国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会 第15

議事録

 

日時:2001716日(月)午前10時〜12

場所:国際協力銀行9階 大会議室

出席者:

メンバー(敬称略、アイウエオ順)

 伊藤 美月/外務省経済協力局有償資金協力課

 大村 卓/環境省地球環境局環境協力室室長補佐

 川崎 研一/外務省経済協力局有償資金協力課企画官

 川崎 大輔/財務省国際局開発政策課係長

 北野 充/外務省経済協力局有償資金協力課長

 門間 大吉/財務省国際局開発企画官

 馬場 義郎/財務省国際局開発政策課課長補佐

 原科 幸彦/東京工業大学大学院・総合理工学研究科教授

 本郷 尚/国際協力銀行環境社会開発室第1班課長

 前田 匡史/国際協力銀行金融業務部企画課長

 松本 郁子/地球の友ジャパン

 松本 悟(代理:福田 健治)/メコン・ウォッチ

 本山 央子/地球の友ジャパン

 森 尚樹/国際協力銀行環境社会開発室第2班課長

 山田 順一/国際協力銀行開発業務部企画課長

当日参加者(敬称略、アイウエオ順)

 中舘 克彦/国際協力銀行開発業務部企画課調査役

 三好 裕子/国際協力銀行金融業務部企画課調査役

議事録作成:

 坂本 有希、畠中 エルザ/(財)地球・人間環境フォーラム

 

前田:前回の議論の続きを行いたいと思う。

大村:前回の13日の議論を踏まえた改訂版を電子メールでお送りしたが、大半はマイナーな改訂なので、本日は前回のペーパーのままで進めていきたい。

前田:1823行、ガイドラインの見直しの部分でご意見のある方は?

原科:表現として気になる箇所がある。197行目で、「銀行が、このような組織・体制を検討し整備するに際しては、環境配慮についても遵守の確保、実施状況の評価の対象とする〜」となっているが、「環境配慮についても遵守の確保及び実施状況を評価の対象とする」とすべきだ。

 また、その下の「異議申し立てへの対応のための組織」の項では、28行の[ことが重要である。/べきである。]の表現を付け加えるのかどうか、付け加えるのであればどのようにやるのかということになるが。

大村:ここはドラフティンググループ(以下DG)でもどれくらいの重きを置いて書くのかということについて定まっていなかったところだ。

前田:その話の前に、前頁に戻るが、1835行目は「透明的に行う」ではなく、「透明性を確保して行う」にすべきだ。

 

<「異議申し立てへの対応のための組織」について>

北野:主文である1824行〜をどういう表現にするかは判断していただくのだと思うが、それ以外について二点コメントしたい。まず、第一点は前回にもコメントしたことだが、ここで提言がされても、JBICがとり得る措置は相手との融資契約の枠内であるということは何らかの形で示しておくのがよいと思う。融資等の停止に言及する際は「国際協力銀行がとり得る措置は融資契約の枠内に限られることに留意が必要である」という表現を付けた方がよいのではないか。もう一点は、JBICとしての遵守の問題と重なってくることだが、実際に生じている問題にどのように対処するのかとの観点である。ここでは異議申し立てへの対応のためにJBICに対して指摘を行う機関を考えようとのことだが、問題への対処の観点ではケニアのソンデュ・ミリウの件でも明らかなように、現地の人々が参加した形できちんと議論をする仕組みが重要だと考える。借入人の側が公正に問題解決をする仕組みと、ここに書いてあるような異議申し立てへの対応のための組織の関係をどのように考えるかについて議論が必要と思う。この点については皆さんのご意見も伺いたい。

本郷:おっしゃることの意味がよくわからなかった。事業そのものは事業者が責任をもって行い、問題は、JBICではなく事業者が主体となって解決すべきことだと思うが。

北野:その区別は行っているつもりだ。問題解決とは全く別の観点、即ち遵守の問題にしぼってこの「異議申し立てへの対応のための組織」の議論の整理を行うという判断であれば結構だが、もし問題解決ということも視野に入っているのであれば、それはJBICとしてなし得る部分もあるのだろうということだ。

本郷:問題解決というのはJBIC自身による問題解決の意味だろうか。

北野:環境社会問題に対応するための主役が事業者であることは当然の前提であるが、現地において不満がある人が居て、それにアドレスして、問題解決のために公正かつ適切な対応を行うとの点についてはJBICとしても一定の役割を有すことがあろう。

大村:問題に対する対処に関しては、1617頁のモニタリングとフォローアップに若干書いている。意識としては、1819頁は遵守を中心に据えているが、1617頁の「3.10.3銀行による調査と対応」、「3.10.4紛争等への対応」等の問題に対する対処の書き方が弱いというのであれば、加えるべきかもしれない。こういったことを含むガイドラインをJBICは遵守しているかどうかをみるというのが1819頁の遵守の部分という論理構成になっている。

北野:実際は世銀やアジア開発銀行(ADB)のパネルにはガイドラインの遵守の側面と、生じている問題への対処の二つの側面がある。ここに書いてあることは、実際に被害を受けていると思っている人にどのように配慮するかの視点も含んでいるので、そもそも2つの側面をはっきり分けられるのかというのが私の意見の出発点である。

本郷:私の理解では、その2側面ははっきり分かれている。事業のことについては、事業者がやるべきであるし、事業者以上に事業を知っている人は居ないということが出発点だ。モニタリング、フォローアップ等は事実を確認するための行為であり、問題があれば、JBICが事業者に伝え適切な手段を講じてもらう。一方、大変悪い事態であれば、遵守の観点からJBICが融資等の継続の是非を検討するわけだ。世銀やADBの場合、自ら解決方法を示すことがあるが、JBICの現ガイドラインのコンセプトでは、それは行わないという設計になっている。

北野:そもそも「異議申し立て」という表現でいいのかという疑問はあるが、そうだとすると、問題への対処は別項で取り扱い、ここではJBICの遵守のみを取り扱うといった記述が必要ではないか。

川崎(研):2案あると思う。モニタリングの部分をふくらませて書くことと、この異議申し立ての部分の中で問題への対処も取り扱えるように整理することだ。この異議申し立ての部分を読んだ時に、問題への対処と遵守がJBICでは別に扱われていることが明らかになっていないと、不親切ではないか。

前田:まず、異議申し立ての相手方はパネル/第三者機関であり、JBICではないことを再確認したい。正に今の議論は、この外部委員会の権能が何であり、勧告の内容は何になるのかに尽きると思う。現在JBICでは、環境ガイドラインのことに限らず、全般的な遵守に関する議論を行っているが、それはあくまで内部的なことだと考えられている。ここでの外部機関を置くという話は、そこからさらに一歩踏み出して、全体を通じた透明性の確保の話になっている。われわれがこの「異議申し立てへの対応のための組織」として想定していたのは、異議申し立てを受け付け、その内容を調査し、ガイドラインの遵守に関して問題がある場合はその点に限ってJBICに勧告を行う形だった。それを超えて問題の対処まで行う権能を持たせるということは、私は考えていない。

川崎(研):パネルの権能と遵守とが一対一対応の関係であるということであれば、問題への対処についてはガイドラインに一切記述せずにおくということか。

前田:問題解決をすべて自らの力でやる国際機関に比べてJBICの契約上のleverage(当事者関係)はあまりに小さいので、提言はこのようになっているというのが私の理解だ。JBICができることは、モニタリングとフォローアップで調査を行い、必要な場合はガイドラインに従った措置を契約上の行為を通じて行うということだ。実際には契約上の権利の行使は最終手段となるので、透明なプロセスをもって異議申し立てを伝えるといった事実上の行為を重ねて問題の解決に向けて努力していくことになる。極論すれば、問題への対処方法について予め合意しておくということは、JBIC、借入人、第三者の権利義務関係をL/Aに盛り込むことになるので、非常に困難である。予め問題解決のメカニズムがあるのが一番よいというのにはもちろん賛成だが、現場から見ているとそこまではできないだろうということだ。

原科:ガイドラインの見直しを5年後にするのであれば、それまでに具体的な対処方法が明らかになるかもしれない。

本山:私の認識では、この部分は遵守の問題だけを取り扱うという議論ではなかったように思う。問題解決のためにJBICができることについて外部から勧告をするという位置づけだと思っていたが、いかがだろうか。

前田:予め全く合意されていない問題解決の手段に関連して第三者から契約を修正せよと言われても、それはできない。外部委員会を設けるのであれば、その権能と勧告の内容はきちんと定めておかねばならない。そのとっかかりになるのが遵守の透明性の確保だと思う。政策評価と同様、遵守は自らがチェックするが、さらに透明性を高めるために第三者のチェックを受けるということだ。私がDGでの議論に反対しなかったのは、そういう意味だった。勧告の内容はあくまでも遵守に関してであり、その相手方はあくまでもJBICである。

原科:よって、192728行は「べきである。」の表現でよいのでは?

大村:最初にご説明しておくべきだったが、第3章がガイドラインの構造とその解説、第4章以降はガイドラインを受けてJBICがとるべき実施体制について書いてある。よってこれ以降はガイドラインの案文には出てこないことをご理解いただきたい。また、JBICが世銀等の国際機関と比べて予め問題解決の手段について合意するのが困難であることに鑑み、ガイドラインの18811行で重要性の認識だけはするようになっている。

北野:それでは「異議申し立てへの対応のための組織」のところでは、最初に「実際の問題が生じた時にはモニタリングとフォローアップの項に従った手続きがとられるべき」と書いて、「それとは別にJBICによるガイドラインの遵守は真剣に取り組むべきものであるとの観点が存在し、その手法としては、JBIC自ら行うだけではなく、外部委員会の設置も提起される」という流れにするのがよいだろう。世銀等を持ち出すと問題解決の話を惹起するので混乱が生じると思われる。

前田:そうですね。

原科:そうなると、192728行はどちらにするか選んでしまってもよいのでは?

本山:24行では「IFC事業を対象外」としているが、民間主導の事業の場合は、世銀でもIFCの中にCompliance Advisor/Ombudsmanを置く形をとっているので、「対象外」としなくてもいいのではないか。

前田:なるほど、そうですね。

大村:「異議申し立てへの対応のための組織」の話だが、問題への対処は17頁の「紛争等への対応」で書いて、19頁の「異議申し立てへの対応のための組織」では遵守の問題だけを取り扱うように書いた方がわかりやすいと思う。

福田:そもそも世銀のパネルの機能は、各政策に照らした遵守義務違反の有無だけをみるものであり、具体的な問題解決の方法を示すのはあくまでも理事会では?

北野:それはそうだが、私のコメントはプロジェクトに問題があると考える人が、このガイドラインを読んでどういう行動をとるのかを考えるべきとの点にある。問題解決はモニタリングとフォローアップの項で行うことを明記した上で、遵守のことを記述する形でわかりやすくした方がよい。

前田:おそらく1910行目「異議申し立てへの対応のための組織」としてあるから問題なのであって、「遵守に対する異議申し立てを受け付けるための外部委員会の設置」とでもしたらよい。

原科:14行は「有効である」を「必要である」とでもすべきである。

大村:該当箇所について具体的な文案を出して下さると有り難い。また、1923行に「国際協力銀行がとり得る措置はL/Aの枠内に限られることに留意が必要である」という表現を付けた方がよいとの話もあったが。

北野:今の文脈の中であれば要らないだろう。

前田:民間の事業であれば遵守をチェックする対象にならないということではないので、24行のIFCに関する話は削除するのがよいだろう。また、27行以下は「外部委員会等の組織を置く[べきである]」になるだろう。その下の1)は調査権を持つということであるので、事案に係る遵守に関する異議申し立てを受け付け、調査を行い、その結果に基づいて銀行に対して勧告を行うということになろう。

大村:これも具体的な文案をいただければ有り難い。

前田:4章に移ろう。

原科:表現として気になったのは、2035行にある「第1線としてスクリーニングし」だが、これはどういう意味だろうか。

大村:借入人から融資の要請を受け、連絡をとりながら審査に入っていく、その第一線ということだ。

前田:正にfront officeとしてスクリーニングするということなのだが。いずれにせよ「第1線」は漢数字にしなければならない。

原科:「第一線部局として」はいかがか。続いて38行に「:リスクの適切な評価という観点から審査を厳正に行い」とあるが、まず「:」の後にスペースを空けて置く方が見やすい。そして、最後は「行うが」ではないか。

前田:「厳正に行うものとし」だろう。

原科:また、末尾が否定形にならないようにしよう。

前田:「リスクの適切な評価という観点から審査を厳正に行うが、案件の環境配慮の改善等、借入人等への働きかけは融資業務担当課が行う」とすればよい。

 

<グッドプラクティスについて>

本郷:2113行の「4.2.3 経験等の共有と蓄積、グッドプラクティス等の充実」は私のコメントが入った部分だが、補足説明をすると、JBIC自身が個別の案件の環境配慮確認を通じて蓄積した経験を次の環境配慮確認において活用すべきであり、そのための準備をしていくのは当然で、実際やってきていることだが、われわれが何らかの基準を作ってそれを外部に出すのは非常に困難な話である。国際機関とわれわれとでは役割が異なり、実際に貸付を行っている案件の数が違う。たまたま1つのセクターで23の事例を積んできたところで、それをもってグッドプラクティスとして出すことは危険であるように思う。それぞれの案件が異なる状況下で行われることを踏まえると、できるだけ既存のものを活用する方が実際的であるし、金銭的・人的資源の振り分けが適切になると思う。20913行でグッドプラクティスとして活用するとなっているので十分だと思う。

松本(郁):そうすると文章はどう変わるのだろうか。

大村:「銀行は、すでに様々な国際機関等が発表している経験等を活用すべきである」となる。

原科:将来的に蓄積ができてくれば、グッドプラクティスとして公表してもよいが、当面は困難ということだろう。

本山:すでに専門家の意見を入れたハンドブック等を使っているのであれば、それを公開すればいいのだろうと思うが。

本郷:色々な経験を踏まえてわれわれの認識も変わっていくので、それを対外的に公表するということになると、場合によっては古いものになってしまうかもしれない。内部的にベース・データとして活用する分にはよいが、公表するのはマイナスの効果があるように思う。

前田:グッドプラクティスと思って公表したものが実は古いと言われる方がむしろよいのではないか。

本郷:事前にガイドラインに示されたグッドプラクティス通りに事業が進んでも、むしろそれが足かせになる場合があるように思う。また、グッドプラクティスとして公表するものに関して責任をとるのはなかなか難しいのではないかと思う。

松本:グッドプラクティスはガイドラインの遵守とは異なるので、前提を書いておけばよい。

原科:ガイドラインに書けないことをグッドプラクティスとして示すという感じで、そんなに厳しく考えなくてもいいのではないか。

本郷:グッドプラクティスをJBICが示すことにそれほど意味があるのだろうか。

前田:カナダのEDCなどはわれわれよりずっと経験が少ないのに公表している。

本郷:前向きな印象を与えるのはよいが、JBICは事業者ほど情報も知識もないので、これがグッドプラクティスであると示すことは危険である。

原科:しかし、そういうことは世の中も段々と理解していく。

前田:ODA業務では、環境社会配慮ハンドブックがグッドプラクティスという位置づけですよね。

山田:ハンドブックはガイドラインに書けないケース・スタディなどを取り上げているので、一応ODA業務ではグッドプラクティスのような位置づけだ。

前田:「ベスト」プラクティスと言っているわけではないので公表してもよいのでは? ベンチマーキングをやる時にも示せる事例が多い方がいいと思う。

大村:「積極的に作る」ということになると、確かにコストはかかるかもしれない。

本郷:おっしゃるように、やれないことはないだろうが、ものすごいコストと手間がかかる。現場の感覚からすれば、中途半端なものは恐ろしくて公表できない。

山田:一般化というのは難しいかもしれないが、ODA業務では事後評価をやっている。そこから得られるものは教訓集として出している。個別の事例としてであれば、その活用するかどうかは借入人に任せてできるのではないか。ただ、国際金融等業務では、すべてで事後評価が進んでいるわけではないので、時間がかかるというのは理解できる。

本郷:経験を紹介するということと、グッドプラクティスとしてある程度一般化することはかなり異なる。

原科:それほど慎重に構えないで公表しているのが外国の例ではないだろうか。日本人は躊躇し過ぎるところがある。「適宜行う」、「努めるべきである」といった表現でいかがか。

本郷:「グッドプラクティス」にこだわらずに「経験」といった表現であれば実際的かと思う。

原科:「今後の参考になるような事例について紹介に努める」などだろうか。

前田:JBICの案件がベンチマーキングの相手方になるというのは非常に名誉なことである。

門間:「事例集、グッドプラクティス等」などとすればよい。

本郷:こういう問題についてわれわれは謙虚であるべきだと思う。「事例集」が妥当だろう。

大村:それでは、経験等を活用すべきだとしておいて、さらに「銀行としてはこれらの文書を専門家等の協力を得て積極的に作成・公表し、銀行内外での普及に努めるべきである」と、活用と作成を分けることにする。

 

<「国際協力銀行による借入人等への支援」について>

大村:借入人等の環境配慮が充分でない場合にJBICとして支援をしてその案件の質を高めるべきではないかという議論は研究会でもかなりあったが、支援措置の機能拡大をガイドラインに入れるのは困難だろうという結論だった。案件が形成されてからJBICが関与することが多いことや、海外経済協力業務と国際金融等業務とでかなり状況が異なることに鑑み、2144行の「支援の重要性を指摘するのみにとどめる」となっている。

原科:そのようなことを、今後の検討課題として書き加えてはどうか。

大村:それでは、44行目「指摘するのみにとどめる」の後に「今後、借入人等の支援については、さらに検討する必要がある」と入れよう。これで一通りの議論は終わったが、「1.はじめに」が残っているので議論していただきたい。

北野:その前に、コメントを足してよいだろうか。「情報公開と協議」の131819行で「ロングリストの公開が進められており」とあるが、これは現状で作成されているのはベトナムと他一国だけであって、このままの表現ではすべての国についてそうなっているかのような印象を与えるので、「円借款案件については、国によっては要請案件の概要というべきロングリストを作成し、公開する作業が進められている」とした方が正確だろう。

大村:しかし、それでは特定の国にしか行われないような印象を与えないか。

北野:実際は、毎年貸付を行っていないような国でもすべて作るというわけではなく、大口の貸付先から協議を始めている現状である。

 

<環境社会配慮に関し事態の改善が必要な場合について>

北野:18頁の1619行については、「融資の停止等の銀行側の措置を検討することがある」とあるが、融資の停止を行えないこともあるので、「適切な対応を要求するとともに、銀行側として貸付契約の枠内でとり得る措置を検討する」とすべきではないか。

原科:しかし、契約の枠内でとり得る措置を検討するのは当然なので、それをあえて書くとインパクトが薄れてしまう。

大村:「融資の停止等の銀行側の措置を含め、貸付契約の範囲内での」となるのだろうか。確かにインパクトは薄れるが、北野課長がおっしゃるのは、案件に問題があると感じている人に対してどんなメッセージを発することになるのかを考えると明記していた方がよいということだろう。

北野:その通りだ。

松本(郁):「検討することがある」とおっしゃるが、融資の停止等の措置は当然に契約の枠内だと思うが。

北野:よくわかっている人は「契約の範囲で」と思われるだろうが、融資の停止等の措置は重いことであるだけにきちんと明記しておいた方がよい。

山田:われわれには自明だが、確かにここだけをみると貸付契約の話は別にあるかの誤解を与えてしまうかもしれない。自明ならばなおのこと書いてもいいのではないか。

本郷:事前にわかることは環境配慮確認の結果を契約に反映させ、covenant(約款)として貸付契約に盛り込む。この場合は、契約に基づいた融資の停止等の措置は取れる。北野課長がおっしゃっているのは、契約上の措置が取れない契約があるということではなく、契約上読み込めないような事象が発生した場合には、融資の停止等の措置が取れない場合もあるということだろう。

北野:その通りだ。

前田:「貸付契約の枠内で」という表現がわからない。そうであれば、当然のことではあるが、「貸付契約に基づく銀行の権利の行使を検討する」になるだろう。それはあくまでも、「権利の行使を検討することがある」ではなく、「検討する」である。要するに、あらかじめ決められた契約関係を事後的に修正してまでは行わないことを明らかにすればよいのである。

川崎(研):それでは、「銀行はあらかじめ締結された貸付契約に基づき、借入人等に対し」と入れてはいかがか。

前田:その場合の結語は「検討することがある」でよい。

 

<「1.はじめに」について>

原科:提言のタイトルに「環境」の語が入っていない。

大村:題は「国際協力銀行の環境配慮ガイドラインについて」にでもして、サブタイトルとして「国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会の提言」と付けたいと思う。今日の議論を踏まえてガイドラインの文言は調整したい。

 1.はじめに」について議論をしたい。資料「提言「1.はじめに」に関する大村委員からの提案」では、研究会の検討経緯、本報告書の位置づけ、提言の活用、OECD輸出信用グループの作業との関係、今後のとりくみの5項目を挙げている。これは、DGとしてではなく私で出した資料なので、文言についてよりもこれをきっかけに「1.はじめに」に何を入れるべきかを今日議論できればと思う。

原科:提言案の18頁に5年以内にレビューを行うとあるので、研究会のメンバーのことを含め、それにどう対応するかを考えねばならない。

前田:1.11.3までは全く異議はない。1.4については二つの観点からコメントをしたい。まず、表現としては、OECDの「コモンアプローチ」と、G7の「共通の環境ガイドライン」の二重構造であるので、ECGの話であれば「コモンアプローチ」としなければならない。そして、35行で「包含しつつも」とあるが、むしろ機関同士のrace to the bottom(下方への競争)というメカニズムが働く中で、JBICは逆の方向に動いていることをきちんと言いたい。OECD/ECGでの議論が困難であることを踏まえつつも、「全体の水準を引き上げる牽引役になることを期待する」といった文言を入れてはどうか。先日の国際会議で、米輸銀の前総裁ジム・ハーモンドが、「COP6の議論ではアメリカが遅れているとの印象があるが、ここではずっと進んでいる」と言っていたので、「今まではその通りだが、もうすぐ追い抜きます」と言ったら拍手を浴びましたよ。

本郷:30行「簡易なもの」という表現は、セクターによっても状況が異なるので避けた方がよいと思う。

川崎(研):表現としても厳し過ぎるように思う。

大村:「簡易なものとなることも予想される」という表現になっているのは、ECGでの議論に関する資料が研究会の場に出ていないからだ。

前田:一応Revision 6Working Party on Export Credits and Credit Guarantees/ISSUES PAPER ON OFFICIALLY SUPPORTED EXPORT CREDITS AND THE ENVIRONMENTとして出ている。また、原科先生がおっしゃったように、「今後のとりくみ」の項には、「今後のレビューに向けて」などと入れるべきだと思う。

原科:研究会として今後レビューを求めたいということになるのだろうか。

前田:研究会は、当初予想したよりもはるかに有意義なものだった。それは、皆さんが立場の違いを超えてボランタリーで集まって、現状から一歩でもよくするにはどうすればいいかということを集中的に討議した結果だと思う。そういう意味では、立場の違いを超えた一体感、peerだという意識も生まれたと思う。これは画期的なことであるし、環境問題に限らず、JBICのこれからのステイクホルダーとの関わり方として一つのグッドプラクティスになり得ると思う。confrontationだけでは何も生まれないということを感じた。それぞれの立場を超えてcontributeして下さった方々に本当に感謝したい。後はこの提言の趣旨を、できる限りこのままの形でincorporateするという作業が残るが、最も難しいところになるだろう。「今後の取り組み」のところに、今回限りということではなく今後のステイクホルダーとの対話のよい例として、レビューに向けてきちんとみていくということを示していただけると有り難い。

山田:私も途中からの参加だったが、相互理解という点では得るものが大きかったと感謝している。一点だけご確認だが、42行「何らかの形(銀行の業務にもっと関わる形式)」というのは具体的にはどのようなイメージだろうか?

大村:この研究会への参加方式は、基本的にはボランタリーベースで集まり、組織を代表していない形になっている。ここで書いたのは、組織との連携を持った外部委員会の設置などはいかがかという趣旨であった。ただし現時点ではガイドラインの内容、実施体制がはっきりしていないので、決められないと思う。

前田:外部委員会を念頭に置いておられるとは思うが、組織との連携を持った形にすると、身動きがとりにくくなると思われる。

大村:括弧書きを消してもいい。

山田:その方がいい。公式な形で謝礼をお支払いしながらご助言をいただくということも考えられる。「業務に関わる」というとオペレーション自体を監視するかの印象を与えるので、成就するものもしなくなってしまうのではないだろうか。

大村:文言を整理した上で、いつ、どのように公開するかを含め、次回に議論しよう。一両日中に、本日出された文言の修正のご提案をいただければ私が整理します。

 

次回:2001725日(水)午後5時半〜6時半

●報告書のドラフトについて(4