国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会 第14

議事録

 

日時:2001年7月13日(金)午後2時〜5時

場所:国際協力銀行9階 大会議室

出席者:

メンバー(敬称略、アイウエオ順)

 伊藤 美月/外務省経済協力局有償資金協力課

 大村 卓/環境省地球環境局環境協力室室長補佐

 小川 晃範/環境省地球環境局環境協力室長

 川崎 大輔/財務省国際局開発政策課係長

 北野 充/外務省経済協力局有償資金協力課長

 木原 隆司/長崎大学経済学部大学院経済学研究科教授

 門間 大吉/財務省国際局開発企画官

 馬場 義郎/財務省国際局開発政策課課長補佐

 原科 幸彦/東京工業大学大学院・総合理工学研究科教授

 本郷 尚/国際協力銀行環境社会開発室第1班課長

 前田 匡史/国際協力銀行金融業務部企画課長

 松本 郁子/地球の友ジャパン

 松本 悟/メコン・ウォッチ

 本山 央子/地球の友ジャパン

 山田 順一/国際協力銀行開発業務部企画課長

 森 尚樹/国際協力銀行環境社会開発室第2班課長

 柳 憲一郎/明海大学不動産学部教授

当日参加者(敬称略、アイウエオ順)

 中舘 克彦/国際協力銀行開発業務部企画課調査役

 福田 健治/メコン・ウォッチ

 三好 裕子/国際協力銀行金融業務部企画課調査役

議事録作成:

 坂本 有希、畠中エルザ/(財)地球・人間環境フォーラム

 

713日版提言案における修正・追加について>

前田:それでは前回提示されたドラフティンググループ(以下DG)の案に対するコメントを含めて、まず提言案の最新版について大村さんからご説明をお願いしたい。

大村:今日お配りしているものは四つある。一番厚いものは前回の研究会の検討結果と、前回見出しのみで示した項目について、後でDGで書き加えたものが入った提言案、木原前企画官から「気づきの点」としていただいている書面のコメント、外務省経済協力局有償資金協力課の伊藤さんからいただいているコメント、山田さんから同じく書面でいただいているコメントをお配りしている。

 細かい修正や、本文中に入れた方が検討しやすいものについてはすでに提言案最新版に入れた。山田さんのコメントについては、別に必要部分のみの形になっている。山田さんの書面コメントは3枚です。

 それではDGの案についてご説明する。前回からの変更点は下線で示している。書面でいただいたコメントについては、そのまま入れられるものはブラケットとアンダーラインを付けて入れている。

 該当個所を説明する。2頁10行目は「世界人権宣言」を入れた方がよいという指摘を苑原先生からいただいた。さらにその下に解説をつけた方が望ましいとのことで、苑原先生からいただいたい解説をそのまま入れている。2頁33行目は前回の議論によって変えている。

 3頁40行目〜4頁1行目は、地球の友より若干記述が重なるのではないかとの指摘があり整理させていただいた。削った2行を次の黒丸の中に入れ、二つ合わせるような形にしている。

 4頁34行目は「HIV/AIDS」問題を外務省さんより、37行目の「累積的影響」は地球の友よりいただいたものである。

 5頁7行目は社会的合意が曖昧ではないかとのご指摘があったので、「社会的に適切な方法で合意」という形に修正した。20行目〜については、JBICが補償すると読める可能性もあるとのことだったので、事業者による補償であることをはっきりさせるために「事業者等により」と21行目に入れている。

 28行目は、苑原先生から「参加」について曖昧ではないかというご指摘があったので、国際的によく言われる「意味ある参加」とした。3940行目は前回の議論の通りである。

 6頁22行目は、融資等を行うかどうかの判断よりも、もう少し意思決定という広い意味ではないかというご指摘が地球の友からあったので「銀行の融資等の意思決定に」という形にしている。

 7頁13行目、オランダのEIA委員会について輸出信用案件は対象外であることを明示した方がよろしいということを木原前企画官からいただいているので、これはブラケットつきだが、そのような形にしている。

 12頁3〜5行目だが、DGの前回の会合で「なお」以下を削ると決まっていたのが修正ミスで残っているので、それは削らせていただいた。

 1533行目は、「協定」というのは条約のようなものを想定させるということで「取り決め」にしている。41行以降のプレッジに関する記述については、山田さんと伊藤さんから「プレッジはガイドラインと関係ないのではないか」というご指摘があった。これまでの研究会で議論したということを明示するために、「研究会で議論のあった」と入れさせていただいている。

 16頁6行目の銀行の意思決定とは、最終的にはL/Aではないのかというご指摘もあった。またL/Aを締結した後にプレッジはできないので、L/A前の役員会における意思決定が実質的意思決定だと捉えて、ここに「実質的に意思決定」と入れれば、そのご懸念もないのではないかということである。

 それから18811行目をDGからの提案として追加させていただいた。これは21行目以降、ガイドラインの見直しとかガイドラインの適切な実施・遵守の確保など新たに追加した部分で色々議論があって、モニタリングについても若干追加した方がよいだろうという結論になったことを受けたものである。

 1823行目以降は、前回いくつかの項目をお示ししたが、議論を整理して、そのうち載せるものと載せないものの整理をした結果、最終的にはガイドラインに入れるものとして「ガイドラインの見直し」、その他にガイドラインには入れないけれども、ガイドラインの適切な実施・遵守の確保としてJBICにおいて整備していただきたいと考えられる組織や体制などについてまとめている。

 

HIV/AIDS問題について>

前田:今の訂正あるいは付け加えた点等について、ご意見、ご質問があればおっしゃっていただきたい。

本郷:4頁34行目「HIV/AIDS問題への影響」は、今まで具体的な議論はなかったと私は記憶しているが、環境社会配慮の中で特にHIV問題を入れようということは、どういう内容を期待しているのか、どういうことを書くべきだと想定されているのか、教えていただければ有り難いのだが。

前田:外務省の伊藤さん、お願いします。

伊藤:研究会で今まで議論がなかったことは私も承知しているが、プロジェクトの実施に伴い作業員等が集中することによってHIV/AIDS対策が問題となっている案件がある。そういった場合、ある程度HIV/AIDSの影響が予測できる場合があるのではないか、予測ができればガイドラインでも取り上げることができるのではないかということで、そのような文言をできれば加えられないかということを提案させていただいた。

本郷:具体的にどういう内容のものを期待されているのか、具体的なイメージを示していただければ有り難い。AIDS問題がEIAの中で取り上げられた例をよく知らないので、お教えいただければと思う。

大村:例えばマラリアであれば、新しいダムを造って水面ができるとマラリアが蔓延するのではないかということになるが、これはなかなか予測が難しい。対応としてはむしろその後のモニタリングをきちんと行うことや、保健サービスへの支援などでなされている。HIV問題についても同様に扱えるのではないかと思うが、皆さんはいかがだろうか。

山田:私もモニタリング等に入れて問題ないのではないかと思う。今、円借款でも伊藤さんがおっしゃったように、大規模な工事などで労働者がたくさん集まり飯場を作るので、他に余暇の過ごし方がないところだと、かなり問題になっているような国もある。また、アフリカの道路事業などでは、道路がよくなったと同時にトラック・ドライバーがたくさん入ってきて、HIVキャリアになるケースもある。感染症は、開発をやる上でかなり重要な問題になりつつあるので、対応が必要な場合には検討をする姿勢を示すのは問題ないのではないか。

本郷:私もそのような対応の必要性を否定しているわけではなく、ガイドラインでわれわれが求めるべき「検討する影響のスコープ」と書いてしまった場合、ガイドラインを読んだ事業者がEIAを作る際に、どういうことをすればよいのかを具体的に聞いてきた場合にどう答えればよいのかということである。例えばどういうことをすれば望ましいのか、不十分なのか等われわれなりに判断あるいは評価をしなければいけない。

 今までここに入れていこうとした項目はある程度判断のための尺度があるようなものだったのではないかと思う。同じようにHIV問題についてもなんらかの具体的なイメージをつかんでおくことが必要ではないかと思う。方向性として反対しているということではない。

原科:イメージとおっしゃるのは、対策のイメージだろうか。

本郷:EIAの中でどういうことを盛り込んでいけばよいのか、例えば受け取った人たちがどう考えるのかということだ。

柳:432行目「人間の健康と安全への影響」の中にHIV問題も含むということで理解できるとは思う。

原科:「人間の健康と安全への影響」は環境系を通じた人間の健康と安全への影響である。大気、水、土壌、廃棄物、水利用、生物相等は環境を通じたもので、今議論されているHIVは少し違うメカニズムで、社会環境のことである。だからここに分けている意味はあると思うが、それに対して具体的な対策がイメージされないと、スコープで入れていかがなものかというご意見だろう。

本郷:かつ、それが書面を通してのEIAの中に盛り込まれるべき内容として示しているので。実際、民間企業のプロジェクトもすでにこういう問題への対応をやっている。ただ、EIA制度という中に入ってくる問題ではないような気がする。そのような意味では表と裏があるのかも知れないが、非常に取り扱いにくいテーマのような気がする。

原科:ただ、だからこそ社会的関心事項であるのではないか。

山田:おそらく環境というのは社会への影響の中で読まれるところだと思うが、そこはJBICとしてどういうことが必要かと先方から言われれば、今はあまりそのようなものをやっていないのは事実である。しかし、これから円借款でそのような事例を積み重ねようとしている。そのようなものを積み重ねていきながら、アドバイスできるところはするということだと思う。

松本(郁):具体的に例えば教育とか、あるいは保健の相談ができる設備の設置・拡充とか、そういったことになってくると思う。

本郷:企業は従業員に対して教育をし、さらに周辺の住民の教育をするなど、実際にやっている。ところが、それがEIAという制度になじむものなのかどうかというところである。

原科:確かに従来の制度であれば、なじむのかというところだが、社会的関心事の一つだということでこれからは広げて考えてもらえばよいのではないか。ただし、HIV/AIDS問題だけとすると、絞り込み過ぎという感じがしないでもない。

大村:ここでは「等」の中にHIV/AIDS問題は当然含まれるという理解にして、実際のオペレーションの中で解決していくという話もあり得ると思う。

柳:今の議論の中であったように、例えば健康とか保健医療という切り口の中に入ってくるケースが多い。色々な書面を見ても、健康医療とは何であるかと言って、具体的に言うとこういうものが出てくるのではないかということである。

前田:ちょっと加えたいのだが、いわゆる社会的関心事項と一般的に言った場合、例えば世銀とか、一般的にインターナショナルにされているスタンダードでHIV/AIDSが特定的に社会的関心事項に入っている例はあるのだろうか。

伊藤:現実には避けては通れない問題だという認識である。

原科:むしろEIAの概念の中でそのようなものをチェックするようにしていきたいということだろう。

伊藤:少なくとも今は難しいのだろうか。

山田:難しくはないと思うが、カッコの中のものが例示であれば、別に何を入れても、一般的な社会的関心事項と認知されていて、かつほかの世銀等もそのように考えているというのが趨勢であれば、むしろ入れておいた方がよいという気がする。しかし、たしかに本郷課長の言うように、ここに入れておいてもあまりよくわからないということもある。

前田:もっと広く、「感染症等」と言ってもよいのでは?

山田:世銀などで言うAIDSプログラムというのは、その国でAIDSが蔓延しているようなネガティブなイメージがあるので、「感染症」の方がよいと思う。ジェノバ・サミットでも感染症がテーマになることもあり、アフリカなどの国については非常に大きい問題になりつつあるし、日本もエイズ基金に30億ドルを出している。その中に円借款が入っているのかどうかわからないが、大きい事項になりつつあるのは確かだと思う。

前田:ここでは例示と考えて、「感染症等」にして置いてはどうだろうか。

 

JBICの意思決定とプレッジについて>

大村:私が直しているところ以外も、山田さんと木原さんからご意見をいただいているので、そこも含めて議論をしていただきたいと思う。

前田:いくつか質問がある。6頁22行目の「銀行が融資等を行うかどうかの判断に」を「銀行の融資等の意思決定」と変えてあるが、これはかえって曖昧になる表現ないかと思う。

本山:6頁31行に「融資等を実施しないこともありうる」とあるので、意思決定を行うかどうかだけでなく条件をつけることも含むことがわかるようにした方がよい。

前田:条件つきでやる場合ですね。

本山:ええ。そのようなケースがあるかも知れないと思ったので。

前田:16頁6行目に「実質的に意思決定」とあるが、これはどういうものだろうか。山田課長などがプレッジというのは政府の行為だから関係ないとおっしゃっている背景は、プレッジの前におそらくJBICと相手側双方が実質的に意思決定を行っているが、それは対外的に言えば実質的に意思決定を行っているとは言えないから、この文言を入れた方がよいということだろう。これは事実であろうが、極めて曖昧だなという気がする。

大村:伊藤さんからご提案いただいた「プレッジは、国際協力銀行からの十分な環境関連情報提供を受けた上で行われるべきである」とすれば、今のご懸念はなくなるわけですね。

本山:その点は、プレッジを行ったときに情報提供だけで十分なのかという話が出たために現在の表現になったと思う。国際協力銀行が環境レビューを十分に全部やった上で大丈夫であるという判断があった上でないとプレッジをかけては困るという議論があったと思うので、その表現では弱いという気がする。

前田:例えば「環境関連情報提供を受けた上で」ではなくて「国際協力銀行による環境レビューを受けた上で」ということか。それだったら、よいだろうか。

山田:その表現ぶりにとやかく言うつもりはないのだが、そもそもプレッジを行うのは日本政府なので、私はガイドラインにはこれは入り得ないと思っている。そのような理解である。そのような議論があったことをここに残しておきたいということであれば理解するが。

大村:ガイドラインに具体的に書くべきことと、これまでの研究会で議論があったところは書き方が別になっている。ここのプレッジの記述は、「銀行の意思決定について整理しておきたい」(154243行)としか書いていない。

前田:たしかにガイドラインでは触れにくいのだが、実質的にプレッジという行為が政府でなされていて、それが事実上の意思決定の表明になっているわけだ。政府には環境ガイドラインがないが、実施機関であるJBICがそれを持っている。環境ガイドラインそのものではプレッジについて触れられなくても、プレッジという行為がどの段階で行われるべきかということについて、関心事項であることを反映させるためにもこの記述が必要である。

 逆に言うと、プレッジについてJBICからは非常に言いにくい話なので、研究会から出してもらった方がよい。事実としてかなり重要なプロセスなので、その中に国際協力銀行の環境レビューを経た上でやって下さいというのを入れてもらうのは非常によいことだと思う。

山田:その主張自体は正論であるし、よいと思う。しかし、書くべきはODA大綱または中期目標なりで、政府を縛るべきではないだろうか。ガイドラインはあくまでJBICと借入人等との間のものであるから、そこで政府の意思決定を縛るというのはいかがか。縛ってもよいのかも知れないが、あまり実質的ではないので、やはり政府自らがそのような判断に基づいて行うようなところで言うべきだと思う。

柳:研究会の提言なので、よいのではないだろうか。

山田:研究会の提言ということであればよいのだが、ガイドラインに絶対入れろと言われると、私はここではオーケーとは言えないということだ。

 

<「環境社会配慮の方針」について>

大村:その他の修正・質問等がなければ、山田さんからいただいているコメントについて、一つひとつ議論したい。

 2頁3536行「国際協力銀行は、融資等を受けた事業が本ガイドラインで示す環境社会配慮の用件を満たすよう、融資契約等を通じて確保する」の語尾の「確保する」というのは、100%の確保ができない場合が想定されるので「配慮する」にしていただければということが山田さんの主張である。

山田:まったくこのとおりで、確保するよう努力するのはやぶさかではない。感じ方の違いだけであるが、「配慮する」とでも直させていただければということだ。

柳:ちょっと意欲が減退しているような感じもするが。もちろん「確保する」といっても、確保できないこともある。そのときの制裁は特に何も書かれていないので。ただ「配慮する」ということになると、今までも配慮していたのに、どこが違うのかということになる。社会配慮の方針として「確保する」と明言すべきではないだろうか。確保できないということについては、もちろん含みとしてはあるだろうけれども。

山田:提言を作った人たちの間では確保できない場合もあるということでご理解いただけるかも知れないが、文書だけが一人歩きして、しかも数年経つと、もう誰も作ったときの経緯がわからない。そうすると「『確保する』と書いてあるじゃないか。確保できないのはどういうことか」というふうに絶対に責められてくると思う。

柳:色々な経験を経て、そこで確保できなかったら、そのときに最大限の改定を行って、またさらに確保できるように努力するということでもよいのではないか。「確保する」の方が

「配慮する」よりもJBICの意欲が感じられる。「確保する」と書いてあるから 100%絶対確保しなければいけないというように皆さんがお考えになるなら、それは非常に好ましいことではあるが。

原科:ただ「満たすよう確保する」という表現はおかしいかも知れない。やはりおっしゃるように「満たすよう努める」などという言い方にすべきかも知れない。「環境社会配慮の要件を満たすよう努める」ではどうだろうか。「配慮する」というのは、少し弱すぎると思う。

大村:「配慮する」と言うと、よく意味がわからない。そもそも融資契約等での条件づけなどを通じて相手にきちんと責任を取らせるよう仕向けるということが「確保する」の表現で言いたかったことだ。ここから先は相手側の話だし、融資契約はJBICだけが作るのではなく借り方も共に作るので、必ずしも確保できない場合があるのも事実だろう。かといって、それを「配慮する」という形にすると意味がわからなくなる。

門間:「確保するように最大限努力する」だろうか。

山田:そのような意味であるが、要件を満たすよう、確保するよう最大限努力するというのは文章として冗長ではないか。「確保する」よりは、「満たすよう融資契約等を通じて最大限努力する」はいかがか。

本山:しかし、ここは方針を書いている部分である。満たされなかったからといってすぐに何か罰則があるというものでもないし、「確保」に込められた意味は、相手方に働きかけてそれをやってもらうように政府としてやるということである。そこでJBICの責任ということも示されると思うし、「最大限努力する」というのは、少し弱いのではないかということだ。JBICが主体的に働きかけるという意味を込めて、やはり「確保」という言葉をここに入れたい。

原科:方針ということですね。

前田:日本語の語感として少し変かも知れない。確保という文言が必要であれば「確保に努める」ではどうか。

門間:「努める」という感じだと弱過ぎるのではないか。「最大限努力する」はどうだろうか。

柳:「確認する」というのはどうか。

大村:英語で言うと「ensure」というイメージで、それを通じて相手を縛って守らせるという意味で「確保」という言葉を使いたかったので、「確保に最大限努める」というのが、今の流れから言えば疑問が残る。

松本(郁):「最大限努める」というのは、英語に直すとどうなるだろうか。「ensure」だろうか。

前田:shall make the best effort」または「maximum effort to ensure」の方がよいのではないか。

柳:もう少しシンプルな方がよいのではないか。

前田:逆にあまりシンプルだと、英語の雰囲気が出ないでうまく表現できないだろう。

松本(悟):例えば順番を入れ替えて「国際協力銀行は融資契約等を通じて、融資等を受けた事業が本ガイドラインで示す環境社会配慮の要件を満たすようにする」はいかがか。

前田:それはちょっと無理があるのではないか。相手方がいることであるから、一方的な行為ではできない。

松本(悟):あるいは、後で働きかけを行うとしているところもある。「満たすよう働きかける」とか。

大村:それは違う話だと思う。ここは融資契約が非常に大事だという話がこれまでずっとあったわけですね。相手を縛るものである。だからそこに最大限条件をつけられない、そこで集約してしまう、その後の働きかけはまさにこちらからの行為として働きかけるということで、その二つを分けている。

大村:では「融資契約等を通じて、確保に最大限努める」でよろしいだろうか。

 次は5頁510行目の「社会的合意及び社会影響」のところである。山田さんから問題提起をお願いする。

 

<「カテゴリAに必要な環境アセスメント報告書の要件」について>

山田:これも同じ議論であるが、一律的に「必要である」と義務づけるのはいかがかと。前回も議論したと思うが、相手国の法律等の問題もあるということである。

大村:私の修正ミスです。「社会的に適切な方法で合意が得られるよう」と訂正して決着がついたところだ。

 次は1133行以降「カテゴリAに必要な環境アセスメント報告書の要件」である。

山田:その「国および地域の人々が理解できる言語と様式で書かれている」ことをバインディングするような「〜いなければならない」という書き方になっている。例えばケニアのソンドゥ・ミリウの件もそうなのかも知れないが、ダムのサイトなどはかなり地方にあることが多くて、そのようなところは少数民族が住んでいる。インドなどの奥地に行くと少数民族が色々いて、多くの少数民族が関わっているということがある。

 したがってここの意図するところは、環境アセスメント報告書が少数民族もわかるようにするべきだというのはわかる。が、いくつもの少数民族が関わるときに、すべての少数民族の言語ですべて全訳するというのはあまりにも現実的ではないので「望ましい」にしていただければと思っている。

原科:アセスメントの趣旨から言うと少々コストがかかってもやるべきだ。少数民族だから情報が伝わらなくてよいということになってしまうからだ。

山田:EIA報告書のエッセンスはもちろん伝えるべきだと思う。その伝え方は、例えば口頭で説明するとか、誰か英語のわかる少数民族出身の人が口頭で言うとか、それならよいのだが、これは書かれていなければならないですね。

原科:具体的にどんな事例だろうか。少々費用がかかるからやらないという話にはならないだろう。費用がかかるからそれをやらないというのでは、JBICのスタンスが疑われる。明らかに批判される。少数民族切り捨ての姿勢になって全然国際的に通用しない議論になってしまう。

伊藤:地域で使われている言語が複数あるような場合には、国の公用語以外にも地域の言葉で書かなければいけないのか。

原科:そうですね。だから国際常識から言って、そのような議論はすべきではないかと思う。コミュニケーションを欠くという話だ。

森:ただ現実的には私が知る限りでは、中国とベトナムだが、EIAレポート自身は一般に公表されていない国がある。そのような場合は現地に行ってEIAレポートの中身について口頭で説明をするという形を取っている。中国やベトナムは少数民族が多いので、全部の言語で作っているわけでもなく、そもそもEIAレポートが公表させていない。今の制度の中では公表するためにEIAレポートを作るということをやっていない国もけっこうある。

原科:けっこうあるという言い方は、いくつだろうか? 二つ程度だろう。

森:少なくとも、その二つは。

原科:それ以上、三つ、四つあるかということですね。それともう一つは、その場合にここで「望ましい」と書いてしまうと相当消極的な印象をぬぐえない。まずそうしなければならないと書いて、後で例外的なものがあり得るという言い方はわかるが、基本的なスタンスとして「望ましい」というのはあまりにも消極的だと思う。当該当事国の事情により、いま言ったようなことがあって、それが例外的処置であり得るということを示すのはよい。

大村:確かに、かなり専門的な話も入って来るEIAを、いくつもある少数民族の言語に全訳するのは現実的ではないのかも知れない。一方で、JBICとして、皆にEIAの中身をわかって欲しいということを示すためには、「事業が実施される国及び地域の人々が理解できる言語と様式で書かれていなければならない」と書いた方がよいと思う。例外的な状況が想定されるのであれば、「原則として」を入れておいたらどうだろうか。「環境アセスメント報告書は原則として、事業が実施される国及び地域の人々が理解できる言語と様式で書かれていなければならない」。それなら、たくさんの少数民族がいるような全訳はするのかどうかということは応用問題になる。

本郷:私の理解ではEIAレポートの正本は、その地域で一つの公用語として指定された言葉で書かれていると思う。特殊な言葉を話す人たちがいるような場合であれば、一つのやり方として想像されるのは、EIAの正本ではなく、皆さんが理解できるような形のものを公開用として作るケース。場合によって、EIAレポートはかなり技術的な話が多くて、中身を書き換えるという意味ではなくて、むしろわかりやすいように書き換えるケースもある。そのようなものを合わせてEIAと言っている。「環境アセスメント報告書」をEIAの正本プラス公開用というか縦覧用というふうに広くとらえてもらえれば、「書かれていなければならない」でも読めるのではないか。

北野:「国」についての対応と、「地域」についての対応には差が出て来てしまっても仕方がないのではないのだろうか。

 地域の人々のために公用語以外のものについてどこまでやるかというのは、先ほどご指摘があったような観点とか費用の観点とか色々あるので、便宜を図る、理解してもらおうという方向性の中でどこまでできるかを追求するという世界に近いのではないか。国については、基本的にはその国の人々がわかるような様式ということで公用語なのかということがあると思うが、そこを区別した議論がもう少しできないのかと思う。

原科:国と地域は分けた方がよい。

大村:例えば「事業が実施される国の公用語で書かれなければならない。また地域の人々が理解できる言語と様式で書かれていなければならない」となるだろうか。

原科:地域の方は「望ましい」ということになるだろう。

大村:「原則として」やると。

北野:原則まで行かないのではないか。公用語でないものについてどこまでやるかというのは、ケースバイケースの対応になるので、「方向性として理解されるように便宜を図る」という方向性を出して、現実的な対応をするということになるのではないだろうか。

門間:ただ、ここではA案件についての要件を書いている。A案件で影響を受ける人たちに対して国が環境の影響はこういうものだということをどうやってきちんと説明しているかということを見る一つの担保になりますね。専門的な部分そのものの全訳は無理かも知れないが、少なくともなんらかの形で言葉に残して、説明できるようなものを残すのは意味のあることだと思う。そのような意味で、僕は「原則として」とすべきだと考える。

本郷:大村さんがおっしゃったような切り分け方だと、「EIA正本はその国の公用語で書かれていなければいけない」。例えば英語が全然理解できていない国で英語のEIAを外国企業が作っても誰の役にも立たないので、公用語で書かなければいけない。また必要に応じてその地域の人たちが理解できる、くだけた資料、EIAと資料を提供しなければいけないとなるのではないだろうか。

大村:「環境アセスメント報告書は、事業が実施される国の公用語で書かれていなければならない。また環境アセスメント報告書の概要など基本的な情報は地域の人々が理解できる言語と様式で書かれていなければならない」でいかがだろうか。

北野:どこの言語でも、重要な核になる情報が提供されていなければいけないと思う。その時々に応じてどういう範囲というのはかなりケースバイケースだと思うが、方向性としては現地の人にわかるものが提供されるという意味で、最後は「提供される」という言葉を述語にされるとよいのではないかと思う。

大村:もう1回言うが、「環境アセスメント報告書は、事業が実施される国の公用語で書かれていなければならない。またEIA報告書の概要等は、地域の人々が理解できる言語と様式で書面で提供されなければならない」。

小川:文言的なことだが、準備されると提供されるのは別のアクションなので、ここで提供まで言ってしまってよいのか? むしろ提供されるというのは、三つ目の黒丸(4042行)で書いてあることである。二つ目は(3839行)報告の資料が作成されなければいけないで、「環境アセスメント報告書の概要等は地域の人々が理解できる言語と様式で作成されねばならない。」ではないかと思う。

大村:わかりました。

前田:その次です。

山田:その次の丸のところ(4042行)で、EIAはもちろん最終的には公開されて地域住民が入手するというのは必要だろうが、問題はタイミングである。この間から申しているように、JBICの審査のときには事業が実施されるかどうかがわからないということもあって、EIAを公表するタイミングはその国の法律によってかなり違うと思っている。したがって事業が始まる前にEIAが公表されることはそのとおりだと思うし、われわれJBICが審査をするときにEIAが出されるわけだ。がEIA自身がいつでも入手可能ということが国によってかなり違うのではないかということで、ここも「望ましい」にしていただければということである。

原科:「いつでも」を取ってもよいですね。

大村:基本的にアセスというものは、その影響をちゃんと文書の形で残して、それを皆に公開して、皆の意見を聞いた上で意思決定をするというプロセスなので、意思決定の後に公開があってもなんの役にも立たないですね。もう一点、相手の国の意思決定がJBICの融資に関する意思決定の後に行われるかということもないと思う。

前田:僕もそれはないと思ったのだが、山田課長は、そのようなケースはある、つまりこちらがよいと言うまで向こうは判断しない、意思決定しないということがあるとおっしゃるのだろうか?

山田:そのような意味よりは、公開できる情報と公開できない情報があると思う。例えば道路を造るときに不法住民などが土地の値上げを画策して、事業をやる前にそういった人間が入ってくる国なりケースもあるので、そこを排除するためにそのような情報は出さないという国もあるわけだ。

前田:それがJBICの意思決定の後か先かというと、向こうが意思決定する前にうちが融資の判断をするケースがあるのか? それはないのではないかと思う。

山田:JBICが融資をすることになった時点で、同時に向こうもやると判断するケースがある。JBICの融資がつけばやるということだ。

前田:うちはあくまでも事業をサポートするのが役目。そのようなときにJBICが金をつけてくれたら事業をやるというのは本来的にあり得ないと思う。

山田:もちろんやりたいから融資を申し込むのだが、JBICが融資をしないとなったらできない事業もあるというか、たぶんほとんどの事業ができなくなると思う。

大村:その議論はわかるのだが、JBICは環境情報が全部集まらないでも融資の意思決定をするという話になってしまうので、それはまずいと思う。向こうが最終的に意思決定をしなくても環境情報は全部揃っている、アセスが終わって環境情報が来ていないとJBICは判断できないというのが、ここの核心だと思う。

山田:EIAが来ていることはそのとおりだと思う。ただEIAのすべてをそのまま出す国と、それをやると混乱が大きいからと言って出さない国とある。

原科:情報を出さない場合には融資しないのではないか。

山田:「いつでも」と書いてあるから、審査のときにはすでにもう公表されていなければいけないということではないか。

前田:審査時ではなく、JBICが最終的に意思決定をする前に融資可能だという状況を確認してからという文章を書いていかないと。

柳:「いつでも」というのを、先ほどから言われている「意思決定前に」と変えて入れてもよいのではないか。

森:いまの体制は円借款に対して言えば、A案件については「承認されたEIA」がなければいけないですね。EIAが承認されていないと審査はできないということだ。そのときに承認されたEIAが、そのプロセスにおいてちゃんと公開されたかどうかという話がある。それについては現行ガイドラインでは「望ましい」としている。国によっては必ずしもオープンにしていない国も、さっき言ったような問題もあって公開していない場合があるということもあるので。今回の提言案ではもっと踏み込んでいて、それを義務づけるということですね。

前田:公表されているかどうか確認しないで受け入れていたら、JBICも一蓮托生で責任を負わなくてはいけないように思う。それについて行くのは危険な気がする。

木原:情報が変にリークされるよりは、一般にきちんと情報公開がされれば明らかになるのではないか。

原科:おっしゃるとおりだと思う。情報公開に伴って日本でも土地の買い占めが起こるということが言われるが、これは逆である。あらかじめ特定少数の人間が情報を持っている、つまりインサイダー情報のある場合にはおかしなことになる。だから、あらかじめ情報を社会一般にオープンにしておかないといけないのは論理的に明らかである。

大村:環境アセスメントの考え方は、非常に大きな影響が及ぶのであれば、アセスメントを公表して皆の意見を聞いて物事を決定しようというものですね。情報を公開することによって色々デメリットはあろうけれども、環境影響を防ぐことを目的に行うのが環境アセスメントである。しかもここは環境影響が大きいA案件についての記述であるから、情報公開なしでは環境アセスメントと言えないのではないかと思う。

山田:その考えにチャレンジするつもりはまったくなく、私もそうだと思っている。ただ、例えば来年の4月1日から100%それで行けるのかというと、今までは「望ましい」という書き方だったので、国内法の調整もあるので数年待ってくれという国もあるのではないかと思う。

森:さっき申し上げたように、中国とかベトナムは書いたものは公表していないが、説明会でちゃんと内容を説明するという形をとっている。提言案に添う形になると、相手国の制度を変えるということが必要になってくる。

門間:そのようなところを改善してもらうことが大事である。ガイドラインの改訂に伴って経過措置は必要かも知れないが、単に「望ましい」ではいつまで経っても変わらないですね。われわれが目指す基本方向は公表だとすべきである。もし、それに一時的についていないところがあれば、そこは運用面で配慮する必要があるかも知れないが。

本山:山田さんがおっしゃったタイミングと「いつでも」は実際にどういうふうに使うのか、よく理解できない。

山田:私の考えているのは、JBICの内々の融資決定を受けて、事業ができると向こうがわかって公表したときをカット・オフ・デートとして、それ以降入ってきた住民に対しては補償は限定的にするとか、土地の取引を制限するとか、そのようなケースがあろうかと思う。だから「いつでも」というよりは、ある程度事業ができるとわかった時点で広く、どんな情報でも公表するのはそうだとは思う。

前田:内々の意思決定というものはここには入らない。いずれにしても決めなければいけないことは、JBICが融資の決定をして相手に正式に伝達する、要するにL/A交渉に入るという段階では少なくとも公開されていなければいけないということではないか。

原科:そのようなことである。だから私は「いつでも」というのは外した方がすっきりすると思う。

本山:そこは異議がある。書類の上ではEIAが存在していて、公開されたことになっているけれども、どこを探し回っても出てこないというケースが現実にあったので、私は「いつでも」というのは必要だと思う。

原科:公開後の時点からいつでもということですね。

本山:例えば縦覧期間が終わったと言って隠してはだめだということだ。

大村:さて、どうしようか。どうしてもこれができないケースがあるというお話がある一方で、方向性をきちんと示すべきだということである。たしかに適用期間、経過措置を設けることは考えられる。

前田:中国のケースでは、今後も法制度上一切事前に公開することは期待できないということか。

森:そうではないと思う。政策的に対話をしていけば変わり得ると思う。

大村:「入手可能でなければならない」でよいと思う。

柳:「いつでも」と「常に」はどう違うのか。

山田:要するに国によって経過措置が必要だということだ。112930行目に「このような環境アセスメント報告書への要件については、事前に、途上国等に対し十分な理解を求める期間をおくなどの配慮が必要と考えられる」とあるのだが、ここはゴシック(ガイドライン本文としていない)でないので残らない可能性がある。

前田:これは運用の問題である。そのようなケースでは最大限努力を払ったということも、プロセスを公開した上で、「中国では公表しているということはやっていない。したがって、今のところ検討している」ということを言えばよい。

山田:それよりは、経過措置の間は致し方ない例があるということを明確にしていただくためには、「原則として」という言葉を入れるとか。

前田:それは運用の問題点であって、できないことはできないのだから。

門間:「原則では」ではやはりメッセージが伝わらないですね。だから経過措置とか運用でと申し上げている。運用上の問題であれば「原則として」は必要ない。

山田:では2930行目の経過措置があり得べしということをご納得いただいたということであれば、原則としてはこういう方向であるとわかるので。

大村:それでは、文章としては修正なしで、研究会の提言としては、経過措置が強調されたとでも書いておこう。

前田:次、お願いします。

山田:次も同じような理由である。122行目「地域住民等のステークホルダーと協議が行われることが望ましい」というのもこれまでと同じ理由なので、経過措置が必要だ、運用上の問題だということにされてしまうので、半ばあきらめ気味である。

 それから同じく7行目「環境レビューにおいて確認する」というのは、レビューと確認について前回も議論させていただいたが、レビューの中に確認が含まれるので、「環境レビューを行う」ということでよいのではないかと思っている。

大村:23334行では、「要件の充足を確認するため、環境レビューを行う」と変更したが、ここは言いにくいですね。

山田:前回の議論で、環境レビューの中に「確認」という言葉がたしか定義に入っていましたよね。

原科:合意形成がなされているかどうかについて、確認する内容が通常の環境レビューだけではないということもあるだろう。環境レビュープロセスの中で合意形成がされているかどうかを確認する。この確認が必要である。

前田:環境レビューは手段。

柳:「環境レビューにおいて」を取ったらいかがか。

大村:それでは「環境レビューについては、合意形成がなされるかどうかについては国際協力銀行が確認する」と。

前田:これは意味が変わるのでしょうか。redundant(重複している)だから外せというだけの話なのか。意味が変わるのか。

山田:レビューと確認はあくまでも同じだという理解をしているのですが。

原科:環境レビューには合意形成までは通常含まれないと、ここでは考えたのだろう。だから環境レビュープロセスの中で合意形成しても確認しようというのがここの趣旨だというのは、はっきりしているのではないか。だからredundantではないのである。

大村:環境レビューはプロセスとして使っているので、別に環境レビューをどうしていくかというわけではない。

柳:「環境レビュープロセスにおいて確認する」というふうにプロセスを入れますか。

木原:あるいは「環境レビューの中で」ですね。

大村:山田さんがご心配になった点とは違う観点で書いてある。

木原:アクションとしては環境レビューをやって、その中で必ず合意形成の確認を行うということですね。

山田:「環境レビュー」と「確認」の二つの用語の使い方に混乱があるのではと思ったので。

前田:それでは「国際協力銀行が環境レビューの中において確認する」。

大村:次に121112行「カテゴリA案件の場合は、銀行が公開してよいことが保証されていなければならない」ということについて、山田課長から、また木原前企画官からいただいているが、銀行はアセス書を公開するのかどうかという点なので、まとめてみた。

木原:私のコメントは単に質問である。つまりこの書き振りだと、すでに相手国で公開されている。それをさらに英語あるいは日本語で公開されなければいけないという形が必要なのかどうか。

大村:国際協力銀行の意思決定に際して、なるべくたくさんの情報を銀行自身も集めて、よりよい意思決定をしようというのがここのコンセプトである。そのときに、よりよい情報を集めるためには、そのもととなった情報を日本にいる人、あるいは世界の人たちが見ることができなければ判断材料にならない。そこでJBICによる公開が必要になる。

本郷:前田課長が前に説明されたように、JBICがいただいたものをそのまま公開する、そのままという意味だろうか。

大村:そのままだ。

前田:情報公開法上はそのままでよい。しかし、この提言ではそのことを超えている。例えばインドネシアの案件をインドネシア語で公表しているということに加えて、われわれも世界に向かって、例えば英語で公表するということだ。

本郷:例えばインドネシア語で書かれていて、それをわれわれが翻訳するのか。

前田:いえ、英語で要求し、verify(裏付ける、検証する)して、必要なところは黒で消して公表する。

本郷:そうすると、EIA報告書への要件で公用語で書かれなければいけないということが、公用語および英語で書かれなければいけないという話になってこないか。日本で公表するものは言語まで含めないで、もらったものをそのままという形の方がよいのでは。

前田:おっしゃるとおりアメリカのケースはそうだ。大体皆がわかるような言語というと英語になるので、英語で公表する。そこまでJBICが求めるかどうか、これだけではわからないが、いずれにしても情報公開法上は請求されれば公開せざるを得ない。

山田:情報公開法に定まっているのであれば、二重の規定にする必要もないということだ。

前田:情報公開法では請求権は誰にでもあり、請求があればその人には公開する。だから請求がないのに自発的に公開するという行為ではない。

門間:かつ相手方の同意が必要な場合もあるのではないか。ですから情報公開法で必ず情報公開されるということは担保されていないのだ。同法では相手国が公開してほしくないという場合には、非公開の道があり得るのではないだろうか。

前田:これは、あらかじめ借入人に対して出たものは出すと言っておくという意味だ。

大村:二つの意味があると思う。積極的に審査のプロセスでJBICが融資機関としての情報を出すという意味と、そのことをあらかじめ借入人等に理解してください、そうでなければ受け取れないという意味だ。

山田:当該国で公表されていなければならないというところで経過措置の議論をしたが、それと同じでその国の法律をある程度変えないといけないことになる。JBICに情報を出したらJBICから公表されて、その国に回って、騒ぎになってしまいますね。

門間:JBICが金を出す以上は、JBICには日本国民に対して説明する義務があるから、中国が公開するかどうかとは関係なく日本国民に公開するべきだという意見もあるのではないか。それが嫌だったら金は出さないというだけの話だ。

山田:原則そうです。

門間:私は別に経過措置という問題ではないと思う。

山田:それをわれわれは4月1日から全部やって大丈夫なのかということだ。日本国だけで終わっていればよいのだが、そんなわけにいきませんね。

門間:それすらも嫌だという国に、あえて金を貸すのかという議論になる。

原科:日本国民の金を使って貸すことはないですよ。それから過去には日本の情報がアメリカの情報公開法を通じて手に入った実例がたくさんある。おっしゃる通りのことがいくらでも現実に起きている。アメリカはアメリカの国民のためにやっている。日本も日本国民のためにやっていくべきだ。

山田:方向性はよいのだが、経過措置は一切なしで即刻やるべきだということだろうか。

原科:それは別の議論でやるべきで、方向性が正しければそれをうち出す。どうしても経過措置が必要な場合にはケースバイケースで対応する。

北野:先ほど山田課長が指摘された2番目の黒丸(113839行)、相手国においても公開されるということとリンクしている部分と、JBICが情報公開をするということで日本の情報公開法に関連する部分をどう整理するかということはあるが、基本的に先ほどの経過措置という同じような考え方で対応をするということでよいのではないだろうか。

山田:経過措置ということであれば、一度下りた以上は動けない話だ。

門間:私は前回とまったく同じ経過措置でやる必要はないと思う。受取国が自国の法制度の中でどういう情報公開をするかという点についての制約は、向こうとしてはどうしようもない部分はあるだろうと思う。ただ日本がカテゴリA案件について支援をすると決める以上、日本の国内における理論に変えなければいけない。カテゴリA案件についてレシピアントカントリーはまったく公開してはいけないと言われているから、日本でもJBICは公開できないということで、本当に日本の国民が納得できるだろうか。そのような意味では同じ程度の経過措置はならないと思う。

 まったく経過措置が要らないという意味ではない。個々に色々なケースがあり得るが、借入国における改善のスピードの問題と、日本国内における文書の公開については多少違うのではないかということを申し上げたい。

北野:基本的な方向性としては相手国でもきちんと公開され、それが日本国民にも説明できるということでやっていくということだと思う。そこのところは意見が違う点ではないと思うが、日本国民への説明をやろうとすれば、それは相手国と話をせずにわれわれが独自にできるものではなくて、これを作った責任は誰か、その知的所有権は誰にあるかというと、それは相手国政府にあるのだから、相手国に対してこれを出してよいのかの確認作業が前提となる。したがって基本としては、やはり相手国においても公開され、日本側でも日本国民にきちんと説明ができるものをやっていくことがわれわれのゴールであるけれどもそこに行くのに一定の経過期間をおいてそこに向かって行くというところは、2番目の黒丸(113839行)と最後の黒丸(121112行)は違わないのではないかと思っている。いずれにしても運用の話だと思う。

前田:結果的にはそうだが、環境レビューに必要な書面としてのEIA報告書があって、これは本来はわれわれの考え方からすれば現地においても当然ステークホルダーに公開されなければいけないと思うし、JBICが得たものは公開されますよとあらかじめ言っておくことが必要だ。いちいち同意を取るかのではなく、カテゴリAB案件については「同意は〜関係なく出しますよ」と宣言しているのだ。

 この議論で同じ問題はOECDECGでもあったのだが、方向性としては基本的には出されたものについては公開するということをあらかじめ言っておかないと交渉にもなんにもならない。環境ガイドラインでは原則をドーンと「公開する」と書く。そのような流れだと思う。実際はもちろん交渉をする。同意を得ると入れてしまうと、不同意の場合をあらかじめ想定していることになる。

大村:そのようなことで、もとの案のままでよいだろうか。経過措置について2点が違うのではないかということがあったが、それは特に文章を変えるということではないという理解ですね。

前田:そうですね。

 

<「情報公開と協議」について>

大村:それでは次に移りたいと思う。

山田:133639行目が「公開する」となっているが、公開するのは国際協力銀行かということだ。

大村:そうです。

山田:JBICが色々な方からの情報提供を歓迎するというところまではそのとおりだと思う。そういったものを促進するための「適切な手続きと機会」ということだが、それにかかる負荷の問題だ。どういう手続きとか機会を考えていらっしゃるのかわからないところがあるが、海外経済協力業務では事前評価表を作ってL/Aの締結後すぐに公表するということを定めているので、ここはあえて必要ないのではないかということで、35行目の「歓迎する」で十分だと思っている。

前田:事前評価表の公開はL/A締結後なのか? むしろ環境レビュー期間中に公開するのが大事だからという議論があったと記憶している。

大村:具体的にどのような手続きや機会があるかということについてDGで色々絞り込んで、1419行以降の「情報公開の時期と内容」として書いた。もっとたくさんの機会があるのではないかという議論もあったのだが、最終的にカテゴリ分類を終了したときにできるだけ速やかに案件概要とカテゴリの結果を公開する。A案件についてはアセス書が出てきたときおよび環境応諾証明書等の提出があったときにこれらを公開する。カテゴリBについては環境社会配慮に関する主要な文書が提出されたときに公開するということだ。それから環境レビューの結果が意思決定に反映されていることを示す文書を融資契約締結後に公開する。この四つの機会に絞ってきている。

 133639行は基本的考え方としてレビュー期間中に適切な機会を設けて公開するということを言っておいて、その具体的な手続きは14頁にあるという構成だ。

山田:「手続と機会」というのは、具体的にどういうイメージがあるだろうか。

大村:「機会」ということで言うと、13頁と14頁は用語が違っているが、14頁の「時期と内容」が「機会」に当たる。手続については何も書いていなくて、インターネットで公開するのか、情報公開室のような部屋を設けるのか、そこについては提言案では何も言っていない。JBICが運用で色々お決めになればよろしいのではないかと思う。

 「適切な手続」はまさに「適切な手続」ということで、情報が偏らないように、入手しやすいように、実質的には情報入手が難しいようになったら困るから「適切な手続」という一文をあえて入れている。

山田:EIA報告書そのものを環境レビュー中に公開するということを考えているのか。それとも案件の概要的なことだけでよいのか。

前田:カテゴリごとに違う。カテゴリABで違えている。14頁です。

山田:142226行目は全カテゴリか。

前田:最初のものは、1422行目「カテゴリ分類を終了したとき」は、どんなカテゴリに入るかということについて、JBICの判断をむしろ確認するために、公開というものを通じて皆さんからインプットをもらう。その結果われわれのカテゴリ分類が正しければ正しいと自信を持ってやろう、間違っていると判断する声が大きければもう1回見直そうということだ。公開する情報については、カテゴリABで違うということをここでは言っている。

 大きな考え方は、JBICが融資決定した後、その結論に対して全面的に責任を負わなくてはならなくなる。その後で違う情報が入ってきて、決定を変えろと言われても、極めてturn over costが高すぎる。むしろL/Aの段階で、まだそうした決定をする前の段階で、色々な情報をできるだけインプットしてもらって、将来のコストが高くなることを防ぐ。決定を覆さなければいけないとか、非常に大きなリスクが起こるとか、そのようなことが起こらないように事前にできるだけ情報を公開していきたいというのがここの趣旨だ。むしろ負荷は高まらないコストは最小化すると考えた。

原科:トータルコストは減る可能性が大きいと思う。これは提言だから、体制自体も変えてもらいたいということを盛り込んだ。負荷が高まるということはないと思う。が若干高まっても、私はむしろ体制を変えていただくことは提言としては要求する。

大村:負荷についてはDGでも色々議論があって、自分たちでまとめ直して情報を出すのであれば非常にコストがかかる、しかしもらったものをそのまま出すということは、そんなに負担はかからないのではないかという議論があったことをご紹介しておく。

前田:公開する情報についてJBICとして責任を持たないと、カテゴリの結果に基づいて相手から出てきたものについて、銀行はこれを正しいと思っているということは一切言わない、「もらったものはこれだ」ということで出す。

山田:ここで一つご理解いただきたいのは、円借款ではL/Aを調印しただけですべてが始まるわけではなくて、その後に調達がある。円借款の場合、調達管理でPQ事前評価、事前評価の結果、入札承認、入札結果の承認、最後に契約承認の5段階すべてにおいて、JBICが一つひとつチェックしていく。それが終わって初めて業者と契約をして、工事となる。A案件は大体土木工事的なものが多いので、その5つのステップを踏むということになる。したがって何かもし問題があれば、色々な段階でわれわれJBICがチェックできるわけだ。したがってL/Aが結ばれたから自動的にすべてやるんだというふうにはわれわれも考えていなくて、大体L/Aが締結されて実際の工事が始まるまで5段階で、2年ぐらいかかり間に何度もチェックをする。例えば契約承認の直前で非自発的住民移転があることがわかったら、契約承認の条件として地域住民向けの説明会をやるなど、そのようなケースはかなり多くある。L/Aを結んだ後に事前評価表という形で、ほぼ同じような情報はすべて出している。さらにL/Aが結ばれた後はEIAも情報公開法に基づいてたぶん公開されると思うので、その時点で見ていただければ十分チェック機能はきくとわれわれは理解している。

 したがって、L/Aが結ばれる前にここまでやる必要があるのだろうか。現行のシステムでも、かなりのことをやっている。

木原:L/Aを結んだ後に、完全に止めてしまった、あるいは白紙に戻したケースはあるのか?

山田:それはいくらでもある、キャンセルしたものは。

木原:それは何に基づいてだろうか。

山田:L/Aの中にまずガイドラインがあるから、例えばガイドラインにしたがって調達がされなかったとか、色々な住民の意向がその後になって出てきて政府の考えも変わったとか、2年もあればその間に社会情勢なり経済情勢が非常に変わるので、それはいくらでもある。

木原:L/Aを結ぶ時点やその前段階で借入人等から情報をもらう。さっきから議論があるのだが、そのもらった情報を出すのにどれだけの負荷がかかるのか。

山田:負荷という意味では制度さえできれば、欲しい人はそれなりのコストを払ってコピーしてくれということであれば、たいした負荷はかからないと思う。

大村:制度ができれば、その制度では何が問題だろうか。

山田:現在でもL/A締結後であれば、公開は情報公開法やL/Aに基づいてほぼできる。それでは足らないというご判断があれば、もっと事前にということはあるが、それで十分機能しているのではないかというのが私の意識だ。

前田:これはアンタイドの調達管理の中身の話と同じようなことで、調達管理というのはかなりおもしろいことをやっていて、全部JBICが責任を背負っている。本来は相手の問題である問題もJBICが背負っている。プロジェクトを迅速に、適切に遂行していくためにずっとやっている。全部この部分に負荷を背負わせるとすべてJBICが責任を負うことになるので、僕が考えたのは、こういう情報を審査の段階でどんどんインプットしてもらう、むしろ事前の段階でなんら責務を負っていない段階でインプットしてしまった方が総体としてのコストは低いのではないかという感じだ。

 また、調達管理のところもやや責任を背負い込みすぎているというのが、違う感情論の部分ではある。非常に完璧主義的なやり方で、今後あまり予算もマンパワーも伸びない中でこのやり方をずっと続けていくのは、いつかパンクするなと直感的に思っている。もう少しコストを分散した方がよいのではないかということだ。

山田:ただ、その議論と調達管理の議論も外せるかというと。

前田:外すとは言っていないのだが。

原科:調達管理の負荷を減らそうということか?

前田:結果的に負荷が減るのではないかということだ。

原科:紛争処理から言ったら、明らかに早い段階で情報公開、一般公開するというのは正しい。

本郷:環境の話に戻すと、調達管理という特殊な制度を除けば、意思決定の際の事前の計画の段階と、その後プロジェクトが動き出してからのモニタリングと大きく二つの段階に分けて考えていく。たぶん山田課長がおっしゃっていたのは、できるだけ事前に情報を集めてきちんとやるけれども、ここで言うモニタリングの段階に入ったときに色々予期せざることも発生し、その時々で適切な対応をしていかなければいけないということではないだろうか。私の理解では、モニタリングの段階で相当困ることが多いことが強調されるあまり、事前のところが軽く聞こえたのかなという気がする。要は、その二つのバランスだと思う。

門間:両方大事であるということであれば、計画段階のところで頑張るということについて文章を削除する必要はないと思う。

本郷:できるだけ事前の計画でかなり詰めておいた方が効率的だ。ただ、そうは言いながらも、やはりやってみると思わぬことが出てくるので。

門間:事前にやっても完璧ではないということもあると思うが、事前にやっておいた方がよい。JBICだけではなくて政府にも色々コストがかかるので、財務省としてもコストがかからないというのであれば、前段の方でこういったことをされるというのはぜひお願いしたい部分だ。

森:ここのポイントは、早めに情報を出して、意見を早めにもらってリスクを最小化するということのベネフィットとコストの話だ。そもそも、その国の中でちゃんと情報公開されていれば、そのようなリスクはコントロール、または最小化できるわけだ。それが察知されていなくて、JBICが公開するときに問題が起こるというのは何か異常な感じがする。当事国でいかに情報公開をさせるかということに、もっとコストをかける方が、われわれが一生懸命情報公開をすることにコストをかけるより現実的ではありますね。

 もらったものを出すといっても、インターネットに乗せるなど、それに伴って内部的にもいくつか手続きが生じ、コストが高くなる。日本とかその他の国からそれを見て何か言う人がいるかというと、そんな人がいるだろうかという感じもする。

門間:やらないよりはやっておいた方がよいと思う。国でも法律などを新しくする前に事前にインターネットに公開して意見を取ったりしている。そのようなプロセスを踏むと踏まないとでは、後のコストが全然違う。川上で公開すればするほど後で問題が起きたときのコストが少ない。おっしゃるとおり、まず最初に当該国に一生懸命頑張って欲しい。その後JBICもやっておくと、後がすごく楽だ。今までは、当該国がやらないからと放置しておいて、L/Aを結んだ後に山ほど問題が出てくるというものだった。これからもそのような事例がないわけではないので、川上ほど努力しておいた方がよいのではないかと思う。

山田:川上で苦労しておくのか、川下で苦労するのかという議論だが、実際に円借款の現場では、川上の部分でかなり急ぐと場合がある。例えば年次協議などはCGのタイミングが決まっているから、コミットしなければいけない時期目標があって、例えば中国とかインドネシアとか、10件とか20件ぐらいのものが一斉に動いていくわけだ。かなり時間的な制約、外交的な制約がある中で、実際的にどこまでできるのかというのが非常に大きい疑問だ。今のところは川下で苦労するようなシステムになっているが、それでも十分くい止められると思っている。

門間:前に担当したインドのナルマダダムでは非常に苦労させられた。インドとの年次協議を行って、発電所の入札まで決まった後に紛糾してわれわれも非常に困ったのだが、そのような案件がけっこうある。川下でコントロールされたとおっしゃるが、そのようなものを見ているとやはり川上で努力すればするほどコストがかからないわけだ。

本山:川下での対応ということでは、全然認識が違っている。起こってしまったものは止められない。やはりそれは事前に防ぐということで、JBICも少しは努力していただかないといけない。

山田:北野課長、どうだろうか。例えば年次協議で一斉に二十数件動くとき、現実的にどこまで対応可能かという話だが。

木原:年次協議自体がよい悪いという話とは別に、要はこういうことをやらなければいけないということを事前に言っておくということであれば、年次協議に出てくるときにそれに合わせた形で出してくださいね、という形になるのではないだろうか。

北野:ここでは、具体的にどういうふうなオペレーションをやるかというところを議論すべきだと思う。14頁5行〜10行目に書いてあるようなことが、実際にここで想定している中身なのだと思うが、伺いたい点がある。3)の「銀行の意思決定への環境社会配慮の反映結果を公開する機会を」というのは、銀行としての意思決定、つまり承諾をするときの話なので、タイミング的には1)と2)は異なるのではないかと思うのでその点を教えていただけると有り難い。

大村:ここは「事業開始後の情報提供を促進するため」ということだ。具体的には1432行目、「環境レビューの結果が意思決定に反映されていることを示す文書(例えば円借款における事前評価書あるいはこれに類するような文書)を融資契約締結後に公開する」につながっていく。

北野:ということは、1)と2)のタイミングと3)のタイミングは違うということですね。

大村:違う。

北野:そこはもう少し、文書の中でわかりやすくした方がよいかも知れない。

大村:7行目「また」以下のところは環境レビューに資するようではないので、改行して分けたいと思う。

北野:「フィードバックであるとともに」というのは少しわかりづらい。

大村:「さらに、事業開始後の情報提供を促進するため、銀行の意思決定への環境社会配慮の反映結果を公開する機会を設けることが適当である。また、この機会は、外部からの情報提供に対するフィードバックともなる」でいかがだろうか。

北野:一般論として言えば、現実に何ができるかということを考えた視点を持つことが大切であるが、川上のところで情報が公開されて、それについてご議論があって、意思決定をする際にそれを確認するという仕組みがあることは大事なことだと思う。

前田:実際には、例えば環境レビュープロセスと融資のタイミングをみてカテゴリ分類を終了したときにそれに関する情報を出すということになると、ある程度周知期間を置くということになって、全体の作業フローチャートを作るというようなことになっていく。かなり事前の準備段階の期間だけでも逆算していかなければいけない。そのような仕事の割り振りに波及してくるので、おそらく負荷ということでは手間ということよりも、実際の仕事をやっていく中での調整のためのコストみたいなものがかかるかも知れないとは思う。それ以外に余計な手間がかかるかというと、そんなことはないのではないかというのがDGで議論したことで、情報すべてをJBICが加工して作って公開するとなるとものすごくかかるけれども、今すでに内部で使っているものをあるタイミングで出す、あるいはもらったものを出すということであればよいのではないか。ただ、順応するための色々なコストはかかる。

大村:提言案としては、議論を踏まえてこのまま変えなくてよいだろうか。

山田:しつこいようだが、14頁の21行目、「以下の時期および内容で情報を公開することが望ましい」とか、「原則として」を追加するのはどうか。「情報を原則として公開する」とか。

大村:原則としてというのは、「例外的状況を考慮して」につながると思うが、例外的状況というのはどういう状況だろうか。

山田:思いつくのは、いついつまでにプレッジしないと国際的にもたないとか。

前田:「十分な時間的余裕を持って」というふうにしたのは、下に書いてあるけれども、120日とか60日とか具体的な日を決めている機関があるが、これを定めてしまうと今おっしゃったようなケースに対応できない場合もあろうからということで、特に期間を限定しないようにしようという話がDGであって、それでこういう表現になった。今おっしゃったようなケースにも対応できるように、柔軟性は持っておいた方がよいと思うし、あまり硬直的すぎると北野さんがおっしゃったように動かなくなってしまう。

原科:この部分はDGでかなり議論しましたね。中身も相当制限して、このぐらいなら大丈夫だろうということで整理してある。

前田:OECDの通報期間の45日と言ってもよいのだろうか。「情報公開に努める」とか「原則として」という言葉を入れようか。

原科:私は原文のままでよいと思う。

山田:こういうときに非常に困ってしまうのだが、提言というのは両論併記は無理か。

前田:あるけれども、タイミングだけの問題であれば「十分な柔軟性を持つように対応する」と入れてもよいと思う。そうではなくてやらない場合もあるという内容の問題であれば、例外的にどういう場合にやらないのかを示さなくてはいけない。

原科:DGで相当中身を吟味して整理した上で、そんなに難しいことはないということで判断した結果だ。

川崎:このぐらいの情報がないままに動き出すというの状況があってよいのか。ここに書いてあるぐらいの情報は、いくら時間がなくても最低限、把握しておいていた方がよいし、公開できないといけないのではないかなという気がする。

北野:「十分な時間的余裕を持って」と言う必要があるのか? それぞれのケースに応じて意思決定を行うに先立ち示すことが原則だと思う。

前田:「十分な時間的な余裕を持って」というのは何日と言わない?

北野:45日とか60日とか。

前田:120日という議論があったが。

北野:それは議論の中で理解していることだけれども。

大村:「国際協力銀行は、融資等にかかる意思決定を行うに先立ち、以下の時期及び内容で情報を公開する。情報の公開は、意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって行うことが望ましい。

原科:「十分な時間的余裕をもって行うことが望ましい」は、「行うよう努める」とかそのようなのがよい。

大村:「十分な時間的余裕を確保するよう努める」。

原科:「努める」だから、結果は不確定でもしょうがない。

大村:「この情報の公開は、意思決定に先立ち十分な時間的余裕を確保して行うよう努める」でいかがだろう。

前田:結構だ。

大村:続いて、山田さんからいただいているところの144142行だ。

山田:45日前までに公表することが望ましい」と書いてあるが、海外経済協力業務では円借款事業については事前評価表を今年度からやる。事前評価表の公表要領の中で規定できれば、ガイドラインにはなくてもよいと思う。

大村:この議論は、先ほどの議論と同様にガイドラインで事前のものでやるんだということを書くということで整理できたと考えてよいだろうか。

山田:了解した。

 

<「意思決定、融資契約等への反映」について>

山田:次は153439行目だ。要するに融資の中止ということだ。個別の融資を中止するというのは、あくまでも個別のL/Aに準拠して行うべきだと思う。ガイドラインに書く必要はないと考えている。

大村:これを書いたのは、L/Aがきわめて重要なポイントだと、研究会で議論があったことがある。事業実施者でない融資機関が事業の中身についてかなり言うのは非常に難しい問題だ。したがって、L/Aに注意書きをして条件づけをしていくのが一番よい方法なのだろうということでここに書こうとしている。ガイドラインに書くべきではないというお話があったが、文章の構成としては、2224行に「融資契約あるいはこれに付随する文書に条件を明記する」とある。そのような条件の例示としてその下の項目を挙げている。ガイドラインで包括的にこの規定を置けと言っているわけではなくて、例示として挙げている。そこはご理解いただければ有り難いのだが。

本郷:例えば契約上、「ガイドライン違反」という言葉はありえない。現行の海外経済協力業務ガイドラインでもガイドラインは審査のための指針と明確に書かれている。同じようにこの部分は審査の指針であって、これによって色々確認した結果が契約に反映されるという流れと理解しているが、それでよいですね。

前田:そうだ。

山田:現行のL/Aでも、技術指針の中に借入の瑕疵があった場合には修正条項などを根拠に融資を止められることにはなっている。一応、現行制度でもこれをほぼ満たしているのではないかと思うが、それでも書いておいた方がよいということか。

大村:ここは書いておくことによってJBICの姿勢を明らかにする。かつ、ガイドラインというのは広く融資をする可能性のある人たちに対してJBICはこういうことを求めているんだなということをわからせるための文書でもある。個別L/A交渉で示していくことはもちろん今でもおやりになっているだろうけれども、あらかじめこうやって示しておくということで姿勢が明らかにするために例示をする。

北野:この問題はJBICの姿勢の問題にとどまらず、実際にガイドラインで書いてあることをL/Aなど落とし込んで、こういう状況のときには融資が止まるという仕組みを本当に作るかどうかという議論をしなければいけないと思う。これは契約の相手方にとってはある種、不確実性として映る。だけども、入れた方がよいかどうかという議論だ。

 それから相手国の事業実施機関との関係をどういうふうに考えるか。相手国がどういう意図を持った実施機関かと考えたときに、どういう形でガイドラインに書いてあることが機能するのか。そこのところも併せて議論しないと、結論は出ないのではないかと思う。

前田:現行でもL/A以外、相手国に対して契約上、責務を負わせる手段はない。ここはL/A交渉の指針をあらかじめ宣言しておくということだ。

北野:この指針のもとでL/Aを交渉しなさいということですね。実際には相手との関係でそうならないかも知れない。だけど基本的にはこの方針でJBICは取り組みなさいということだ。

大村:1512行〜14行に「融資契約等の内容は借入人等と国際協力銀行の交渉の結果として得られるものであり、ガイドラインで予め内容を規定しておくことは困難であることに留意が必要である」ということが書いてある。

本郷:大村さん、35行目「借入人や事業実施者が本ガイドラインの要求事項を満たしていないと銀行が考えた場合」の書き方だが、ガイドラインは審査の指針であって、その結果確認された事項はL/Aや契約書に反映されなければならないという1214行目と照らしあわせて、そのステップが飛んでいないか? 前に少し議論したような気もするけれども、環境レビューの結果必要だとされて、契約上に盛り込まれた内容が満たされていないと銀行が考えている場合と書くのが、正しい表現ではないかという気がする。

前田:そのとおりなのだが、DGが議論したのは、もし本当にこの部分をもっとバインディングな規定にするのだったら、要求事項は何かということを全部具体的に示さなければいけない。そういなると非常に厳しい文言になってしまう。そのようにL/A交渉の指針を超えて、ガイドラインの要求事項とは何かということまで全部細かく書いていくと、手足が縛られてしまって交渉にも何もならない。だから、ここは非常に漠と書いて、むしろ問題として示しておき、単にガイドラインに書いただけでは実効性がないから、それをちゃんと融資契約等に反映させるような方向性を出そうというのがこの流れだ。

 ガイドラインは審査の指針であって、そこにL/A交渉の指針的なものをあまり細かくディテールの中身まで入れてしまうのは本来のガイドラインの趣旨に反するのではないか。一方で、融資契約に反映させないとガイドラインにいくら書いても尻抜けになってしまうのではないかという懸念が示されたので、その例示としてこの文言が入った。

原科:本郷さん、そのような趣旨でどうだろうか。

本郷:私が気になったのは、英語に直したときに「compliance with the guidelines」となると趣旨と違うことになるのではないかということだ。今の説明で納得した。

原科:山田さん、これでいかがでしょう。

山田:一般的にここに例示された条件を含みうるという条件を理解していただくのであれば、現行でもほとんどここへ入っているので問題ないと思う。

 

<「モニタリングとフォローアップ」について>

大村:それでは、次は18頁だ。

山田:18頁6〜11行目「第三者等から、環境社会配慮が十分でないなどの指摘があった場合」の第三者は誰なのか。根も葉もないことを言う人がいる。移住などに伴って相手国政府に言っても聞いてくれないからJBICに言う人たちがいる。極端な例では、補償費の値上げだけをねらっている場合もないとは言い切れない。内容をある程度、精査した上でという意味で「検討のうえ、必要な場合は」というものを入れさせていただいた。前回の議論を受けてすでに「客観的な精査、対応策の検討」という修正が加わっているが、同じ趣旨だ。

大村:山田さんがおっしゃった「検討が必要な場合には」と入れるのは、銀行が改めてその情報を吟味するということだ。それから今日のテキストで追加されている部分(「事業者等が対応するに当たっては、透明でアカウンタブルなプロセスにより、問題の客観的な精査、対応策の検討、事業計画への反映がなされることの重要性を銀行は認識する」)は、あくまで事業者が対応するときには、例えば第三者の委員会を設けるなどしてアカウンタブルを形でやってくださいねという相手に対しての話なので少し別の話だ。

 私が感じたのは、確かに指摘があった場合は全部伝えるかというと、その中で検討をして必要に応じてということだろうと思う。

本郷:私は原則としてすべて伝えるべきだと思う。ごね得かごね得でないかはわれわれには判断できない。それは意見として、われわれのところに来たまま、きっちりと事業者に伝えて、事業者側で判断してやっていただく話だと思う。

大村:「相手側に適切な対応」というのは第三者からの指摘を吟味してそれが正しければ、きちんと対応してほしいし、指摘が正しくないのであればその旨答えてあげてくださいねという意味だ。したがって、「必要に応じて」ということではなかった。

山田:たしかに本郷課長が言われるように、判断が難しい場合は伝えるべきだというふうに思う。ただ第三者はまったく利益を代表しないような人などが、JBICに「おまえのところがやっているのはおかしい」とか、「インドネシアへの融資を全部止めろ」ということを言ってきた場合に、それを全部インドネシアに伝えるのか。

原科:「努める」だからよいのではないか。明らかにおかしなものは伝えないだろう。

本郷:「検討のうえ」とあると、むしろ大きな義務を課されたような気がする。

原科:「検討のうえ」となるとJBICのバイアスを与えそうな印象を与えてしまう。

北野:「努める」というと、方向性としてはそれをやることがすべて正しいのだということだと思うが、山田課長がおっしゃるように、すべての場合、そのようにやることが適切であるかどうかというのは、ある程度、判断が分かれる場合がある。ここはむしろ「原則として」という形にして、原則でない場合というのもそれは明らかに判断上、あるだろうという形でやったらどうかと思う。

山田:実際、対中円借款などでは、毎日のように誰かから何か言われているが、それを全部、伝えるのかという問題がある。

本郷:何かの機会に、そのようなことがたくさんあったという伝え方でもよいのではないか。やはりこの点についてJBICが責任を持ってしまう、判断をしなければいけないという義務を負うというのは筋が違うと思う。

山田:まとめて伝えるのも、結局のところ判断を要する。

本山:明らかに非合理的なクレームは伝えないという合理的な判断はあって当然のことだと思う。基本的に環境社会配慮に関する限りで指摘があった場合に、個々に判断するということなので、むしろそこまであえて言う必要もないと思う。

山田:それだからこそ、あえて言っていただきたいのだ。合理的だと、明らかだという判断は誰がするかということだ。現状の書き方だと、例えばある対中円借款に対して文句言っている人にこのガイドラインが伝わって、「こう書いてあるだろう、俺の言っていることをどうやって伝えたんだ」と言われかねない。正当な指摘の場合や判断に困る場合には伝えるべきだとは思う。ただ、明らかに伝えなくてよい場合をわかるようにしていただきたいということだ。

本郷:正当か、正当でない場合という表現があったが、環境ガイドラインのポリシーでは事業に対する責任は事業をやっている人が持つということだ。われわれが正しいとか正しくないという判断ではないはずである。あまりにもひどい話だというのはその範囲内だと思うが、原則、事業者の問題だから事業者にきちんと伝えることをJBICの哲学として明示的に読めるように書いておいた方がよいのではないだろうか。

山田:「書くこと」、「伝達する」という原則には反対しない。ここにいる方は皆常識的な方だからわかる。でも、われわれが今後JBICとしてやっていくうちには、そのように考えない人もいっぱい出てくる。だから「明らかにひどい場合には、明らかに関係ない場合には伝えないこともある」ということだ。

門間:具体的なケースがあるということだったら、もう一度言っていただけないか。そうガイドラインに書くと、かえってJBICとして対外的に説明に困らないか。どう検討をしたのかを説明しなくてはいけない。

前田:伝えるのは伝えられるけれども、次に「事業者等による適切な対応を促すよう」というところの方が重いかなとおっしゃっているのかという気がする。そのようなことではないのか? 単に伝えるだけであれば「こう言っている」と伝えられるが、適切に対応して下さいと言うと、適当かどうかという判断をJBICがしなくてはいけないというふうに読めるということを懸念されているのではないか?「事業者等による適切な対応を促す」という書き方が、どちらかというと第三者側に立っているというふうに読めないわけでもない。この段階はJBICの立場はニュートラルであるべきなので、表現を少し工夫すればよいのではないかと思います。

北野:「事業者等による検討がなされるよう、その指摘を借入人に伝達する」という表現ではどうか。事業者に求めているのは検討であって、対応するかどうかは中身に従って考えるということではどうか。

松本(郁):「適切な対応」なので、そのたびに対応する必要がなければ、別に促さなくてよいので、そこはどうだろう。

北野:その指摘が本当に事実なのか、どのぐらい重いものなのかというふうなことをまず検討するわけだ。まず最初に入ってくるのは情報で、それについて検討をし、検討の結果、対応が出て来る。

大村:DGでは3段階あると整理している。一つは指摘がされたらとにかく詮索しないで事業者に伝える。その次は、JBICとして何かをして欲しいを思ったら相手側に何らかのことを促す。第3段階として、銀行はその対応の結果についてちゃんと調べなければいけないと銀行が乗り出す。現行の文書では1番目の伝える行為と2番目の促す行為の二つが入っている。ですから、これを伝達するだけの話にしてしまうと2番目が消えてしまうので、少し工夫の余地がある。「適切な対応を促す」ということも、どこかの段階で入れる。

北野:適切な対応という話は中身について見た上でという部分を飛ばしてやるべきではないと思う。山田課長が違和感をお持ちなのは、「すべてのケースについて適切な対応を促す」ということになってしまうことではないだろうか。私が先ほど申し上げたのはそのような意図である。原則として伝達する。その後で中身を見てプラス・アルファというのがあるかも知れない。そのような意味では、二つに分けた方がよい。

大村:「その指摘を借入人に伝達するとともに、必要に応じて事業者等による適切な対応を促すよう努める」。

山田:私は4段階あると思っている。JBICが事業者に伝えない場合だ。今の議論だとこれもありうるということですね。「明らかに」という条件はつくが、「必要に応じて」を「伝達する」の前に持ってきていただいて、「必要に応じ借入人に伝達するとともに」、これまた「必要に応じ」というのがもう一度入ればよいのだが、「対応を促す」と。

前田:本来伝えるべきものを握っていた、隠していたというのはどうだろうか。指摘をする人々は誰でも適当な気持ちで言ったわけではないだろうから。

大村:こういうのはどうか。実体的なものだとする。「具体的指摘があった場合」、というのはいかがか。

山田:「具体的な」というのは「指摘」の前に入るんですね。

大村:はい。「第三者等から、環境社会配慮が十分でないなどの具体的な指摘があった場合には、国際協力銀行は、その指摘を借入人に伝達するとともに、必要に応じて、事業者等に適切な対応を促す」。

北野:ここで「借入人」と「事業者等」は、どうして区別されているのか? 基本的には借入人が対応することの一つとして事業者への働きかけがあるという整理なのか。

大村:ここはL/Aの契約相手は借入人なので借入人に伝達するというところから始まった。借入人を通じて事業者等による対応を促すという論理構造だったので、「事業者等に対し」にならない。より正確に、元の文意をきちんとするとすると、「その指摘を借入人に伝達するとともに、必要に応じて、借入人等を通じ」となる。「借入人」等と申し上げたのは、例えば政府の場合もありということだ。

 もう一度読み上げると、「その指摘を借入人に伝達するとともに、必要に応じて、借入人等を通じて事業者等による適切な対応を促す」。

 それでは次、1823行目以降にいってよろしいか。ここは、今回新たに追加した部分で、事前に十分な時間的余裕を持ってお知らせできすに申し訳ない。まずざっと読んでいただいて質問などをおうかがいして、その後書面でコメントをいただき、本格的な議論は次回会合でやる。

北野:最初に質問をしたいが、1910行以降「異議申し立てへの対応のための組織」で、勧告をするというのと法律上の関係は契約によってできているわけだが、それとの関係はどういうふうに考えるのだろうか。基本的にはJBICに対して勧告を行うということで書かれていると思うが、実際には事業を進めるかどうかということの法律上の権利、義務関係というのは、借款契約で相手国政府、相手国の実施機関との間でなされている。コントラクターとも法律上の関係がある。

大村:直接に借入人等に対し勧告をすることは、むしろそうした方がよいのではないかという話もあったが、あらかじめそのような展開を設けることについて、相手側と了解を得るのは非常に難しいだろうという話があり、そこでJBICとしてのアクションに対するアドバイザリー機関として外部委員会を位置づける。この委員会からの勧告を受けたJBICは、融資機関として取れるアクションを取る。

前田:円借款の場合と違って、国際金融等業務の場合は事業者の関係、契約者の関係などと非常に複雑だ。それらを全部包括的に全部分けるのは非常に困難なので、外部委員会からの勧告の相手方はJBICにする。その後の話はまたJBICがそれぞれの業務の内容に応じてという対応するということだ。

北野:そうなると「実際に融資の停止等の勧告を行うように」という想定ですね。JBICが勧告を受けて、それを実際に相手との間で議論できるメカニズムというものを想定していないといけないが、ドラフトをされた皆さんは、その流れをどういうふうに想定していたのか。

前田:外部委員会の勧告をどのように相手方との契約関係で反映させるかということについては、一般条項の中にある一般注意義務違反に入れ込むような工夫を今後していくのだろう。

北野:先ほど議論したL/Aの中での融資の停止または破棄を行うことがあるというところと非常に関わりがあると思う。基本的にはいつもL/Aに融資の中止・破棄を入れるという前提に立つのであれば、そのような流れを想定できるわけだ。けれども、融資の停止・破棄というのは実際にはL/A交渉によってはどのような規定振りになるかわからない。そのような行き先が不確かな部分のメカニズムを作るということが、現実的だというふうに判断ができるのかとの点がある。

前田:二つある。個別の問題については、一般的な条件としてできるだけ特定的な条項を入れる形にしたいと思う。もちろんできないかも知れないし、非常に包含する範囲は広いけれども、条項としての効力はある。それで発動するというのはあまり実際的ではないが。またもう一つは融資の停止や破棄にいく前に、調査権を発動できるような形にしておく。そこは今後の工夫の余地があると思うけれども、調査の結果ただちにサスペンドにするという1対1関係に対応するかどうかはまだわからない。まずは事実をつかむために調査するということが入ってくると思う。

北野:ここでJBICに勧告することの中身は、その案件、その分野でなしうる範囲に限ったことでそれ以上のことを求めるという仕組みをするのは望ましくない。例えばそれぞれの借款契約の枠内で取りうる措置について勧告する。そのような枠組みを設けるべきなのではないか。

前田:ただ、あらかじめ契約に、パネルの勧告によってただちにサスペンドすることができるというような包括的でかつ特定的な文言を入れるのは無理だろう。そうではなくて、調査権に基づいて調査をして、実際にどういうことが行われているか確認し、その中でどういうアクションを取るのか妥当かを選ぶということに結果的にはなると思う。

北野:L/A交渉の結果によっては、融資停止についてJBICが発動できるケースもあると思う。しかし、この点は結局、どういうふうなL/Aができるかということによるのではないだろうか。

前田:一般的条項は必ず入っている。最後に、まったく受け皿がなくなることは絶対にない。

北野:一般的条項が入っていても、先ほど山田課長がおっしゃったように、例えば円借款で言えば、相手方による重大な瑕疵ということがある。その場合に融資の停止を発動するというものが当たるかどうかはケースバイケースで違うわけだ。実際に問題となるケースについて、われわれはいつも重大な瑕疵に当たるか当たらないかを議論するが、すべての問題案件がそれに当たるわけではない。

 結局はここでJBICとして取れる措置、あるいは日本側として取れる措置というのは借款契約の枠中で取りうる措置という枠を全体として入れないといけない。そうしないと何でもできるというような形で理解されるとなると、少し違うのではないか。

前田:そのようなことはまったくありえないという想定で書いたのだ。

 

HIV/AIDS問題について>

北野:私が来る前に議論したところのようだが、HIV/AIDSの話をもう一度してもよろしいだろうか。プロジェクトを行うと多くの労働者が集まることによって、性産業の活動が非常に活発になるケースが実際にある。世銀などはそれに対応するような指針を持っている。日本の援助機関では、今までそのようなことが実際上、問題として上がってこなかった。しかしこれからはHIV/AIDSの問題は感染症全体に含まれる問題というよりは、われわれとして念頭に置くべき問題であると思っている。JBICHIV/AIDSの問題としてもセンシティブになってやっていくという象徴的な意味があるので、ぜひHIV/AIDSについて特記していただきたいと思う。

大村:それでは例示として「HIV/AIDS等の感染症」ではいかがだろうか。

前田:そうしよう。 では、本日はこの辺りで終わりにしたい。

 

次回:2001716日(月)午前10時〜12

●報告書のドラフトについて(3