セッション2 C
 エネルギーシフトを地域から〜市民版グリーン電力証書と省エネ家電買い替え
 山ア 求博/NPO法人・足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ


寝ながらできる省エネ術

 東京では家庭から排出される二酸化炭素の半分は電気使用によるものです。そして電力消費量は1位エアコン、2位冷蔵庫、3位照明器具、4位テレビで、この4つで半分以上を占めています。こういった家庭の電化製品は省エネ化が進んでいて、1995年を100とした場合、冷蔵庫は5分の1以下まで電力消費が減っている製品が出ています。10年前の製品ですと、年間1,540kWhだったのが、現在売られている省エネ型製品では7分の1以下です。電気料金も当然、7分の1以下になります。そのため、省エネ型の家電製品に買い替えることで、努力とか忍耐を必要とせずに、機械が省エネをしてくれます。寝ていても省エネができるということで、市民に受け入れられやすいのかなと考えました。

出費は少なく、省エネ家電が手に入る
 
 そこで昨年実施したのが、省エネ家電の買い替えモニターというものです。原理としては省エネ家電への買い替えによって、未来に得する分を、先に私達が無利子で融資をしましょう、そして買い替えて得した分で返済してください、という仕組みです。
 今回、冷蔵庫の買い替えを考えました。なぜ冷蔵庫かといいますと、ほんとはエアコンが一番電気をくうのですが、つけたり消したりというのがあります。それに対して冷蔵庫は24時間ずっと動いています。そして、表示電力量をかけていけば計算がしやすい、つまり評価がしやすいため、冷蔵庫を選びました。
 冷蔵庫の扉を開けてみて、電力消費が45kWhと書いてあったとします。年間に直すと540kWhになりますが、これが省エネ型だと190kWhになります。買い替えた場合、電気代が年間約2万円かかっていたものが、5,000円以下に下がって、1万5,000円浮くことになります。現在、省エネ型の冷蔵庫の平均価格が10万5,000円とすると、1万5,000円分×5年分、7万5,000円を融資すれば、ほぼ7割分が融資で、家庭では3割弱の資金を用意するだけで、省エネ型の冷蔵庫が手に入り、電気代も得になります。
 去年の8月に募集を行い、7件の応募がありました。最終的には3件に、7万5,000円〜10万円を融資しました。融資にあたっては、家庭に伺い、どんな冷蔵庫を使っているのか等について聞き取り調査を行いました。その結果、省エネ型の製品が出ていても、その情報が伝わっていない、伝わっていてもどういう効果があるのかという部分までは伝わっていないことが分かりました。

市民によるグリーン電力証書の発行

 「EDOGA-WAT」という活動拠点である江戸川をもじった名前になっているんですが、グリーン電力証書をつくりました。日本においては、電力料金というのは1kWhあたり22〜23円の間になります。逆に固定価格で買い入れをしているドイツでは、1kWあたり55円で買い入れをしてくれています。日本では22円なのに、ドイツでは55円、その差額の33円は何なんだろうと考えました。日本における22円というのは、電気そのものの値段です。そうすると、ドイツで価格の55円から日本での22円を引いた33円というのは、太陽光による発電で得られたエネルギーということで、二酸化炭素も出しませんし、放射能の不安もない、環境負荷の少ないエネルギーという意味で、環境への貢献、プレミアムの部分であるととらえました。
 
 その33円の部分についての証書を市民に発行して、その収入で活動経費として借り入れた資金を返済していこうと考えました。ただ、証書を発行して売るだけでは、寄付が形を変えただけではないかというつっこみを受けますので、何かおまけをつけようということで、グリーン電力証書、EDOGA-WATを買っていただいた市民の中で通用する地域通貨を導入して、買っていただいた人たちの中で地域通貨のやり取りができますというしくみにしました。

 私達の発電所は、年間6000kWh程度発電します。そうするとプレミアの部分が1kWhあたり33円ですので、グリーン電力証書1枚について30kWhの証書をつくり、これを1枚1,000円で発行します。6,000kWhの発電をしますので、年間30kWhで割りますと、200枚の発行をすることができます。1枚1,000円のものを200枚売りますので、年間の収入は20万円になるはずです。その20万円の収入から諸経費を引いて借金を返していくと、約9年で返せるという計算です。購入者には、証書とバッジ、グリーンターン、地域通貨の3つを差し上げています。1年目は非常によく売れました。200枚発行して、180枚ぐらい売れました。しかし買っていただいた方は、環境やエネルギー問題、地域通貨に関心のある方と非常に偏りがありまして、2年目からさっぱり売れなくなりました。どうしたもんかと思ってますが、自分達で価値をつくり出して売るという方法もあるんですよということを、皆さんに分かってもらえればいいのかなとも考えています。


発電所より節電所を

 私たちは最初、自然エネルギーの発電所をつくったのですが、それよりも省エネルギーを進めるべきだと考えるようになりました。今、必要なのは発電所ではなく節電所です。電力消費を抑えることによって、余分な発電所をつくらずにすみます。
 実際に石油を求めて、戦争が起こっています。石油を支配するためにアメリカはイラクに戦争を仕掛けました。太陽光発電や風力発電を世界中に売っているドイツとどっちがいいのでしょうか。結論として、省エネルギーを進めながら、再生可能エネルギーを少しずつ導入していくことによって、地域でエネルギー自給率を高めていくことができれば、世界は平和に暮らせるのではないかと考えています。






(飯田市報告へ)