国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会・フォローアップ委員会

1回会合 議事録

 

日時:20001116日(金)午後6時〜8

場所:国際協力銀行

配布資料:国際協力銀行の新環境ガイドライン(案)について

出席者:

(敬称略、アイウエオ順)

 

委員長:原科 幸彦/東京工業大学大学院・総合理工学研究科教授

委 員:上村 英明/市民外交センター

            大村 卓/環境事業団

            小川 晃範/環境省地球環境局環境協力室長

            川崎 研一/外務省経済協力局有償資金協力課企画官

            前田 匡史/国際協力銀行総務部行政改革担当参事役

            松本 郁子/地球の友ジャパン

            松本 悟/メコン・ウォッチ

            本山 央子/地球の友ジャパン

            門間 大吉/財務省国際局開発企画官

            和田 篤也/環境省地球環境局環境協力室室長補佐

 

            大仲 千華/市民外交センター(オブザーバー)

            畠中 エルザ/(財)地球・人間環境フォーラム

 

国際協力銀行

            天野 辰之/国際協力銀行金融業務部業務課係員

            入柿 秀俊/国際協力銀行総務部総務課長

            大矢 伸/国際協力銀行総務部総務課調査役

            佐藤 恭仁彦/国際協力銀行総務部総務課副参事役

            萩原 烈/国際協力銀行開発業務部専門調査員

            本郷 尚/国際協力銀行環境社会開発室環境第1班課長

           

議事録作成:

 波多江 秀枝/地球の友ジャパン

 

原科:今日は、国際協力銀行の環境ガイドライン策定の進捗状況、現状をお聞かせ願いたい。中身についてはドラフトをご紹介願いたい。

 その前に会議の進め方等を議論しておきたい。従来の研究会と同じような要領でやればよいと思っているがいかがか?

JBIC公開性についてだが、委員会にはドラフトを公開するつもりだが、ここでの議論がホームページに公開されるとすれば、パブリック・コメントとどう違うのかを整理したい。パブリック・コメントで出すものは役員会でオーソライズしたものだが、パブリック・コメントの期間中にそれをここで平行して議論していくのか。それとも、ドラフト自体をここで議論していただき、その後、パブリック・コメントに移っていくか。どちらかだと考えているが。

前田:今までのように議論の過程を完全に公開した参加自由のプロセスという研究会の利点は活かしたい。パブリック・コメントは必ずしも議論に参加するということではない。日本の企業にしてみれば、コメントを出すだけでいいと思うところもあるが、このような議論の場があるのであれば、議論に参加したいところもあるだろう。したがって、この場をパブリック・コメントとは別の形成途上のプロセスとして認識すれば、それほど気にする必要はないのではないかと思う。ここでやっていることが全て反映されるかもわからないのだし。外でパブリック・コメントをするというオプションもあるだろうし、この場で議論するというオプションもある。だから、あまり形式にこだわるよりは、この場での議論を活性化させることが必要だと思う。

門間:賛成だ。環境に対する懸念と同じで、もし懸念があるのであれば、早めに議論をした方がお互いにとって生産的なものになると思う。パブリック・コメントとの関係をどうするかに気を使うのではなく、パブリック・コメントで機会を与えるという方が、研究会の時からの経緯や透明性の確保という趣旨からいってもいいのではないかと思う。

川崎:精神論は個人的にもその通りだと思う。確認だが、JBICが心配しているのは、役員会にかかった後の一定のドラフトが外に出る前に、ドラフトのバーション1、2……という紙が、この会議が開かれる度にこの場に出てしまう。その紙の扱いをどのようにするのかだと思う。前田さんのお話では、ここに出るドラフトの紙も議論も、その都度公開していき、しかるべき段階でJBICの中での手続を取ってもらい、その後、でき上がった案でパブリック・コメントを迎える形になるという理解でよろしいか?

前田:JBICの中の意思決定システムとこの委員会は別であり、役員会の権限を縛るわけでもない。ここは形式的に考えずに、むしろ議論を深く広くすることが重要という意味で言っている。

川崎:パブリック・コメントでは意見を反映しにくいところもあるだろうから、実質的な議論はここで事前にやるべきだと思う。ただ、手続上、どうなのかが問題では?

JBIC現在、ドラフトを作るにあたり、ステイクホルダーの一つである日本の業界にヒアリングを行っている。研究会の提言については非常にオープンなプロセスで透明性の高い状態で行っていただいたが、業界の方は必ずしも提言の内容をあまり理解してないと感じている。このような委員会があるので、来て発言してほしいと申し上げているが、研究会自体に関わっていないのに、研究会の提言が今後どのように反映されるのかフォローアップする会合には出られないと言っている。会合自体の趣旨を理解していないということもあるだろうが。研究会自体と業界は、残念ながら、意見の対立以前の問題として、コミュニケーションが不十分ではないかという懸念を持っている。そのようなコミュニケーション・ギャップを埋めていくことをフォローアップ委員会でも考えていただけないか?

原科:その意味では、ここまで来ることは叶わないにしても、情報がほしいという方にとっては、この場の議論をインターネットで公開していくのは重要ではないか。議論の内容、資料を公開し、関心のある方に情報へアクセスしてもらい、それから正式なパブリック・コメントということもできる。突然ドラフトを公表されるよりは、ここの議論の展開をフォローしていた方がわかりやすいだろう。

門間:関係業界の方も含め、情報にアクセスしていただくためにも、このホームページにアクセスすれば情報があるとJBICから十分に広めてもらってはどうか。

JBICそれは十分に言っている。ただ、現実問題として、非常にコミュニケーション・ギャップがあるというスタートポイントを理解していただきたい。

原科:議事録だけでも、提言書をベースに環境ガイドラインを考えていると思うので、議事録だけ公開で、資料は当面、非公開でもいいという感じがしていた。しかし、今のようなことがあるのであれば、関係資料も公開した方がわかりやすいだろう。

JBIC今申し上げているのは、業界などの他のステイクホルダーとの理解のギャップをさらに広くしようとしているということが問題だということ。

門間:それで研究会の議論を待ってくれということにはならないだろう。理解の低い人のAwareを高めてもらい、理解してもらうべきだ。全体のAwarenessを高めるためには、途中の案を彼らにも伝わるような手立てを講じた方がよい。そうでないと、突然、パブリック・コメントが出たときに、色々な意見が色々なところから出てきて収集がつかなくなる。それでスケジュール通りいかなくなるという可能性も高くなる。

JBICこれまでの研究会の議事録・資料は全部公開されていて、その存在も世間一般に知らされているはずだ。しかし、このようなコミュニケーション・ギャップが生まれてしまっている。

原科:コミュニケーション・ギャップがあるという話と委員会の議事録を公開するかという議論は違う話だ。ギャップを埋めるには、別の方策が必要。ギャップを埋めるために、オープンにする方が基本的にはよいが、公開・非公開に関係なく、その方々の状況に合わせた情報提供をする説明会のようなものを別途いくつか設けないといけない。そして、さらに詳しいことを今やっているという2段階のアプローチが必要だろう。

JBICこの場でワーディングを議論していただく必要はないので、一回ドラフトをお出しして、一つ一つのパーツについて意見を出していただきたい。その間、毎回ドラフトを変更することはない。ドラフトを修正するのはJBICで、それをパブリック・コメントにかけるという手順になると思う。

原科:文言の細かいところや微妙な表現のある文章で、それが毎回外に出ると困る。だから、資料の扱いは慎重にということか?

門間:毎回変えるのは、確かに必要ないかもしれない。他方、議論が全部終わり、パブリック・コメントが出る前に、途中の我々の議論に対してどうJBICが配慮したのか、全然フィードバックがないのは問題なので、何回か一度、フィードバックをいただいた方がいいと思うが。

川崎:議論を一点に絞った方がいいと思う。我々メンバーが全員譲ることができれば、紙はここに出てはいるが、議事録のみ公開するという手もある。そうすれば、毎回ドラフトを確認できるのでは。ただ、これまでの我々のやり方として、本来、資料は全て公開するということでやってきた。

原科:オフィシャルな資料とインフォーマルな資料に分けることもできる。

川崎:それもいいかもしれない。ファースト・ドラフトは公開される。また、最終的なものも公開されるかもしれない。ただ、その間に、どこどこのセンテンスをこうしたというところまでは出さない。その不透明性を我々が理解できるのかということではないか。すべて出すのは、手続的にも持たないだろうし、その合意ができ、実質的な議論をすることが重要なのであれば、そのような理解のしかたもあるだろう

JBIC我々もフルにオーソライズされたわけではないので、権限のないところもある。ある程度、決裁プロセスを経たものを出すことになる。

川崎:物なしに議論はできない。仮に、ファースト・ドラフトが出てきたときに、それをまず外に公開するかどうかだ。

JBICその方向で検討はしたいと思う。

JBIC我々もここに出てくるときに個人の資格というわけにはいかない。何度もドラフトを出すということになると、その都度組織の承認を得ることは難しい。

原科:提案として、ファースト・ドラフトは公開の方向で。その後の扱いは、基本的なことはオープンにして、毎回、微妙な表現の問題があるので、扱いをクローズにすることもありえる。しかし、ファイナル・ドラフトの前に、途中段階で最低12回位は公開するという方向でいかがか?

JBICある程度のものは出したい。

本山:理解できるので、その方向でいいと思う。

JBIC我々は限られたリソースのなかでリドラフトを書く作業をやっていると、パブリック・コメントを早くやればいいのではないかと思ってしまう。リドラフトはそれなりに手続がかかるので、それに時間がかかると、肝心のパブリック・コメントにかける時期が遅くなってしまう。

門間:毎回、ある程度のリドラフトをしないと議論はできない。リドラフト自体が大変ということか?

JBICはい。それなりにページ数もボリュームのあるものになるので。

 

川崎:しかし、実質的な議論ができないと困る。

JBICリドラフトと実質的な議論は違う。実質的な議論が一番実りある方法なので、それにフォーカスしていただけるのが一番いいと思うが。

原科:皆さんの意見として、まず、ファースト・ドラフトは公開していただく。そして、1回位はレスポンスをファイナル・ドラフトの前に出していただく。

JBICその方向で検討したいと思う。

JBIC一つ提案だが、業界の方に会う都度、我々も参加を勧めるのだが、正直、研究会が何か得体が知れないと言われる。また、プラクティカルなことでは、例えば、時間。企業の方は個人として来られるのと会社として来られるのとでは違う。だから、企業の方も参加しやすい時間や日取りを検討する余地はないのか?

原科:それはできるだろう。

前田:これも提案だが、今度、全銀協でレクチャーをする。同じようなことを他にするのは全然私はかまわない。商社やメーカーの集まりで同様のレクチャーをすることは可能である。

上村:全体にどのような議論をするのか。大体この段階でという大雑把な全体の予定をスケジュール化した方が見えやすいのではないかと思うが、そのような議論はされたのか?

前田:活動スケジュールでは13年度末までだが、パブリック・コメントを早く出したいというJBICの意見もあるので、そのためにもどれくらい議論しないといけないのか、時間を割かなくてはならないのかわからない。したがって、とりあえず毎月2回程度やる。できるだけ早く本題に入り、感触をつかみたい。できれば、議論もスケジュールも含めて、論点を先にまず説明してもらった方がスケジュールもわかってくるだろう。

原科:概ね皆さんに了解をいただいたということで、早速、今のご提案にしたがい、新ガイドラインの現状を話していただきたい。

JBICお手元の資料は産業界など色々なところに提言と一緒に配布しているものだ。(資料をもとに説明)(経緯は割愛)(現状を説明)(今後の予定)より詳しく言うと、現在、担当者がつくった案に基づき、行内の関係部署のコメントをもらっている。また、平行して、実際に適用される企業の方々にもご意見・ご理解を求めるべく提言とこの紙をもって色々説明しているところだ。思いのほか、研究会に対してほぼ無知だったこともあり、理解のプロセスに若干時間がかかっている。行内の各部署からも、色々なコメントがきており、当初はもう少し早くガイドラインのドラフトができる予定だったが、若干時間がかかっている。今の見込みとしては、なんとか月内に皆様にご提示できるようなドラフトができると思う。一方、パブリック・コメントは年内を予定しているので、その間1ヶ月位の期間で、あまり議論する必要がなければ、パブリック・コメントを早めることもありえる。

 (ガイドラインの内容を説明)これは、実務的観点から整理させていただいたものだ。(順番に説明)5.カテゴリー分けは、基本的に、コモン・アプローチに基づいている。67.はガイドラインの書き方はそれほど問題ではないが、実際の運用をどうするのかで一番の争点だと思う。(6.情報公開について説明)具体的には、提言のように、相手からプロジェクトの要請と概要の情報提供を受け、スクリーニングをしたところで、案件の概要とスクリーニング結果のカテゴリー分けを公開する。それから、融資決定後に環境レビューの結果についても公表することを考えている。その間、環境アセスメント報告書等については、情報公開法にしたがって開示請求された場合、開示することを考えている。また、何日前かということだが、要請されたものは全部公開するのか、要するに、箸にも棒にもかからないと最初からわかっているものについてはどうするのか。また、箸にも棒にもかからないと言っても、濃淡があるので、どのくらいまでやればよいのか。また、いつの段階で公表するのかは、とくに、円借款では政府との関係でどの段階で公開できるのか外務省との議論が必要だ。意思決定前になると、我々のオーナーシップを越えるところの段階になる。

7.遵守の確保を説明)研究会の提言では、中立のものをつくるというものだったが、これまで日本にそのようなものはなかったし、そのようなスタイルも合わないのではないかということで、今、我々が考えているのは諮問委員会的な形で外部の人からなる委員会を作りたいと思っている。ここも、ガイドラインの書き方というよりは、実際の運用の方が難しい。「情報公開」、「異議申立て」については、具体的手続も含めて議論したい。

8.の付属書とは、提言のなかで本文に入っていた対象プロジェクトにともなう環境配慮、環境アセスメントの報告書の内容などを、実務的に使いやすいように付属書として整理したもの。ただ、付属書だから参考というわけではなく、本文の一部だ。

 このような構成を考えており、これをもとにドラフトをつくっている。全般にわかりにくいという意見や言葉の定義の矛盾も指摘を受けており、ステイクホルダー、環境レビューなどは整理するべきだと思う。また、カテゴリー分けをもっと厳しくすべきという意見もあった。

門間:提言の太字にそって、つくっているのか? JBICが今求めているもので違っている点があるとしたら何か?また、研究会であえて最後まで決めずに、JBICの方で実務を見て考えてほしいと細字で提示した部分について、どういった状況なのか?スケジュールとして、案をいつまでに固めるつもりなのか?

JBIC基本的には、太字にそって我々の案をつくっている。遵守の話などは、先程の第三者委員会のように議論もある。スケジュールは今月末までに自分達の案をつくり、年内をめどに最終のドラフトをつくり、パブリック・コメントに入りたい。期間は、期限が3月なので、最低1ヶ月。1ヶ月以上は少し難しいと思う。できれば、2ヶ月位とりたいが。

原科:政府のパブリック・コメントは12週間などが多いが、最低1ヶ月、場合によっては2ヶ月位やっていただきたい。長めにとっていただければと思う。

門間:今月末までにできるドラフトの中に、研究会の提言で決められていない細字部分のものもJBICとしての考え方で、全てワン・セットで入っているのか?

JBICはい。

前田:私が論点整理をお願いしたのは、このような形のものではなかった。理解していたのは、2段の表があり、研究会の提言とJBICの案でどこがどのように違っているのかがわかるもの。概ね一緒と言っても、完全に同じではないのだろうから、どの程度一緒なのかわからない。議論の進め方として、太字の部分は先に出すべきではないか?まず、そこを固めてから、その後、議論のある部分をやるべきでは?

JBICその通りだが、研究会形式でやっているのではないので、全部ワンセットにして見せることになる。できあがったドラフトと提言の対比はもちろん、できた時点でできる。

前田:それは、少なくともすぐできるのではないか?

JBIC例えば、ステイクホルダーに関してもさまざまなコメントがあるので、すぐは無理。

前田:さまざまなコメントはあるだろうが、ドラフト委員会側の意見もあるのでは?

原科:ファースト・ドラフトをつくる際には、ステイクホルダーの意味を補足的につけてもらえればいい。

JBIC対比の表はできる。

前田:3月が期限というのはわかるが、年内のパブリック・コメントは相当きついのでは?

JBIC厳しいスケジュールだと思うが、今からスケジュールをずらさなくてもいいだろう。

川崎:ファースト・ドラフトを見て決めればいかがか?見てみないと1ヶ月で議論できるものなのかわからない。11月末のドラフトは、確実に出てくるということでよろしいか?

JBICはい。

本山:確認だが、今ここでポイントに出していただいたのは、基本的には、この太字をベースにしていただけているということか。

JBICこの提言は規定のような並び方ではないので、太字を規定のように並べ替える作業から始めている。この提言自体がベースになっているのは間違いない。コピー・アンド・ペーストがスタートだ。

本山:並べて出す時に、どのような理由でそう変えたのか加えていただきたい。

JBIC説明を一緒につくるのは難しい。

原科:それは、委員会の質疑応答でやっていけばよいだろう。

小川:研究会の議論を一巡全てやってしまい、その議論を反映したドラフトでパブリック・コメントをする予定なのか?

JBIC提言をベースにドラフトをつくっているので、ここで議論をすることが理由でパブリック・コメントが遅れるのは不本意だ。

原科:基本的に、研究会の提言に対してレスポンスしていただいているかを確認したいので、公表前に見せていただきたいと思う。年内にとおっしゃったので、委員会は月2回と書いてあるが、月3回は必要かもしれないと思ったが。

門間:パブリック・コメントの期日が先にありきでなく、中身の十分な協議が必要では?

JBICこちらの議論が全部終わらないとパブリック・コメントではないという考え方もあるが、一方で、我々の正式な発表をパブリック・コメントとして待っている方もいらっしゃるので、そこはバランスが必要なのではないか?

門間:そうだとすれば、もっと早くファースト・ドラフトを出してもらえればよい。今日も、この時点でのドラフトを見せてくれればいいのでは?しっかりやってくれていると信じているが、最後には押し切ってしまおうという態度にも見えかねない。

JBICもちろん、パブリック・コメントの間も継続的に議論は続けさせていただきたい。パブリック・コメントで出される案がファイナルではない。

前田:パブリック・コメントにかける案は役員会にかけ、機関決定するのか?

JBICまず、パブリック・コメントに出す分に関して、機関決定はする。

前田:今、色々なコメントがあるとおっしゃったが、パブリック・コメントでもコメントはたくさんあるはずだ。その中からどれをとり入れるのかの議論のために、この場をむしろ利用していただければと思う。フォローアップ委員会も意識は共有していると思うので。また、後で、このような意見があったので変えたというのは、おかしいと思うので。今度出てくるファースト・ドラフトは、とり入れられなかったコメント、提言と違うものも含めて、コメントした人はこの場に来て議論してほしいと思うが。

川崎:提案として、11月末のドラフトを見てから相談した方がいいだろう。毎週の会合で間に合うのかという気もする。

前田:また、ポイントだが、第三者委員会の話は検討すべき論点が多く、ただちに結論が得られる問題ではない。どのようなものを作るにせよ予算措置もいるし、機能としてどこまで権限を与えるのか?ここは国際機関も試行錯誤を繰り返している部分だ。この部分だけが紛糾して遅れるのは、避けたい。この部分は、基本原則であるガイドラインの段階、4月でなくともよいのではないか。

JBIC外部委員会の話は確かにコントラバーシャルだが、情報公開と外部委員会の話でガイドライン自体が遅れているのではない。

原科:今週月曜のガーナでのIAIA(国際影響評価学会)の理事会でも、ステイクホルダーの議論が出てきた。我々もステイクホルダーの定義をきちんとしておかないと、立派なスタンダードにならないだろう。理事会に提言の英語版を持っていったので、ここにもコメントが来るということを覚悟していいものを作りたい。

松本郁:第三者委員会のことを3月末までにやるのは難しいと思っている。今後、その部分だけは研究会のようなものをつくり、継続的に時間をかけて議論することも念頭においてはいかがか。

JBIC第三者委員会については、(メコンウォッチ)松本さんが研究していると聞いているので、ぜひお伺いしたいが。

松本悟:川村先生などのメンバーと一緒に、既存の委員会はどれほど問題解決の役割を果たしているのか、どのような点で制度が機能しなかったのかを踏まえた上で、JBICの場合にはこのような点を重視した方がよいのではないかという具体的な案を持ってきて議論したいと思う。

前田:先程、定義が違うとおっしゃったが、言葉の整理を出してもらった方がいいと思う。

JBIC同じ言葉を使って定義を変えるという話ではない。ガイドラインのなかで、同じ内容なのにいくつかの言葉を使っているところを整理しないといけない。この提言は全部見てみると、本文と注の関係で整理が必要なところもいくつかある。議論に全部参加していれば、イメージで理解できるが、初めて見るとわからないところもある。

大村:進め方の話として、ドラフトが出てくればスケジュールなども決まると思うが、スケジュールが厳しい中でどのようにやっていくか。具体的なイシューに絞ってやった方がいいだろう。全部をリドラフトする必要はない。イシューになっているところをノン・ペーパーの形でもいいので、議論を集約する形でやっていければいいのではと思う。外部委員会や定義などで、3案位あるのであれば、ぜひ出していただきたい。また、行内で消えた案も出していただければ、この場の議論にも厚みが出るだろう。

JBIC委員会の案として提示していただけると嬉しい。

川崎:議論の仕方はみんな理解していると思うが、外にどのようなペーパーが出るのかという問題が解決しないことには、十分な議論もできないと思う。我々メンバーが案を提示すれば、行内的にも議論をしやすいのだろう。行内の案がこれだと提示しようとしているから、遅れているのだろう。精神論はそれでいいが、実際にどの紙が具体的に出るのかで、JBICが議論しやすくなる方法を考えないと、空回りするだろう。資料で公開しないものも認めるなど融通をきかせることも必要だろう。

川崎:外部委員会の件だが、今回設置する委員会は、環境問題などについて出てくる色々なクレイム全ての解決に向けて議論をするものではなく、このガイドラインがきちんと遵守されているかを議論するところと考えていいのか?

JBICはい。

川崎:色々な制度をレビューされると思うが、具体的に懸念される大きな問題点は何か?私もGATTの交渉で新たに苦情を受け付ける制度の設置をやっていたので、どのように回すのか苦労した経験がある。今ここで設置すべきものは、どこにまだ大きな問題点が残っているのかが見えない。

前田:まず、外部委員会を常設にするのか。また、どのようなものを受け付けるのか。研究会では、プロジェクト・ベースで問題のあるプロジェクト毎に問題解決のための外部委員会をつくるという案も出た。常設にするのであれば、予算措置などの問題もあり、簡単ではない。オンブズマンみたいなもの、IFCなどでやっているようなものがどうやってきたのかを松本悟さんなどに調査してもらうこともいいだろう。裁量も問題だ。諮問委員会では、大した権限はない。ここでは調査することになっているが、具体的にどのような形のものがよくて、それが世間的にフィージブルなものかを検証する必要がある。それは大変なことだ。

川崎:例えば、それが最終的に司法審査にいくのかどうかという議論がある。誰が権限をもって裁くのか、全て司法審査にいくのが大変であれば、オンブズマン的なものでも良いかも知れない。国によっては、最初から裁判所に行くという仕組みのところもある。誰が設置して、権限がどこにあるのか。ここでは問題があれば全部取り上げるということではなく、例えば、環境レビューなどがちゃんとなされているのか、ガイドラインが遵守されているのかということだろう。

前田:研究会の議論では、個別案件をあげてとの話だった。

JBICGATTのケースではオンブズマンがあり、それから司法審査があるのか?司法審査はGATTに基づいた法律が何かあるのが前提だろうが。

川崎:78年前の交渉で覚えておらず申し訳ないが、各国のオンブズマン的な制度はあるが、最終的な審査の担保を司法のところまで求めるか、つまり、法律で縛る合意にはなっていない。ただ、各国が自主的に裁判所でやるのは自由。政府といっても民法上の契約行為については、例えば、なぜお宅は裁判所でやらないのかと言われても困る。そのような場合は、オンブズマン的なところで審査するなどして制度ができていった。

JBIC司法審査でやる国は司法審査の根拠となる法律を作らないといけないか、すでにあった国ということか?ガイドラインは法律でないから、司法審査という形はないだろうが。

川崎:司法審査のためには、そのための法律が前提となるのではないか。それを担保する法律をつくるところからやるのは難しい。

JBIC諮問的な委員会は、実質的に枠組の問題になると、本行との距離、位置付け、権限関係などでコンセンサスを得るのが難しい。

上村:雑多な議論をしていても時間的にもまとまらないと思う。今後、どの論点を議論していくのか、外部委員会のほかにどのような論点があるのかをお互い出し合って、準備してこないと議論はできない。細かくでなくても、大きなポイントで議論しなくてはいけないところを出していただければと思う。

JBIC情報公開と外部委員会は大きなテーマになる。また、人権の取り扱いは、あまり厳しく前書きでうたうと相手国との関係があるので難しい。基本的にドラフトの中でテーマになるのは、大きなところではその3つだろう。

上村:人権をどう考えるかはまた議論した方がよいと思うが、どの国際基準に準拠するのかがかなりアトランダムだ。例えば、女性関係の国際条約やILO(労働)関係の国際条約など色々なものがあるが、ガイドラインに全て条約を列挙するのか?例えば、提言の3ページで太字のところでは、「環境に関する原則、条約、協定、並びに、人権の尊重に関する原則、条約、協定」となっているが、細字の「ウィーン宣言」や「北京行動綱領」などがアトランダムに入っているところはどこまで入れるのか?

JBIC基本的には、具体的に書けば書くほど、実効性がなくなると思っている。

上村:では、太字のように「原則、条約、協定……」で終わる可能性が高いと?

JBIC条約や協定は、そもそも作ったときから、ある種の高い目標に向けた理想を掲げたものだから、個別のプロジェクト、イシューについて、判断基準が明確に示されているかというと、そうではないという議論は研究会でもあった。いくつかの条約のうち、人権が一番難しいと思う。生態系のようにラムサール条約では、指定されている場所が決まっていて、かなりSpecificにできる。このようなものについては、従来からも参照しているし、これからも実務的にやっていきやすいだろう。

大村:研究会のなかでも、そのようなリストをガイドラインにアタッチすると非常に限定的になり、追加された場合にどうなるのか、ローカルなものもあるだろう、という議論があった。そして、アッタチはしないということで整理してきた。一方で、行内の実務者が使うテキストのようなものには解説はあった方がよい。

上村:ただ、世界人権宣言のような宣言は高い理念をうたったものだが、ある種の条約で、JBICは日本政府が批准している条約に縛られる部分、借入国が批准している条約に縛られる部分があるだろう。そこをきちんとガイドラインで準拠する気持ちがあるのだという書き方は可能だと思うが。

JBIC技術的になるが、借入国に守ってもらわないといけない。もちろん批准している条約は本行も尊重しないといけないが、特に途上国の半数以上が批准していない条約があるなかで、ある程度、条約を列挙してガイドラインを守ってくださいと言うと、入り口で待ったがかかりやすくなる。だから、それはオペレーショナル・ガイダンスなどの話に落ちてくるのだと思う。実効をどう確保していくかという観点から考えた方がよいのではないかと思う。

上村:論点としてはよくわかった。

JBIC実務的な観点からすると、当該国により批准されている条約を担保する法律ができており、その法規に反映されているはずなので、法律の観点から確認することもできる。

前田:コモン・アプローチとの関係を整理するといかがか?

JBIC資料で6ページにまとめた主な内容を見れば、コモン・アプローチの方はかなり厳しい。

前田:レコメンデーションの形になっているので、交渉の全加盟国が遵守しなくてはならないということではないが、例えば、カテゴリについてはどうなっているのか?

JBICコモン・アプローチでは、カテゴリAは環境アセスメントは必ずしも義務になっていない。ただ、提言では義務になっている。その部分の行内でのコメントは非常に多い。また、カテゴリNNとして残すか、またはカテゴリがたくさんあると分類が難しくなるのでどうするか。いずれにしても、カテゴリN的な発想は考えている。

前田:OECDの方にはANNEXがついている。義務ではなくとも、基本的には守るべきだと思うが、そのようなところはどう対応しているのか?

JBICセクター分けなど、基本的には全部守っている。

JBICむしろ、プラス・アルファでやっている。微妙なもの、例えば、原子力などについては、日本の産業政策上、特殊なので除外するケースはあるが。

松本悟:情報公開は研究会でもかなり時間を割いた。具体的にはどのような点で情報公開の扱いが難しくなると見られているのか?

JBIC最初にスクリーニングの情報を出すとき、どういう案件を出すか。あまりセレクティブにやるつもりはないのだが、要請のきた案件全部を出すわけではない。また、意思決定前の早い段階での情報公開をどこまで早くするのか。これは、むしろ、外務省、財務省の方に意見を伺いたい。また、環境レビュー報告書についても議論はある。

JBIC情報公開をしないという意味で難しいという議論があるのではない。情報公開が一般的な流れであることはわかっている。それぞれの融資の事務手続などは実際のビジネスの流れがある。そのビジネスの流れに沿った形で、かつ、情報公開の精神を最大限生かすときに、さまざまなケースのあるビジネスをどう整理していくのか悩んでいる。

前田:研究会では、ビジネス・コンフィデンシャリティーの部分は消せばいいという議論があった。

JBIC出す情報の中身だけではなく、タイミングの問題もある。ビジネスの流れを強調したいのだが、民間は1週間、10日の世界で、これはかなり早いものだ。情報公開を事前にということをできるだけ反映したいが、我々の事務手続を短縮し、できるだけ情報公開の時間を設けようとしても、ビジネスの時間でどのくらい可能なのか、そのぎりぎりなところを今考えている。

前田:具体的に提言の15ページに、「情報公開の時期と内容」とある。これは研究会で相当時間をかけて議論したところだ。具体的に何日前と明記するなど議論したが、今おっしゃったことと、この部分との関係は?具体的な日数は書けないということか?

JBIC私の今の認識では、これ以上十分な期間をとれるケースもあれば、難しいケースもある。ビジネス、プロジェクトによるので、ケース分けをしないといけない。何とか日数を書けないかと考えているが、一般化は非常に難しい。

前田:カテゴリABについて、どれを出すかなどは、どのようになっているのか?具体的な時期のない包括的なものか?

JBICかなり、提言に近いやり方でやっている。情報公開はビジネス上の秘密に関わることも多く、難しいところがある。

本山:それは、カテゴリAならOECDのコモン・アプローチと同じ位のものが必要だが、カテゴリBが難しいという話ではないということか?

JBICはい。

門間:先程の円借款の情報公開のタイミングとは?

JBICスクリーニングをやったところで案件の名前・概要・カテゴリ分類を出すと、これはプレッジのだいぶ前になる。これは、今まではマル秘情報だった。政府の方で決めていたところなので、それを表に出すかという問題。

門間:個人的な意見としては、財務省は、むしろ環境の問題などは、なるべく早く済ませ、その後に政府として決定したいと思っている。

川崎:外務省を代表していうわけではないが、一つ前提として、これはJBICの環境ガイドラインの話なので、政府がどのような仕方をするかはここの議題ではないと理解している。しかし、実際にはオーバーラップしているので、JBICとも相談したいと思っている。精神論的には、政府としてプレッジするときにはある程度意思決定が終わっているので、そこから引き戻しにくい。少なくとも個人的には、その前に環境の評価が済んでいるべきで、当然情報も公開されるべきだということで理解できる。しかし、正直、国にとっては相手国との問題があるので、国際的なプラックティスなどをもう少し調査して、きちんと詰めていきたい。これは、むしろ政府側の問題だと思う。

 EIA自身は意思決定後なのか?

JBICEIAについては、最初スクリーニングで除外されるものもあるが、その後来る都度公開するのでなく、請求があれば出す。それぞれをWEBに載せるなどはしない。

JBIC情報公開には、事業者が行う情報公開と、本行が行う情報公開とがある。EIAは相手国あるいは事業者のものだから、そちらの情報公開の流れで請求されるもの。

川崎:相手国の主権を無視して、日本の事情でこちらで勝手に情報公開してしまうことはないということで良いか。

JBIC環境レビューの結果は、融資決定後に出すが。

松本悟:相手国から出されたEIAは、研究会の議論では、確か、受け取った段階で、JBICの書類になるという話だった。情報公開法にしたがってというのは?

JBIC基本的には出すのだが、商業上の秘密などは黒塗りにして、情報公開法にしたがった形で出したいと思う。

松本悟:相手国との関係をもって公開されないこともありえるということか。

JBIC相手国との関係というのは、請求が来た時点で、第三者意見を聴取して、だめと言う話が出てきたときに、なぜだめなのかを議論する。例えば、インドなどは、地形図は難しい。それは状況により、その場で決める。

松本郁:しかし、研究会のときは、このガイドラインのなかにJBICに来たら出すということをきちんと書き、そうすることによって情報公開をしようという話だったが。

JBICもちろん、ここで基本的に期待されているのは、情報公開するということを前提につくっていただくこと。

本山:カテゴリAの場合は毎回、相手国に伺いを立ててOKをもらわないと出せないということか?

JBIC相手国で公開されていれば、開示情報になる。相手国で秘されている場合は、公開が原則になっているから、なぜ公開しないのかを議論しながら対応する。

JBIC提言の内容とそれほど変わってはいない。

松本郁:原則は公開だが、カテゴリAに関してもEIAが出ない場合もあるのか?

JBICEIAの中に商業上の秘密などがある場合にはその部分を公開しないということだ。

原科:通常はめったにないと。

JBICない。向こうが公開していれば、第三者の聴取も必要ない。

和田:スクリーニングの情報を出した後、いつEIAが出てきたのかがわからないと開示請求もしようがない。どのようにしてわかるのか?

JBICカテゴリAなら、我々として入手しなくてはならないので、スクリーニングの結果が出た後、それほど時間もかからないと思う。

JBIC来たものは原則公開で考えている。

松本郁:2点お聞きしたい。審査の過程で、場合によっては、外部の方に意見を求めるような委員会を設置する提言が入っているが、それについてはとくに行内でもめているようなことはないか?

JBICその点については、コメントがきた記憶はない。

松本:また、カテゴリNという考え方は残すのか?

JBIC基本的には残す。我々の案では、カテゴリNをカテゴリCに入れてしまうというもの。カテゴリCのある一定の定義を置き、ただし、カテゴリAに属するものは除くということにしたい。

 

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