タンジャブールのブリハディスバラ寺院


(文化遺産、1987年指定)
Brihadisvara Temple, Thanjavur


   南インドのチョーラ朝が絶頂期を迎えた11世期、時のラージャラージャ王によってブリハディスバラ寺院が建てられた(写真58、59)。シヴァ神に捧げられた寺院であり、本殿の高さは60m、基壇は幅76m、奥行き152m。境内は広々としており、周りは2重の壁が囲んでいる。マラータ王国統治下の18世紀には、周囲に濠が作られ、砦としての機能も備えていた。
   寺院に入るには2つのゴプラム(寺院の門)をくぐる(写真62)。門は彫刻で複雑に装飾されており、一枚岩から彫られた一対の門番の像(ドゥワラパラ)が寺を守っている(写真61)。高さは約4m、片足を持ち上げ、視線は前方に向けられている。
   境内のナンディ堂にはインドで2番目に大きなナンディ牛の石像がある。ナンディはシヴァ神が乗る牡牛である。

 ブリハディスバラ寺院
写真58 ブリハディスバラ寺院本殿。

巨石を積み上げた建築
   寺院のビマーナと呼ばれる本殿部分はブロック状の花崗岩を積み上げただけのものである。最上部には重さ84tの一枚石から作られたシカラと呼ばれる円蓋が乗せられている。この円蓋が重しとなってピラミッド型構造の安定が保たれている。当時の技術でいかにして巨大な石を持ち上げたのだろうか。6q先から坂を作り、この石を運び上げたという説があるが、具体的なことは分かっていない。ガネーシャ(象の頭を持つ神)(写真62)やシヴァ神、ヴィシュヌ神の像などが寺院の壁に彫られており、大人の背丈の二倍の大きさである。建築学的、美術的にきわめて価値が高い。

生きた世界遺産
   ヒンドゥー教寺院の最も奥まった部分は神聖な部分であり、ヒンドゥー教徒以外の入室を禁じる寺院もある。ブリハディスバラ寺院内部の聖室にはインド一大きなリンガが安置されており、7人のバラモン僧によって大切に守りつがれている。
   11世紀の石の建物は堅固でこれまで崩壊したことはない。現在でも保護管理上の問題はほとんどない。

参考文献:
Sivaramamurti, C., The Chola Temples: Thanjavur, Gangaikonda, Cholapu-ram & Darasuram, Archaeological Survey of India, New Delhi, 1992.

側面 ドゥワラパラ
写真59 側面から見上げたブリハディスバラ寺院本殿。 写真60 寺院の門番ドゥワラパラの像。


ガネーシャ ゴプラム
写真61 本殿の壁面のガネーシャの彫刻。ガネーシャはシヴァ神の息子で、ゾウの頭、人間の体を持っている。吉祥の神。 写真62 ブリハディスバラ寺院の第1ゴプラム。ゴプラムはヒンドゥー教寺院の入り口の門で、南インドの寺院によく見られる。ゴプラムは小さな祠のような無数の彫刻で飾られる。八百万の神々が宿るところでもある。

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