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中国の省エネルギーと再生可能エネルギーの利用 フー・シャオフォン/中国アジェンダ21管理センター情報課 |
中国のエネルギー開発を振り返って
中国では、ずいぶん前から多様な形態の自然エネルギーを開発・利用しているが、エネルギーの本格的な社会化と大規模な商業化および利用は中華人民共和国建国後のことである。1949年に中華人民共和国が建国されたとき、全国の一次エネルギーの総生産量はわずか2,400万石炭換算t(TCE:
Ton of Coal Equivalent)であった。53年には、建国初期の経済回復を経て、一次エネルギーの総生産量はすでに5,200万TCEに達し、一次エネルギー消費も5,400万TCEに達した。80年、一次エネルギー生産と消費はそれぞれ6億3,700万TCEと6億300万TCEに達し、53年と比べて年平均で9.7%と9.3%ぞれぞれ増加したことになる。
改革解放後、中国のエネルギー工業は量的な面でも質的な面でも空前の進歩を遂げ、世界のエネルギー大国の仲間入りをした。96年には一次エネルギー生産と消費がそれぞれ13億1,000万TCEと13億9,000万TCEに達し、世界第2位になった。2000年末には中国の水力発電の最大出電量が電量総出電力に占める割合は24.85%に達しており、2000年、天然ガスの生産量は90年の153億m3から277億m3に上昇し、石油の生産量は90年の1億3,831万トンから2000年には1億6,300万トンに上昇した。一次エネルギー生産総量の中で、石油、天然ガスが占める割合は90年の19%と2%から、2000年には21%と3%に上昇した。石炭の消費量は90年には9億9,800万トンで、一次エネルギー消費総量の中で占める割合は90年の74%から2000年の68%に下がる一方、天然ガス、水力発電などのクリーンエネルギーの一次エネルギー消費総量に占める割合は次第に高くなり、90年の26%から2000年の32%に上昇した。クリーンエネルギー分野は成長のスピードが速く技術水準も高まっており、優れた品質のエネルギー生産の割合が上昇し、環境保全に重要な役割を果たしている。
50年の発展を経て、現在中国のエネルギー工業はすでに石炭を中心とした、多種多様なエネルギーによる相互補助型のエネルギー生産システムを形成していて、一次エネルギー消費総量の中での割合はおよそ次のようになっている:石炭75%、石油17%、天然ガス2%、一次電力(水力発電、原子力発電、新エネルギー発電)6%。
中国の自然資源総量は世界第7位で、エネルギー資源総量は約40兆TCEで、世界第3位である。水力の開発可能最大出電量は3億7,800万kWで世界第1位、新エネルギーと再生可能エネルギーの資源が豊富で、風力エネルギー資源量は約16億kWで、開発利用可能な風力エネルギー資源は約2億5,300万kW、地熱資源の埋蔵量は1,353億5,000万TCE、確定埋蔵量は31億6,000万TCEで、太陽エネルギー、バイオマスエネルギー、海洋エネルギーなどの潜在量はさらに世界で群を抜いている。
しかし、中国は人口が多いため、エネルギー資源は相対的に不足している。中国の人口は世界総人口に21%を占めるのに対し、石炭の蓄積量は世界の総蓄積量の11%、原油は2.4%、天然ガスはわずか1.2%を占めるにすぎない。1人当たりのエネルギー資源占有量は世界の平均レベルの半分にもならず、石油はわずか10分の1である。中国の97年の一次エネルギー生産量は13億3,400万TCEで、1人当たりのエネルギー消費量はわずか1.165TCEで、1人当たりの消費電量は893
kWhで、世界の1人当たりのエネルギー消費レベルの2.4TCEの半分にも満たず、世界第89位である。
中国経済の急速な発展と人民の生活レベルの向上に伴い、中国の1人当たりの年間エネルギー消費量は年々増加傾向にある。2000年のエネルギー消費総量は12億8,000万TCEに達し、90年より30%増加した。2050年までには一人当たりエネルギー消費量は2.38TCEに達する見込みで、現在の世界平均値に相当するが、先進国のレベルを大きく下回る。中国のエネルギー構造が石炭中心のため、石油資源が欠乏し、エネルギー開発と環境保護の矛盾が日々明らかになってきている。1人当たりのエネルギー資源の相対的な不足は、中国経済、社会の持続可能な発展における制限要因の一つであり、新エネルギーと再生可能エネルギーの発展、および新たなエネルギー供給ルートを開拓するための重要な要因となっている。
このため、中国は省エネルギーとエネルギー効率の向上を非常に重視してきた。中国は96年に「省エネルギー技術政策要綱」、97年に「省エネルギー法」を公布し、それに応じてエネルギー効率の向上を支持、奨励する課税措置や金融措置が設けられた。
国内生産1万元当たりのエネルギー消費総量は90年の5.32TCEから2000年の2.77TCEに下がり、年平均省エネ率は6.4%に達した。生産額エネルギー消費で計算すると、10年で累計7億6,000万TCEのエネルギーを節約することができることになり、粉塵の排出を615万トン、残灰1億1,000万トン、二酸化硫黄820万トンと二酸化炭素1億8,000トン(石炭換算)。民間での省エネでは、近年で合計高効率照明電気製品2億6,700万個、実現照明の端末節電量が172億kWのとき、電力投資を230〜276億人民元削減したことになる。このほかに、中国はすでに累計で省エネ住宅約1億2,991万m2を建設しており、累計で675万TCEを節約できることになる。
同時に、中国政府は全力でクリーン石炭利用技術と石炭資源の総合利用技術を推進している。95年8月に「国家クリーン石炭技術推進指導チーム」を設立し、数年後には初歩的な成果が得られている。国内外協力の方式で大型の循環流化ベッドモデル発電所と循環流化ベッド発電ボイラーを建設し、主に鉱山区と品質の悪い燃料を使用する発電所において推進・応用している。
世界的な権威の専門家は、2060年までに、新エネルギーと再生可能エネルギーの比率はエネルギー全体の50%以上を占めることになると予測している。よって、根本的に中国のエネルギー供給不足の問題を解決し、中国の豊富な新エネルギーと再生可能エネルギーを開発することは、国際的な発展動向にふさわしい道であると言える。
再生可能エネルギーの資源埋蔵量と分布
中国における再生可能エネルギーの資源埋蔵量と分布については、下表のとおりである。
種類 | 資源埋蔵量 | 分布 |
風力エネルギー | 理論上の開発可能な総量:32.26億kW/年 実際に開発利用可能な量:2.53億kW/年 |
6 m/s以上に相当する地区は主に長江から南澳島の間の東南沿海及びその島嶼に分布している。資源が豊富な地区は山東、遼東半島、黄海の浜、南澳島以西の南海沿岸、海南島と南海諸島、内モンゴルは陰山山脈以北から大興安嶺以北、新疆は達坂城、阿拉峠、河西回廊松花江下流、張家口北部などの地区、及び各地に分布する峠や山頂である。 |
太陽エネルギー | 3.3´ 103〜8.4´ 106kcal/m2・年 | 全国の総面積の2/3以上の地区の年間日照時間が約2,000時間である。わが国のチベット、青海、新疆、甘粛、寧夏、内モンゴル高原の総輻射量と日照時間はそれぞれ全国最高で、世界で太陽エネルギー資源が豊富な地区の一つである。四川盆地、両湖地区、秦巴山地は太陽エネルギーの値が低い地区で、わが国の東部、南部及び東北地区は資源量が中等な地区である。 |
地熱エネルギー | 1)高温地熱システムの総発電潜在力は5,800MW?30A、2010年までに開発利用可能な場所は10あまりで、発電潜在力は300MWである。 | 主に、北京、天津、河北、環渤海地区、東南沿岸とチベット、雲南地区に分布。 |
2)中低温地熱システムの中で、盆地方の潜在地熱資源埋蔵量は、2,000億TCEに相当する。 | 主に松遼盆地、華北盆地、江漢盆地、渭河盆地など、及び太原盆地、臨汾盆地、運城盆地のような多くの山間盆地、東南沿海の福建、広東、?南、湘南、海南?などに分布。 | |
海洋エネルギー | 開発可能な潮流エネルギー資源の理論上の設備の電容量は2,179万kWに達し、理論上の年間発電量は約624億kWH、波力エネルギーの理論上の平均パワーは約1,285万kW、潮流エネルギーの理論上の平均パワーは1,394万kW。 | 90%以上が中国東部の上海、浙江、福建沿岸に分布している。 |
再生可能エネルギーの利用現状
ここ20年、とくに90年以降、再生可能エネルギーは中国において大きな発展を遂げた。中国の統計では、今まで麦茎と薪をエネルギー消費として計算していなかったため、本来重視されるべき再生可能エネルギーが取り上げられることはなかった。麦茎と薪を計算に加えると、再生可能エネルギーが中国のエネルギーシステムに占める割合は18%程度になるだろう。再生可能エネルギーと新エネルギーの開発利用状況については、2000年、全国の農村でメタンガスを利用する世帯は850万世帯に達し、年間のメタンガス生産量は25億9,000億m3である。農業廃棄物と工業有機廃水の大型・中型メタンガス工事が1,229ヵ所で行われ、年間のメタンガス生産量は21億m3である。生活汚水を処理するメタンガス槽は8万9,000個で、年間処理量は2億8,000万トンである。農作物の茎(ワラ)のガス化で集中ガス供給工事を行った場所は388ヵ所で、1億5,000万m3のガス供給が可能になった。バイオマス発電も商業化し、多くの製糖工場ではサトウキビのカスで発電を行っている。広東、広西の両省には小型発電設備が合計380ヵ所あり、総電容量は80万kWである。全国でバイオマスガス化集中ガス供給工事を行っている場所は388ヵ所で、ガス利用世帯は7万9,000世帯である。
また、2000年末までに小水力発電設備はすでに2,480万kWを超え、農村水力発電による初期電化を実施した県は653県である。中国の小型風力発電機はすでに17万台を超えている。2003年末までに全国の風力エネルギーが豊富な13の省と自治区に、風力発電施設を合計37ヵ所、973基を設置しており、総発電量は5億3,846万kWとなっている。一方、中国の太陽熱温水器の販売・設置を行う企業は1,000社以上にのぼり、設置面積は世界一で、販売量(設置面積)は2000年に600万m2、2002年には約1,000万m2、販売額にして約110億円に達している。また、あわせて5,930kWの波力発電施設が稼動しており、年間発電量が1,020万kWになる。
地方における再生可能エネルギーの利用活動
(1)光明工程(光明プロジェクト)
96年9月、ジンバブエで開かれた「世界太陽エネルギートップ会談」で、世界の無電地区で推進する「光明プロジェクト」が提案されたとき、中国政府は即座に積極的な反応を示した、「中国光明プロジェクト」の計画を制定した。同年、国家計画委員会を先頭となって「中国光明プロジェクト」計画が制定された。計画は2010年までに、2,300万の周辺地区の人口の電気使用問題を解決し、1人当たりの発電容量100Wのレベル、当時の全国の1人当たり発電容量の1/3のレベルにすると同時に、周辺地区の辺境防衛歩哨所、マイクロ波通信ステーション、道路班、送油パイプ保護ステーション、鉄道信号ステーションの基本電気供給問題を解決することを目標にしている。
中国の「光明工程」プロジェクトは貧困救助的性質を持った、広範囲、高投資、環境にやさしい、持続的発展が可能な再生可能エネルギー建設のプロジェクトである。総資金投入は多く、初歩的な推計で約360億人民元である。プロジェクトの実施は西北省区に傾斜しており、新疆、内モンゴル、甘粛、青海、チベットといった辺境地域にはとくにサポートを行っている。
中国の風力エネルギー、太陽エネルギー資源は豊富である。利用可能な風力エネルギー資源は約2億5,000万kWで、主に沿海と内モンゴル―甘粛―新疆一帯の二大強風地域の有効な風力エネルギー密度は200W/m2以上である。中国の2/3以上の地域では年間日照時間が2,000時間で、年間平均輻射量は約5,900兆カロリー
兆焦耳/m2で、チベット高原、内モンゴル、寧夏、甘粛北部、?西、河北西北部、新疆南部、東北及び?西、甘粛、寧夏の部分地区の光照射は特に強い。しかし、中国の多くの無電人口はちょうど主にこれらの地区に分布しているのである。技術経済による分析によって、現在に条件下で風力発電と光照射発電技術を採用することによって周辺地区の分散電気供給を行うことは、持続可能な発展政策にふさわしく、送電線網を整備したりディーゼル発電を導入したりするよりも明らかに有利であることが明らかになった。
中国の長年にわたる実践で、風力発電と太陽光発電技術は中国の内モンゴル、甘粛、新疆、青海、チベットなどの省及び沿海島嶼での推進応用にふさわしいことが証明された。事実上、中国の風力発電産業は七十年代に内モンゴルで推進した50W-100Wの世帯用風力充電器が始まりで、長年の絶え間ない努力により、内モンゴル自治区では15万台の風力発電機が設置され、設備の数量では世界第一位である。90年代には、自主開発や、対外協力、技術導入により、家庭用システムの基、さらに風/薪/貯蓄、光/薪/貯蓄による村落電気供給システム、風/光相互補助家庭用システムを開発し、技術レベルが新たに階段を一つ上った。チベットに設置した国内最大の太陽光発電システムは100kWに達した。中国の発展はすでに全世界の関心を集めているのである。
新疆「光明工程」はすでに始動しており、当プロジェクトの実施により、8万世帯の無電化人口の電気使用問題を解決できる。その他に、内モンゴル、甘粛、チベットの「光明工程」はすでに国家の批准を受けている。青海、広東、湖北などの省もプロジェクト提案書を提出する予定である。
(2)麦茎ガス化国家モデル工程
中国のバイオマスエネルギー資源は豊富で、各種類の農作物の茎(ワラ)、薪および都市ごみなどの資源量は推計毎年6億500万t以上に達し、98年に中国商品エネルギー消費総量の約47%に相当する。麦茎は中国の農村生活用のエネルギー構成の中で重要な地位にあるが、その使い方については変える必要がある。中国の毎年の農作物茎資源量はバイオマスエネルギー資源量の半分近くを占めている。98年の中国の主な農作物茎の生産量は6億470万トンで、その中でエネルギーとして利用可能な量は58.7%となっている。98年の中国農村の生活用エネルギー総量は3億7,600万TCEで、その中で商品エネルギーが30%、バイオマスエネルギーが70%となっており、うち茎が40%を、薪などが30%を占めている。
98年、山東省莱州市は自ら資金調達して、麦茎ガス化集中ガス供給実験を行い、98年後半、莱州市は50の村で麦茎ガス化集中ガス供給モデル工程建設を行った。99年はじめにはすでに39の村でガスが通り、残り11の村も春節前にはすべてガスが通る予定である。莱州市の麦茎ガス化集中ガス供給モデル工程の成功は、各省市地区に、麦茎ガス化技術の発展の推進と応用の手本を示した。多くの地方では実験工程の規模と範囲の拡大を望んでいる。これに基づき、国家計画委員会は麦茎ガス化国家モデル工程の実施を決め、全国で代表性のある県を選び、麦茎ガス化国家モデル工程の建設を行う。これにより、省、市、県、郷及び農民の積極性を十分に動員し、資金の流れをコントロールし、多種多様な資金ルートと経営方式による事業の発展を推進する。
国家計画委員会は98年より正式に広く農村において麦茎ガス化技術を推進し、農民のエネルギー利用問題の解決と農村の環境汚染を緩和する予定で、重点を中西部と長江中上流部などの地域に置くことに決めた。1999-2000年国家計画委員会の麦茎ガス化モデルプロジェクトは、四川、重慶、湖北、河北、北京、安徽、広西、吉林、黒龍江など七つの省自治区において、麦茎ガス化技術を通じて5万3,900世帯の農民の生活用ガスの問題の解決に取り組む。
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