(国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会)

第8回『環境と社会開発』                                                                      2001/2/27  

                                                                                     担当・佐藤寛(アジア経済研究所)

 

1.開発援助プロジェクトにおける資源

 「資源(自然環境、社会環境、経済資源、技術)」の投入と収奪

 社会開発案件における配慮事項=資源投入に伴う社会(社会関係、社会環境)の変化

 インフラ案件における配慮事項=資源収奪に伴う社会(社会関係、社会環境)の変化

2.開発援助における「環境案件」の特殊性(例・社会林業)

 受益地域(社会)とプロジェクト対象地域(社会)の不一致

 マクロな視点からは「受益地域とプロジェクト対象地域」は同一の「国民経済」内

 →融資者、支援者は内部の区別を配慮しなくて良いか・・・・●

 植林地の囲い込みによる生活の困窮/植林による洪水の予防/稲作の増収

3.プロジェクトから受益しないプロジェクト対象地域住民(被害者)への配慮

 @ダム建設、植林地による「社会環境」「自然環境」の変化による被害

   共有林の消滅、失業、農地喪失など

 A住民移転による「社会環境」「生計維持戦略」の変化による被害

4.なぜ「環境ガイドライン」が「社会配慮」を含むのか

 @環境変化に伴う影響は科学的・技術的な視点から見ただけではわからないから

 A環境を改変する意思決定は「社会的」になされなければならないから

  →「社会的合意」の必要性・・・・・●

5.「合意」について

 反対理由の評価、理解

 プロジェクトを中心とする流れ=合意プロセスの「明示化」「民主化」

 住民を中心とする流れ=(生活が改善されない場合)プロジェクト中止の判断を含む?

6.ステイクホールダーについて

 社会開発案件においては、「声をあげる人」ではない。問題は「声をあげない人」

 情報開示は市場原理・市民社会の存在を前提としている

→市場の失敗と同じことが、情報の流れにも起こる

 先住民・女性や社会的弱者が見過されがちであるので、市民社会が成熟していない社会では形式上の手続きをいかに「民主化」してもひろいこめないことが問題

開示することよりも、必要な人に情報が届くことが大切

 誰が「必要な人」かを判断するためには借款の借入人、事業主体以外の人の目が必要

  誰がそれを調査するのか・・・・事前調査

7.プロジェクトの影響による対処方策

 予期される負の影響=非自発的移転に伴う社会開発コンポーネントの義務化・・・・○

@     フィリピン電力公社:電源開発と社会開発プロジェクトのセット(電力供給を受ける人々からの上がりを影響住民を対象とした社会開発プロジェクトにまわす)

A     ベトナム サイゴン東西ハイウェイ 移転地でのインフラ建設に融資

B     インドネシア ブランタス流域ダム 社会調査の徹底を誘導

8.予期されざる負の影響=モニタリング、フィードバック、第3者情報の採用・・・・●

 事前調査・審査段階= 調査内容の指示 SAPROF

 実施中                = モニタリング、SAPI

 事後評価                = SAPS 

表・開発融資案件における影響と融資機関によるその対処の可能性

 

 

予期できる

予期せぬ

予期できる

予期せぬ

受益者

 

ミティゲート対策を事前に確定

(ガイドライン)

(環境ガイドラインの守備範囲外)

被害者

人為的に加える

=非自発的移転に、社会開発プロジェクトを加える

 

想定される被害者の範囲をできる限り広く設定する(ガイドライン)

JBICが指摘すべきか※1

モニタリングの強化(ガイドライン)

誰の責任:事業者かJBICか?●もう少し踏み込むべきか※2

予期せぬ被害者

 

 

基礎情報の蓄積

JBIC内既存情報、地域研究者情報の活用方策検討)

第3者からの情報を事業者に仲介(旧輸銀ガイドラインに記述あり)

●もう少し踏み込むべきか※3

SAPROFの活用による対処

※1借入人からの情報と影響住民からの情報、NGOからの情報が食い違う場合:

※2モニタリングをどこまで借入人に要求するか?

※3査閲パネルやオンブズマン制度の必要性

 

援助事業で可能なこと:次の援助を止める

民間企業の場合は?:投資金融やアンタイドローンではJBIC自身が実地モニタリングをすることまで踏み込むべきだが、事業者と借入人が違う場合はどこまでできるのか?