国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会 第11

議事録

 

日時:2001327日(火)午後5時〜7時半

場所:国際協力銀行7階 中会議室

出席者:

メンバー(敬称略、アイウエオ順)

 入柿 秀俊/国際協力銀行開発業務部企画課長

 大村 卓/環境省地球環境局環境協力室室長補佐

 加藤 隆宏/財務省国際局開発政策課係長

 川崎 研一/外務省経済協力局有償資金協力課企画官

 北野 充/外務省経済協力局有償資金協力課長

 木原 隆司/財務省国際局開発企画官

小林 香/大蔵省国際局開発政策課課長補佐

 洲濱 隆/国際協力銀行環境社会開発室環境第1班副参事役

 松本 郁子/地球の友ジャパン

 本山 央子/地球の友ジャパン

 森 尚樹/国際協力銀行環境社会開発室第2班課長

当日参加者(敬称略、アイウエオ順)

 中舘 克彦/国際協力銀行開発業務部企画課調査役

中寺 良栄/(財)地球・人間環境フォーラム

 福田 健治/メコン・ウォッチ

 三好 裕子/国際協力銀行金融業務部企画課調査役

議事録作成:

 坂本 有希、畠中 エルザ、満田 夏花/(財)地球・人間環境フォーラム

 

入柿:本日はFinancial Intermediary(ツーステップローン)の扱い、地球の友ジャパンからご提案のガイドラインの効果的な実施について、という項目立てだったが、あわせて世銀グループのヒアリング結果のご説明を地球・人間環境フォーラムからいただき、最後に今後の進め方のご提案を地球の友ジャパンからいただいたので議論したい。その前に、大村さんから出していただいている資料についてお話いただく予定だ。

大村:前回配布予定の資料「各援助機関・輸出信用機関のモニタリング」を出させていただく。

 

<プロジェクトの社会・環境配慮の質の向上に向けた評価・監督に関する世銀・IFCの取り組みについて>

中寺:環境省の委託事業の一環としてワシントンにて世銀グループ等の環境社会配慮の取り組みに関する調査をしてきた。この研究会ではこれまでプロジェクトの審査の段階についての議論が重ねられてきたようだが、ここでは、視点を変えて、ワシントン訪問で特に印象深かったプロジェクトの質の向上を目指すこれら機関の評価・監督のシステムについてお話したい。ついで、世銀等における環境アセスメント、プロジェクトの実施、評価、監督の技術的バックグラウンドとしての『Pollution Prevention and Abatement Handbook(汚染防止・削減ハンドブック)』についても簡単にご説明したい。<「世銀とIFCのプロジェクトの質向上に向けた評価・監督システムと世銀の汚染防止・削減ハンドブック(PPAH)について」に沿って説明>

入柿:大変参考になりました。ご質問等はありますか。

森:Inspection Panel(査閲パネル)やオンブズマンの人選はどのように行うのか?

中寺:Inspection Panel(査閲パネル)にはまず地域別割り当てがある。北米から1人、欧州または他の貸付金出資国から1人、借り入れ国から1人となっている。現在は北米・欧州から各1人、そしてもう1人は以前はアフリカからだったが、今はコスタリカから来ている。これに加え、高潔性、実績があること、開発問題に詳しいことといった条件があるが、実際は理事会が選定する。IFCのオンブズマンは一般公募をして、応募して来た人をNGO、プライベートセクターとで構成されるパネルで選定するわけだ。

森:Quality Assurance and ComplianceQAC:質保証・遵守)グループがみるのは環境の観点に限るのか?

中寺:QACは社会面にも踏み込んだ活動をしているが、実は社会面を担当する社会開発局が別個にあり、そこにも似た役割を果たす人がいる。かなり連携しているようだ。

森:この担当者は世銀の職員か。

中寺:その通りだ。しかし少し距離を置いた位置からかなりの裁量をもって監督等している。

森:何人くらい配置しているのか。

中寺:数人でグループを構成している。

入柿:QACEnvironmentally and Socially Sustainable Development NetworkESSD―環境社会持続可能な開発ネットワーク)の中ということか?

中寺:そうだ。ESSDの中に環境局と社会環境局があり、また農業開発の担当局がある。

木原:QACは、QAGとは違うのか?

中寺:組織改革が重なった結果、一年程前にQACに組織化された。

木原:QAGの主たる目的は、quality at entry(入り口での品質)ということでプロジェクト開始前にどこに注意しなければならないのかをみる役割だった。

中寺:QACはサイクルのもう少し後の方を担当するわけですね。

本山:QACが発足する前のNGOとのコンサルテーションの場では、いくつかの重要な案件についてはQACがクリアランスを出す機能を持つということだった。

入柿:Inspection Panel(査閲パネル)とオンブズマンで、申し立てが受理されなかったケースはかなりあるのか?

中寺:オンブズマンは6件中2件が受理されなかった。そのうち1件は協調案件で、問題部分がIFCよりもむしろ他機関の範疇のものであった。もう1つは被害者を代表していないとして申し立ての適格性が問題とされた件だった。しかし実際のところコンタクト自体は20数件あり、オンブズマンは、適格性のありそうなところには正式な手続きを促すそうである。パネルとオンブズマンの違いは、オンブズマンは文書以外での申し立てができて柔軟性が高い点が言えるかもしれない。設立以来Inspection Panel(査閲パネル)は21件受け付けているわけだが、ここでも不受理のケースは協調案件の場合や申し立ての適格性が問題とされたような場合だ。NGOが被影響住民をサポートするような場合、そのNGOが真にその住民を代弁しているのかの証明が問題とされたり、その国に居住していないといけないといった要件があって受理されなかったケースもあるようだ。

入柿:前回の議論では誤解があった。パネルの役割は、世銀自身がきちんとやったかを調査することなのですね。

中寺:その通りだ。パネルは理事会に報告する立場だ。世銀マネジメントが何らかの手続きをきちんと踏まなかったことで被害が生じているのかどうかを調査するわけなので、救済機関ではない。

入柿:借入人の同意は無関係で、オンブズマンとは違うわけですね。

中寺:その通りだ。オンブズマンは両者の間に入って解決のオプションを示すわけだ。申立人がそれを不服とするならば、当事国で裁判を起こすなりしてもらうわけで、解決させるところまで持っていくわけではないが。

大村:斡旋はするが調停はしないということだろうか。

中寺:そういう雰囲気だ。

木原:PPAHについてだが、世銀の示すセクターに加えてIFCがセクターを加えて対応している理由は、プロジェクトスポンサーが民間だということだが、もう少し詳しくご説明願いたい。

中寺:世銀が示している39セクター別の一律基準だけでは押さえきれない業種の多様さの問題があった。さらにIFCの場合は、このような条件を満たすことのできる人に借りてもらうという姿勢があり、また顧客には厳しい環境配慮に理解のある先進国企業が多い。IFCが業種別に基準を細かく示せば、借りて側が対応してくれる状況がある。

大村:IFCはレビュー対象が広い。世銀としてはセクターを増やしたくないという事情があり、IFCがセクターを増やそうと働きかけても世銀の動きが鈍いのでIFC側で作ってしまおうということだ。切実性が違うわけだ。IFCの場合は、lending formに基準値などを条件として入れなくてはいけない事情があるが、世銀は参考指針として出しているだけなので、lending formに欠けていてもその都度示せばよい。本来ならば世銀とIFCがまとめて作るべきところだが、世銀の腰が重いのでIFCが先に作っている。

入柿:IFC独自で道路などについて基準を設けている事情がよくわからない。

大村:騒音、タイヤくずや重金属の含まれているような排水などのこともある。

入柿:PPAHは、JBICでいうとチェックリストにあたるのだろうか?

大村:チェックリストの中の基準と、さらに具体的な規制値まで含むし、どのような工場でどのような環境対策・装置が必要かといったことまで含める。Best Available Technology(既存の最先端のテクノロジー)とまではいかないが、大体とるべき標準を示している。

入柿:前回の議論との関係でも大変参考になる情報でした。

大村:環境省から地球・人間環境フォーラムへの委託ということで、最終的にはもっと詳しい分析結果等を報告書にまとめる予定だ。

 

<ツー・ステップ・ローン/FIの取り扱いについて>

森:<「統合環境ガイドライン外部研究会資料/ODAツー・ステップ・ローン(TSL)における環境審査・監理」に沿って説明>

通常、海外経済協力業務では一つのプロジェクトに貸し付けを行うが、ツー・ステップ・ローンの場合は、現地の金融機関を通じて最終的に複数のプロジェクトに貸し付けを行う。エンドユーザーは数十から数百にもなり、日本で例えて言えば中小企業金融公庫のような機関が多数の中小企業に融資を行うというイメージである。これらエンドユーザーについて個別にJBICが審査することは困難であることから、実際に個別に融資を行う仲介銀行に審査・資金管理を担当してもらうのが特徴である。年間の円借款案件数は約100件だが、そのうち数件のみがツー・ステップ・ローンである。これはこの手法を適用可能な国が少ないことによるものと思われる。ツー・ステップ・ローンでの貸し付けは現地の通常の貸し付けよりも緩やかな金利・条件でやっているので、ターゲットとしているエンドユーザーがよりソフトな条件でお金を借りようとする金融セクターでの歪みが生じるので、当該国の仲介銀行や金融制度がきちんとしていないといけない。例えば市場経済に移行中である中国やベトナムでは、今のところツー・ステップ・ローンの例はない。

三好:国際金融等業務でも仲介銀行は通常、途上国の公的金融機関である。転貸先のプロジェクトは、あらかじめ特定された一つのプロジェクトである場合と融資承諾時には特定されていない小規模多数のプロジェクトである場合の両方がある。あらかじめ特定された一つのプロジェクトの場合は、転貸タイプでない通常の融資と同様の環境審査を行う。一方、対象となるプロジェクトがあらかじめ特定されず、複数想定される場合は、L/A締結後に個別のプロジェクトについて借入人からプロジェクト申請がバラバラと入ってくる。このような融資に関しては、現状では通常の環境審査は行っていない。ただその代わりに仲介銀行との間のL/Aに、プロジェクト承認の要件として現地の環境基準の遵守を規定しており、これをもって環境配慮の確認を行っているものと認識している。

入柿:それでは、メコン・ウォッチの福田さんからお願いします。

福田:<「ツーステップローンにおける環境配慮」に沿って説明>

入柿:ご質問等ございますか。

本山:国際金融等業務の方のイメージが湧かないが、ODA業務ではL/A締結時にはエンドユーザーが誰かわかっているということか?分かっている場合に、何故そのエンドユーザーが直接借り入れずに転貸の形をとるのか?

入柿:基本的にはエンドユーザーが誰かわかっていない。

三好:国際金融等業務ではあらかじめ一つのプロジェクトが特定されているケースがある。この場合にエンドユーザーが直接借り入れないのは、中国など途上国によっては対外借入の窓口になる銀行が決まっているところがあるためである。こうしたケースにおいては通常の環境審査を行っているが、一般に言われるツーステップローン、転貸先にいくつも小さなプロジェクトがぶらさがっているようなものについては、通常の環境審査を行うと時間がかかることもあり、仲介銀行による環境審査をもってJBICによる環境審査に代える。この仲介銀行による環境審査がきちんと行われることを担保するために仲介銀行とJBICとの間のL/A上に現地国基準の遵守義務を規定している。

大村:国際金融等業務の手続きでは、スクリーニングフォームやモニタリングフォームの提出を転貸銀行に求めるということか。それとも事業実施者から転貸銀行の方へ提出させるのか。

三好:L/A締結後に個別にプロジェクト承認が行われるが、その段階でJBICの融資担当部でスクリーニングフォームを徴求しているケースと、徴求していないケースがあるので、この点は見直すべきだと認識している。

大村:概念としては、転貸銀行が審査するが、その審査はJBICのガイドラインに準じて行われていると考えてよいわけですね。

三好:ただガイドラインに準じて審査せよということはJBICと転貸銀行の間のL/A上には規定していない。審査のやり方については転貸銀行に任せているが、その結果として現地基準を遵守すべきことをL/A上に規定している。

本山:個別案件について現地基準と合っているかどうかJBICが承認をしているのか?

三好:申請ベースなので個別の案件についてJBIC自身が審査することはない。

大村:虚偽があった場合は、転貸銀行が虚偽の報告をしたことになるわけだ。

 国際金融等業務、海外経済協力業務の両方についての質問だが、ツーステップローンになるようなものはそもそもカテゴリBC案件と考えてよいのだろうか?

入柿:必ずしもそうではない。

森:例えば中小企業でもにかわ産業など環境影響が大きいものについては、個別ではないがセクターとして危ないということで、カテゴリA案件になり得る。

木原:その場合は、例えばにかわ産業に融資する可能性のある国営工業銀行にツーステップローンを出すわけか。

森:プロジェクト規模にもよるだろうが、基本的にはエンドユーザーが仲介銀行に申請した時にEIA(環境影響評価書)の提出を義務付ける形で今のガイドラインを準用して対応できるかも知れない。

大村:L/Aも結んでいるけれども、サブプロジェクトでAに相当するような規模のものがあがってきた時には、JBICとしては承認もして行くわけですね。そしてBCに相当するものは相手に任せる。ある程度の規模であって、影響を与えるサブプロジェクトは事前にJBICの承認を必要とすべきとの福田さんのご提案はほぼ現在のJBICのオペレーションと同様ではないか。

入柿:我々が考えるツーステップローンは、多くの民間エンドユーザーに貸し出す銀行に、我々が貸すイメージだ。問題となっているタイのサムットプラカーンの例は、大規模な公共事業であり、特殊な事例だ。一般のツーステップローンでは、仲介銀行に環境ガイドラインにのっとった審査を任せるのが通常だ。個別のサブプロジェクトを承認するかどうかについては、事業監理の観点からは、例えば最初の5件を確認して、あとは事後報告だけ、もしくは一定金額以上のものに関してはチェックすることで対応している。サブプロジェクトは数百、数千件にのぼることもあるので、カテゴリABと簡単には分けられないイメージだ。

加藤:仲介金融機関の環境審査マニュアルというのはどの程度のものなのか?

森:基本的には彼ら独自のやり方があって、それと我々のガイドラインとを照らし合わせて修正事項として足してもらう形で対応することになると思う。

福田:JBICで引き取ってレビューをやるのは、ある一定額以上といった金額の形で決められているのか。

森:事前にサブプロジェクトが特定されている場合は、事業規模、影響などがわかっているので、承認に出してもらう。一定額以上のものをみるということではなく、個別に判断している。

福田:それはL/Aに書き込んでいるのか?

森:書いてあると思う。

入柿:承認に関係するものは書いてある。

本山:国際金融等業務では仲介金融機関の審査能力をどのように確認しているのか。

三好:当該国の基準を守るというL/A上の規定があるため、仲介金融機関の審査能力は特にみていない現状だ。

木原:国際金融等業務におけるツーステップローンの典型例は何か?

三好:輸出信用またはアンタイドローンで転貸先のプロジェクトがあらかじめ特定されているものの途上国側の事情により金融機関が仲介している場合と、アンタイドローン等で転貸先プロジェクトが複数想定されている場合の二つだ。前者の例としては、発電所建設プロジェクトのための資金を、当該国の開発銀行が借りてプロジェクト実施主体に貸し付ける場合があげられる。後者には中小企業支援ローンが多い。

入柿:実際のオペレーションでは規模の大きいものは国際金融等業務で、規模の小さいものは円借款でなどというように対応することも多い。

川崎:JBICでは当該国の基準は把握しているわけですよね?

三好:そうです。

本山:それでは海外経済協力業務では仲介機関の審査能力や環境監理能力等の確認を比較的厚くやっているが、国際金融等業務ではそこまでしていないという理解でよいのだろうか。

三好:国際金融等業務では「現地国の環境基準の遵守」という結果でみていくということです。

本山:そのあたりの方向を一致させていくということは可能だろうか?

三好:FIカテゴリを作り、金融仲介業者の環境審査能力などを審査していくというのは、現在の国際的な流れのように思う。この機に国際金融等業務でも見直して行きたい。

木原:対象プロジェクトが似ていればODA業務のやり方に習うのも可能だろう。

小林: もし何らかの形でサブプロジェクトが現地国基準を満たしていないという指摘があれば、JBICとして調査をすることは可能か。

三好:通常、環境問題に限らずL/A上には対象プロジェクトに係るJBICの調査権が規定されている。調査の結果、明らかに契約違反が判明した場合は融資のサスペンドや、アクセラレーションを行うこともできる。

大村:仲介機関に審査を任せる場合は、相手国が一定の基準・手続きを有することをおそらく想定している。但し規模や影響が大きいプロジェクトに関しては、JBICがカテゴリAに分類した場合は、相手国の基準・手続きの如何にかかわらずJBIC所定の手続きを踏むことを義務付けるのが今の流れである。しかしそこまで相手にやってくれと言うのか、それともJBICで引き取るのか、そうであればどこからをJBICで引き受けて審査するかの線引きは解決しないといけない問題だ。私の理解ではカテゴリAのような案件はそもそもツーステップローンにはなじまないという認識なのだが、いかがだろうか?

入柿:中小企業のメッキ工場に汚水対策のために貸し出すといったものよりも、むしろもう少し公共性の高いものをイメージしている。

大村:中小企業のメッキ工場の場合は、おそらくB案件だろう。基準が決まっていて技術を投入すれば対応可能なプロジェクトである。もう少し規模の大きいものや大規模な住民移転を発生させるようなプロジェクトはそもそもツーステップローンで扱わないということにしておいて、ツーステップローンでカテゴリAに当たるような案件が出て来た時には特別扱いをしてJBICの承認を要するようにするということだろうか。

入柿:そうだろう。ガイドラインにどう書き込むかが問題だ。農民向けのローンと同列に扱うのは少し違う。

川崎:先程の入柿さんのお話では、「はじめは誰が相手かわかっていなくて、後で大規模なものが入っていたタイの例はかなり特殊で事例が少ない」とのことであったが、そうすると、網をかぶせる必要のあるような、全く相手がわかっていない場合というのは、論理的にはあり得るが、実際にはあまりなさそうということか。

入柿:今後考えられるのは、自治体に転貸されて行くようなものだ。これはサブプロジェクトが多数あるという話にもなる。何らかの形でカテゴリ分けをしてやっていくべきことと思う。

 それでは「ガイドラインの効果的な実施に関する提案」について地球の友からプレゼンテーションをお願いします。

本山:具体的ではないが、世銀やIFCを念頭に置いた提案です。(2)についてはあまり情報がなかったので中寺さんからの情報提供は大変参考になった。<「ガイドラインの効果的な実施に関する提案」に沿って説明>

北野:ご提案の「機能」とはJBIC内部のものか、外部のものか?

本山:基本的に遵守監視は内部機能が適当かと思う。問題解決機能については、外部に人を置くか、内部に置いて外部の人を取り込む形にするのもよいと思う。

木原:今ある組織と新たに作る組織を考えると、遵守監視・確保機能は環境社会室が担い、問題解決機能はオンブズマンのように新たに作るというイメージだ。

入柿:「遵守状況」というのは具体的には何をイメージしているのか。ガイドラインに照らしてきちんと審査したかをみるのか、それとも自然環境に重大な影響を及ぼしてはならないとガイドラインにあって、それを確認はしたが実際には問題が生じたかということをみるイメージか。それとも両方か。

本山:世銀の例をみても、すべての案件についてチェックするのは難しいので、実際にはカテゴリAを中心にみていくことになるだろうが、やはり両方ではないだろうか。

入柿:遵守監視・確保機能は世銀のInspection panel(査閲パネル)で、問題解決機能はIFCのオンブズマンのイメージだろうか?

本山:むしろ遵守監視・確保機能は世銀のQACに近いのではないだろうか。

入柿:JBICでは環境社会室が遵守監視・確保機能に問題解決機能をあわせ持っているかもれない。

松本(郁):遵守監視・確保機能は、確かにある程度は環境社会室が果たすものと思う。ガイドラインの見直し等の役割を含め、その機能を強化していくべきではないだろうか。

大村:「ガイドラインの効果的な実施に関する提案」の資料の中で、いろいろな言葉が使用されているので、確認したい。ガイドラインの「遵守」、「実施状況」、「評価」という言葉が出てくるが、ガイドラインというのは、本来JBICが従うべき手続き・基準を定めている。その「実施状況」であったり、「評価」をするわけだ。個別プロジェクトにおいて相手側はどうだったのかというのは、モニタリングの問題で、ここでの遵守の話ではない。分けないと混乱すると思う。

松本(郁):イメージしていたのは、環境社会室が新ガイドラインに基づいて遵守するようにしていくというものだが、特に問題が大きいもの、例えばカテゴリAについてはもう少し丁寧に見ていく機能があってもいいのではないかという提案だ。

本山:基本的な問題意識は、新ガイドラインの導入によってどのようにJBICの環境パフォーマンスを向上させるかということだ。この提案でもそこに力点を置いている。

入柿:世銀ではESSDのネットワーク組織の中で、QACがチェックするわけだが、JBICでは、開発部が案件形成をして審査もする。第一義的には環境社会室がこれをチェックするが、審査責任も負う体制であり、これがきちんと分かれていないのが問題かもしれない。また社内的には、環境社会室がガイドラインを遵守しているかどうかということを監視・確保するのは検査部であり、内部監査で総裁に報告することになっている。これはオペレーションからは独立している。この部分を強化することで対応できるのではないか。

本山:3年後のガイドライン見直しを想定して、検査部に遵守状況監視の役割を期待することはできるのか?

入柿:理論的には期待できるが、実際には無理だ。

松本(郁):機能強化は可能だろうか?

入柿:理論では可能だが、実際にはガイドラインの評価は環境社会室が中心にやるのが適当ではないか。

本山:セクター別のガイドラインの改訂勧告等はJBICではどこの部署に期待できるのか?

入柿:現実のオペレーションとしては、ガイドラインの改訂等は環境社会室がやるのが現実的なように思う。

木原:評価室の業務の中に環境面のものは入っていないのか。

入柿:もちろんプロジェクトごとにはある。テーマ別の評価を行うことは今後の方向性だが、それは現行の事後評価の仕組みとは少し異なる。

川崎:環境社会室が自らの機能を強化して、遵守状況のチェックも、ガイドラインの見直しも、組織内部でのガイドラインに関わる役割分担の特定も主導していくということで良いのか

木原:評価室が出す環境をテーマとした評価をもとに環境社会室が発議できればよい。

川崎:ガイドライン見直しのガイドラインという感じだろうか。

木原:ガイドラインというよりはむしろレファレンスという感じだろうか。

入柿:どこの部署がやるのかという点は置いておいて、ガイドラインの評価、それに基づく見直しができる仕組みができていて、また遵守監視・確保機能、問題解決機能があるべきだ。

川崎:ガイドラインの遵守に加えて、問題が起きた時の対応も環境社会室の機能強化で対応できるのだろうか。

入柿:環境社会室が遵守監視・確保機能と問題解決機能の二つをあわせ持つのに問題があるのかもしれない。

川崎:自ら守るべきガイドラインを作成し、さらに遵守しているかどうかを自らが評価するというのがうまく機能しないのかもしれない。

本山:環境社会室の機能をもっとオープンにし、ステークホルダーにもきちんと見えるような形を考えてもよいと思う。

森:世銀の環境局はセクターごとにレビューすることはあっても、個別案件をみることはない。一方で地域局に環境審査官がいるので、審査する人とそれをチェックする人は別である。JBICでは人手がないということもあって、環境社会室では個別の審査もすれば、ガイドラインの遵守もみている状況だ。これには個別案件のことがよく理解できるというメリットもあるが、そこをどうするかが今の議論だ。

大村:ガイドライン強化を受けてますます人手が足らなくなると思う。その中での環境社会室の横断的機能の強化も重要だが、環境社会室の外のJBICのオペレーションでの環境専門家の育成をしていかないといけないと思う。そうでないと問題が生じる度に常に環境社会室がお世話しなければならなくなってしまう。

本山:資料最後の「実施移行」の部分は実現可能だろうか?

入柿:それは難しい。旧ガイドラインで審査を通ったものが新ガイドラインでは通らないものが出てきて供与できないことになってしまう。旧OECFでガイドラインを改訂した時に周知徹底期間として2年を設けたが、最も問題になったのは、EIAが未然にないと審査しないという箇所であった。実質的には環境情報があるかどうかの確認などは行い、できるだけガイドラインの精神を生かすことはしているが、遡及して厳格に新ガイドラインを適用するとなると難しい。

本山:厳格な適用が可能とは思ってないが、現在問題となっているケースでは、前のガイドラインを適用したことを理由に解決への取り組みがなされていないことが実は多い。

松本(郁):すでに旧ガイドラインで審査をとおった案件でもカテゴリAについては年に1回はモニタリングをする、参加型にして住民の意見を聞くという形にはできないだろうか。

入柿:レコメンデーションはできるが、義務付けはできないと思う。

川崎:法律の改正というのは、このガイドラインに限らず、溯って適用するというのには、限界があるのでないか。新しいものの精神を生かすということにならざるを得ないのではないか。

入柿:調達ガイドラインの中の汚職についての条項などでは、遡及して適用可能なものも内容によってはあり得るそうだが。

三好:少し話が戻ってしまうが、先程「環境社会開発室が環境ガイドラインを策定している」といった趣旨のご発言があったが、JBICの組織規定上、業務運営の指針の一つとしての環境ガイドラインの策定・改訂は開発業務部と金融業務部が行っているので訂正させていただく。ただ、もちろん実際の作業は両業務部が環境社会開発室と意見交換を行いながら進めている。

 

<当研究会の今後の進め方について>

松本(郁):<「「JBICの環境ガイドライン統合に係る研究会」の今後の進め方についての提案」」に沿って説明>

入柿:シンポジウムなどお金が必要なことについては確定的なことは言えないが、スケジュールについて皆さんはどのようにお考えだろうか。これについては本日欠席の他の研究会メンバーの方のご意見もうかがって、次回きちんとセットしたい。

大村:報告書案は有志によるものになると思う。融資による報告書案は当研究会で議論する前から公表してもよいかと思うが、いかがだろうか。ルールでは研究会の議事録・資料はすべて自動的に公開なので、ドラフト段階で何回か非公開にするのであれば例外を設けるのもよいと思うが、決めた方がよい。

入柿:ところで有志ということで手を挙げて下さる方は?

大村:資料等も作らせていただいているので私はやります。

入柿:では次回は目的について再度議論を深め、今後の進め方を確定し、報告書案づくりに向けた議論ということにしたいと思う。さらに議論し足りない点等あれば後からでも出していただきたい。次回研究会開催のご案内と同時に今後の進め方については本日欠席のメンバーの方にも確認したい。

小林:報告書というのはこれまでの議論をまとめたもの、それとも新ガイドラインのドラフトということですか?

入柿:もともとこの研究会のマンデートはガイドラインに主眼があったように思うので、ガイドラインのドラフトを作った上での報告書ということになるのでしょうか。

大村:研究会のそもそもの目的は「ガイドラインの統合にあたって関係者が自由な議論をして、その結果を報告書にまとめる」ということしか決まっていない。しかし、皆さんの中でガイドラインのイメージが醸成されてきているのであれば、それを文書にして報告書に添付するのも一つのオプションだと思う。その中で議論が分かれる時は、第1案、第2案というようにするのもよいと思う。これまでの議論を生かすためにもなるべく形にしていくのがよい。

小林:今までの議論で具体的な提案もなされ、内容のある議論がなされた。それを生かすためには具体的なガイドライン案を作った方が議論が無駄にならないように思う。

木原:12条〜」という形をとらなくても、この部分に関してはこのような要素を含むべきというフレキシブルな形でもよいのかもしれない。

川崎:ガイドライン案自身を報告内容としてまとめることを目的とするのではないが、議論の結果を集約して報告する際、その結果、具体的イメージとしてはこうなるのではないかと参考までに示すという位置づけになるということでないか。

入柿:それでは今日はここで終わりにします。

 

次回:2001419日(木)午後5時〜

●ガイドラインの目的・原則

●今後の進め方