国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会 第12

議事録

 

日時:2001419日(木)午後5時〜7時半

場所:国際協力銀行7階 中会議室

出席者:

メンバー(敬称略、アイウエオ順)

 大村 卓/環境省地球環境局環境協力室室長補佐

 加藤 隆宏/財務省国際局開発政策課係長

 木原 隆司/財務省国際局開発企画官

 小林 香/大蔵省国際局開発政策課課長補佐

 原科 幸彦/東京工業大学大学院・総合理工学研究科教授

 本郷 尚/国際協力銀行環境社会開発室第1班課長

 前田 匡史/国際協力銀行金融業務部企画課長

 松葉 清貴/環境省地球環境局環境協力室環境協力専門官

 松本 郁子/地球の友ジャパン

 松本 悟/メコン・ウォッチ

 本山 央子/地球の友ジャパン

 森 尚樹/国際協力銀行環境社会開発室第2班課長

 柳 憲一郎/明海大学不動産学部教授

 山田 順一/国際協力銀行開発業務部企画課長

当日参加者(敬称略、アイウエオ順)

 苑原 俊明/大東文化大学法学部教授

 中舘 克彦/国際協力銀行開発業務部企画課調査役

 三好 裕子/国際協力銀行金融業務部企画課調査役

議事録作成:

 坂本 有希、畠中 エルザ、満田 夏花/(財)地球・人間環境フォーラム

 

OECDECGの会合における議論の進捗状況ついて>

前田:前回はツーステップローンの取り扱いと今後の研究会の進め方について話し合ったが、これは本日の議論をまず終えてから続けたい。本来今日は原則・Principleについての議論の予定だったが、われわれはペーパーを用意していないので、地球の友ジャパンのご提案のペーパーに沿って話し合っていきたい。

松本(悟):本題に入る前に、先日全研究会員に転送していただいた電子メールにもあったRivers Watchからのアピール・レターについて、簡単に説明させていただきたい。このRivers Watchは、東南アジアと東アジアにおいて、特に河川開発によって影響を受けた住民グループとそれをサポートするNGOグループが共同でこのレターを用意した。要望は5点に渡るが、JBICが世界ダム委員会の最終報告書にある勧告と原則を尊重したガイドラインを作り、それに拘束力を持たせて欲しい、これまでJBICが支援して来たダム・プロジェクトについてレビューをした上でJBICとしての方針を定めて欲しい、それまでは新規の大規模ダム開発は一時中断をして欲しいという内容だ。原則としては研究会ですでに話し合われている部分も多いので、新たな提案というよりはJBICのプロジェクトを実際にやっている地域の住民グループやNGOの声ということだ。

前田:WCDWorld Commission on Dams、世界ダム委員会)の提言については、先週のOECDECG(輸出信用部会)ワーキング・パーティーでのステイクホルダーとのコンサルテーションでNGOからも話は出た。財務省からそのECGでの議論の紹介をいただく前に連絡事項として、JBICの入柿課長は人事異動で総務部に移ったので、今後は山田課長が出席することをお伝えしておく。

木原:先週、パリのOECDECGの会合、作業会合、さらにその前にステイクホルダーとの会合が行われた。ステイクホルダーとの会合は、Buyer Countries(途上国)との会合、NGO及びBIAC(産業界連盟)、TUAC(労働連盟)との会合とに分かれる。ここでは、ECGにおける共通アプローチの進捗状況を報告し、ステイクホルダーから意見をいただいた。お手元に「Issues Paper on Officially Supported Export Credits and the Environment」と「『輸出信用と環境』に関する最近の重要コミュニケ(抜粋)」をお出しした。イシューペーパーはOECD内の意見調整ができなかったため、共通アプローチのドラフトそのものではない。23頁はこれまでの経緯、現在進んでいる議論は4頁以降を見ていただくのがよい。<「Issues Paper on Officially Supported Export Credits and the Environment」に沿って説明>

書き方が抽象的であるのは、これがドラフトそのものでないことによる。NGOとの協議の席では、このイシューペーパーしか出ていなかったが、NGO側はドラフトの最新版をすでに非公式に入手して、それに基づくコメントを提出していた。主な点は、ECGとしても国内でもコンサルテーションをきちんとやって欲しい、透明性を確保して欲しい、bench-markingMDB(国際開発金融機関)でのmandatory standardのようにして欲しいということだった。最終的にはmandatory standardでなければいけないのか、robust bench-markingでよいのかというのには幅がある。ただ実際のところBuyer Countriesからはあまり意見がなかった。これは集まった人たちが現地の人々ではなく、パリにいる大使館関係の人だったからで、有益な情報は得られなかったという印象だ。また、NGO側はRevision 3というドラフトの三訂版をすでに入手しているので、ドラフトは公開としてしまうべきだという方向での調整が始まっている。

前田:若干補足すると、4Va)の9のスコープで議論となっているのは、short termとは何かということだが、これを2年を超えないgoods and servicesの提供と考える意見と、消費財・マテリアルなどに限定すべきとの意見とが対立している。ある一定の金額以下のものはスコープの対象から除外するのかしないのかという議論だ。一切スクリーニングを行わない方がよいというのが小国の意見だが、私の知る限りはG8でこれに賛成する国はいない。また、sensitive sectorとは何かという定義の問題がある。これはIFCの定義を基本に議論されているが、ECAの融資とは性格が異なるので、定義を明確にすべきだというコメントをしたが、そこまで議論は進んでいない。

 次の会合は5月の連休の間にあり、これがOECDの閣僚級会合前の最後の会合になると思う。

木原:OECDは参加国のコンセンサスで議論が進むので、こちらが望むように話が進むとは限らない。

松本(悟):話は前に戻るが、その中でWCDのレポートの議論になったということか。

前田:議論があったというのではなく、NGOとのコンサルテーション会合の場で改めて話が出たということだ。

木原:インドのNGOWCDのレポートの重要性について触れていた。

 

<ガイドラインの目的・原則について>

前田:情報提供はここまでにして、本題に移る。

本山:ガイドラインの目的については、当研究会の初期の会合で一度提案したが、今回はより具体的な提案をしたい。<「国際協力銀行の環境ガイドライン『原則』で書き込まれるべき点に関する提案」に沿って説明>

前田:この「原則」の性格・意味についてだが、前文、導入部分に書くのにふさわしい部分とそうでない部分とが混在しているように思える。ガイドラインには、その法的位置付けをどうすべきかという問題がある。現行では、国際協力銀行法の下に業務方法書があり、環境配慮はその中でリファーされているだけで、環境ガイドラインはその体系の中で必ずしも位置付けられていないわけだ。そうは言っても、相手国政府、実施機関、それ以外の申請者にとってのガイドラインとは何か、何をもって相手方を拘束するのかという問題がある。一方的に宣言するのにふさわしいものとそうでないものとがこの提案では混在しているように思う。

本郷:別の質問です。4の「すべてのステイクホルダー」とした趣旨・背景、さらに「合意」がどういうことを意図しているのかを説明していただきたい。

本山:本研究会でも、情報公開、住民参加ということで話し合われたと思うが、異なる利害関係者が、充分な情報に基づいて参加する合意形成のプロセスを経て準備されるということを意図している。

原科:「すべての」という表現にすると、合意形成が難しい印象を受ける。「多様なステイクホルダー」とすればよいのではないか。原則として書くのであれば表現が強過ぎるかもしれない。

本郷:それでは「合意」とは何か?

原科:多数決か全員一致かということになると表現は難しい。この定義はおそらくケース・バイ・ケースになるだろう。

前田:われわれの姿勢を宣言する宣言文であれば、格調高く謳うこともできるが、多数のステイクホルダーを拘束するのであれば、「合意」の定義はかなり明確にしておかないといけないだろう。

松本(悟):「一方的宣言」という言葉を借りれば、JBICがどういう姿勢でガイドラインを設置しているのかを宣言して「原則」の部分に入れるべきだと思う。ここにどのように拘束力のある表現を入れられるのかがむしろ疑問だ。例えばペーパーのどの辺りを拘束的だとお感じなのだろうか。

前田:ガイドラインの内容を凝縮して、Policyとして前に置いて整合性を持たせるやり方であれば、例えば、4の「すべてのプロジェクト」は、敷居値や金融種類を勘案していない表現である。ただし、ここが宣言文ならば、この後ろに続くガイドラインの内容との整合性をさほど気にしないで格調高く書いてもよいのだろう。また、人権や持続可能性などについては、環境ガイドラインのカバーする範囲とするのか、環境社会開発室の役割の範囲内かという問題もある。

山田:初めての参加なので、ピント外れなコメントかもしれないが、ガイドラインとは本来相手方に示して相手方を拘束するものであるというのがわれわれの基本的な認識だ。ガイドラインに目的があってもよいとは思うが、ガイドラインと言いながら主語がすべて「国際協力銀行は」というのは自分達を拘束することになる。ガイドラインの解説書等であればどういう背景でガイドラインが作られたのかなどを書いてもよいのだろうが、原則とガイドラインの内容とが矛盾した場合、どちらが優先するのかという法律上の問題もあるので、原則はガイドラインに書かない方がよい。

原科:私は逆の意見だ。ペーパーの7にあるようにここには「長期的な目的」が示されている。個別のガイドラインは限定的になるので、将来的にはここの原則にあるような目的を達成するという方針を掲げておくのは重要だ。当面のガイドラインを設定しても、グレーゾーンは常に残るので、これに照らして判断するためにも原則を設けておくべきだ。

本郷:JBICの融資に関するPolicyの一部として環境に関するPolicyがあり、その下に個別のガイドラインがあるというイメージだろうか。先程の前田課長の話にもあった人権等のことは、融資のPolicyに入るのか、環境のPolicyに入るのかという問題がある。また5にあるようなものは個別の審査ガイドラインの問題というよりは、環境に関するPolicyに属する問題だろうか。

松本(悟):研究会の初期の議論では、JBICの環境ガイドラインが、定められた環境政策の上に存在しているわけではない現状を踏まえ、政策的な部分をガイドラインの冒頭に書き込んだ方がいいということだったように思う。本郷さんがおっしゃる体系があった方がよいとは思うが、現状ではガイドラインに盛り込んでいくしかない。

本郷:私が申し上げていたのは、環境のPolicyを定めるというのは大変なので、例えば現実的なアプローチとしてガイドラインの前文のようなところで原則・方針を述べるのがわかりやすいということだ。

山田:Policyとガイドラインは本来別のものであるので、ガイドラインという名称ではなく、別添という形でガイドラインの背景を述べるのであればよいと思うのだが。

原科:誤解があるようだ。ガイドラインの冒頭でその方針が示されないといけない。

木原:例えば旧輸銀のガイドラインでも、基本的な考え方は冒頭に来ている。ガイドラインそのものの目的をまず示し、それに合致するようにガイドラインを書いていくということではないか。そしてその長期的な目的を達成していくためにレビューをしていく。

前田:原則論を置くべきではないということを申し上げているわけではない。現行のガイドラインの目的部分は実際のところexplanatory noteであり、どうしてガイドラインがあるのかを簡単に説明している。今の話はガイドラインでは特にリファーされていないような人権等のことに関しても宣言として入れておくべきだという議論だと思う。後に続くガイドラインを総括するような長期的目標を設定して、それをPolicyとしてexplanatory noteの後に置くことにするのかどうかだ。世銀のようにPolicies and Proceduresの形を取るのであれば、explanatory notePolicyの部分を分け、Policyはその後に続く手続きの部分と完全に整合していないといけないのではないか。

原科:Policyとして掲げた目標を達成するにはいろいろな段階があるので、整合性は厳密に捉え過ぎない方がよい。

前田:ただ手続きに欠があった場合に、Policyguiding principleとしての実際的な役割を果たさせるのであれば、書き方はきちんとみていかなくてはいけない。

小林:ECGでの共通アプローチ作りの議論の中でも国際的に承認された条約を遵守するというのは入っていたはずなので、本山さんのご提案のように原則として入れてもそうおかしくはない。

山田:それならば主語は「JBICは」ではなく「ガイドラインは」とすべきではないか。

本山:もちろん借入人に示す部分もあるが、ガイドラインはJBICが環境に関して責任を持って配慮していくためのものなので、JBICが主語にならないというのはよくわからない話だ。

山田:政策等であれば、主語は国際協力銀行になるのだろうが、ガイドラインに書く以上は基本的な考え方や目的とする方がすっきりするし、そこではガイドラインが主語になる。

原科:そうであれば、「本ガイドラインは以下の原則に基づいて作成した」という表現が先にあった上で、後に続く原則ではJBICが主体となって環境に配慮する姿勢を示すべきだ。

前田:条約のお話があったが、JBICがそれをガイドラインに入れると、日本政府が批准している条約を相手国政府が批准していなくても相手国に押し付けることになる。日本政府が支持しているものは国際的にも支持されているので相手国の主権の侵害にはならないという考え方もあり得る。これをexplanatory noteとして宣言するのであれば、拘束ではなく長期的な方向を示すことになる。

本郷:今の両業務では、ガイドラインは指針であるという位置付けだ。先程の話では基準という言葉も使われていたが、どこの機関でもガイドラインというのは方向性としての指針を意味しているように思う。

前田:しかし英語ではex ante standard(事前基準)になる。地球の友がご提案になっているのは、現行のものではex ante standardになっていなくて弱いので、より強いものにしていくべきだという趣旨だと思う。

本郷:現行の国際金融等業務のガイドラインでは、環境配慮確認の手続き・方法についての指針を示してあり、海外経済協力業務のでは審査の指針を示している。世銀はガイドラインですね。

大村:世銀はPolicyと手続きを総称してガイドラインとしている。

本郷:世銀基準という言葉で混同されているようだが、実際はPolicyと手続きを総称して、指針の意味でガイドラインとしている。

前田:standardではないわけだ。

大村:OPOperational Policies)、BPBank Procedures)、GPGood Practices)の三つを我々は世銀のガイドラインと総称するが、彼らはSafeguard Policyと呼んでいる。

本郷:世銀で実際の融資を担当する人と話してみても、ガイドラインを絶対的なstandardという趣旨では使っていないと言う。

大村:機関によって「ガイドライン」の言葉の使い方は異なると思う。考え方としては、銀行が従うべき指針、遵守義務違反が発生するようなcode、規約のようなもの、数値などの明確なクライテリアがある基準という三つがある。現行のガイドラインはJBIC内部の手続きと、外部に対してJBICの考え方を示すものの二つで構成されており、数値基準のようなものはない。対する米輸銀の場合は、一定の超えてはいけない基準、ex ante standardがある。地球の友から提案されているのは、そのような基準まで入れるべきだということではないように思う。実際そこまではやらなくてよいのではないか。

原科:そこまで入れるとなれば、相当の議論をしなくてはいけないことになるし、まとめられなくなる。

木原:ここで言う「基準」は、世銀の「数値基準」のみを指すのか、それとも審査をする時に世銀やその他の国際金融機関の基準を参考にしながらベンチマーキングをすることを意味するのか。

本山:例えば先住民族に関してであれば、世銀、ADBのやり方等を参照して権利を損なわないようにしなければならないということが基準ということだ。

木原:それは基準というよりは、方法・手続きに包含されないだろうか。

大村:線を引いて、それを超えてはいけないという狭義の「基準」とするか広義の「基準」とするかの問題だと思う。世銀基準というのは実は狭義の「基準」ではない。例えばIFCで使用される世銀のPollution Prevention and Abatement Handbookはハンドブックであって基準ではない。先住民族に関する規定もレファレンスにはするが狭義の「基準」として使用はしない。レファレンスとして使うという意味の広義の「基準」ならばよいが、standardという言葉を使ってしまうとイエス・ノーの問題になる。

苑原:standard、ガイドライン、指針のいずれなのかといった文言の問題と、行為規範としてのこの文書をどのような表現で呼ぶべきかという議論とが混同されているように思われる。JBICが事業を実施するに当たって尊重すべきことの手引きとなるような政策方針であるとするのが適切なのではないか。これはJBICJBIC自身に対して宣言して行うことであるが、他者との間でどのように合意し、その内容がどこまで及ぶのかはこのガイドラインの中で基定を決めておいて区分けをするのがよいのではないか。

原科:そうですね。他を拘束する強いものではないが、特に15等はJBICが宣言する内容として採用していただきたい。但し、文言は少し整理する必要がある。

前田:問題が生じた時に我々が何らかの行動を取るための拠り所は、L/A上の権利義務関係しかない。そこで必ず環境ガイドラインがリファーされないと我々には何の権利もないわけだ。よって、explanatory notePolicyは分けて書いた方がいい。

大村:つまり、1のようなものはexplanatory noteになり、相手方に示す部分は、「プロジェクトはかくあらねばならない」という形で記して、それを遵守しているかを確認する手続き等はガイドラインの中で展開していくという構造だろうか。

前田:そうですね。

柳:今のお話を伺っていると、世銀のようにOPBPGPに整理するのがよいのではないかという気がする。ただ、Bank Policyを内部のみを拘束するものとして位置付けるかどうかの問題がある。これを手続きや審査の運用基準と関連付けていくと、外部をも拘束し始めるようにならないか。先程のお話は、それを関連付けられないようにしようということだと思うが、それでよいのかどうかも問題だ。

前田:むしろBank Policyは相手を拘束し得るものという形で、後ろに続くガイドラインの条項を簡潔に示したものと考える。それに対し、一方的宣言或いは長期的な目標は、explanatory noteintroductionpreambleとして書くものではないかということだ。

柳:Bank Policyは日本国政府が支持している原理・原則に従うということですね。

前田:それも吟味していきたい。相手を拘束する可能性のあるものに関しては、相手国が批准しないものを入れ得るかは、ケースバイケースで考える余地を残さないといけない。

柳:日本が批准している条約・宣言に関しては、相手国が批准していない場合もあるので、JBICとして精査してそれを採用するかどうかを決めるわけですね。

前田:そういうものは、そもそもPolicyとは呼ばず、宣言と呼ぶわけだ。借入国や実施主体が我々から融資を受けるにあたって最低限守るべきものだけPolicyに入れるべきではないか。

大村:確かに世銀の政策には、プロジェクトはかくあらねばならないということも書いてあり、世銀だけではなく相手方も拘束する。

前田:「国際協力銀行は」で始まるような文は宣言になる。

苑原:JBICが公的資金で運営されている以上、日本が批准している条約等については、政府にもその遵守義務が発生するし、またJBICには国際的責任としての促進義務も生まれるのではないか。

本郷:日本が批准している条約に相手国が批准していなくても遵守を押し付けるということではないのですね。

苑原:その通りだ。JBICは厳密な意味では政府機関ではないが、日本政府の国際的義務の達成にJBICも協力しないといけない。それにあった審査を将来的に考えていかねばならない。

小林:個人的には、日本政府が批准した条約に基づいて国内でできないようになっているプロジェクトは、海外でもやるべきではないように思う。

本山:苑原先生にご確認だが、リオ宣言や世界人権宣言などは相手国の批准の如何に関わらない国際的規範であり、JBICの行動規範としても相手国との関係において問題が生じるとは思えないのだが。

前田:リオ宣言は全く抵触しないと思われる。

大村:条約は別だが、原則や宣言というものは問題にならないだろう。ガイドラインの最終的な構成は、前文、政策、手続きという三段階になると思われる。

原科:それでは、そういう方針でドラフトを書いてみないといけない。

大村: 5の「支援プロジェクトによる地球温暖化への影響を捕捉」というのは表現が硬いように思う。

原科:また、「さらに環境の保全および改善に貢献する活動を積極的に促進する」は個別的に過ぎる気がする。

大村:さらに「地球規模の環境保全に対するコミットメント」をしているのはJBICではなく日本政府なので、これをどうするか、ガイドラインに書くにふさわしいことなのかを含めた議論が必要だ。個人的には、政府として設立したJBICが政府のコミットメント達成のために努力して欲しいとは思う。また、この研究会ではあまり議論にならなかったが、「環境の保全および改善に貢献する活動を積極的に促進する」は輸銀のガイドラインには既にあり、統合ガイドラインにも書いていくのかという問題がある。

本郷:今の部分は銀行の方向性を示すものだと思うのだが、個別案件と向かい合う時に一つ一つ照らし合わせて方向性に沿っているか考えるべきという趣旨だと思う。

 

<研究会の今後の進め方について>

前田:それでは今後の研究会の進め方について議論したいと思う。

大村:何人かの方とお話をさせていただいてペーパーを用意した。<「『環境ガイドライン統合に係る研究会』の今後の進め方について」に沿って説明>

前田:ご意見はありますか。

木原:パブリックコメントの期間はどうするのか?

前田:ドラフトについて話し合う研究会がすでに公開されていることになり、ご意見のある方には発言の場もあるので、パブリックコメントの期間は置かなくてもよいという提案だ。

原科:ただやはりパブリックコメント期間は明示的に設けるべきではないだろうか。

木原:すでに予定がかなり遅れているため、パブリックコメント期間を置くという形にすると、むしろ受付期間が限られることが危惧される。

原科:我々の研究会の自主的なレポートであるし、それならば確かに公的なパブリックコメント期間は不必要かもしれない。

本山:むしろ、JBICが最終的にガイドラインを作成した時に、きちんとパブリックコメントを受け付けることが重要だ。

原科:通常の方法と同様に、ドラフトについても意見を受け付けるというようにアナウンスして置くべきではないか。

苑原:ところで研究会の報告書は英訳をするのか?海外のNGOも関心のあるところだと思うが。

大村:おそらくリソースの問題と成文が何になるのかということによるのではないか。英文でも責任を持ってまとめるとなると皆さんの負担が重いのではないか。おそらく日本語でまとめて英文は参考ということになろう。

前田:英語の方が論理的なので、日本語の曖昧性を排除できるメリットはあるのだが。

大村:英語で書かなくてはいけないとなると有志の負担が重いので、英訳しても論旨が通ることを念頭においてドラフティングするのが重要ではないか。また関係機関で英訳のリソースがあれば参考として英文も出すということでどうだろうか。

本山:可能ならばもちろんそうしていただきたいが、とりあえずサマリーくらいは英訳してもよいのではないか。

大村:何のサマリーにするのかという問題が生じるので、サマリーの方が難しいように思う。

原科:それでは執筆の有志を募らなくてはいけません。私は他の研究会と掛け持つ状態にあるのであまり多くは書けないが。

前田:公表のやり方だが、個人的には記者発表をやりたい。

大村:記者発表であれば、どういう形でやるのがよいだろうか。関係者を全員壇上に載せるにしてもスポークスパーソンが必要なわけだが、それはどなたにやっていただくのがよいのだろうか。

前田:発起人の加藤修一先生でもよいのではないか。

木原:ブリーフィングまたはシンポジウムはいかがか。

前田:シンポジウムを行う予算はないと思う。

大村:どういう形でやるかによってもかかるコストが変わる。

原科:JBICとして年末までにガイドラインを策定したいのなら、なおさら6月中にガイドライン案は作成しないといけないことになる。

前田:今日はこの辺りで終わりにしたい。

 

次回:2001518日(金)午後5時〜

 

報告書のドラフトについて