建設意志と自治体・市民・事業者などの責務と協調事項が規定されている。また「ISES(International
Solar Energy Society:国際太陽エネルギー学会)‘04 アジア・太平洋会議」(2004年10月17日〜20日までの4日間開催)を光州市に誘致し、地域内の研究者や関連企業体から先進技術を習得できる機会も提供している。「ISES‘04 アジア・太平洋会議」は、「第5回
光州ビエンナーレ」およびキムチ祭りの期間中(光州ムドゥンパークホテルにて開催予定)に、人間・自然・太陽との調和を主題として開催され、16ヵ国から143編(国内85、国外58)の論文が発表された。また24業者(国内21、国外3)による産業展示、新・再生エネルギー導入の妥当性教育プログラムに参加した約40名に認証書を交付したり、47大学100チームが参加した太陽エネルギー建築設計国際学生公募展も同時に開催された。
一方、関連事業を育成するために光州地域に企業を移転する場合には、安価で工場建設敷地を提供しており、とりわけ中央政府から誘致した実証研究団地を活用し、企業のR&D事業も積極的に支援している。現在までの支援実績として、24の企業に約20億ウォンの事業費を支援しており、毎年、中央政府と連携して3〜4の企業を指定・支援している。
4.今後の課題
環境に調和するソーラーシティ建設を追及している光州市の課題としては、まず太陽エネルギー産業の育成を通じて地域経済の活性化に重点を置くことが挙げられる。地域の産業基盤が集約された光州市という位置づけになるよう、ソーラーシティ建設計画が、地域的なエネルギー施策であることや、中央政府と地方政府の予算が毎年一定額以上導入されるというだけでなく、環境産業として既存の世界市場や新領域において力を発揮できるよう、関連産業の育成を通じた地域経済の活性化が非常に重要となる。
今後、次世代成長産業として注目されている太陽光、水素・燃料電池産業を重点的に育成する新・再生エネルギー産業クラスターを推進する計画である。また、グリーンビレッジの造成、公共機関での導入義務化など、普及拡大政策が持続的に推進される場合、韓国内での関連産業または拡大可能な実証研究団地の造成・運営、専用団地造成の推進など、関連産業の育成に沿った支援施策を重点的に推進する必要がある。
また、ソーラーシティとしての地域イメージアップを狙った活動の強化が必要となってくる。21世紀には、地域のイメージがまさにその地域の経済力確保に重大な影響を及ぼすと思われ、環境都市としてのイメージアップは、地域経済力の確保に重要な要素として作用すると考えられる。とりわけ、今まで地域内に整備した各種のインフラ、太陽エネルギー産業発展の可能性などを集中的に広報し、光州地域が太陽エネルギー分野のメッカとして浮上できるよう支援しなければならない。
また、推進中の太陽エネルギーモデル都市指定、IEAのSolar City Programへの継続的な参加、国際セミナーおよび講演会の開催、「ソーラーシティ光州フォーラム(仮)」の創設・運営など、国際交流協力事業も積極的に推進する計画である。
最後の課題として、地域住民の参加を誘導するための支援プログラムの開発・運営が挙げられる。ソーラーシティ建設事業を効率的に推進するためには、中央政府や地方自治体の積極的な意志も重要だが、地域住民の自発的な参加こそが政策の成否を左右する。
このような理由から計画している支援プログラムを、より細分化、具体化するためには別の計画を立てることも必要であり、自発的な参加ムードを醸成するための市民意識の転換プログラムなどの開発も求められている。今まで活性化できなかった諮問委員会を活性化させ、実証研究団地と連携する太陽エネルギーセンターを設置・運営し、教育・広報をすべて受け持つなど、地域住民の自発的な参加システムを構築する計画である。
5.おわりに
光州市のソーラーシティ建設計画は、地域支援のエネルギー計画として、地域における自然環境の特性を最大限に利用し、中央政府のエネルギー政策に積極的に応じる初期段階の政策手段である。ソーラーシティを実現するためのプロジェクトとしては現在までに、太陽エネルギー実証研究団地およびグリーンビレッジの造成、IEAの
Solar City Programへの加入、2004年のISESの誘致、各種モデル事業の推進など、多様な事業を推し進めてきた。しかし大規模予算が伴う太陽エネルギー利用施設の拡充作業は、中央政府の予算支援とインセンティブの付与などが直接的に結びつき、計画に比べると推進実績が不十分である。それにもかかわらず、ソーラーシティ建設事業を押し進めながら、これらの発展の可能性が提起されたことは、地域事業基盤が集約された光州市にとっては幸いと言える。
地域の特化産業として推進中の既存の光産業と連携させ、ともに発展することのできる契機が整えば、21世紀の未来産業として成長できる太陽エネルギー産業の育成基盤が造成されることになるだろう。つまり、光州市のソーラーシティ建設事業の推進は、都市を環境調和的に造成し、21世紀の国際環境問題に能動的に対処することはもちろん、持続可能な社会システムを構築し、これを通じて地域イメージをアップさせ、地域経済力の確保と連動した地域産業育成となるような総合的な地域発展計画だといえるだろう。