財団法人 地球・人間環境フォーラムでは、国際協力の一環として「世界遺産トラスト」の準備を1993年より開始しました。この事業は世界遺産条約の主旨にもとづき、ユネスコ世界遺産委員会によって作成された世界遺産リストにある自然遺産、文化遺産を映像などによって記録し、その素晴らしさと価値を広く世界に伝えることを目的とするものです。
507件(1996年12月)ある世界遺産の中にはその存在自体が危機にさらされているものも少なくありません。人類共通の遺産として未来に残していくためにはこのような状況も人々に伝えていかなければなりません。当財団は世界遺産保全の必要性を人々に認識していただけるような活動をしていきたいと願っております。
#世界遺産トラストの活動
具体的な活動として、各国の世界遺産を映像によって記録し、ユネスコ、国際自然保護連合(IUCN)、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)、各国関連機関、国内関連機関などに贈呈します。
これは映像記録を通じて世界の人々に地球の将来を考える機会を提供しようとするものです。国内外の多くのメディア(新聞・テレビ・書籍・写真など)によっても世界遺産を伝えていきます。
また映像に記録するだけではなく、各遺産の概説と特徴、重要性、将来に受け継いでいくための問題点や課題、時には存続の危機に瀕している事柄などを調査し、報告書の作成を必ず行い、今後の資料として広く役立てていただきたいと考えております。
#国際協力としての活動
地球・人間環境フォーラムには、環境映像の配給、制作などと取り組む国際的NGO「TVE(環境のためのテレビジョントラスト=本部・ロンドン)」の日本事務所があります。先進国、発展途上国を問わず、記録された世界遺産の映像をTVEのネットワークに乗せ、より広く世界中の人々に鑑賞してもらう事業も進めています。TVEでは記録映像は途上国に対しては無償で供与され、テレビ放映などを通じて自国だけでなく世界の遺産の重要性を知ってもらうことができます。また共同製作の形で現地のスタッフと協力しながら世界遺産を記録することも考えています。
TVEのネットワークを利用することによって記録映像が世界中に広まり、世界遺産を守る活動の輪がよりグローバルになることが期待されます。
#世界遺産への援助
集められた資金の一部で世界遺産の最前線で保全に取り組む機関等への援助(機材等)も進めていきます。1993年の活動ではエクアドルのサンガイ国立公園に保護管理事務所の建設費として3000ドルの寄付を行い、レンガづくりの立派な建物ができました。このような少額の援助でも途上国の遺産保護活動には十分な意味があります。無線機、保護管の防寒着なども遺産の最前線では不足しています。そして本格的な援助・保全活動の拡大につながる架け橋になりたいと考えています。
#これまでの活動
1993年には南米6カ国件の世界遺産を調査・撮影し、ウアスカラン国立公園ではアンデスコンドル、マヌー国立公園ではヘンディーウーリーモンキーなど絶滅の危機に瀕している貴重な動物種をカメラに収めることができました。
ブラジルのセラ・ダ・カピバラ国立公園は古代壁画がある文化遺産ですが、地元の住民が貧しいため公園の資源を利用せざるを得ず、密猟などにより遺産の保全に問題が起こっています。そのため職業教育や環境教育による自立的な地域発展により、地元住民と世界遺産との共存を図ろうとしています。観光により地域を活性化させ、かつ公園の資源や遺産に被害を与えないようにするためエコ・ツーリズムを徹底させようとしている様子も映像や報告書によって伝えています。
1995年度はインドの世界遺産を撮影。マナス国立公園では民族紛争のため、公園は閉鎖されていましたが、最近ようやく一般の入場が可能になりました。トラのほか、ゴールデンラングール(猿の一種)、ベンガルフロリカン(鳥)など貴重な動物を撮影できました。
仏教、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教など多様な文化遺産とその保全への取り組みも映像で紹介します。
世界遺産トラストに関するお問い合わせは
yukiluki.yuki@nifty.ne.jpまで
TEL: 03-3592-9735 FAX: 03-3592-9737