国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会 第16

議事録

 

日時:2001年7月25日(水)午後5時半〜8時半

場所:国際協力銀行9階 大会議室

出席者:

メンバー(敬称略、アイウエオ順)

 伊藤 美月/外務省経済協力局有償資金協力課

 大村 卓/環境省地球環境局環境協力室室長補佐

 川崎 大輔/財務省国際局開発政策課係長

 北野 充/外務省経済協力局有償資金協力課長

 門間 大吉/財務省国際局開発企画官

 馬場 義郎/財務省国際局開発政策課課長補佐

 原科 幸彦/東京工業大学大学院・総合理工学研究科教授

 前田 匡史/国際協力銀行金融業務部企画課長

 松本 郁子/地球の友ジャパン

 本山 央子/地球の友ジャパン

 森 尚樹/国際協力銀行環境社会開発室第2班課長

当日参加者(敬称略、アイウエオ順)

 長瀬 理英/地域自立発展研究所

 中舘 克彦/国際協力銀行開発業務部企画課調査役

 福田 健治/メコン・ウォッチ

 三好 裕子/国際協力銀行金融業務部企画課調査役

議事録作成:

 坂本 有希、桜井 典子/(財)地球・人間環境フォーラム

 

<エディトリアルな変更について>

大村:資料「国際協力銀行の環境配慮ガイドラインへの提言まとめ案」(以下、「まとめ案」)を元に、修正個所の説明を行う。

 全体に関して、主文(平文)の字体は、印刷時には明朝体になる。

 「まとめ案」12728行目「OECDの輸出信用グループ(ECG)」は、「OECDの輸出信用部会(ECG)」とする。これは事実関係の誤り。「まとめ案」181821行目「なお、調査等が行われる間、〜考慮が必要であろう」を、ブラケットつきで追加した。これは、もともと「4.1 適切な実施・遵守の確保のための方策」の項、「遵守の確保のための外部組織」の最後の部分(「まとめ案」203336行目)であるが、「3.10 モニタリング及びフォローアップ」の項に移したらどうかということで案として入れた。

 「まとめ案」201136行目は、北野課長からの提案と元の文章を組み合わせた形に修正した。遵守の確保と紛争等実際の問題解決とが混同するのは良くないとのことなので、1316行目で2つの観点があることをはっきりさせ、この項では遵守の確保について述べ、紛争等の問題解決という観点からは他項で述べるとした。また、2021行目のブラケットつきの部分(「調査の実施、〜とるべき措置」)は、まだ折り合いがついていない。3336行目は前述のように、「3.10 モニタリング及びフォローアップ」の項に移す案があるが、残した方が良いとの意見もあるので、まだ保留。

 「まとめ案」24頁の名簿は、別途配布したチェック用資料で確認していただきたい。

 他の配布資料は4点、長瀬さん(地域自立発展研究所)からのコメント(以下、「長瀬コメント」)、大村追加修正提案(以下、「大村修正案」)、地球の友修正提案(以下、「地球修正案」)、森課長のコメント(以下、「森コメント」)である。

 前田課長は遅れているようなので、先に始めましょう。

 先ほど説明した「3.10 モニタリング及びフォローアップ」、「4.1 適切な実施・遵守の確保のための方策」の項目以外で、前回の議論の趣旨と違う点などについてご指摘があればどうぞ。

 

<融資の一時停止等と外部委員会に関わる文章について>

 (「まとめ案」1818行目〜21行目 及び 「まとめ案」2020行目〜21行目)

大村:「まとめ案」202021行目のブラケット部分(「調査の実施、〜とるべき措置」)についてのご意見は。

松本:地球の友としては3336行を「まとめ案」20頁に残しておいた方がいいという提案をした。しかし、「まとめ案」1818行目の「調査等が行われる間」を「銀行及び外部組織の調査等が行われる間」にすれば、「まとめ案」20頁で外部委員会に関して述べようとしたことも含まれるので、ブラケット部分は必要ないのではと思い直した。

大村:外部委員会がなんらかの調査を行っている間、融資の一時停止等の措置を取れれば有益だという話もあって、2箇所に記載した。外部委員会に関する記述を「モニタリング」の項目(18頁)、または「遵守の確保」の項目(20頁)のどちらかのみにすると、外部委員会の機能について正しく説明できないと思ったためだが、これは「モニタリング」の項目(18頁)に統一した方が良いということか。

松本:はい。

大村:それでは、「まとめ案」1818行目を「銀行、あるいは後述の外部委員会等が調査を行う間」として、「まとめ案」202021行目ブラケット内を削るということでよいか。

北野:外部委員会というのは、JBICが自らのガイドラインを遵守しているかどうかを見る機関であって、紛争等の解決における訴えの利益とは直接結びつかないのではないか。前回の議論でも、外部委員会の存在意義は遵守の確保ということで整理したはずであって、今の修正ではこの整理を曖昧なものにしてしまう。

大村:私の理解では、外部委員会の役割とは銀行がガイドラインを遵守しているかどうかを外部から公正な目で見る、というものである。しかし、「融資の一部停止等の措置をとることができれば」(「まとめ案」1818行目)と書く場合の主体は、外部委員会ではなく銀行である。要するに、銀行が委託した外部調査委員会等が調査を実施している場合に、銀行がなんらかの措置をとることができるということだ。

 「まとめ案」1818行目「調査等が行われる間、融資の一部停止等の措置をとることができれば」の「措置をとる」主体は、銀行以外有り得ないということで良いだろうか。更に「後述の外部委員会等が調査を行う間、融資の一時停止等の措置をとる〜」としても、措置をとる主体が銀行とはっきりしているのであれば、ここに外部委員会というのが入っても、そんなに混乱しないのでは。

北野:「訴えの利益」との関係はどうするのか?

前田:これは誰が誰に訴えるのか?外部委員会に対してか?

福田:通常は、現地の住民が、銀行のガイドライン、ポリシーやプロシージャ等に関する違反について訴える。つまり、銀行がこのガイドライン、ポリシーやプロシージャにのっとって運用を行う際に、被害を受ける可能性のある人が訴えるということだ。私は、銀行の遵守をチェックする組織(外部委員会等)が「訴えの利益」と全く無関係であるとは考えないが。

前田:3.10.4は「紛争等への対応」の章であって、遵守に関する話ではないのでは。

福田:遵守のことについても、ここで限定しようというのが今の話だと思うのだが。

前田:おそらく北野課長がおっしゃったのは、前回、「遵守の確保」の議論と「紛争等の対応」に関する議論は別々に行ったはずだ、ということではないか。

 訴えの利益とは、結局訴訟を想定しているのだとは思うが、その場合は、あらかじめ紛争処理手続きに基づいて調査を行い、その結論をみんなが尊重するという合意がないといけない。第三者の外部委員会に関しても、そのような組織に訴えることもある、ということを銀行と借入人との間であらかじめ合意しておく必要があるのだが、そういうことを想定されているのか?

 この章(「3.10.4 紛争等への対応」)ではもともと外部委員会については触れていない。そこまでやるとすると、あらかじめ紛争処理手続きということについて、L/Aの中で合意しておかなければ実効性がない。「融資の一時停止」ということに関しても、契約上の条項に基づいて、停止を行うこともできるとしておかなければ、実施することはできない。このように、全てにおいて契約しておかなければ、いくら有益だといっても合意できず、結局意味がなくなる。

本山:しかし、外部委員会が停止の措置等を命令することはできず、あくまでも停止はJBICが行うということではなかったか?

前田:停止するのは確かにJBICだが、理由もなく停止することはできない。あらかじめ停止を想定した条項があり、それに基づいた権利を行使するということになる。法的な取り決めのない一方的な権利行使ということになると、レンダーデフォルトになり、逆に訴えられる。貸方が何の取組もせずに差し止めれば、これはデフォルトだ。

 銀行として、何百億と借りている借入人と、突然訴え出てきた人の言い分、どちらをとるかというのは、通常の行動パターンとしてもわかりきっている。訴えられる可能性のある行為(融資の停止等)をとる可能性はゼロに近い。このような状況を想定すると、やはり紛争処理手続きについて合意しておく必要がある。

 しかし、遵守の確保というのはそういう話ではない。遵守の義務は銀行が負うもの。相手方に不意打ちにならないように、あらかじめガイドラインを示し、対外的にも公表している。遵守の観点から外部委員会があり、またそれが調査等を行うこともある、ということを示しているから意味がある。

 究極的に突き詰めれば、あらかじめ合意された手続きに従って、第三者が紛争を淡々と処理(融資の一時停止、更に最終的な結論まで)していく、ということだ。そうでないと泥試合になってしまう。

 融資の一時停止は簡単な措置ではないので、あらかじめ合意しておく必要がある。お金を出す方も契約の義務を負っている。ディスバースメントのリクエストがあれば、お金は出さなければならない。それが契約の義務であり、差し止めるためには、相手方にもそれなりのデフォルトがなければならない。

長瀬:これまでも融資の停止がされたケースがあると思うが、そういう場合も事前の合意はあったのか?

前田:もし本当に必要であれば、調査の間は融資を差し止めることができるという包括的な条項があった。ただ、その時に銀行(契約当事者)以外の第三者(外部委員会等)が入った場合、その組織の役割等を一方的に銀行だけが決めているのでは、合意は不可能。

原科:北野課長がおっしゃったように、「紛争等への対応」と「遵守の確保」と分けたものを、また一緒にするのは混乱する。

北野:本郷課長もはっきりさせようとおっしゃっていたが、あくまでも遵守の確保はJBICがガイドラインに対して責任を負うという観点であって、それと、紛争対応(問題が生じたことによって被害を受けているという提起がある人への対応)とは、はっきり分けて議論するべき。後者の問題は「3.10.5 モニタリングとフォローアップの記述」の章で整理をする話だろう。両者を混同させないためにも、「遵守の確保のための外部組織」(「まとめ案」2011行目〜)の項目で、融資の停止等について書くべきではない。遵守に関して、JBICがどうあるべきかということは相当幅のある話(内部対策の改善等)である。「遵守」と「融資の停止」とを直接結びつけない方が、この部分は整理できる。

原科:「遵守」に関わることで「融資の停止」もあるかもしれないが、むしろそれは銀行の判断である。遵守に対する疑念を抱かれた場合には、そのようなアクションをとる可能性もあるということ。「訴えの利益」とは関係なく、あくまで遵守に関する問題である。実際には紛争に絡んでくる話ではあるが、紛争時の対応との整理はしておかないといけない。

前田:紛争解決時の「訴えの利益」を判断するのは、レンダーではない。司法的手続き等を行う仲裁者が具体的に考えるべきことである。紛争の一方の当事者になりうる可能性のある人間が、訴えの利益についてうんぬんするのはおかしい。

大村:それでは203336行目を削除。そして181821行目を残す。181315行目「国際協力銀行が貸し方の権利行使として、調査を行い、その結果に応じて融資の停止等を含む必要な措置がとれることが」(「まとめ案」)とつながっているので、これはあくまでも貸方の権利行使であると言える。それを前倒しで、調査等を行うための融資の一時停止ということも言うべきだが、かなり難しい判断が必要であるということが解説に書いてあるので、181318行目は素直な流れだと思う。ここに「外部委員会」を絡めるとどうなるか。

前田:「外部委員会」より「訴えの利益を保護する」という考え方が、紛争調停的なイメージを与える。

大村:そこは了解したので、「訴えの利益」をとって、「申し立て者を保護する上で」に変えてみてはどうか。

前田:「申し立て者の保護」というよりも、訴えた時点から更に事態が進展してしまい、訴えた意味がなくなることを懸念している。JBICの貸方の権利行使ということに引っ掛けるのであれば、「訴えの利益の保護」ではなく、「紛争処理の対応として、適切となるような調査の実効性を確保する観点から」とした方が良いのではないか。

本山:その場合でも、外部委員会の調査は難しいということか。

前田:調査を委託するのであれば、必要な場合は外部委員会があってよい。しかし、「遵守」の項目において言及されたものと同様に、常設の機関として外部委員会を置き、それを必ず紛争処理において使おうとするならば、先ほど言ったように前もって合意しておく必要がある。

本山:遵守を疑われている場合に、JBICはそのまま融資を続けていいのかという問題があると思うが? 「訴えの利益」という意味ではないかもしれないが、遵守が疑われている場合において、それが妥当かどうかを調査する意味というものが、また別に出てくると思う。

前田:確かにそうだが、それは貸方の権利という意味ではなく、外部委員会の権能という意味になる。外部委員会を権威あるものとするために、無視されることのないように、何らかの勧告ができるような権能を持たせる必要があるというのもわかる。ただし、それはあくまでも一時停止せよという勧告をするだけのものだ。

大村:外部委員会が、訴えを受けた後に調査を行い、銀行に一時停止を求めた方が良いとなった場合、その時初めて銀行は一時停止し、更に調査を行う、というのがすっきりした流れである。だが、委員会への提訴即融資の一時停止だと論理の飛躍がある。よって、「なお、調査等が行われる間」としておき、調査を行う主体についてはあえて言及しないでおく(基本的には銀行、あるいは銀行が委託した機関)のが良いのではないか。

前田:調査の実効性を確保する観点は。

大村:「なお、調査等が行われる間、融資の一時停止等の措置をとることができれば、調査の実効性を確保する上で有益であると考えられる。」とつなげる。外部委員会の調査は銀行が委託した、というのであれば問題はない。それを言うと混乱するので、あえて言及はしない。

前田:遵守に関する議論は、外部委員会に決定的な権威がなくてはならない。権威のある外部委員会が調査を行った結果の勧告であれば、容易に無視できないものになる。このような観点から言えば、遵守の確保というのは、当事者ではなく、外部委員会と銀行との関係について何を勧告できるのかのみ書いておけばよい。それを受けて、銀行がレンダーとして相手方(借入人)にどのような対応をとるか、ということまでここで言及すると、デュプリケーションが起こる。十分に強い権能を持った外部委員会であれば、それで機能すると思う。

北野:文言としてはどのようになるのか?

大村:私の提案は、1818行目〜「なお、調査等が行われる間、融資の一時停止等の措置をとることができれば、調査の実効性を確保する上で有益である。これについては〜」を残し、203336行目はとる。

北野:202021行目では、外部組織が勧告する内容についてはケースバイケースであると思われるので、具体的な行動を書いて方向性を決めてしまうよりは「とるべき措置の勧告を行う」ということにして、オープンにしておいた方がよい。

松本:私たちとしては、具体的な記述があった方がわかりやすいと思い、そのようにした。「等」も入っているので、大丈夫ではないか。

前田:外部委員会の権能がどの程度のものかを示す必要性はあるかもしれない。

大村:主文はあくまでも「とるべき措置の勧告」で、その例示として「調査の実施、追加的対策の実施、融資の停止」が入っても不自然ではないと思うが。

原科:2021行目「〜融資の停止等/とるべき措置」が「〜融資の停止等のとるべき措置」と、具体的に示した方がわかりやすい。

北野:「融資の停止」について、外部組織が勧告してもJBIC自体が実施できなければ意味がない。そういうことがあらかじめ契約の中で想定されているのか、が気になる。

前田:今後は、それに呼応する情報をあらかじめ示しておく必要がある、と示唆しているということでいいのだろう。

原科:そういう措置をとれるようにしておく、ということだ。それは言及しておく必要がある。

北野:前田課長がおっしゃるのは、外部委員会がその措置をとるということか? あるいは、外部委員会の勧告を受けて、JBICがそのような措置をとり得るということか?

前田:遵守ということについて、JBICはこれまでは十分な対応をしてこなかった。当然相手方との契約にも必要な文言は書いていない。一般的な調査権や相手方のデフォルトに伴う調査措置等に関する記述は建前上存在していたが、ほとんど実効性がなかった。今後は実効性を確保するためにも、遵守ということを想定した、何かしらの措置をとれるような受け皿になる条項(文言)は必要だと思われる。

 「融資の停止」等の措置まで行おうとするなら、そこまで考える必要がある、ということを研究会の提言として入れておいてもらった方がよい。

北野:そういうことを一般的な条項として入れる、ということも考えた上で?

前田:今後はそういう方向性になっていくと思う。

大村:それでは、202021行目、ブラケットをとり、21行目、スラッシュを「の」に替えて、「融資機関に対し、調査の実施、追加的対策の実施、融資の停止等のとるべき措置の勧告を行うような外部委員会が〜」とする。

本山:同じ項目の外部委員会の機能説明の(202627行目)「必要な調査を行い」の前に「専門性をもって」と追加(「地球修正案」523行目)した方が、外部委員会というものがわかりやすくなるのではないか。

大村:「まとめ案」2026行目〜27行目を「公正・中立な立場から、遵守に関する異議申し立てを受け付け、専門性をもって必要な調査を行い、その結果に基づき銀行に対して勧告を行う。」とするということでいいですか。

前田:良いと思う。

 

<森課長のコメントについて>

大村:森課長の時間がないようなので、先に発言をどうぞ。

森:「森コメント」に沿って説明を行う。長瀬さんからのコメントについて出された大村さん、本山さんの意見に対しての私の意見。

 一つ目のコメントは、まず、「長瀬コメント」2頁の「2)影響を受ける住民・社会的弱者などの参加を保障すること」に対して。カテゴリAに必要な環境アセスメント報告書に関する公開協議の要件は、世銀と同様に、スコーピング時期とドラフト作成時期の2回にわけて行う必要があるとのことだが、この研究会では、当初から世銀のガイドライン及びオペレーションはJBICのそれとは異なる、という前提をもとに議論を続けてきた。

 世銀は案件形成段階から関与し、自らのガイドラインにあうように誘導していくことができる。一方JBICでは、原則的にF/S作成済み、EIA手続き・承認終了の状態で上がってきた要請を、事後的に確認するという形にならざるをえない。世銀のように、EIA作成段階からものを言っていくのは難しいということを念頭に置く必要がある。

 また、「長瀬コメント」3頁の「4)モニタリングとフォローアップの義務化」について、モニタリングの実施ということで、JBICが環境対策を実施する主体という風に読めるが、基本的には、事業者が環境保全対策を実施する主体であり、そのモニタリング・フォローアップを行うのも、事業者の当然の義務である。その中で、特に環境に重要な影響を及ぼすものについては、JBICがさらに確認(フォロー)する。JBICと事業者の、環境モニタリングへの関わり方は違うということを区別する必要があると感じた。

 そういう意味で、「大村修正案」12031行目で追加された「1.5 国際協力銀行の特性」は、世銀とJBICとの違いを明確にしているという点で、良いアイデアだと思う。

 また、「大村修正案」48行目と24行目において、「(事業者によるモニタリングとフォローアップ)」、「(銀行によるモニタリングとフォローアップ)」というコメントが追加され、それぞれの守るべき項目を明確に分けて書いてある。この方が事業者と銀行との違いがはっきりわかって良い。

 2つ目のコメントだが、「地球修正案」31619行目について。1618行目の「なお、地域住民等のステークホルダー等と実質的な協議や合意形成がなされているかどうかについては国際協力銀行が環境レビューの中において確認する。」ではなく、むしろ1819行目「協議において聴取された意見は、環境アセスメント報告書に記載され、意思決定に反映されていなければならない。」とする方が良いとのことだが、趣旨としては、議論がきちんとなされたかどうかを確認するということだろう。アセスメント報告書の中に記載できればいいが、仮に記載できないとしても、協議会の記録(議事録など)が添付されれば、中身の確認という意味では十分ではないか。

 世銀の場合(「まとめ案」2627頁「別添1 世界銀行 Operation Policy 4.01 Annex B」参照)、アセスメント報告書に含まれる項目に添付書類として、「機関間打合せおよび協議会の記録」(2713行目)をあげている。このように、世銀でも、アセスメント報告書の中に記載するのではなく、添付書類をつけるという形になっている。よって、原文をある程度いかし、「なお、地域住民等のステークホルダー等と実質的な協議や合意形成がなされているかどうかについては協議会記録等に基づき国際協力銀行が環境レビューの中において確認する。」(「森コメント」A)という形でいいのではないか。

 3つ目は、「情報公開の時期と内容」の修正案(「地球修正案」33342行目)について。「情報公開の期限明示」について、文末が「望ましい」から「すべき」と強い表現になっている。しかし、例えばODAの場合、途上国政府からの要請、JBICの審査、日本政府のコミットメントに至る審査手続きについて、これを実施する機関、各手続きの期限等をすべて最初から調査しなければならず、各国での処理プロセスが異なることを考慮すれば、この見直し作業はかなり時間がかかることになる。これには、JBIC内だけでなく日本政府、途上国政府との調整も必要になるため、すぐに見直すというのは難しい。仮に期限を決めるとしても、試験的に実施してみてそれが妥当かどうかを判断する必要があり、今の段階で「すべき」とするのは厳しい。

 4つ目は、「3.10.5 モニタリングとフォローアップの記述」(「地球修正案」41927行目)について。2527行目に「具体的には、住民やNGO、事業者等を含むすべての主要なステークホルダーが参加して対策を協議・検討するための場が十分な情報公開のもとに設けられ、問題解決の枠組みが合意されることが重要である。」と追加されている。これは事業者が主体的に行うもので、JBICは、事業者に対して働きかけ、対応を促す役割であって、JBICが主体的に行うわけではない、という理解で良いのだろうか。文章上は主体が記述されていないが、事業者とJBICの役割の違いを明確にしておきたいので、確認まで。

長瀬:森課長の1つ目のコメントに対して、私からも意見を述べさせていただきたい。なぜ環境アセスメントを世銀並に行えないのかという点については、もちろん世銀とバイラテラルの場合は違うのだが、特に世銀だけを想定したわけではない。OECD/DACの環境ガイドラインでも、スコーピングの段階から住民参加のできる仕組みを作るべきだとなっている。OECD/DACには日本も参加しているので、これは遵守すべき事柄ではないだろうか。

 また、3つ目のコメントの「情報公開の期限明示」の問題についてだが、確かに今の段階で急に日本の援助に対する手続きの変更を相手国政府に求めるのは無理かもしれない。しかし、例えばOECFの出した環境ガイドライン第2版では、2年間の周知期間後にガイドラインを実施したという実績もある。同様に周知徹底させる期間を設ける方法をとるのであれば、期限の明示も可能ではないか?

森:DACではほとんど無償供与だけをやっており、案件に始めから終わりまで関わる仕組みになっている。案件形成がJICAで、ローンからJBICと別れている国はおそらく日本だけだろう。JICAとの連携という観点であればある程度の対応は可能だが、案件形成段階に日本がまったく絡んでいない状態で要請がくる場合もあり、現実問題としては難しい。

長瀬:制度上は追加調査等する場合もあるのでは?

森:もちろんあるが、それも基本的にはF/S等がないとできる話ではない。

長瀬:日本の場合の条件として方針を決めてしまえば、相手国政府もそれに従って手続きを踏むようになるという考え方はできないだろうか?

森:日本が導入するにしても、それに対応できるノウハウや予算がまだ不足しているため、いきなり決めるのはやはり難しい。いずれは政策対話等を通して更に踏み込んでいくこともできると思うが、今の時点では「望ましい」という表現にとどめておくのが、現実等を考慮してみても妥当だと思われる。

長瀬:しかし、実際問題としては、ある程度の調査が終了した最後の段階で公開協議をされても、もう遅いということも考えられる。住民が懸念していることが、スコープの中に入っていなければ意味がない。少なくともスコーピングの段階からの住民参加が、実効性の確保という観点からも必要ではないか。ドラフトの段階で参加できたとしても、実際の調査はほとんど終了してしまっており、住民の意思が反映されないという例があまりにも多かった。

大村:その点については、長瀬さんのおっしゃる通りだと思う。それでは、形式としてどうするかという議論だが、「まとめ案」123741行目に「環境報告書の作成に当たり、事前に十分な情報が公開されており、地域住民等のステークホルダーと協議が行われていなければならない。」とあり、更に「地域住民等のステークホルダー等と実質的な協議や合意形成がなされているかどうかについては国際協力銀行が環境レビューの中において確認する。」となっている。つまり、事前の情報公開や協議、合意形成なしに、環境報告書を作成し、それを地域住民等に強要していないかどうかをJBICはチェックするということだ。

 これを、例えば世銀のように2回実施したかどうかという形式要件とするのは、法律の整備等の問題もありうまくいかない可能性がある。形式ではなく、実態として行われているかどうかを重視した方が良いという意味で、3741行目、42行目〜131行目の記述がある。

 つまり、情報公開や協議等の重要性はもちろん認識しているものの、やはり法律の整合性や事前準備等の問題から見て難しいので形式要件とはせず、その代わりに実態をきちんとチェックすることに重点をおいていると理解していただきたい。

長瀬:法律の整合性を問題とするならば、例えば非自発的移住が最低要件としてあげられている点はどうなのか。相手国の法律によっては、これを要件としていない場合があるのにもかかわらず、あえて最低要件として打ち出されているのは、非自発的移住をした人々の生活レベルを落とさないようにする必要があるということが、普遍的主張になってきているからでははないか。

 相手国の法律、規定の要件の観点から言えば、この非自発的移住の例もある訳だから、スコーピング等に関しても、相手国の法律にあえて触れなくてもいいのではないだろうか。最低要件としてあげればいいだけだと思うのだが?

森:日本の場合、スコーピング段階での協議の効果というものはあるのか?

原科:日本の場合、スコーピング段階の協議は形だけで終わっている例が多く、当初に想定したほど評判は良くない。スコーピングというのは、大村さんが「まとめ案」123741行目で説明した部分、「事前に十分な情報が公開されたうえで、地域住民等のステークホルダーと協議が行われていなければならない。」ということが本質であり、現在の形式だけの日本のシステムはあまりよくない。そういう意味で、大村さんの説明は妥当だと思う。

 今の状況では、本当の協議をほとんどやっていないため、まだスコーピングとは言えない。報告書段階での説明会、公聴会もなく、形だけの報告をして形式を踏んでいるだけのことだ。形式を求めるよりも、3741行目で書かれているような実質的なことを求める方が、より重要である。

 それに、相手国が制度上スコーピング段階を持っていない場合には、相手の抵抗が大きいことも考えられる。3741行目のような表現だと、柔軟に対応してもらいたいという感じになる。私も本当は要件としてはっきりさせたほうが良いとは思うが、現状を考えると難しい。ただ、5年位後の改訂の時には、要件にするという方向に持っていってもいいのではないだろうか。

本山:できるだけスコーピング段階から情報公開、協議があった方が良いという件では合意している訳ですね。それでは、その重要性を視野に入れるという意味で、義務付けはできないとしても強調する、という形の表現を追加するのはどうでしょう?

 「まとめ案」540行目〜の「(社会的合意及び社会影響)」の個所で、「できる限りスコーピング段階から協議が行われることが、環境への影響を防止するためにも重要である」というような表現を加えて、一層努力を促すという形にするのがいいのではないか。

大村:5頁のところはアセスメントあるなしにかかわらず全ての事業に対して行われる話なので、そこに「スコーピング段階で」という言葉を入れるのは適切ではない。

 修正を加えるのであれば、「計画が柔軟であるうちに」「計画立案の早期段階で」「代替案を考える段階で」「計画に柔軟性がまだある早期段階で」というのはどうか?

原科:そういう表現を入れるのは良いと思う。「代替案」というキーワードも入れて欲しい。

大村:では「まとめ案」542行目〜、「特に、環境社会に与える影響が大きいと考えられる事業については、事業計画の代替案を検討するような早期の段階から、情報が公開された上で地域住民等のステークホルダーとの十分な協議を経ていることが必要である。」とするのはいかがか。

 では、そういうことで。

<森課長退席>

原科:一つ修正個所がある。「まとめ案」1220行目の「このため、以下の案文では、公開協議は必須であるものしと」を「〜必須であるものとし」に。

 

<「はじめに」について>

大村:森課長のコメントについてはとりあえず以上にし、話の流れを元に戻したい。

 「大村修正案」1917行目の「1.4 OECD輸出信用グループの作業との関係」について。

 「まとめ案」13132行目「現在の国際協力銀行の環境社会配慮と比較しても簡易なものとなる〜」部分を、「大村修正案」14行目「現在の国際協力銀行の環境社会配慮と比較しても、より簡便なものとなる〜」とする。これは前田課長のご提案。

 また、「1.4」の末尾に「さらに、ECG全体の水準を引き上げる牽引役となることを期待したい。」を加筆する(「大村修正案」17行目)。前回提案があったものを「まとめ案」に入れ損なったのだが、特に反対がないようなのでこのように修正。

 次に、「まとめ案」13641行目の「1.5 今後のとりくみ」を「1.6 今後のとりくみ」とし、その前に「大村修正案」12031行目の「1.5 国際協力銀行の特性」を挿入するのはどうか。先ほど森課長もお話になったが、以前に木原企画官よりいただいたコメント(要請が来た時点では既にアセスメント、計画等が終わっていることについて、何らかの配慮が必要ではないか?)があったので、その考えをもとに、今まで議論してきたことを踏まえて、案文をつくってみた。似たような文章は他の部分にあるのだが、最初に「国際協力銀行の特性」として述べることで、誤解が少なくなり、研究会としてのポジションもはっきりするのではないだろうか。

本山:基本的にはいいと思う。しかし、準備段階から関わることが難しい現状は認識しつつ、将来的には改善することを考えていこうという議論もあったことを踏まえて、現状だけではなく、将来的な課題(考え方の方向性)についても言及した方がよいのでは? 現状だけだと、将来に渡ってもその状況を改善することが難しいと見えてしまうので。

原科:そうすると、「ただし、今後は〜」で始まるような1パラグラフを追加するのか。

本山:例えば、「現状では難しい。ただし、今後は」のような感じで。

大村:それでは、「大村修正案」126行目を「一方、現在の国際協力銀行では、」に変え、30行目を「特性の違いの現状を踏まえつつ、」とするのがいいだろうか?

前田:29行目「本提言は、」以降の文章が、妥協したという印象を与える。30行目「実施可能で」も「できる範囲で」と読めるので、この「実施可能で」を削除し、「本提言は、このような国際協力銀行と世界銀行グループとの特性の違いを踏まえつつも、できる限り国際的水準といえるようなガイドラインとなるよう検討した結果である。」とするのはどうか。

これだと現状を固定しないという感じも出るし、「できる限り国際的水準といえるような」というのも、徐々に上がっていくであろう国際的水準に合わせてこちらも上がっていくのだ、と考えられる。

大村:それでは26行目を「一方、現在の国際協力銀行では」、3031行目を「特性の違いを踏まえつつも、できる限り国際的水準といえるようなガイドラインとなるよう検討した結果である。」とする。

 ここまでで、他に何か?

本山:「まとめ案」11924行目の「1.3 提言の活用」の23行目の前に、「地球修正案」157行目「このような検討プロセスは、ユニークなものであると同時に、今後、国際協力銀行が透明性を高め、専門的知見を取り入れつつ多様な意見を反映してアカウンタブルな政策決定や評価を行っていくうえで貴重な先例となるものと信じる。」という、少しポジティブな表現を挿入するのはどうか?

前田:いいですね。

大村:では、そのままの形で「まとめ案」12324行目の文章の前に入れるということで。

 先ほどの原科先生のご指摘は?

原科:「まとめ案」136行目〜「1.5 今後のとりくみ」の4041行目の文末部分で、「意見交換等を続けることが望ましい。」というのは表現が弱い。「意見交換等を続けることを求めたい。」などのように、研究会としての意思をはっきり出した方が良いのではないか。

大村:「意見交換等を続けることを求める。」でよろしいですか。

北野:そうすると、39行目の「関心を有しているので」の後に、「研究会は」という主語を入れないとおかしいのでは?

大村:それでは、3941行目を「その適切な実施やガイドラインの見直しについても関心を有しているので、研究会としては、何らかの形でこのような場が継続され、意見交換等を続けることを求める。」とする。

 

<「対象事業に求められる環境社会配慮」について>

大村:次に、長瀬さんより、「まとめ案」416行目〜の「3.4 対象事業に求められる環境社会配慮」で、基本的な記述しかなされていないとのご指摘があった。これに対して、2つの修正案が提案されている。

 1つ目は、2931行目の文章の後ろに、「なお、ガイドラインに掲げることは基本的なものであり、実施に際しては、具体的な手引きや基準等を設けるか、参照できるようにしておくことが必要であろう。」(「大村修正案」13940行目)を追加するというものである。

 2つ目は、地球の友からの提案です。本山さんお願いします。

本山:地球の友からの提案としては2つあります。1つ目は、社会配慮に関しては、環境ガイドラインの中で一律に記述することは難しいという議論もあったことから、「社会配慮のためのガイドラインを別途作成・公表することが、今後の課題ではないか」という点(「地球修正案」143行目〜24行目)を、「3.4 対象事業に求められる環境社会配慮」の(社会的合意及び社会影響)に平文で入れた方がいいのではないかということ。

 2つ目は「地球修正案」23839行目の「各レビュー項目に関して参照すべき国際的諸基準について、研究会で具体的に検討することはしない。銀行は、ガイドラインのドラフト作成時にあわせて案を示されたい」を、「3.6 環境レビューの基準」の最後に平文で入れるというもの。2つ目については、大村さんの表現とほとんど同じことを意味しているので、それで構わない。

前田:ベンチマーキングの相手方次第か。

本山:どういう国際的基準を使うのかということは、ここでは具体的に言及しなかったがJBICが示してくださいということ。

大村:まず質問したいのだが、環境ガイドラインでは難しいから社会配慮ガイドラインを別途作成するというのは、どういう議論になるのだろうか。今まで環境社会配慮ガイドラインの議論をしてきて、ここで更に別のガイドラインが必要だというのは、唐突な提案のように聞こえる。ガイドラインではなくて、例えばグッドプラクティスというような言い方であればわかる。

本山:JBICで社会配慮ハンドブックを使用しているとのお話もあったので、それを念頭に置いて書いてみたのだが、確かに唐突な感じはするかもしれない。しかし、社会配慮について議論した場合、ガイドラインに盛り込むのがなかなか難しく、グッドプラクティスという形で示しておく方がいいのではないかということがあったので、このような提案をしてみた。

大村:社会配慮に限らずその他の事柄についても、細目的な記述があった方が良いとは思うが、それをガイドラインと言ってしまうと混乱する。

前田:「まとめ案」81315行目に「世界銀行自らが望ましいと考える基準や対策水準について、豊富なハンドブック、マニュアル、グッドプラクティス等で明らかにし、推奨している」とあり、さらに1617行目で「国際協力銀行の場合は、自ら基準等を策定するよりも、既存の基準等を活用することを中心とすることが効率的と考えられる」と述べている。これは、ベンチマーキングでやっていこうということだと理解しているが、その中で自分達でも能動的に基準を定めていく努力は行い、グッドプラクティスを作っていこうというのも前回合意したことではなかったかと思う。

 大村さんがおっしゃったように、ここに社会配慮のガイドラインが別に出てくると、もとの環境ガイドライン等との関係がわからなくなる。より細かいものが必要だということは確かだが、現時点では既存のものを活用し、経験を重ねていくということで合意したと思うのだが。

本山:確かに「まとめ案」221725行目「4.2.3 経験等の共有と蓄積、グッドプラクティス等の充実」に書いてあるので、さらに強調する意味で、前の方に入れてみてはどうかという提案である。

松本:長瀬さんからのコメントに「先住民や非自発的移住等への配慮についての書きこみが不足している」とあったので、今後その部分についてさらに発展させていった方が良いと感じた。今の時点では、世界銀行のものをベンチマークとして参照していく方針だが、そこから今後発展させていく、あるいは世銀のものをそのまま利用するなどの方向性を持たせるのがいいのではないかと思ったのだが。

北野:大村さんの修正でカバーされているのでは?

大村:基本的に、より細かく具体的なものは必要であり、そのようなものを作った方がいいということは何箇所にも書いてある。それがもしわかりにくいのであれば、ここでなお書きとして入念的に「(世銀等で出しているものを)参照できる」と入れておくのが良いだろうということで、「大村修正案」13940行目のように修正を入れた。

長瀬:参照する手引きや基準等は一般に公開されているものを想定されているのだろうか?

前田:もちろん。ガイドラインの後ろに添付資料として付けても構わない。

長瀬:情報公開としての実効性を保つためには、一市民として環境アセスメントの報告書を読んだ時に、それが正しいかどうか判断するための基準が必要である。例えば非自発的移住などであれば、自分でチェックを行うことは可能だが、その他の自然環境や他の部分を含めた包括的なものがないと、公開された報告書がガイドラインを守って正しく実行されているのかどうかの判断ができない。それでは、情報公開とはいっても、結局実態が伴わないのではないかという懸念があるのだが。

大村:どういう基準で考えるかという点では、このガイドラインがある。さらにこのガイドラインの中に、「「環境レビューの基準」として示す事項の例」として、「まとめ案」83234行目に「環境社会配慮等に関し、国際機関、地域機関、日本等の先進国が定めている基準等をグッドプラクティスとして参照する」とある。市民がそういったものを見て判断することは可能だと思うが。

 長瀬さんが想定しているのが、例えば銀行の中に別のハンドブック等があって、それを公開していないのではないかという状況ならば、そんな懸念は必要ないと思う。

長瀬:そういう訳ではないのだが。グッドプラクティスとして参照するというが、ガイドラインの中で、遵守事項や最低要件が明確にされるのだろうか?

前田:そのようなチェックリストは今でもあるし、もちろんこれからも新しく作っていく。この提言の中で示しているのはあくまでも幹の部分であって、このままでは内部で使えない。そこで、カテゴリごとに細かくチェックリストを作り、それを情報公開する形になる。

 ガイドラインの作り方には2つの考え方があり、1つ目はガイドラインとするもの。これは、すべてにおいてスタンダードを並べていくもので、数値基準が示されるので一見明瞭でわかりやすいが、きわめて硬直的である。2つ目は、ベンチマーキングしていくやり方で、幹の部分のみを示して、細かい部分に関しては極力良いものを参照してやっていこうとする考え方である。より良いものを作ることを目指すのならば、こちらの方が良いだろう。

大村:では、文言はどのように?

本山:1つ確認したい。「具体的な手引きや基準等」について、私の案では、JBICがガイドラインのドラフトを作る時に案を示してくださいということを強調しているのだが、これは理解していただけただろうか。具体的にどのような基準等を参照するかというのは、どのような形で示してもらえるのか。

前田:一般的な添付資料の形でつけることになるのではないか。

大村:それでは、「まとめ案」4頁「3.4 対象事業に求められる環境社会配慮」の2931行目の後ろには、「大村修正案」13940行目「なお、ガイドラインに掲げることは基本的なものであり、実施に際しては、具体的な手引きや基準等を設けるか、参照できるようにしておくことが必要であろう。」を追加する。

 「まとめ案」8頁「3.6 環境レビューの基準」の最後に、「地球修正案」23839行目の文末を修正して、「各レビュー項目に関して参照すべき国際的諸基準について、研究会で具体的に検討することはしない。銀行は、ガイドラインのドラフト作成時にあわせて案を示すべきと考える。」を追加する。

本山:3.4 対象事業に求められる環境社会配慮」について、いくつか修正案を提示したい。

 まず、「地球修正案」116行目〜「このような検討は、」の後に「社会・環境関連費用・便益をできるだけ定量的に評価し、」と入れるのはどうかというのが1点目。

 31行目「適切なフォローアップの計画や体制」の後に「そのための費用およびその調達方法」を入れるのはどうかというのが2点目。

前田:「費用および調達方法」というのは、事業実施者が示すのか?

本山:そうです。

 また、「まとめ案」71819行目の後に、「地球修正案」21819行目「特に環境対策のための資金が十分に確保されることが重要である。」を追加するのはどうか。

前田:それはすでに書いてあると思うのだが。

本山:確かに書いてあるのだが、読んだ時にあまり明示的でないという意見もあったので。

前田:あまりその点を強調して書くと、わざわざ融資しますよ、と言っている感じになってしまい、相手側から融資しろと言われるだけになる。

大村:対策の実効性があるかどうかを、資金面も含めて厳しくみるという点について、より明示的に書くということであれば、JBICが相手機関の能力を見る、という個所に「資金の確保を含めて」と入れれば十分ではないか。あまり他の所に書く必要はないと思うが。

前田:JBICは融資機関であり、いくらでも融資するという印象を与えかねないので、あまり書きすぎないほうが良い。

長瀬:実効性が確保されるためには、JBICからの融資は別として、相手国政府が社会環境配慮の対策費用を確保し、予算措置をとっている必要がある。今までそれがきちんとなされていなかったために、フィリピンのバタンガス港のような流血事件も起きている。相手国政府の実施機関がそういった予算を確保できない場合、立ち退きを強要される人々がそのしわ寄せを被ることになる。

前田:おっしゃっていることはよくわかるのだが、資金のことについて書きすぎると、結局はその分の融資をこちらに押し付けられるだけになってしまう。JBICは、あくまでも実施主体の対策が実行可能かどうかを、審査する側として見るという側面をもっと強調するべき。相手側の具体的な予算配分にまでは入っていけない。

長瀬:しかし、相手国が社会環境配慮対策等の予算措置をとっていなければ、プロジェクトとして完結しないのでは。

前田:結局お金がないので、追加的に融資しろと言われるだけになる。

長瀬:予算が確保できないのであれば、計画がおかしいのではないかと再考を促せないだろうか?

大村:審査を厳しくするということの趣旨は、予算がきちんととられておらず、対策の実効性がないのであれば、その案件への融資をしないということだ。相手の予算配分への口出しをするのではなく、審査を厳しくすることで、相手側の対策の実効性をチェックするということ。

前田:JBICとしては、余計な予見を与えたくない。

本山:ところで、最初の提案についてはどうでしょうか。「社会・環境関連費用・便益をできるだけ定量的に評価し」を追加する提案ですが、これはなかなか良い表現だと思うので入れたら良いと思うのですが。

北野:定量的に評価する手法は確立されているのだろうか? 「できるだけ」という表現が入ってはいるが、「社会・環境関連費用・便益」というのは、非常に計量しづらいものではないか?

前田:おそらく費用に関するものがメインになるのではないか。

大村:費用の外部コストというのは非常に見積もりが難しい。

原科:厳密に言えば難しいが、この分野は歴史が30年くらいはある。問題はある手法だが、実際海外では使われている。

大村:「できるだけ」と入れることでカバーする。

 「まとめ案」545行目は「地球修正案」11617行目を挿入し、「このような検討は、社会・環境関連費用・便益をできるだけ定量的に評価し、事業の経済的、財政的、制度的、社会的及び技術的分析との密接な調和が図られなければならない。」とする。

 また、「まとめ案」51718行目は「地球修正案」131行目を挿入し、「計画内容に関する対策とともに、モニタリング計画、環境管理計画など適切なフォローアップの計画や体制、そのための費用およびその調達方法が示されていなければならない。」とする。

本山:さらに、長瀬さんのコメントを受けての提案だが、「地球修正案」137行目〜「情報が公開された上で、」の後に「異議を唱える人々も含め、」を挿入するというのが1点。

 また、3941行目「地域住民等が複雑な技術・環境情報をよりよく理解することができるよう、直接質疑応答が可能な説明会等の機会が設けられるべきである。」を最後に追加してはどうかというのが2点目。

長瀬:一般住民が参加できる協議を行う仕組みがあったとしても、現実問題としては、社会的立場の弱い人々、反対・異議を唱える人々の意見が、実施機関によって排除される傾向があり、公平性には欠ける。しかし、ここで「異議を唱える人々を含めて」と書くことで、そういう人々の意見も取り入れる必要があることを強調できる。

 「十分な協議」とは、長時間を費やしたものと見なされがちだが、本来は、お互い異なる意見を持つ人々が合意形成していく過程、またそれが意思決定に反映されていく過程がなければ、「十分な協議」をしたとは言えないだろう。ここで「異議を唱える人々」を付け加えることで、「十分な協議」の意味を強調した方が良いだろうと思ったのだが。

 また、提言案では地域住民の理解できる言語への配慮がなされているのだが、言語がわかっても、アセスメントや技術的な内容自体が理解できない場合が多い。そのため、生活にどのような影響が出るのかなど、専門知識のない地域住民でも理解できる説明がなされることが必要であるということを、後半部分では強調した。

大村:基本的に違和感はないのだが、合意を目指しているという流れの文章の中で「異議を唱える人々を含めて」が出てくると読みにくい。

長瀬:文章はともかく、あえてここに入れようと提案しているのは、現実では異議を唱える人々の発言は、協議の中で聞き流されるか、あるいは最初から発言する機会を与えられていないという状況が見られるからである。

大村:趣旨には賛同するのだが。

川崎:「地域住民等のステークホルダー」に「異議を唱える人々」が含まれていると読めるので、あえて入れなくていいのでは?

原科:ここは、そういう議論の末に、色々な利害関係者という意味で「ステークホルダー」という言葉を使った。むしろその後ろの「十分な協議を経て、その結果が意思決定に反映されていることが必要である」(「地球修正案」13839行目)の文言の方が、協議の結果がフィードバックされる必要があることを強調していて良いと思う。どうだろうか?

長瀬:良いと思う。

大村:この「意思決定」は、誰の「意思決定」なのか?

原科:事業者だ。

大村:これまで「意思決定」は「銀行の意思決定」という文脈で使っていたので、「事業内容」ではどうか?

原科:それでは、「まとめ案」542行目〜「特に、環境や社会に与える影響が大きいと考えられる事業については、事業計画の代替案を検討するような早期の段階から、情報が公開された上で、地域住民等のステークホルダーとの十分な協議を経て、その結果が事業内容に反映されていることが必要である。」とする。このフィードバックというのは極めて重要だ。

大村:「異議を唱える人々」は入れなくていい?

原科:入れなくていい。

本山:その後ろの「地球修正案」13941行目「地域住民等が複雑な技術・環境情報をよりよく理解することができるよう、直接質疑応答が可能な説明会等の機会が設けられるべきである。」の追加位置は適切だろうか?

原科:私はこの場所でなくていいと思う。

大村:その文を入れるとそこだけやや細かい記述になり、プラクティスガイドのようになってしまう。むしろ「弱者に対する配慮」という意味で言えば、「まとめ案」614行目「女性、こども、老人、貧困層、少数民族等社会的な弱者については〜社会における意思決定プロセスへのアクセスが弱いことに留意し、適切な配慮がなされていなければならない。」があるので、ここでその意味は読み取れるのでは。

 

<「銀行による環境社会配慮のレビュー」について>

大村:次に議論が残っているのが、「地球修正案」21819行目の「特に環境対策のための資金が十分に確保されることが重要である。」という追加提案である。「3.5」はJBICの環境社会配慮レビューの方法についての項目であって「資金が十分に確保される〜」と書くのは文脈上おかしいし、前田課長の懸念もあるので、「まとめ案」71417行目の「実施能力」の後に「資金の確保状況」を追加することで十分対応できるのではないか。

原科:そうですね。

本山:「地球修正案」233行目「基準等をグッドプラクティスとして」という表現がよくわからない。

大村:「基準」というのは、それぞれの機関が自分のところでつくったものであって、その中のどれをJBICが採用するかというのは、ケースバイケースで決められないという議論だった。JBIC自身が、それらの基準を参照しながら一番いいものを目指して考えていく、その参照の仕方がグッドプラクティスだということ。

本山:「基準やグッドプラクティス等を参照する」なら理解できる。

大村:では、「まとめ案」833行目「先進国が定めている基準やグッドプラクティス等を参照」とする。

 次に、「3.7.3 カテゴリAに必要な環境アセスメント報告書の要件」で、アセスメント報告書に地域住民等との協議内容記録をつけるべきではないか(「地球修正案」31819行目)という提案について。

本山:この項目は報告書の要件について述べているので、「JBICが〜する」というよりも「アセスメント報告書に〜が書かれていなければならない」のように書いた方が自然かと思い、このような修正を入れてみた。

大村:まず1点目、アセスメント報告書の要件において、「JBICが確認する」のはおかしいのではないかとのご指摘だが、その点については「なお」と注釈の形にすることで考慮している。形式要件として「協議が行われていなければならない」とあるが、それが実際に行われているかどうかをJBICは確認しますよ、という意味で「なお」以下の記述をしてあるので、この文は削除しない方がいい。また、森課長ご提案の「協議内容等を、必ずしもアセスメント報告書に記載する必要はないのでは」という意見については、その通りだと思う。さらに「意思決定」はアセスメント報告書とは関係のない事柄だし、「意思決定」についての議論は先ほど行った。原文を生かし、「なお、地域住民等のステークホルダー等と実質的な協議や合意形成がなされているかどうかについては、協議会記録等に基づき国際協力銀行が環境レビューの中において確認する。」とすれば十分ではないだろうか?

本山:結構です。

大村:「大村修正案」22224行目「3.7.3 カテゴリAに必要な環境アセスメント報告書の要件」の追加部分は、同じく12031行目の「1.5 国際協力銀行の特性」において明らかにした世銀とJBICとの違いを、この項目でも強調しようとして、より丁寧に書いたもの。

 また、23031行目は、前回の議論を見直したら、途上国に向けて理解を求める期間を十分設けることが再三言われていたので、文末を「強調した」としてみた。

 以上の点については、いかがでしょうか?

一同:異議なし。

大村:3.8.2 情報公開の時期と内容」において、情報提供はするとなっているが、それについての協議が何も書いていない(「まとめ案」15910行目)というご指摘があった。研究会としては、当然JBICが誠実に対応してくれるだろうということであえて書かなかったのだが、記載がないと不安であるというならば、「大村修正案」320行目「国際協力銀行が、情報提供に基づく協議等に誠実に対応すべきことは当然である。」と加筆すれば、問題はないだろう。

一同:異議なし。

 

<情報公開の期間の明示について>

大村:次に、「地球修正案」34142行目「期間をガイドラインで明示することが望ましい」を「明示すべきである」と修正する案があるが、これは一律に定めるのは難しいというのが森課長の意見である。これについては研究会やDGでも議論があり、様々な状況を考慮すると「望ましい」でとめておくのが妥当ではないかということになった。すべて定めてしまうのはちょっと厳しい。

北野:先ほどこの点は結論を出したはず。次回5年後のガイドライン見直し作業の際に考えるということだった。

本山:確認したいのだが、この項目は、研究会からJBICに対してある程度何日ということを明確にするのが良いだろうという趣旨で書いたのではなかったか。先ほどの森課長のコメントが後ろ向きだったので驚いたのだが、「望ましい」としてあることで、期限を決める努力を放棄されてしまうのでは困る。それでは研究会で議論してきたこととは違ってくるのではないか。

 確かに、DGでも一律で決めるのは難しいという議論はしたが、今後はある程度何日と期限を決める方向に持っていくという意味で「望ましい」としたことを確認しておきたい。一律にここで何日と決めるべきだと言っているわけではなく、期間を明示することに関しては努力を促したいということだ。

北野:各国の事情があるので、まずテストケースでやってみて、様子を見ながら徐々に進めていくというのが森課長の意見で、そういう努力をまったくしないという主張ではなかったのではないか。

松本:もちろん例外はあると思うが、この提言の中で「原則として45日前までに」などという形で期限を設けることができないものだろうか。「望ましい」ということで期日がきられず、提言全体としてそういうことがまったく入らないのでは、問題があるだろう。

前田:これは「意思決定(役員会決定)」とあるのが問題。カナダEDCや豪州EFIC45日前と定めているのは、OECDに対する通報の期間であって、事前通報して実際にコミットメントするまでにそんなに期間はない。これはJBICも同じ。おそらく融資契約調印時点の45日前ということだと思う。

 L/Aからの期日を決めるのは可能だが、意思決定(役員会決定)のポイントを縛るのは難しい。世銀の場合は、予め設定した時点から逆算して手続きが決まっていくが、JBICは違うし、違うのにはそれなりの理由もある。もし、あえて期限を決めるのであれば、調印の45日前とするならそんなに不自然ではない。

本山:様々な事情もあって、なかなか一律に決めるのが難しいという森課長の意見も了解しているが、研究会では、ある程度可能な日数を明示していくのが今後の流れとしても望ましいという議論をしてきたので、やはりここでは明示していく方向だというのが残るような表現にしたい。

前田:L/A前、事前通報の45日であれば、事実上OECDに出しているので、可能だと思うが。

本山:ここは、情報公開の期間をガイドラインに明示するかどうかですよね?

前田:事前通報するということは、公開を前提にしている。45日前であれば問題はないと思う。

北野:しかしこれはアセスメント報告書などの主要な文書のことなので、OECDに出しているものとは違うのでは?

前田:確かに違うのだが、これも事実上の意思決定を行う45日前に出しているということなので、アセスメント報告書等の情報公開のタイミングを決めるのならば、同様に45日前にすれば一番わかりやすい。

大村:DGの議論では、期間については今回のガイドラインで明示するのは難しいのではないかということだったので、本文では「この情報公開は、意思決定に先立ち十分な時間的余裕を確保して行うよう努める」(「まとめ案」151415行)とまとめた。一方、平文で将来的な含みを持たせて「望ましい」という記述にした。

前田:それはそうだが、研究会が具体的に明示しなさいと提言しないと、腰砕けになるということを本山さんはおっしゃっているのだと思う。そこで、具体的にどれくらいが妥当かと考えると、例えば120日なら無理だが、L/A45日であれば、実際にJBIC内部でのガイドライン作成の提案時にもよすがとなる。提言が「望ましい」では、いろんな例外があるから難しい、と言われればそれで終わってしまうのではないか。

原科:「例えば」があるので、「明示すべきである」とすればいい。

前田:「期間をガイドラインで明示すべきである」でいいのではないか。それでも、多分内部で決定することはすぐにはできないが。

原科:研究会としてはこういう意見が出たということで。

大村:では、それに伴って「まとめ案」151415行目に「この情報公開は、別途定める期間を」と追加しますか?

北野:その部分まで変えるのには疑問を感じる。今までの議論の末、期間はなかなか明示できないということでその文章にしたはず。今までの議論を無駄にすることになるので、そこまで手を付けるべきではないと思う。

大村:前後で文脈を揃えた方が良いと思ったのだが。それでは「まとめ案」1536行目を「明示すべきである」とし、それ以外の部分は変えない。

 次に、「3.9.1 意思決定、融資契約等への反映の基本的考え方」について、「大村修正案」33639行目を追加してはどうか。これは、環境社会配慮が適切でない場合に「融資等を行わないと意思決定することもあり得る」(2930行目)という表現があるが、その場合逆に「融資等を行うこともあり得る」と読むこともでき、それではおかしいではないかとのご指摘が長瀬さんのコメントにあったため。「あり得る」という語尾にしたのは、JBICの最終意思決定が総裁の権限であり、ガイドラインで縛ることはできないということを考慮したためだけなのだが、このままでは誤解を生む可能性もあるので注釈を入れることでこれに対応するということでいいだろうか。

一同:<了解>

 

<「モニタリングとフォローアップ」について>

大村:その次は「地球修正案」41927行目「3.10.5 モニタリングとフォローアップの記述」について。森課長のコメントでは、25行目〜「具体的には、住民やNGO、事業者等を含むすべての主要なステークホルダーが参加して対策を協議・検討するための場が十分な情報公開のもとに設けられ、問題解決の枠組みが合意されることが重要である。」という文章の主語が「事業者」であるという確認が取れればいいということだったが、それでよいだろうか。

本山:その後はもう議論を行ったので、地球の友の修正については以上です。

大村:では、「大村修正案」43行〜45行目の「3.10.5 モニタリングとフォローアップの記述」で、8行目「事業者によるモニタリングとフォローアップ」、24行目「銀行によるモニタリングとフォローアップ」の2つのサブタイトル追加は問題ないでしょうか。

一同:<了解>

大村:次に「4.1 遵守の確保等に係る専門部署の設置」に関する追加(「大村修正案」5813行目)は、コンプライアンスは情報公開すべきという長瀬さんのご指摘を受けたものです。

長瀬:その他の細かい点も含めて了解しました。

 1点確認したいのは、モニタリングについての責任は事業者にあるということは森課長の発言で理解しましたが、「銀行としてモニタリングを行うことが重要であると考えられる場合には」(「まとめ案」1912行)はカテゴリA案件すべてが含まれると考えていいのでしょうか?

前田:カテゴリA案件すべてに加えて必要な場合はBC案件でも。

長瀬:それは明記されるべきではないでしょうか?

大村:あくまでも私の考えですが、そうとも限らない。環境アセスメントをやって初めて環境対策がどれくらい必要かどうかわかってくる。カテゴリAとしたものでも環境影響が大きくないものについては、モニタリングは必要にならないこともあるので、カテゴリAすべてにモニタリングが必要と明示すべきではないと思う。

長瀬:しかしモニタリングというのはある一定の環境社会配慮が実行されているかどうかを確認する作業ですから、カテゴリAでは必ずモニタリングが必要ではないですか?

大村:必要な場合は対策をやる。さらに対策の進捗状況やその効果の把握は必ず行われるべき。しかし、モニタリングをするかどうかはカテゴリ分類とダイレクトにリンクしないのではないか。

前田:銀行が行うモニタリングは?

大村:私が申し上げているのは事業者のモニタリング。おっしゃるとおり銀行が行うモニタリングはケースバイケースで対応すべき。

前田:モニタリングのやり方を融資交渉・締結段階であらかじめ決めておかなくてはいけないので、「カテゴリAすべて」と入れた方がすっきりするのではないか?

長瀬:私も同じ意見です。

大村:カテゴリAとダイレクトにリンクすると、スクリーニング以降から縛られてしまうことになるが。

前田:モニタリングのためのマンパワー等の体制確保や必要となる労力・時間もたしかに大きいが、それに比べて交渉段階に必要となる労力の方が大きいような気がする。

大村:「銀行としてモニタリングを行うことが重要であると考えられる場合には」の例示として「カテゴリA案件のように」を加えれば、必ずしもダイレクトリンクにはならないと解釈しますか。

一同:(了解)

北野:「地球修正案」42527行の追加修正については議論されたのでしょうか?

大村:しました。追加ということになりました。

北野:議論を蒸し返すようで申し訳ないのですが、「問題解決の枠組み」という意味がわからない。

松本:問題解決の仕組みということです。

北野:問題解決の中味自体かとも読みうるので、「問題解決に向けての方途が合意される」ではいかがでしょうか?

大村:問題解決に向けたプロセスについての合意まで皆で集まって決めるということを「透明でアカウンタブルなプロセスにより、問題の客観的精査、対応策の検討、事業計画への反映が(後略)」ですでに示している。繰り返しにならないか?

北野:検討するための場で、一つ一つの苦情内容を処理していくわけではない。その場が設けられるということではないのか?

本山:方途はプロセスという意味ですか?

北野:「問題解決に向けてのプロセスが合意されていることが重要である」ではどうか?

前田:よろしいでしょうか?

門間:場が設けられること自体はそれほど大変なことではなく、その場で問題解決をすることが重要ということが、ここの趣旨ではないのか。

大村:北野課長のおっしゃっている、「場」にはみんなが参加するとは限らないということは理解できます。問題解決に向けてのプロセスが透明でアカウンタブルであるべき。

北野:問題解決の中身にふれたくないということではない。事業者、NGO、住民が集まる非常にユニークな場の設定は現実的には非常に難しいことであることを踏まえて、この記述は必要と考えるが、「枠組み」というと合意の内容、またはプロセスのいずれを指しているのかがわからない。

本山:問題解決の方法はすでに上で述べられている。場が設けられ、すべてがそこで合意されるとは思っていない。集まった人が問題解決に向けて努力を行うことが重要であると考えて出した文案だ。

前田:枠組みというのは英語で言うとroadmapではないか。

大村:「問題解決に向けたプロセス」ではいかがか?

原科:「手順」ではどうですか?

北野:いいですね。「問題解決に向けた手順が合意されることが重要である」に。

大村:「おわりに」を追加しました。

一同:(了解)

 

<提言の発表の方法について>

前田:今後の進め方についてですが、提案がありますか?

松本:研究会として外向けの発表の機会を設けてはどうか? 昨年4月にJBICが開いたシンポジウム(輸出信用機関の環境配慮に係るシンポジウム)を参考に、海外の機関、例えば世銀、米国輸出入銀行などを招待してシンポジウムを開き、その後にプレス向けの記者会見を行うというのはいかがか?

門間:皆さんがそういう方向で合意されれば、世銀等に働きかけたいと思います。

前田:タイミングとしては英語版の作成などに時間が必要ということ、夏は注目を受けにくいということから、9月上旬くらいでいかがか。その前にJBIC職員を対象にガイドラインの説明会を開きたい。ちなみに昨年の4月のシンポジウムは2,000万円の予算でした。

大村英語版は、すでに地球の友が作成された原案をもとに別途集まって考えましょう。

前田:16回ということで長期にわたり、ボランタリーな参加ありがとうございました。

(終わり)