国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会 第1

議事録

 

日時:2000106日(金)午後2時半〜440

場所:国際協力銀行

出席者:

メンバー(敬称略、アイウエオ順)

 一方井 誠治/環境庁地球環境部企画課長

 入柿 秀俊/国際協力銀行開発業務部企画課長

 大村 卓/環境庁地球環境部環境協力室室長補佐

 加藤 修一/参議院議員 代理出席 長谷部 康治/政策秘書

 加藤 隆宏/大蔵省国際局管理係兼環境調整係長

 木原 隆司/大蔵省国際局開発企画官

 小林 香/大蔵省国際局開発政策課課長補佐

 佐藤 寛/アジア経済研究所経済協力研究部主任研究員

 清野 達男/環境庁地球環境部環境協力室技術協力第一係長

 中藤 泉/経済企画庁調整局経済協力第1課長

 林 幸宏/経済企画庁調整局経済協力第1課課長補佐

 原科 幸彦/東京工業大学大学院・総合理工学研究科教授

 本郷 尚/国際協力銀行環境社会開発室環境第1班課長

 前田 匡史/国際協力銀行金融業務部企画課長

 松本 郁子/地球の友ジャパン

 松本 悟/メコン・ウォッチ

 森 尚樹/国際協力銀行環境社会開発室第2班課長

 柳 憲一郎/明海大学不動産学部教授

当日参加者:(敬称略、アイウエオ順)

 中舘 克彦/国際協力銀行開発業務部企画課調査役

 三好 裕子/国際協力銀行金融業務部企画課調査役

議事録作成:

 坂本 有希、大河内 淑恵/(財)地球・人間環境フォーラム

 

<設置要領について>

前田:議事録作成及び公開について、環境庁の協力を得て()地球・人間環境フォーラムに依頼することになりました。議事録を正式に作成するということで今回から研究会の正式の発足という位置付けになります。

 すでに配布済みの「設置要領案」の6点についてこれまでの議論をベースに案として配布しております。特にコメントがありましたらお願いします。

一方井:環境庁メンバーとしては基本的には問題がないと考えておりますが、細部について一言申し上げます。大村さん、どうぞ。

大村:1.設置目的」で「NGO・有識者・関係省庁、ならびに国際協力銀行」と「・」と「、」の使い分けされている意図が不明。同じ立場・位置付けということであればすべてカンマでよい。

 「5.議事録および情報公開」について、ホームページ(以下HP)だけでは、付属資料などが掲載できない場合があるので、ファイルを作成して国際協力銀行広報室や環境情報パートーナーシッププラザ(東京・青山)などに置かせてもらうのはどうか。電子情報だけでなく紙ベースの形の情報提供も透明性の確保に寄与するのではないか。また文書では「ホームページ等により」と「等」を追加する。

 「6.庶務」の国際協力銀行が行う」となっているが、例えば環境庁からもHP立ち上げについては予算的措置をとるなど、参加者などいろいろな人々から情報提供や協力を得ていることを反映して、「国際協力銀行が関係機関の協力を得て」としてはどうか。

 前回、「一般からの意見を受け付けてはどうか」という案が出たが、「7.その他」として「研究会の検討に資する意見や資料については以下に送付願います」ということを、どこかに記述してはどうか。

前田:1点目の「・」と「、」については何の他意もないので、「、」(カンマ)で統一します。他の点についてご意見ございませんか。

松本(悟):「一般からの意見を受け付ける」ことについては私どもも大変賛成。前回の議論では「意見に対して返答はできないけれど、少なくとも窓口は設ける」ということになっていたかと思う。「5.議事録および情報公開」のHPの項目の後に1項目付け足す形でどうか。

松本(郁):5.議事録および情報公開」についてオブザーバーの参加をいかにするかという議論が前回あったかと思う。特に会議の場で意見を発言したい人々をオブザーバーとして参加することを検討すべきではないか。「3.活動内容」の二つ目のところで、「必要に応じ、その検討に資すると思われる情報について、国際協力銀行、参加メンバー、その他の団体等に情報提供を求める」とあるが、オブザーバー参加について「研究会の設置要綱」と別でも構わないが、なんらかの規定を設けて確保してはどうか。

木原:この会はオープンエンドにすべき。現時点では関心のある人がメンバーとして集まっているが、今後議論が進むにつれて関心のある人々が増える可能性もある。オブザーバーもしくはメンバーの参加を追加的に認める形にしてはどうか。

前田:整理をします。

 1)HP以外の情報公開の方法について、国際協力銀行の広報室あるいは地球環境パートナーシッププラザなどにファイルを設けることについては基本的には問題ないと考えられれるが、物理的な制約がないかどうかチェックしたい。→「ホームページを開設する等により」へ変更。

 2)6.庶務」において、参加者が平等に貢献することを明記する。→「国際協力銀行が関係機関の協力を得て行う」へ変更。

 3)一般からの意見を受け付けることについて、「7.その他」として「公表を原則として一般からの意見を受ける」旨を追加する。

 4)オブザーバーの参加は、場所の容量やセキュリティ上から登録が必要となるといった事情から、人数と名前を明らかにするという条件がクリアされれば特に問題ない。

小林:「2.構成」において、「個人の責任において参加」の趣旨は「所属機関を代表するものではない」であれば前者を省いてはどうか。

木原:加えて、現在のメンバーは現時点でこの問題に関心のある人であり、将来増える可能性を踏まえて「現時点の研究会のメンバーは」としてはどうか。オブザーバーだけでなくメンバーが増える可能性もあるので、検討してはいかがか?

前田:具体的に思い浮かべる人がいますか?

林:経済企画庁としては検討しているところ。

前田:それでは、「設置要領」に日付を入れて、随時参加者は更新できる形にする。これまでのところいただいた意見を反映させた案を再度、Emailにて配布します。

 スクリーニングから議論を始めようとEmailでご案内した趣旨は、数人のメンバーからお問い合わせをいただきましたが、国際協力銀行が議論をリードしようということではありません。本来の趣旨は、「メンバー皆さんのコントリビューションをいただきつつ進める」ということです。進め方についても皆さんの意見をいただきたいと考えています。また早速に、今回も環境庁の大村氏および地球の友の松本氏から資料を配布していただいています。ありがとうございます。そこで、議論をスクリーニングから始めていいのか、またはもう少し鳥瞰図を描くような形がいいのか、ご意見をお願いします。

松本(郁):意見を募集する際に毎回のテーマが明らかにならないと、意見を出すタイミングがつかめない。今回、提供した資料の中の「NGOが考えるJBICガイドラインの論点」にあるようなポイントを本研究会で取り上げて、議論できればと考えている。メンバーとしてすでに専門家の方々が含まれていることにあわせて、各々のテーマごとなど必要に応じて専門家を招いて発表をしてもらうことも検討してはどうか。また、NGO側ではJBICの具体的なプロジェクトについてのレビューを進めているところなので、各プロジェクトを事例として検討する中からガイドラインのあり方を考えるという方法も重要だと思います。

前田:二つの問題があるかと思います。全体のスケジュールを決めることは透明性の確保からもいいが、必ずしも予定通りに進まないのではないかという危惧があるので、フレキシビリティをもたせることも必要だろう。2点目としては、「総合的環境政策」とあるように総論から入ると議論が進みにくいのではないだろうか。

 ガイドラインの問題点、議論すべき点はさまざまあるが、一つはプロセスの問題であり、もう一つはポリシーの問題である。この二つをどう組み合わせて議論していくか−。プロセスの第1歩ということでスクリーニングから始めるということは、プロセスのフローがわかりやすく、また順序としてわかりやすいのではと思います。ECGなどの議論も同じ方法で行われている。

木原:タイムラインを決めるのがむずかしいということは理解できる。スクリーニング、レビューといった手続きの流れに沿った形で議論を進めるとわかりやすくなるのではないか。

前田:今のご意見を踏まえて議論のステップを示すということでいかがか。

松本(郁):ガイドラインの見直しの目的を最初に議論しておくべきではないか。手続きの流れからスクリーニングを1番にということだが、その以前にアセスメントをどう捉えるかという点について専門家の意見を聞いた上で、具体的な議論に入ってはどうか。

柳:そもそも論、または総論部分を議論し始めるとなかなか来年3月までには終わらない。「NGOが考えるJBICガイドラインの論点」にあるような論点で大局的に議論を短期間に進めるためには、JBICが考えているガイドライン像を示してもらい照らし合わせながら「たたく」必要がある。しかしながら、本研究会は従来の方法とは違い、メンバーがさまざまな視点・論点をもって議論するという趣旨があるので、そういう方法もとれない。そこで、JBICが既存に持っている、またはこれから作ろうと思っている、環境ガイドラインを示してもらいたいと思います。

前田:国際金融等業務と海外経済協力業務の両方の既存のガイドラインから始めるのが正統的な方法だと思います。全体像はその二つを参照してほしい。正直言って、現時点で統合ガイドラインの姿を私どもが持っているわけではないので、本研究会で議論をしていこうということ。現状と照らし合わせて議論を進めるということであれば、既存の二つのガイドラインとなる。

本郷:実際に既存のガイドラインに基づき具体的なプロジェクトの環境配慮の確認を行っている立場から発言すると、新しいガイドラインをつくるという意味では、これだけのメンバーが集まっているので、さまざまな意見をお持ちかと思う。私としてはそのような貴重なご意見をぜひ聞きたい。

大村:地球の友から提供されている「ガイドラインの論点」のうち「総合的環境政策」といった総合的な項目は最終的には議論すべきだが、プロセスを追う中で、他機関のガイドラインなどとの比較も交えながら具体的な問題・課題・改良点を挙げて議論を進めていく。その中で総合的な論点もクリアになっていくのではないかと思う。

 JBICでは理想像がないというが、最後のまとめを考えると、JBIC側のレスポンス、さらにメンバーからのレスポンスをきっちり出していくことが必要だと考える。

林:プロセスに沿った個別の項目ごとに議論を進めるという方がわかりやすい。既存の二つのガイドラインを統合するにあたり、統合できる・できないポイントをはっきりさせた方がいいのではないか。

前田:大村さんがおっしゃったように、総論的な部分は議論が煮詰まった後にする方が現実的ではないか。

松本(郁):二つあります。ガイドラインの枠組みには政策と手続き、あるいはグッドプラクティスとあるかと思うが、その枠組みを議論して明確にした上で、各項目の議論をした方がいいという意味で「論点」の一番初めに「総合的環境政策」を置いた。もう一つは、国会の議論でもあったようにJBICの環境ガイドラインを国際的な流れに沿ったよりよいものをつくるという目的から、すでにある世界銀行、IFCOECDなどを参考にした中で、手続きを考えていくということも一つの方法ではないか。

松本(悟):全体の鳥瞰図を描くためには「総合的環境政策」として挙げられている論点を議論する必要があるのではないか。そうしなければ議論すべき項目の洗い出しとして、手続きのフローに添った形だけでは不十分で、ポリシーに触れるまたはまたは他機関との比較という作業が伴う鳥瞰図を描くことも必要だと思われる。順序は別にしても鳥瞰図を描く作業は必要。

柳:鳥瞰図の描き方には、1)枠組みを決めてから個別項目に、2)個別項目から問題を抽出して枠組みに落としていく−と二つある。時間的には2)の方がいいのではないか。個別項目を議論する中で、それぞれの問題を全体の枠組みのどこに置くかをイメージしながら議論を進めてはどうか。

松本(悟):その場合、個別項目の列挙・精査はどうなるのか?

柳:二つのガイドラインにおいて統合できる・できない部分を明確にしてもらうこと。さらに「できない」部分でも、よりよいガイドラインづくりという観点から工夫すべき点など、現在のガイドラインで問題となっている部分を洗い出していけば自ずから列挙・精査されるのではないか。

佐藤:メンバーの参加目的がさまざまなので、政策を語ることに益があるのかどうか疑問がある。むしろ手続きを追って議論を進める方が短い時間の中で意味のある議論ができるのではないか。よりよいガイドラインをつくることを目的に自由に議論する場を設けることが目的だとすれば、できるだけ政策に触れずに手続きを議論すべきではないか。

柳:手続きを議論してもそれが政策に反映されなければ意味がない。本研究会の議論の結果は提案でしかなく、政策に盛り込むかという点の決定権はJBICにあるが、望ましい政策のあり方について本研究会の提案をすべき。

松本(郁):環境ガイドラインの目的をはずしてその手続きだけを論じることには無理があるのではないか。また、メンバーが枠組みを頭に描きながら個々の手続きを見るという案では、その枠組みがメンバーで共有できているのかどうかという点が疑問。短い時間で構わないので、枠組みについて共有化する時間を設けてほしい。

 なお「JBICガイドラインの論点」にある「総合的環境政策」は、JBICの政策というよりはガイドラインを作る上での目的をはっきりさせるべきだということを指している。

大村:政策、例えば経済協力業務では「開発援助における環境配慮の目的は、開発途上国が自助努力により持続的な開発を達成することを支援することにある」とガイドラインに明記されている。これで十分なのか、十分でないのか、あるいは国際金融等業務と統合する際にどうなるのか−という議論が成り立つのではないか。それともそれ以上に大きな枠組みなのか、あるいはBank PolicyBank ProcedureGood Practiceといった組み立てがされている世銀との比較をするのか、具体的に議論をすべき。

入柿:現存のガイドラインも政策、手続き、基準のいずれであるか簡単には割り切れない。実はこの点はガイドラインが設置された際に最後まで議論になった経緯がある。ガイドラインの目的については、例えば環境アセスメントについての理解がメンバーによっても違い、また新しいとらえ方が出てくることもあるので、みんなが共有していない。よって本研究会でも、総論の抽象的な議論をするよりも個別の項目を議論する方がやりやすいのではないか。議論すべき項目は、松本さんがつくられた「JBICガイドラインの論点」で尽きているのでは、総論部分を後回しにしてこれに沿った形でどうか。

前田:1)議論のステップを定めて、鳥瞰図をつくる作業をする、2)総論の議論は後回しにすべきかとも考えたが、現存する(統合前の)二つのガイドラインには「目的」が簡単だが定められている。そこに例えば責任の所在に対してJBICがどういう立場を取っているのかといったコアの部分について、現行の世銀など先進事例との比較などを交えて検討・議論する。しかし結論をその場で出すのではなく、その後にプロセスを議論する際に意識しておくべき論点を整理するという形であれば、むしろ早い段階で行った方がよいのではないか。また、プロセスにおいてスクリーニング、スコーピングなどでカテゴリに分けられるが、カテゴリが示すもの−作業の度合い、プロジェクトの性質−は何なのかなど、結論を出さずに、目的、位置づけなどを抽出して議論できるのではないか。

松本(郁):ガイドラインの目的を本研究会で明確にする、あるいは意見交換できればと考えている。

前田:結論は後回しにして、ガイドラインの目的・位置づけなど総論部分について既存のガイドラインの考え方とその問題点、今後の議論の中で意識すべき論点ををさまざまな角度から洗い出すのはいかがでしょうか。ペーパーを用意し、次回会合で配布するので、活発な意見をいただきたい。

一方井:現実的な案で賛成。

原科:議事録について発言者名が明記されて公開されることは確認されましたか。

前田:はい。

 

<スクリーニングおよび議論の進め方について/提供資料に基づいて>

前田:今回提供された資料について簡単に説明をお願いします。

大村:スクリーニングについて資料をいくつか用意しました。<資料「スクリーニングについて」に基づき説明>

松本(郁):大村さんの説明と重複しない点で強調したい点だけ申し上げます。カテゴリ分類によるその後の手続きの違いを明確にすべきである。特に情報公開における記述がどのカテゴリ分類においても現行のJBICガイドラインではまったくない。

 スクリーニングのカテゴリ分類において、サイト特性とプロジェクトのセクター、さらに予見される環境影響の大きさ−三つのいずれかに当てはまればカテゴリAに入るという方法は引き続きとられるべきではないか。

 特殊形態ローンなどの場合に、IFCのように金融仲介者(FI)に対して1週間のトレーニングを義務づけるなど、別の枠組みを考える必要があるのではないか。

 IFCのようにスクリーニングを2段階に分ける−Project Datasheetの段階で担当者が行い、appraisalの段階で環境室が再度見直す−という方法を取り入れてはどうか。

前田:いくつかの点についてコメントします。特定の物質の輸出などについて禁止する除外リストはECGでもアメリカが提案していますが、ほとんど支持されていない状況である。

 FIカテゴリは金融仲介者のキャパシティビルディングに関わる。EBRDが今年の3月にワークショップを開いたという話を聞いている。論点としてはあるが、現段階では具体的に手がついているとは言えない。

 スクリーニングにおけるカテゴリ分類の特定方法は統一すべきだと考える。カテゴリABCによってその後の手続き、スクリーニングの時期などを明らかにする必要がある。

本郷:旧輸銀のガイドラインを見るとカテゴリごとに手続きがまったく違うような印象をもたれるかもしれないが、Bに分類された中に実際には2種類あり、注意深く調べる必要ありと判断されたものは、Aとまったく同じ手続きをとるものもある(現地調査を含む)。ガイドラインには「必要に応じて現地実査を行い、環境配慮の確認を行う」とある点を、実務レベルでは重く受け止めて運用している。

 スクリーニング時期については、できるだけ早い段階からプロジェクトを環境側面からみていいこうと努力している。実際の融資部からも環境影響が大きいと思われるものについては早期より相談を受けている。正式な借入要請が来ない限り本格的な調査はできないが、できる範囲で行っている。日本企業と海外企業が競争している段階において、JBICが介入するのことは本行の金融支援の意図について誤った印象を与えることになる。

前田:そのような場合に配慮する必要があるのは理解できるが、それがガイドラインにわかりやすい形で明記されておらず、対外的に説明できる状況になっていないのが問題だろう。カテゴリB2種類あるとすれば、指針などを示し明確にすべきだろう。競争があるという制約条件なども明確にすべき。

原科:それらを明確にしておけば要らぬ疑いを招かない。

大村:旧輸銀のカテゴリAでは「借入人等から提供される『スクリーニング用フォーム』、(英訳または和訳された)環境影響評価書(EIA)、さらに必要に応じて住民移転計画、先住民開発計画等の情報に基づき」とあるが、環境影響評価書は必ず借入人に義務づけられているものですか?

本郷:これまでカテゴリAに分類されたプロジェクトでEIAがないプロジェクトはなかった。また義務的なものである。

林:スクリーニングの基準は客観的であるべきという大村氏の指摘があったが、両業務間においてスクリーニングにかけられる時間がかなり違うのではないかと思われるのだが? 旧輸銀ガイドラインで地域特性だけが分類の基準として設定されているのでクイックレスポンスが可能という事情があるのではないか。業務の特殊性とスクリーニング基準の違いという点は?

前田:地域を挙げたのは、借入人にとってのわかりやすさを考えたためでも。JBICの裁量部分が大きい、つまり明示されていないと借入人にとって不利益が生じる可能性がある。借入人にとっての義務が明示されていれば業務の特殊性によってスクリーニング基準を変える必要はないように思う。

 旧輸銀業務の中でもアンタイドローンと輸出信用では情報をJBICが入手するタイミングもJBICの実施主体に対する関係も違うが、それを一律に記述している点がわかりにくいのではないか。むしろ、輸出信用のように競争がある業務では必ず制約があるので、例外項目として明らかにすべき。

原科:一般的に考えると意思決定の段階の早期にスクリーニングをすべき。というのは、タイミングが遅くなればなるほど、影響の不確実性が低くなるが、一方で環境保全対策や代替案をとるフレキシビリティが低くなる。考慮すべき環境影響は段階によっては変わらない。むしろ保全対策や代替案への制約が高くなる。スクリーニングに関してはどのような影響があり得るのかが問題となるわけですから、基準はそれほど変わらないのではないか。スクリーニング基準の客観性を高めるには、多くの事例を元にした情報収集が必要となり、事例(=情報)が少ない場合には透明性を保つような協議が必要となる。

本郷:旧輸銀のガイドラインでABの違いは、後の段階ではコントロールしにくいものをAに、比較的後の段階でもコントロールできそうなもの、例えば工場建設などをBにしている。事業特性とスクリーニングのタイミングの相関関係はどのように考えればよいのでしょうか?

原科:今おっしゃったことは実際的な判断だと思うが、相関関係が明確にあるかどうかは議論を必要とするところ。

柳:カテゴリ分類を後の段階で見直すことができる柔軟性を持たせる工夫が必要。

原科:情報が新しくなった時に分類のやり直しができるようにしておくことはきわめて重要。

松本(悟):カテゴリFIについて重要性は認識されてはいるものの手は付けられていない状況だという前田さんの指摘がありました。最近、プログラムローンなど新しいスキームが増えているにもかかわらず、ガイドラインを設けている機関は世界でも例がないが、もしJBICの統合ガイドラインにプログラムローンについての記述が入れば世界で初めてということになる。今回はこの点について検討される余地があるのか?

前田:プログラムローンにはさまざまあり、国際収支支援のようなものは別だと考えられるが、FIと同様にプロジェクトとある程度バインディングしたものについては考えられる。

原科:プロジェクトの上位計画にあたるようなものですか。

前田:そうです。

松本(悟):構造調整用の融資など、特に農業セクターなど環境に関わりの高いセクターでのリフォームとしては難しいということですか?

前田:というより、資金の使途が特定のプロジェクトと結びついているものとそうでないものがある。結びついていないものについては契約上もしばれない。JBICが主体的にチェックしようにも、その客体がないので難しい。

大村:事業者(借入人)側にとっての予見可能性を高めることは重要で、数値基準を設けている例が世界各国では多いが、援助機関では対象国がさまざまなので案件ごとに検討する状況はいたしかたないとすれば、事例を挙げるしかないと思われる。

 セクター調整貸付などプログラムローンの一部については、世銀では環境配慮ガイドラインのスコープに取り入れているおり、適切なEA(環境調査)をやることと定めているが、具体的なプロジェクトにつながっているか否かによってやり方を変えている。

本郷:大村さんに質問ですが、物質の取り扱いに関する国際条約がいくつかありますが、それについて署名・批准していない国があります。除外リストを設けるべきなのでしょうか? しかし、署名はしたものの批准はしていない等その中途の状態もありうる。また仮に除外リストを設けたとして、現実にどうやって確認できるのだろうか?

柳:国際条約はグローバルスタンダードとしてとらえ、貸付側の姿勢を示すか示さないかということではないか。

大村:禁止物質などをいかに確認するかという方法について世銀やIFCなどの機関で確立されているかどうか確認してみる必要がある。一般には、国際条約を進める側としては、その姿勢を示すことが必要。

本郷:署名しているが、批准していないという国に対しての場合、政府機関としてどう対処すべきなのだろうか?

大村:実際にこのような例があるのか?

本郷:条約名を忘れたが(注:ロッテルダルダム条約)、農薬ではなかったかと思う。

原科:署名して批准されていない場合でも、署名をした以上はいずれ批准されるはず。つまり時間の問題なので、JBICのスタンスをどうとるかという問題ではないか。

松本(郁):議論が少し戻るのですが、旧輸銀業務ではカテゴリA分類基準が地域特性だけということは確かにわかりやすい。米国OPICの場合、カテゴリAに入る事業が具体的に例示されている。必ず入るものが明らかになっている点は取り入れるべき。

 旧輸銀のカテゴリCが広いという点が懸念される。そこで、「ポジティブリスト」という形で、例えばソフトウェアや通信分野のプロジェクトなど環境配慮ガイドラインの対象とならないものを限定して、その他のものは最大限、環境影響の考える手続きに入れる必要がある。

本郷:絶対にだめなもの、絶対に問題のないものをはっきりさせてもらうと現場にとってはありがたい。しかし、現実的には難しいのでないか。

原科:ACをクリアにして、その他はBにするのがよいのではないか。

前田:借入人と実施主体が一致しない国際金融等業務では、借入人の負担を考えると、カテゴリ分類の例示は意味がある。カテゴリCをクリアにするのは、環境影響がまったく考えられない分野・セクターを特定できるかという点と、JBICの関与が小さいケース、つまり他の機関が融資しているもの。足切りをする融資金額をどこに設定するかは考えるべき点だろう。カテゴリCは誰がみても環境影響が心配ないものに限定すべき。

松本(郁):融資金額で足切りをすることは危険ではないか。米国OPICでは自らの融資金額が低い場合でも、当該プロジェクトに重大な環境影響があるかないかの確認を事業者に義務づけている。

前田:今回のカテゴリ分類に係る議論はJBICでも十分検討していきたいと思う。

 次回は、今回の議論の続き、特にカテゴリ分類のためのスクリーニングフォーム(旧輸銀業務)にあるような、どんな情報をいつ、誰からとるかについての議論を行いたい。また、次回、私の方から、JBICの現行の環境ガイドライン基本的コンセプトを示したい。

原科:どういう情報を、いつ、誰がという議論をするために、業務によって違うのではないかと思われるので、カテゴリごとに具体例を示してほしい。

松本(郁):特殊なローンは個別に検討すべきだが、至急に決断をせまられ、時間をかけられないものなど、通常のスクリーニングの枠組みに入らないものにどういうものがあるのか情報を提供してほしい。

前田/本郷:検討させてください。

 

次回の日程は1023日(月)午後5時〜