環境アセスメントについて


●環境配慮の手法 − 環境アセスメントの経験を最大限活用すること

・ プロジェクトの計画に環境配慮を組み込む仕組みとして、1969年の米国国家環境政策法(NEPA)以来、環境アセスメント制度が様々な国・機関等で発達してきており、各国や国際的にも様々な経験が蓄積されてきている。

・ 開発途上国においても、環境アセスメントをはじめとした環境配慮の制度が発展してきており、融資機関としては、この制度を積極的に活用することで、環境配慮を確実に行うことができる。また、途上国の対処能力の向上にも寄与しうる。

・ 環境アセスメントを適用しないような案件であっても、その経験は適用しうるし、参考とすべき。
●環境アセスメントの重要要素
・ 環境アセスメントは、第一義的には、プロジェクトの実施の決定、あるいは、その許認可等の意思決定に際し、環境配慮面から十分な情報を、意思決定者に提供するシステム。その効率的かつ効果的な実施の点で、様々な重要な要素が明らかになり、制度が発展してきている。

・ 日本は、1993年から3年かけて各国・各機関のアセスメント制度をレビューし、国の環境アセスメント制度を見直し、新しい環境アセスメント法を1998年に導入した。そのレビュープロセスで、このような要素の重要性が明らかになったので、法制度に取り入れたところ。 (同様な結果は−国際影響評価学会 環境アセスメントの有効性研究−でも明らかにされている)
● 明確な手続・規則: 予防原則の徹底、無用な混乱の回避
● 早期の着手: 早期の情報入手、ステークホルダーの明確化、計画への反映
● スコーピング: 問題の絞り込み、費用対効果
● 代替案の検討・計画への反映: 実質的な対策の確保
● ステークホルダーの関与: 広範かつバランスのある情報、コンセンサス形成
● 住民参加・NGO: 情報参加、計画参加
● 独立性の高い調査・審査: 客観性の確保
● 情報公開: 透明性・説明責任の確保
● 意思決定への反映: 意味のあるプロセス
● 事後モニタリング: 対策の確認、予見が困難な問題への対応

事業の環境アセスメントの一般的流れ

0.事業計画案
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1.スクリーニング 環境アセスメント実施の必要性を、地域の特性、事業の特性等から判断。簡易な調査(初期環境評価(IEE)を実施して決定する場合もある。(リスト方式、規模要件方式、個別検討方式等ある)
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2.スコーピング 焦点の絞り込み(調査すべき事項、検討すべき対策・代替案、協議すべき関係者)。この時点から関係者等への協議重要
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3.環境現況調査 影響が及ぶと考えられる範囲の環境の現況(大気質、水質、動植物の分布、地域社会)を詳細に調査。代替立地場所の選定にも重要。保全すべき環境及びその水準等の同定。
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4.予測評価 計画内容及び環境の現況から影響を予測(可能な限り定量化)し、評価(保全すべき水準、上位政策等と比較、代替案間で相対比較検討、住民、専門家等ステークホルダーとの協議)する。
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5.環境保全対策/代替案の検討 評価に応じて対策を検討。必要であれば、計画変更に合わせて0からのプロセスを繰り返す。
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6.ドラフト報告書作成 結果をまとめて、関係者、住民等との協議用に文書化。
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7.ドラフト報告書公開協議 関係機関、住民等との協議、主管官庁及び環境担当省庁による内容審査を経て、最終的な内容(事業内容、対策内容)を固める。
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8.報告書完成(・公開) 各意見等の報告書への反映・修正等。一般への公開。
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9.報告書審査・許認可等意思決定への反映 報告書を審査し、結果を勘案し、最終的な意思決定。環境所管省庁や担当官庁から、許認可の条件が付される場合がある。
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10.事業着手
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11.モニタリング 影響の程度、対策の実施状況を把握。必要に応じて、追加的対策の検討・実施。


●これらの要素により、以下が達成される。

participation 参加、credibility 信頼性
transparency 透明性、cost-effectiveness 費用対効果
certainty 確実性、flexibility 柔軟性
accountability 説明責任、practicality 実用性       Sadler, 1996

●融資機関と環境アセスメントの関わり

・ 環境への影響が大きくなる可能性のあるようなプロジェクトの場合、環境アセスメントがなされなければならない。環境アセスメントは通常、当該国の手続に従い、プロジェクトの事業者や相手国政府により実施される。融資機関は、このようなプロジェクトに対し、資金の出融資、あるいは信用の供与などにより支援する。

・ このとき以下のような状況を考慮する必要がある。
相手国が開発途上国の場合には、基本情報、資金、人材等の不足により対処能力が不十分

外国投融資等を受けようとするプロジェクトは概して大規模であり、大きな影響が考えられる。(場合によっては、地球的共有財への影響もありうる)
・ 先進国融資機関側としては、以下が重要と考えられる。
第1に、融資機関の出融資等の最終判断を下す前に、環境配慮の重要な要素を事業者側が実施し、事業者(及び相手国政府)が効果的・効率的な環境配慮を行うよう、働きかけること。

第2に、自らの意思決定(出融資等の判断)が環境への影響について配慮されたものとなるよう、環境配慮の重要な要素を活用して、事業者の配慮の内容を確認すること。

第3に、適切な環境配慮がなされるよう、事業者や相手国政府に対し、適宜支援を行うこと。

第4に、可能であれば、環境配慮の優良事例・率先事例を作り、途上国の対処能力向上に貢献すること。