中国国連砂漠化対処条約実施行動計画の概要


背景
砂漠化の現状と要因
国家行動計画の位置づけ
砂漠化対処の戦略・実施プロジェクト
実施のための推進体制
<参考> 図1 中国の乾燥地、半乾燥地、乾燥半湿潤地面積
<参考> 図2 中国の乾燥、半乾燥、半湿潤乾燥地における放牧地の土地荒廃
<参考> 図3 中国の乾燥、半乾燥、半湿潤乾燥地における耕作可能地域の土地荒廃
<参考> 図4 北部中国の砂漠化地域での砂漠化の要因

 中国は世界で最も砂漠化・土地荒廃の影響を受けている国の一つである。砂漠化・土地荒廃は地域環境の深刻な悪化を招き、経済の持続可能な発展を制約し、国民の生活に貧困をもたらしている。中国政府は砂漠化・土地荒廃防止対策を非常に重要視しており、数十年にわたり努力を続け、大きな成果を上げている。一部地域では砂漠後退の現象が見られ、生態環境は著しく改善され、国民の生活水準は明らかに改善されている。しかし、人口増加と経済発展という二重の圧力により、全体的に見れば中国の砂漠化・土地荒廃は依然として、拡大の趨勢を呈している。

1) 背景
 中国の砂漠化・荒廃地は主として中国の乾燥、半乾燥および乾燥半湿潤地域に分布し、中国西北部の大部分、華北北部および東北西部がこれに含まれる。この他、華北東部および南方の一部地域にも分散して分布し、その範囲は計18の省、直轄市、自治区に及ぶ。砂漠化・荒廃地の総面積は262.2万km2で、そのうち風食により砂漠化した土地160.74万平方m、水食による荒廃地20.46万km2、凍融による砂漠化・荒廃地36.33万km2、土壌塩性化した土地23.32万km2、その他の原因によって砂漠化・土地荒廃の起こった土地が21.38万km2で、それぞれ砂漠化・荒廃地総面積の61.31%、7.80%、13.85%、8.89%、8.15%を占める。
 中国の砂漠化・土地荒廃の害は相当に深刻で、砂漠化・荒廃地の面積は既に国土の総面積の27.3%を占めている。砂漠化した土地だけでも毎年2,460km2の速度で拡大しており、おおよそ毎年中規模の県に相当する土地が砂漠化・荒廃地と化している。773万haの農地で砂漠化・土地荒廃の害による深刻な減産が生じ、1億524万haの草原に退化が生じ、人為的または自然現象面での原因により、広範囲の森林地が退化し、林分の衰退、枯死が生じている。千以上の水利施設が風砂に襲われ、その排水、灌漑能力が低下し、鉄道800余kmが風砂の深刻な害を受け、数千kmに及ぶ道路が常に風砂の堆積によって通行不能になっている。黄土高原北部とオルドス高原の中間地帯にある晋陝蒙三角地帯は水食による砂漠化・土地荒廃が極めて深刻であり、黄河の泥砂の主要な発生地である。土壌侵食率は2〜3万t/km2・年にも達し、泥砂の堆積は黄河の河床面を毎年5〜10cm上昇させ、下流の一部区間の河床面の高さは既に両岸の地面より10m余り高くなっており、地面より高い"天井川"となって、黄河下流地区住民の生命と財産の安全に深刻な脅威となっている。中国の砂漠化・土地荒廃によってもたらされた悪影響としては、さらに以下のものが挙げられる。
――利用可能な土地面積が激減し、一部地区では生存条件さえ失われている。
――土地の生物生産力が急激に低下し、生態系が退化し、生物多様性が減少する。
――当該地区の経済、社会の持続可能な発展を著しく制約する。
――影響の及ぶ地区の住民生活の貧困を招く。
――砂漠化・土地荒廃の環境に対する影響が中国東部、東南部地区まで波及する。

2) 砂漠化の現状と要因
 中国における砂漠化・土地荒廃の形成原因には、主として気候の変異と人為的活動等の要因があり、そのうち人為的要因が砂漠化・土地荒廃を招く主要な原因である。人口増加や地域経済発展の圧力に加え、生態保護という観念の希薄さにより、過放牧、過度の伐採、森林(草原)破壊による開墾と急斜面の開墾等が深刻な植被の破壊を招き、当該地区の砂漠化・土地荒廃をより一層激化させている。

3) 国家行動計画の位置づけ
 中国国連砂漠化対処条約実施行動計画は中国が同条約調印後に制定した砂漠化・土地荒廃防止の行動計画であり、中国が適切かつ効果的に「条約」を執行するため、準則と措置を提示するものである。
 中国における砂漠化・土地荒廃防止の戦略目標は、予防を主とし、予防、整備、利用を結合させる方針を引続き徹底させ、全面的出撃、重点的突破の戦術を採用し、可能な限り早急に砂漠化・土地荒廃拡大の趨勢を抑制することである。具体的には、1996〜2000年、2001〜2010年、2011〜2050年の三段階に分け、中国の国民経済と社会発展計画の期間と歩調を合わせる。
 2000年までに、砂漠化・土地荒廃の継続的拡大の趨勢をある程度緩和させ、いくつかの地区の地域的生態環境を一定程度改善し、住民の生活レベルを顕著に向上させる。当面は、風食による砂漠化・荒廃地280万haを整備し、水食による砂漠化・荒廃地240万haを整備(そのうち人工造林60万ha)し、退化した牧草地715万haを整備、改良し、さらに土壌塩性化した土地200万haを整備、各種自然保護区165ヵ所を設け、その総面積が5,950万haに達するようにする。
 2010年までに、砂漠化・土地荒廃地区の地域的生態環境を大幅に改善させ、住民の生活を質の面で大きく向上させる。当面は、風食による砂漠化・荒廃地600万haを整備し、水食による砂漠化・荒廃地480万haを整備(そのうち人工造林60万ha)し、退化した牧草地1,750万haを整備、改良し、さらに土壌塩性化した土地500万haを整備し、自然保護区の総面積が6,868万haに達するようにする。
 2050年までに、難度の極めて高いものを除く砂漠化・荒廃地を基本的に整備し、自然保護区の総面積は9,135万haに達し、砂漠化・土地荒廃地区の生態環境と経済発展が良性のサイクルに乗るようにする。

4) 砂漠化対処の戦略・実施プロジェクト
 中国の生態環境の特徴と持続可能な発展戦略の要求に基づき、中国の社会、経済発展の現状と砂漠化・土地荒廃過程の特徴および「災害の特徴に合った予防対策、土地の事情に適した処置、合理的配置、重点の明確化、段階的実施、着実な発展」と「予防を主とし、監督を強化;総合的整備、総合的開発利用と科学的管理保護を結合させる;長期的防止対策により、際立った効果と利益を上げる」の原則を結び付け、中国の砂漠化・土地荒廃防止行動は、まだ退化が始まっていないか、退化が軽微な土地に対して予防措置を取ることを優先的に考慮するという前提の下、重点的事業によって実現させる。
 風食を主とする蔵北高原等の地域では、人類の活動の環境に対する影響が比較的小さく、全体的に見て砂漠化・土地荒廃の程度と害も相対的に微弱であるため、主として自然保護区の設立により人為活動の干渉を減少させて、原生生態環境を保護する。
a) 風食砂漠化・荒廃地整備事業プロジェクト
 1996〜2000年には、砂漠化・荒廃地280万haの整備を計画し、そのうち造林が80万ha。2001〜2010年には、砂漠化・荒廃地600万haの整備を計画、そのうち造林が170万ha。2011〜2050年には、砂漠化・荒廃地3,000万haの整備を計画、そのうち造林が700万ha。以下に列挙する重点プロジェクトの建設を継続する他、黄土高原、砂地、草原および平原の総合的生態経済林業を重点的に発展させ、必要条件を備えた砂漠やゴビに対して重点的に整備および植被建設を行う。
風食砂漠化・土地荒廃地区の具体的状況に基づき、2000年までに乾燥地域、半乾燥地域および乾燥半湿潤地域に砂漠化・土地荒廃防止重点事業計18ヵ所と、砂漠化・土地荒廃防止試験モデル基地16ヵ所を設置する。
 18ヵ所の重点事業は以下の通り。
@ 内モンゴル高原から新疆ウイグル自治区の砂漠化・土地荒廃地区までの、天然森林植被回復および合理的利用事業
A 内モンゴル自治区ウランブフ砂漠北部の総合整備開発事業
B 寧夏回族自治区黄河東部の砂地とテンゲル砂漠東南の総合整備開発事業
C 甘粛省河西回廊の砂地の総合整備開発事業
D 新疆ウイグル自治区ジュンガル盆地南沿の砂地の総合整備開発事業
E 新疆ウイグル自治区タリム盆地のグリーンベルト総合整備開発事業
F 新疆ウイグル自治区タリム盆地南縁の砂地の総合整備開発事業
G 新疆ウイグル自治区タクラマカン砂漠中部の油田の砂漠化環境総合整備事業
H 内モンゴル自治区フルンボイルの砂地の総合整備開発事業
I 黒龍江省と吉林省の松花江、嫩江の砂地の総合整備開発事業
J 内モンゴル自治区と吉林省西部の遼河流域の砂地の総合整備開発事業
K 吉林省と内モンゴル自治区ホルチンの砂地北部の総合整備開発事業
L 内モンゴル自治区フンシャンダクの砂地の砂漠化した牧草地の総合整備事業
M 陝西省と内モンゴル自治区の神府−ジュンガル炭田砂漠地区の環境総合整備事業
N 内モンゴル自治区ムーウス砂漠中部の砂漠化草原の総合整備事業
O 陝西省ムーウス砂漠南縁の長城沿線の砂地の総合整備開発事業
P 内モンゴル自治区ウランチャブ盟后山の砂漠化・荒廃地の総合整備開発事業
Q 山西省の雁、同、朔および忻州地区の砂地の総合整備開発事業

 16ヵ所の試験モデル基地は以下の通り。
@ 新疆ウイグル自治区砂漠化、土壌塩性化土地総合整備開発精河県マンゴディン郷エビ・ノール低地試験モデル基地
A 甘粛省河西回廊砂漠化・荒廃地総合整備開発武威試験モデル基地
B 甘粛省河西回廊砂漠化・荒廃地総合整備開発臨澤試験モデル基地
C 内モンゴル自治区ウランブフ砂漠総合整備開発tコウ県ハテンタオハイスム試験モデル基地
D 内モンゴル自治区アルシャの砂漠・荒野の植被保護および合理的利用エジン旗試験モデル基地
E 青海省チャイダム盆地高海抜砂地総合整備開発シャリハ試験モデル基地
F 内モンゴル自治区ホルチン砂地総合整備開発オンニュド旗カタラ、チャオグウェンド試験モデル基地
G 遼寧省ホルチン砂地総合整備開発彰武県章古台試験モデル基地
H 内モンゴル自治区ホルチン砂地総合整備開発ナイマン旗章古台試験モデル基地
I 山西省ムーウス砂漠総合整備開発偏関県黄龍池試験モデル基地
J 寧夏回族自治区ムーウス砂漠総合整備開発塩池県柳楊堡試験モデル基地
K 北京市永定河下流砂地大興、房山試験モデル基地
L 陝西省ムーウス砂漠総合整備開発神木県窩兔採当(ウォトゥツァイタン)試験モデル基地
M 内モンゴル自治区ムーウス砂漠総合整備開発ウシン旗トゥク、ウシンチャオスム試験モデル基地
N オルドス砂漠化・土地荒廃防止グリーンプロジェクト試験モデル基地
O チベット自治区シガツェ高原河川沿岸砂地総合整備試験モデル基地

b) 水食砂漠化・荒廃地整備重点事業プロジェクト
@ 黄河中流の水土保持事業
 黄河の北部本流と洛河、渭河上流の土壌浸食率が1万t/年・km2に達する地区を集中的に整備し、2000年までに水土流失面積100万haを整備し、2001〜2010年に200万haを、さらには2011〜2000年に800万haを整備する。
A 官庁、密雲、潘家口ダム上流流域の総合整備事業
 本整備事業は総合的措置により、北京、天津、唐山等の都市に対する洪水防止と給水に重要な役割を果たす官庁、密雲、潘河口ダム上流の水土流失を集中的に整備するものであり、1996〜2000年の整備面積は80万ha、また2001〜2010年の整備面積は160万haである。
B 黄河中流防護林システム建設事業
 本事業では生物防護措置に重点を置く。
 1996〜2000年の造林面積は60万ha、2001〜2010年の造林面積は120万ha、2011〜2050年は45万haの造林を行う。
 上記造林事業を遂行すると同時に、1996〜2000年の期間に、以下3件の重点建設事業を行う予定。
・黄河本流両岸の護岸林システム建設事業
・晋陝峡谷水土保持林システム建設事業
・京包−京蘭線鉄道両側の防護林システム建設事業

c) 退化した牧草地と土壌塩性化の総合整備事業
 牧草地の植被の退化状況と砂漠化・土地荒廃の危害の程度を目安として、退化した牧草地の整備事業は、主として内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、甘粛省、新疆ウイグル自治区および東北西部の草原に重点を置く。主として合理的放牧、牧草地の改良により牧草地の生産力を回復させ、黄河水系上流では天然牧草地の改良に重点を置き、人工の草原を形成させる。
@ 退化した牧草地の総合整備事業
 1996〜2000年には、退化した牧草地500万haを整備して高レベルの人工牧草地100万haを形成させ、2001〜2010年には退化した牧草地1200万haの整備を行い、高レベルの人工牧草地200万haを形成、2011〜2050年には退化した牧草地4,000万haの整備を行い、高レベルの人工牧草地500万haを形成させる。
A 黄河水系中、上流の牧草地の生態建設事業
 1996〜2000年には、天然の草原100万haの建設、改良を行い、高レベルの人工牧草地15万haを形成させる。2001〜2010年には、天然の草原250万haの建設、改良を行い、高レベルの人工牧草地100万haを形成させる。2011〜2050年には、天然の草原1,200万haの改良を行い、高レベルの人工牧草地300万haを形成させる。
B 土壌塩性化総合整備事業
 土壌塩性化整備は、主として乾燥地域の土壌塩性化の予防、整備に重点を置く。
 1996〜2000年には、200万haを整備し、2001〜2010年には500万haを整備、2011〜2050年には1,200万haを整備する。
d) 生物多様性保護を中心とする自然保護区の建設
 2000年までに、砂漠化・土地荒廃地区に総面積5,950万haに達する自然保護区165ヵ所を建設し、2010年までに砂漠化・土地荒廃地区の自然保護区の面積を6,868万haまで増加させる。2050年までには、砂漠化・土地荒廃地区の自然保護区の面積を9,135万haまで増加させる。2000年以前の砂漠化・土地荒廃地区自然保護区建設の重点は以下の通り。
――森林生態系自然保護区:亜寒帯の針葉樹原生林、黄土高原水源涵養林を重点的に保護する。
――草原、湿原生態系自然保護区:保護の対象には典型的草原、湿草地性ステップ、荒漠草原、高冷湿原等を含み、フルンボイル湿草地性ステップ、蔵北高山草原と砂漠・荒野を重点的に保護する。
――砂漠・荒野生態系自然保護区:代表的種類・区域の砂漠・荒野生態系を重点的に保護する。
――内陸湿地自然保護区:青海チベット高原の高原湖沼および高冷沼沢湿地を重点的に保護する。
――野生動物種自然保護区:砂漠・荒野地域の有蹄類等の野生動物を重点的に保護する。
――野生植物種保護区:砂漠・荒野地域の危機に瀕した、または稀少な野生植物を重点的に保護する。
e) 中国砂漠化・土地荒廃モニタリングおよび早期警報システムの建設
 中国砂漠化・土地荒廃モニタリングセンターを拠点として、国家、省、県の3レベルのネットワークを構築し、リモート・センシング技術と地理情報システムを利用し、中国の砂漠化・土地荒廃防止の立体的モニタリングシステムを構築する。科学的、客観的、実用的なモニタリング分類評価指標体系を確立し、砂漠化・土地荒廃防止のための根拠を提供する。全国砂漠化・土地荒廃リモート・センシング総合モニタリング事業は5年に1回行い、砂漠化・荒廃地の分布、面積、類型と自然および社会条件に関するモニタリングを展開して、砂漠化・土地荒廃の発展趨勢の分析と予測を行うほか、砂漠化・土地荒廃変遷の動態法則を把握して、砂漠化・土地荒廃防止のマクロ的方策決定のための根拠を提供するとともに、地球規模の砂漠化・土地荒廃モニタリングシステムとネットワークを接続する。
 砂漠化・土地荒廃災害データベースを構築し、迅速で機動的な砂漠化・土地荒廃早期警報システムを確立する。
 砂漠化・土地荒廃地区の環境−経済情報データベースおよび専門家による評価システムを構築。
f) 中国砂漠化・土地荒廃防止研修システムの構築
 中国砂漠化・土地荒廃研修システム構築の主な内容は以下の通り。
――北京に中国砂漠化・土地荒廃研修センターを設立。同センターは主としてアジア太平洋地域およびその他地域の国家の、砂漠化・土地荒廃に関わる人材の研修を担当し、中国の砂漠化・土地荒廃防止に携わる高級、中級技術スタッフ(特に若い中堅技術スタッフ)の研修を担当する。
――砂漠化・土地荒廃地区に、それぞれの行政レベルに応じた砂漠化・土地荒廃防止研修機構を設立し、全国的研修ネットワークを形成して、当該地区の砂漠化・土地荒廃防止に携わる中級、初級技術スタッフおよび現場の中堅スタッフ、農民、牧畜民、婦人等の研修を行い、様々なレベルの砂漠化・土地荒廃防止人材研修システムを形成する。
g) 中国の砂漠化・土地荒廃防止研究および発展システムの設立
 北京に中国砂漠化・土地荒廃防止研究・発展センターを設立するとともに、同センターを拠点として国際技術協力と交流を積極的に展開し、砂漠化・土地荒廃総合コントロールと管理に関する国際的および地域的協力に参加し、これを展開する。「国連砂漠化防止条約」の枠組みを指導方針として、関係活動に参加、または関係義務を履行し、二国間および多国間の共同研究および砂漠化・土地荒廃地区の経済開発を積極的に行う。
5) 実施のための推進体制
a) 国家による行動
@ 国家の国民経済および社会発展計画に編入
 中国政府は既に砂漠化・土地荒廃防止を国家の国民経済および社会発展計画および「九十年代国家産業政策綱要」に組み入れ、重点的に支援している。具体的には、 毎年決まった砂漠化・土地荒廃防止事業費、砂防・治砂利息優遇貸付金および国家科学技術プロジェクトを割り当てている。
A 政策法規の制定
 中国政府は「森林法」、「水土保持法」、「環境保護法」、「鉱産物資源法」、「野生動物保護法」、「水法」、「草原法」、「土地管理法」、「水土保持実施条例」等、一連の天然資源、自然環境保護管理に関する法規、条例を相次いで公布し、中国は上記法律を今後継続的に執行する。この他、「砂漠化・土地荒廃防止法」等も現在制定中である。
B 国家砂漠化・土地荒廃防止計画の制定
 中国政府は国家砂漠化・土地荒廃防止事業全体計画を制定し、全体計画に基づいて林業、水利、農業等の部門別に個別の生態建設計画を制定し、砂漠化・土地荒廃全面調査を展開して中国の砂漠化・土地荒廃の主なタイプ、過程、原因およびその害を明らかにし、砂漠化・土地荒廃防止や干ばつの影響の緩和、減少に必要な措置を提出している。
C 食糧保障
 中国の砂漠化・土地荒廃地区の食糧保障は、主として各行政レベルの食物生産基地の強化、整備により、中等よりやや重い災害状況下において、住民に必要な食糧の供給を保証している。
D 社会保障
 中国政府は技術開発、科学技術による貧困救済、プロジェクトによる貧困救済を通じて、貧困状態にある住民を可能な限り早急に貧困から脱出させる。すぐには貧困を脱出できない住民に対しては、必要な生活援助を与える。砂漠化・土地荒廃の害が深刻で、基本的生活を維持できない地区に住む住民に対しては、国家が統一的に移住を計画し、移住直後の住居や生活についても国家が解決する。多様な経営プロジェクトを割り当て、第三次産業を発展させ、就業の道を広げて余剰労働力の就業ルートを拡大する。突発的な自然災害の早期警報、方策決定、指揮、保障システムを樹立、整備し、住民の生命財産の安全を最大限に保証する。
b) 地方レベルでの支持行動
 国家の支持行動の指導を受け、砂漠化・土地荒廃地区の各レベルの政府は全力を挙げて砂漠化・土地荒廃防止事業を支持し、当該地区における砂漠化・土地荒廃防止行動計画の実施を保証する。
c) 科学研究、教育および技術の普及
@ 科学研究
――既存の砂漠化・土地荒廃防止関係研究機構の組織を強化し、整備する。
――科学技術への取り組みを強化し、砂漠化・土地荒廃防止に関する科学研究の特別経費を増加させ、融資構造を調整し、科学技術貸付金を増加させる。
――砂漠化・土地荒廃防止に関する科学研究のインフラ建設を強化する。一群の国家、業界の重点実験室および国家または業界のエンジニアリング研究センターを建設する。
――研究スタッフの待遇を改善し、良好な研究環境を作り、科学研究班を安定させて人材流出を減少させる。
――砂漠化・土地荒廃防止、生物多様性保護および全地球的大気系保護等の分野の科学研究を中国のアジェンダ21に組み入れる。
A 教育事業
――教育への取り組みを強化し、年々教育経費を増加させる。
――砂漠化・土地荒廃防止関係の大学教員チームの組織作りを強化し、学科の設置を調整し、教育の質を向上させる。
――砂漠化・土地荒廃防止に関する中等教育および職業技術教育を強化し、専門学校、中等専門学校、職業技術教育の多層的教育体系を形成する。
――既存の各種大学の成人教育部門や一般の高等学校および放送学校等を十分に利用し、砂漠化・土地荒廃防止の成人教育を積極的に展開する。
B 技術普及
 国家が毎年一定の砂漠化・土地荒廃防止特別事業費を割り当て、これを主として砂漠化・土地荒廃防止技術の普及、宣伝等に用いる。
 既存の砂漠化・土地荒廃防止技術および砂漠化・土地荒廃地区の資源開発利用技術に対して、生態と経済および社会の持続可能な発展の原則に基づいて総合的に評価、選別し、実用的な技術、成果を上げている技術を選択してこれを普及させる。技術普及サービスシステムを樹立、整備し、2000年までに2000ヵ所の各種技術普及拠点を強化、整備、建設する。有償譲渡と無償譲渡を結合させて、科学技術成果転化のメカニズムを探究し、それらの成果の普及、科学技術産業創業等の面で規範モデルを樹立し、成果の拡大を加速させる。
d) 社会の参加
 砂漠化・土地荒廃防止の政策立案、方策決定と実施および審査の際、広く砂漠化・土地荒廃地区の農民、牧畜民およびその代表組織の意見と提案を広く聴取し、彼らの広範な参加を奨励、指導すると同時に、海外の人びとの積極的参加を歓迎する。全国民のボランティア植樹とその他国民の砂漠化・土地荒廃防止参加活動を継続して展開する。
 砂漠化・土地荒廃地区の住民、特に若者と女性の砂漠化・土地荒廃防止に対する参加を奨励し砂漠化・土地荒廃防止の活動を促すとともに彼らの参加のために条件作りをする。
 中国砂漠化・土地荒廃防止学会およびその他関係する科学技術学会(協会)等、非政府組織の砂漠化・土地荒廃防止における作用を十分に発揮させる。

e) 機構
 本行動計画を実施するために、中国政府は関係する16の部と委員会によって構成される中国「国連砂漠化防止条約」執行委員会を設立した。
 委員会は中国砂漠化・土地荒廃防止高級専門家顧問チームを設立し、各学術分野、各業界、各部門の専門家を招聘してこれに参加させている。委員会には事務局を設け、事務局は林業部に設けられている。具体的な組織・機構は以下の通りである。
1.委員会
2.専門家顧問チーム
3.各省(直轄市、自治区)政府
4.各地(市、盟)政府レベルの機構
5.各県(市、旗)政府レベルの機構
6.事務局
7.砂漠化・土地荒廃防止事務室
8.中国砂漠化・土地荒廃モニタリングセンター
9.中国砂漠化・土地荒廃防止研究・発展センター
10.中国砂漠化・土地荒廃防止研修センター
 中国「国連砂漠化防止条約」執行委員会 委員会は主として砂漠化・土地荒廃防止の過程における各部門間の協力、協調の調整、事務局の立案した行動目標、中・長期行動戦略、プロジェクトの重点、資金源等を含む国家行動計画の審議を担当する。国家行動計画を実施する上で必要な方針、政策および保障条件を認可し、国家行動計画の実施を検査、監督し、事務局の業務の成果を評価する。
高級専門家顧問チーム 委員会に対する、砂漠化・土地荒廃防止に関する様々な政策、実行に関するコンサルティングおよび国際、国内情報と建設的意見の提供、高レベルの方策決定に対する科学的根拠と論証報告の提供を担当する。
事務局(林業部) 同事務局は委員会の実務機構であり、砂漠化・土地荒廃防止事務室、中国砂漠化・土地荒廃モニタリングセンター、中国砂漠化・土地荒廃防止研究・発展センター、中国砂漠化・土地荒廃防止研修センターを指導し、主として国家行動計画の制定、国家の支持行動の組織と実施、各レベルの地方政府の制定した地区行動計画の審査決定、国家行動計画と地区行動計画の具体的実施の検査、監督を担当する。事務局はまた砂漠化・土地荒廃防止に関係する科学技術、教育、研修、宣伝、国際交流等の各種事業の展開を担当する。
 各レベルの(省、地、県)地方政府の関係機構 各レベルの地方政府は、当該地区の砂漠化・土地荒廃防止事業に対して直接責任を負う。その主たる職責は、国家の行動計画および当該地区の実情に基づいて地区行動計画を制定し、行動を支援することである。計画中の各種業務の実行と展開を組織手配し、地区内各方面の力を結集して、当該地区の砂漠化・土地荒廃防止目標を達成する。

f) 国際協力
 中国の砂漠化・土地荒廃防止は地球環境改善の一部分として、中国自身の利益になるだけでなく、周辺諸国にとっても少なからぬ利益があり、なおかつ地球環境全体の改善に対しても重大な影響力をもつ。そのため中国の砂漠化・土地荒廃防止には、中国自身の努力だけでなく、国際社会の支持と協力もまた必要である。中国は砂漠化・土地荒廃防止の面で幅広い国際協力分野をもち、中国は広範な国際協力のために絶えず良好な環境条件を創造して行く。
 中国は次の6分野にそれぞれ優先協力プロジェクトを設けている。

@ 砂漠化・土地荒廃地区の資源開発、利用および科学的管理技術
A 風食砂漠化・土地荒廃防止を中心とした総合的整備技術
B 水食砂漠化・土地荒廃防止を中心とした総合的整備技術
C 土壌塩性化防止を中心とした総合的整備技術
D 草原退化の総合防止技術
E 全地球的気候変化と砂漠化・土地荒廃の関係
F 生物多様性の保護と利用

6) 予算
 中国の砂漠化・土地荒廃防止事業の費用調達ルートは、主として以下に挙げる4つの部分から構成される。
1.政府の投資
2.銀行からの融資
3.一般募金
4.民間の投資
 中国の砂漠化・土地荒廃防止事業には巨額の資金が必要であるが、中国は現在なお発展途上国であり、国家財政は逼迫し、国民は現在もなお豊かであるとは言いがたい。そのためたとえ政府と国民が全力を尽くしたとしても、必要な資金を全額準備することは難しい。中国は国際機構および関係方面からの資金援助、物質的援助を必要としている。



<参考>









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条約の英文、条約加盟国一覧、締約国会議の正式資料、科学技術委員会、最近の会合の日程、その他の情報が手に入ります。


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砂漠化・土地問題に関する情報源一覧
関係リンク集 
参考文献
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