国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会・フォローアップ委員会

4回会合 議事録

 

日時:20001212日(水)午後6時半〜9時半

場所:国際協力銀行

配布資料:

 環境ガイドライン JBICドラフト案に対するコメント(本文)(作成:財務省)

出席者:(敬称略、アイウエオ順)

 委員長:原科 幸彦/東京工業大学大学院・総合理工学研究科教授

 委 員:上村 英明/市民外交センター

     川崎 研一/外務省経済協力局有償資金協力課企画官

     寺田 達志/環境省地球環境局総務課長

     馬場 義郎/財務省国際局開発政策課課長補佐

          前田  匡史/国際協力銀行行政改革担当参事役

     松本 郁子/地球の友ジャパン

     松本 悟/メコン・ウォッチ

     本山 央子/地球の友ジャパン

     門間 大吉/財務省国際局開発企画官

 

     畠中 エルザ/(財)地球・人間環境フォーラム

 

 国際協力銀行

  天野 辰之/国際協力銀行金融業務部業務課係員

  入柿 秀俊/国際協力銀行総務部総務課長

  大矢 伸/国際協力銀行総務部総務課調査役

  佐藤 恭仁彦/国際協力銀行総務部総務課副参事役

  萩原 烈/国際協力銀行開発業務部専門調査員

  細川 めぐみ/国際協力銀行開発業務部業務課調査役

  

  本郷 尚/国際協力銀行環境社会開発室第1班課長

  森 尚樹/国際協力銀行環境社会開発室第2班課長

 

議事録作成:

 波多江 秀枝/地球の友ジャパン

 

(原科委員長が不在の間、川崎委員が代理で進行役を務めることとなった)

川崎:対象表p.2の「U.1.目的・位置付け」について、まず、メコン・ウォッチのコメント「環境配慮確認」の問題は前回議論した。次に3行目の「借入人を通じ」について、財務省、地球の友からコメントがあるが、前回のT.基本方針でも同じような議論がありJBICが検討するということだったので同じ扱いでよいか。

JBICこれは、全体を通して見て検討したい。

川崎:基本的に考え方、目的、方針の箇所では、必ずしも「借入人を通じ」でなくともよく、手続では「借入人を通じ」とする方向でJBICに検討してもらいたい。次に23行目にかけての地球の友のコメントだが、提言では「グッドプラクティスを示すこと」という言葉が入っていたのに、ドラフト案では削除され「環境配慮を示すこと」となった理由をJBICから説明してもらいたい。

JBICグッドプラクティスは、後ろのドラフト案p.4「(4)環境配慮の適切性を確認するための基準」の第3パラで「グッドプラクティス等を参照する」と書いた。基本的にグッドプラクティスをどう活用するか考えた時、どこを最低限見て、かつ、どこまで高いものを求めるか、基準とのリンクを考え、(4)で「グッドプラクティス」と明示した方がよいということになった。

川崎:より適切なところにSpecificに明示し、整理したということか。

JBICそうだ。

川崎:問題は、目的などに明示した方がオーバーオールにかかるのでよいということだと思うが。

JBICオーバーオールに書く必要より、一般的にわかりづらいグッドプラクティスをどう使うのかわかりやすく示すために基準のほうに置いた。一般的に書くと何でもベストを求める感じになり、我々も借入人も困ると思ったので基準に入れた。

松本郁:どのようなグッドプラクティスを使うのかJBICに検討してもらうという話を研究会のときにもしたが、それは今後検討されるのか。

JBICそれはまだ途中だが、例えば、不法住民の住民移転の問題に直面した場合、不法住民の扱いが国により強制的な場合もあるが、同じ国で世銀がInvoluntary Resettlement Policyを使ってやっている場合もある。その時はなるべく、それを一つの目標としてできないかと交渉するなどしている場合もあるので、そうした世銀のポリシーも一つのイメージとしては考えている。

JBIC「国際機関、地域機関、日本等の先進国」が「基準」と「グッドプラクティス等」の両方にかかっている。

川崎:ここの問題として、目的で「グッドプラクティス」をオーバーオールに入れる必要はないかという点がある。「本ガイドラインに示すことにより」という言葉にかかっているので、グッドプラクティス自身を本ガイドラインで示すのはロジックとしておかしいと思うがいかがか。該当場所に「グッドプラクティス」と出てくれば、それは一つの整理の仕方だろう。精神的なところに書く必要があるなら、「示すことにより」の部分を「グッドプラクティスを参照しつつ」などと工夫する必要がある。

JBICグッドプラクティスという場合、色々と変わっていくのでSpecificに言うのは現実的でない。

川崎:グッドプラクティスの問題は以上でよいか。

本山:はい。ここに関連して、グッドプラクティスより重要な問題は「要件」という言葉について。提言では「環境社会配慮上の要件やグッドプラクティス」となっているが、ドラフト案では「環境配慮」を示すこととなっている。

JBIC我々が適切に配慮してやるという内容は実際上変わらないが、確かに表現上は「要件」が落ち、適切に配慮するということが弱くなっていると捉えられるかもしれない。ガイドラインは借入人との関係で使うので、「要件」と書くとそこから少しでもずれると門前払いという印象を与えてしまう。要件がこれだから最初から見ないというやり方でなく、少なくとも、要請が来たものは適切に配慮されているか見て、それが不十分であれば、ガイドラインに書いてあることを満たすよう働きかける。それで、向こうから我々が考える基準までやるというコミットメントがもらえるのなら、融資対象として考えていくというアプローチの方がよいということ。基準を下げるという意味合いでなく、借入人との関係で、借入人としてもその方が受け入れやすいという意味で表現を変えた。

松本郁:最終的には要件を満たしてもらうということか。

JBIC満たさなければ、融資はしない。後でもあるように、合意しなかった場合は融資をしないこともあると入っている。

門間:「配慮」というだけでは明確ではない。説明された点は手続の順番のこと。最終的に要件を満たさないものは融資しないと明確に事前に相手によくわからせることが極めて重要だ。その点、世銀の環境に対するOperation Manualには、借入人に対し、なるべく誤解を生まないように、明確に、あらかじめ、要件を満たさないとだめだと言うよう書いてある。「配慮」という言い方ではむしろ誤解を与える可能性があるので、何が基準なのか明確に示した方が、かえって後々いいだろう。もう一つ、財務省の観点から、世銀がそのように明確に基準を示している結果として、世銀では満たせそうにないから、日本政府にもっていこうという動きが起きてくる可能性があり、誤ったシグナルを与えかねない。その点は、財務省としてこだわりたい。要件をあらかじめ示し世銀と同じメッセージを出してもらいたい。

JBICそれは日本と世銀のアプローチの違いにある。世銀のセーフガードポリシーは、借入人の環境の基準ではなく世銀の基準を守らせるものであり、そのために、世銀はテクニカル・アシスタントで案件形成のF/SEIAから全て一緒にやる。その中では、当然世銀のガイドラインは守られるという話だ。我々の場合、基本的には途上国の制度の中でやったF/SEIAに基づいて日本政府に要請がくる。そこで我々が求めているものと彼らの基準とに差がどうしても出てくる。現実問題として、そこを埋めない限り前に進めないので、それを埋めるために我々として可能な限り先方に働きかけてゆく、というアプローチ。

門間:最終的に要件を満たさなければ、融資するつもりはないことを明確にしてもらいたい。妥協案であれば、配慮した上に○○の要件をクリアしなければいけないとしてほしい。世銀の場合、カテゴリA及びカテゴリBの全ての環境アセスメント報告書が提出されていなくてはいけない。それがなければ、それ以降、Boardに持ってきて審査してはいけないとまで書き、明確なシグナルを与えている。それを与えること自体が非常に重要。

JBIC本行ガイドラインは現地基準遵守、国際基準参照であり、ECGも同じ考え。財務省としては、世銀と全く同じガイドラインを使えと言っているのに等しいと理解できるが。

門間:基本的に世銀と同等レベルの高いものでやってほしいということ。

川崎:提言では「目的・位置付け」で、「要件」「グッドプラクティス」「手続き」「基準」を「示すこと」がメッセージとして入っているが、ドラフト案で「要件」が落ちているのが問題となっている。また、ドラフト案をみると、「手続き」「基準」に加えて「環境配慮」を「示すことにより」「環境配慮の実施を促すものである」と、国語としておかしな文章になっている。環境配慮という言葉が、要件を満たすことをチェックし実施させるという全ての概念を含むものなら、環境配慮という言葉の中に、すでに環境配慮のための要件が含まれているという理解でいいと思うが。提言通り「○○を示すことによって環境配慮の実施を促す」などとすれば、解決する話だろう。「グッドプラクティス」は、先程の議論のように省いてもいいということなら、単に2行目を「プロジェクトに求められる環境配慮の要件を示すことにより」とすればよい。心配があれば「等」と付けてもよいだろう。目的なので、どのような要件を設けるかは後ろの手続きで書けばよい。そこに「要件」を入れる案でご検討いただくということでよいか。「要件」が入らなかった場合も理由を説明していただきたい。

松本郁:「要件」を入れられない理由が今あるなら伺いたい。

JBICガイドラインそのものを要件だけでなく、実際に条件にはしないが、グッドプラクティス的なものも示したものにするのか。それとも、条件だけに絞るのか。という議論を研究会でし、前者という結論が出たので、提言では「要件」「グッドプラクティス」が併記された。最終的に、グッドプラクティスに依存することはそれほどないと思ったので、それに引きずられて「要件」も落ちたのだと思う。

JBICあえて「要件」と言わずとも、現地の基準を遵守し、国際基準等も参照するという我々が持っている基本的な考え方はここでも基本的に定められている話だ。

門間:なぜ「要件」を書いたかというと、要件requirementを示し、クリアするべき目標を示すということ。

本山:提言p.434「対象事業に求められる環境社会配慮」の平文は、JBICとしてまず要件を具体的に示し、借入人がその要件を満たすことを示さなくてはならない。つまり、持ってくる前に基本的に満たして持ってくる。そして、JBICはそれを確認するという趣旨だ。理解が違うようだが。

JBICrequirementであれば、理解は同じ。要件というとConditionととってしまうので少し違和感がある。

松本悟:研究会の議論で、何度も要件はrequirementだということは確認してきた。

JBIC世間一般には、要件というとConditionと捉えられるので。

川崎:手続や基準など言葉が並んでいるときに、要件だけが落ちているのはおかしいと思ってしまう。グッドプラクティスも入れなくてもいいと言っているが、併記するかを一緒に検討されるのならしていただきたい。すでに何か理由があるなら、ここで言ってもらいたいが、なければ次の論点に移りたい。現地の法令・基準遵守について、地球の友ジャパンからコメントがあるが。

本山:Requirementの中にすでに「現地の基準を満たすこと」が入っていたと思うが、ここでさらに「現地の法令、基準の遵守」が入った意味を教えていただきたい。

JBIC相手が現地の基準を守って作ったものを持ってくるとき、事業者がきちんとやっているという前提は我々にはあるものの、ガイドラインをもって改めて最後に確認しなくてはいけないという趣旨だ。提言にもある通り、順番として、現地の基準の遵守、国際的な基準等の参照とツー・ステップある。当然最初のステップが抜けるのはいけないので、最初のステップだけをここで明言しているということ。

松本郁:ドラフト案p.12の基準に、すでに要件として入っている。もう一度それだけ、ここで取り出した意味があるのなら伺いたい。

JBICAudienceを事業実施者と借入人と想定しているので、彼らが環境配慮をする際に合意を守るのは当然として、それに加えて現地の基準を守ることを呼びかけている。

川崎:論理的には「含め」となっているので、現地の法令のみ守っていればいいとは言っておらず、要件を厳しくしていて、後退はしていない。削除しろということではないのか。

本山:そうではない。

寺田:国内のアセスメントにずっと携わってきた経験からすると、このような表現はできるだけない方がよい。現在、日本のアセスですら、法令を遵守すべきだと書けば書くほど、それだけでよいと受けとめられており、多大な弊害が生じている。その意味では、当然である現地の法令を遵守するということは、どこかに一度書けばよい。その他のところで、それだけ特書きするのは極めて危険だ。

川崎:このようなコンテキストでもそうか。

寺田:論理的には後退しないというのはわかる。ただし、多くの人達のことを考え、色々な経験からすれば、日本のアセスメントも十分に配慮したつもりだが、法令遵守という当然のことを書けば書くほど、それだけでよいと受けとめられ、実際に運用されるのが現実。これがなくてもいいのなら、ないほうがよい。

JBIC実際にないと困る。我々は現地での手続、現地での承認が取れていることを確認しなくてはいけない。我々は監督当局ではなく、直接申請を受けて審査する立場にない。

門間:それは付属書に入っているなら、目的に入る必要はあるのか。

JBIC付属書に入っていても、ここにステップとして明示した方がわかりやすい。

門間:対照表p.2の目的に段取りをだぶって書くのはいかがか。

JBIC意見が対立していることではないので、検討したい。

松本郁:マイナスの影響がないのなら、付属書で入っていることなので、なくしていただければと思う。

川崎:ロジックとしては強化しているはずだが、結果的に運用にどのような影響があるかを考えるとご指摘通りなので、どちらがよいか検討していただきたい。

 次にドラフト案P.3の「2.基本的考え方(1)環境配慮の責任主体」の議論に移りたい。まず、地球の友のコメントp.235「環境配慮確認」と「責任主体」の問題。また、メコン・ウォッチから「あくまでプロジェクト実施主体者」という表現が提言「環境社会配慮は第一義的にプロジェクト実施主体者」と変わったというコメント。提言と表現を変えた理由をまずJBICからご説明いただきたい。

JBIC同じつもりで使ったのだが。

川崎:提言「環境社会配慮は」というのが「環境配慮の主体は」となっているのと、「第一義的に事業者の責務」というが「あくまでプロジェクト実施主体者」となっている。

JBIC事業者はプロジェクト実施主体者と同じ意味。「主体は」というのは、あくまでも事業実施主体が責任をもち配慮するということで書いたが、そう読めないか。

門間:「第一義的に」という言葉と「あくまで」という言葉は違う。第一義的にというのは、二義的には他の人たちの責任もある。あくまでは、全責任がその人にあるという意味。

JBIC1)から(3)をまとめると確認をするということになる。

松本悟:しかし、提言の英訳p.934を見ると、「Based on the assumption that environmental considerations are primarily」となっている。私達が思っている「第一義的に」は、このニュアンスだと考えている。

JBICその意味でいくと、誰がPrimarilyでない責任をもつ主体なのか。

松本悟:融資者であるJBICも責務を負うだろう。

JBIC表現の問題で言いたいことは同じ。誤解があるとすれば変えた方がいいかもしれないので、検討させてほしい。

JBICプロジェクトそのものに対しては、事業者ではない本行は責任を負えない。本行は融資者としての責任を負う。この点は重要なので確認して頂きたい。

松本悟:ここは環境配慮における当事者性を明記しているところだが。

JBICプロジェクトそのものにおける責任の部分と融資者としての責任があることは共通理解なので、それを正しく反映したワーディングである必要があるということだろう。

松本悟:「主体」でもかなり強いのに、それに「あくまで」が付くと強すぎる。

JBICプロジェクトそのものということを言うため「プロジェクトにおける」と書いた。

川崎:提言p.4123)と細かく分かれていたのが、ドラフト案では「主体」と「本行」に分かれているのだと思うのだが、「あくまで」という言葉と「第一義的に」という言葉は違う。また、提言では「第一義的に」「責務であることを踏まえ」、「明確化して望ましい」としており、ロジックは確実に変わっているのでご検討いただきたいが。

JBICただ、中身として、責任の分担があるということは共通理解だろう。

川崎:提言で3つに分けていたことを2つにまとめているので、若干ロジックが変わっていると思うのだが、言わんとすることが同じなら、誤解のないよう整理していただきたい。

 次段落では、メコン・ウォッチからのコメントで、「プロジェクト実施主体者」に「輸出入業者」が入らないのかJBICに確認すること。また、財務省から「付属書(1)に示す考え方等」の「等」が何を指すのかという質問があった。

JBICここは「適切な環境配慮を行うことを促す」にかかる。「示す」のは輸出者でもいいが、「促す」相手は実施主体者ということ。全体を見て他に同じような点は、もう一度誰にということを確認したい。

松本悟:全体を見ると、情報公開に絡むところに輸出者の役割があると思っている。おおよそのところは今の話のように、プロジェクト実施者が中心だろう。これが終わるまでには私の方でもしっかりまとめたい。

原科:「考え方等」の「等」は何が入るのか。

JBIC付属書(1)のみならず、現地の基準やグッドプラクティスなど色々見ながら判断するという意味。

原科:付属書(1)に示す考え方プラスアルファということが、「等」でわかるか。「考え方及び○○」と書いた方がよいのでは。

門間:不明確だと思う。「等」の中身を明確に書いたほうがいいだろう。

原科:「等」がないといかがか。

JBIC「等」と入れるのはわりと一般的。普通はプラスアルファという考え方。

門間:プラスアルファなら、プラスアルファだと書いて示した方がよい。今の理解なら、「プロジェクトの性質に応じた適切な」と書いてあるので、「等」がなくてもよいのでは。

原科:「等」をはずして、「考え方に基づき」でいいのでは。

松本悟:グッドプラクティスなども積極的に出していく方が、将来さらによいプロジェクトを行うという意味でも、JBICそのものにとっても前向きだという議論が研究会の中ではあった。

JBIC一方で、民間企業から困るという話もあると思うので、バランスをとりたい。

門間:そうであれば、「等」を削っていただきたい。

JBICワーディングを考えたい。

松本悟:グッドプラクティスなどを書くと、企業側から具体的にどのような意見が出てくるのか知りたい。企業側はグッドプラクティスのことをよく知らずにマイナスのイメージを持っているのかもしれないし、合理的な批判が企業から出ているのかもわからずに、バランスと言われても納得できない。我々はグッドプラクティスは企業にとっても参考になるものだと思うので。このような場合は、具体的に指摘してほしい。

JBIC一般論では、企業が事業を行う上で適切な配慮をするのは、自分自身にリスクがかかってくる話なので当然というのが基本。ただ、グッドプラクティスとして色々なものが入るとプロジェクトの性質に応じたと言いつつも、無限大の広がりに見えてしまう。あまりにも色々と書いてあり、企業側が判断に苦しむなど混乱を招く可能性がある。

門間:いっぱい書いてあるだけでなく、はっきりしないことに対しても恐れがあるのだろう。そういう意味では「等」をはずし、明確にした方がいい。ここに書いてもないのに要求される方が、取引する相手からすれば、取引の安定性が確保されないことになる。

原科:むしろ、付属書(1)の中身にプラスアルファだと書けばよい。

JBICその点は検討させていただく。

本山:付属書(1)について、付属書とすること自体が問題だ。これは、単なる事業者への伝達事項ではなく、JBIC自身がどのような基本的考え方で環境配慮する必要があるのかということを示している部分なので、ガイドラインの一番重要な部分だ。付属書という扱いが妥当なのか疑いを持ってしまう。

JBIC重要性を否定しているということではない。ただ、わかりにくく書いては意味がない。できるだけわかりやすくということで、我々のやる手続と基準を本文にし、付属書という本文の一部という形で明確に具体的な内容を入れた。このようなやり方は一般的法律の構成としても決しておかしくない。

門間:以前にも、軽視しているわけではなく、付属書になり立体的になっていた方が見やすいという説明をいただいた。JBICがそのような趣旨であり、地球の友が付属書というステータスを対外的に悪いイメージをもつのなら、1部、2部などの形もあるのでは。

原科:「付属」という言葉が悪いということ。

JBICパート1、パート2などでもよいかもしれない。効力は変わらないので。

門間:体裁を工夫していただければ。

原科:では、付属書という表現を検討していただきたい。

川崎:ロジカルには全く変わっていないのでいいのだが、なぜ提言のときに一体化していたものが後ろに行ったのかという理由は、使いやすさの問題か。

JBIC我々の同僚が読んでも、わかりにくいと言っていた。

原科:この形は悪くないと思うが。

松本郁:ただ、基本的にはこのガイドラインの目的や事業者に求める環境配慮がどのような位置付けなのかをわかっていただくために、事業者の配慮の部分だけを渡すというよりも、全体を通して見ていただきたい。

JBIC当初企業に提言を渡したときに、事業者の責任が何かよくわからないという意見があったので、我々がやる事項と事業者がやる事項を書き分けた方がいいと思った。

原科:付属書の中の話は後に回し、続いて2.(2)に移りたい。

川崎:コメントは4つ。1点目は、第3パラ「リスク評価の重要な一側面であるとの認識に立って」という文がなぜ入ったのか。2点目は、第4パラ「スクリーニングフォーム」「チェックシート」のフォーマットの内容はどのようなものか。○×で形式的なものになるのではないかという懸念。3点目は、最終行「モニタリングを重視する」とは何か。4点目は、意思決定の反映について、他には書いてあるが、ここで書いていないのはなぜか。

JBICリスク評価の箇所について、通常は財務、経済、技術、環境面を総合的にレビューするが、これをあえて入れたのは、プロジェクト実施段階で環境が押さえられているのみならず、プロジェクトが持続的に最後までうまくいき金も返ってくるというリスク判断も重要だと強調する意味で入れてある。むしろ、環境が重要だと意識して入れた。

JBIC企業に説明する場合のコミュニケーションのツールとして、環境配慮をする持続可能な開発の考え方という哲学的な部分を強調すると同時に、企業にとっても環境がリスクであり、経済的合理性から考えても環境に十分配慮しなくてはいけないだろうと説明する方が納得してもらえる。企業が受け入れやすい言葉が入っている方が今後我々がガイドラインを説明していく上で受け入れてもらいやすいという観点から入れた。

原科:次に、スクリーニングフォームとチェックシートについては。

JBIC具体的にどのような形でJBICからチェックされるのかをより明確にした方が、事業者、借入人も書類の準備などをしやすいだろうという観点から、スクリーニングフォームもチェックシートも付属書の形で入れることを考えている。チェックシートは○×ではなく、項目があり、問題点を書くなど、現行のようなものをイメージしている。今修正しているところで、まだ準備ができていない。

松本悟:この問題はこうであり、こうであるから、問題ないだろうというように具体的に踏み込んで書かれるのか。

JBICそうだ。現行と考え方は変わらないと考えてよい。但し、新ガイドライン案を踏まえ現行のものとはセクターが変わったり、いくつかの要点が変わるであろう。

門間:準備ができたら、見せていただきたい。パブリック・コメントにもかけるだろう。

JBIC かなりテクニカルなところなのでパブリック・コメントには馴染まない。

門間:しないなら、しないでまず最初にきちんと説明する必要がある。

原科:パブコメには、このような格好でやると例示で示せばよいのでは。

JBICできるだけ早くやろうとしてはいるが、本文に時間がかかりすぎまだ間に合わない。

松本郁:特に気になるのは、提言で広く出てきている「社会配慮」が今、非常に限定的になっていること。

JBICそれを反映するように作りたい。

原科:「活用すること」でなく「活用するなど」という表現ではいかがか。

JBICできるだけ合理的にやるという趣旨だ。

原科:では、「融資後におけるモニタリングを重視する」という箇所は。

本山:今、その趣旨はわかったのでよい。

原科:では、意思決定への反映が明確でない点について。

JBIC次ページに続く環境配慮確認の話で、流れとしては、最後に(5)意思決定としてそれを踏まえやるということ。

川崎:そこに提言より詳しく書いてあるのでいいと思うが。

原科:そこに項目として明確にしているのでよいだろう。

松本悟:先程の指摘のように、「活用すること」となっているので、2つのスクリーニングフォームとチェックシートにあまりにも依存するのではという懸念がある。しかも、モニタリングもそれに引きずられるのではないか。もちろん重要なツールではあるが、もう少し他のこともやるとしてほしい。

川崎:もともと「適切に」がかかっているのだが、さらに工夫してもらえるならそのほうがいいだろう。

原科:では、2.(3)環境配慮確認に要する情報に移りたい。

川崎:1点目は地球の友、メコン・ウォッチから、第2パラ「ステークホルダー」の箇所に提言で入っていた「第三者の情報」が入っていないというコメント。2点目はメコン・ウォッチから、第2パラ3行目「必要に応じ」はなぜ入っているのかというコメント。3点目は財務省と地球の友から、第3パラ「必要に応じ」は不要というコメント。4点目は、第4パラ「情報公開等の状況について、確認を行う」の箇所だが、地球の友からもう一度コメントの趣旨を説明してもらいたい。5点目は、提言にも入っているのだが、第5パラ「必要に応じ」は不要というコメント。次の「環境配慮」と「社会」の話は済んでいる話だろう。6点目は、提言の細字で、国際基準の何を参照するのか明示するようガイドライン作成段階で検討することを書いていたが、その答えとして明示していない点について。

原科:まず、「ステークホルダー」の点について。

JBICステークホルダーおよび第三者というワーディングは、産業界の懸念の一つ。このようなワーディングになると、がせねたに近いものが入ってきて、渉外上、検討が止まってしまい、時間かせぎさえすれば向こうの勝ちになるということが起きるのではないかと懸念している。重要な情報は当然第三者から受けるが、それを明示することにより、不安感を増すので、やめてほしいという意見があった。

川崎:苦情申立てのようなコンテキストで、あのプロジェクトは大丈夫かというような情報がきたとき、それにまじめに対応すれば事業が遅れてしまうということか。そのような情報は、むしろ苦情処理をどうするかという問題で議論すべき。ここでは、むしろポジティブな情報を幅広く聞いた方がいいという趣旨だ。

JBIC情報の入手とそれ以外のところを明確に分けるということが共通認識ならいいが。

原科:では、ここは「必要に応じ」があった方がよいのでは。

川崎:この「必要に応じ」は都合のいい「必要に応じ」かもしれない。JBICに裁量権が生まれるというリスクが生じる。

門間:「活用して」とあるので、情報は聞いたが実際にはウェイトを置かなかったという言い方もできる。「必要に応じ」はなくても大丈夫だろう。

川崎:「活用して」がかかっているので、「必要に応じ」ともう一度保険をかけることはないかもしれない。

JBIC活用するということはきちんと見るが、その結果、それが取り入れられることもあれば、取り入れられないこともあるということか。

門間:絶対にそれに従わなければいけないということではない。

原科:では、「第三者」を入れてもらい、「必要に応じ」をとることでいかがか。

寺田:心配なのは、正規のアセス手続の中で第三者が議論を言うのはいいが、JBICに正規のアセス手続ではない情報があったとき。そのとき「第三者」という言葉があると、例えば、マニアチックな自然団体等からあそこには新種の蝶がいるはずだという情報があり、それに対し徹底的な生体調査をやらないといつまでたってもわからないということが極めてよく起こりうる。不在証明は存在証明より難しいので、そうなると非常に困るだろう。第三者の情報も活用するのは制度上は正しいが、「第三者」と入れる以上、そのような事にどのように対処するのかはっきりさせておけばよい。そのようなことは必ず起こるので。

門間:そのようなマニアックな情報は活用したが、実際にはウェイトを置かなかったと言えるのでは。

JBIC「活用する」と規定しておいて運用で何もしないでよいという考え方は受け入れ難い。

松本悟:その場合、その地域に非常に造詣の深い自然保護団体がいるのなら、ステークホルダーに入ってしまうのでは。

JBICそういう意味では、ステークホルダーだけで十分ではないか。

寺田:ステークホルダーでないような方の情報の質をどのように判断するのかという問題。

JBIC却下すればいいというのは簡単だが、実際に難しい。

川崎:その意図が当該プロジェクトをストップすることにあるなら、苦情処理の委員会などの問題で議論すればよい。ここの話は、情報を使うときに幅広くという意図なので、JBICで適切に活用してもらえばいいのでは。「必要に応じ」をとり「これらも適切に活用する」なら、ほぼニュアンスは同じになるが。

JBIC活用すると言って重きを置かなかった場合、なぜかという説明責任が我々に生じる。それは難しい。

寺田:ここまでやれば、我々として十分責任を果たしたというものをあらかじめ作っておくことをお勧めする。そのようなトラブルが起きてからでは無理だ。

川崎:その場合、活用すると言っているのに、JBICはガイドラインを守ってないというクレイムになる。そのクレイムを受けつけるのか却下するのかは、別途、どのようなすキームで処理するのかを確立しておけばよい。

JBICこれはレビューを行う段階で、異議申立ての段階に行っていない段階で情報が来たときにどうするかの話。

松本郁:例えば、JBICが情報を活用できないという対応をしたとき、その対応がおかしい場合にガイドラインを遵守していないと申立てをする機関を作る話がある。申立てがあったとき、その申立てを取り上げるのかを判断する機能は申立機関に必要だろう。

JBICその間、プロジェクトは止まってしまうということか。

川崎:機関の議論になるが、レビューを行うと書いてありチャレンジが来たら、それに応答しない限り、形式的には前に進めなくなるかも知れない。ただ、実際に今言ったような内容なら、一定の常識をもって却下しても、誰もそれ以上言うことはないだろう。

JBICそれは第三者委員会の話と合わせて話したい。

JBICこの点、先程のように、民間企業には懸念がある。例えば、第三者がいないといけない理由は何か。ステークホルダーとは何も関係ない第三者が何かを言うとはどのような意味か。

松本悟:ステークホルダーをどのくらいで見ているのかという議論にもつながる。当該国にいないNGOやその分野にそれなりの見識やネットワークのあるNGOを絶対にステークホルダーとみなすと言いきれるほど、これまでそのようなNGOはプロセスに入ってきてはいない。ここで明示するのは、当該国にいないNGOについても、とくに情報提供においては含めた方がよいという趣旨。

JBICその場合、当該国にいないNGO(国際NGO)のネットワークの組織(現地NGO)がああり、現地NGOが国際NGOに現地の情報を提供することによってはじめて国際NGOが関与してくるはず。従って、我々は国際NGOに話を聞くかもしれないが、まずはより現地に根ざした情報を得るという観点から、最終的には現地NGOに話を聞くことになると思う。従って第三者をはずしてステークホルダーとすることで実際的に問題はないと思うが。そうでないと、民間企業は本当に困るだろう。

松本悟:ステークホルダーを広くとるなら、あまり問題ないかもしれないが、ケース・バイ・ケースでステークホルダーを判断していくものだけに、ステークホルダーとだけ書いてあることに懸念が残る。

上村:第三者機関で議論するのが一番妥当だろう。人権でも、国連にさまざまな情報を含んだ膨大な「通報」が送られてくるが、そのほとんどが切り捨てられる。その処理の仕方としては、コミュニケーション(通報)の送付人の名前・住所・連絡先を明らかにすることなどいくつかの許容性に関する要件がある。ここでも、通報を第三者機関的なところが来た段階で名前を消し、例えば、各関連環境機関に半年以内にレスポンスをほしいとして送る。もし反論があれば、それと比べて切り捨てる判断が可能だろう。第三者機関の話は議論があるだろうが、情報収集の手続さえクリアに決めておけば、悪意のある情報を排除するのは難しくはないだろう。情報提供者はできるだけ広くとる必要があると思うが、環境の場合はどのようにやっているのか。

寺田:色々な事業があり色々な人が関与するので、心配すればきりがない。いくら付属書(1)を真摯に作っても、必ず境界領域ができ変なことが起こる。大事なのは、基準をどう作るかより、アセスメントの命である手続と情報の透明性。皆が信じてくれる正当なDue Processを入れ、かつ、よほどの個人の秘密を除き得られた情報を普く公開することだ。それで事業の正当性を救うとうことが本当の解決法だ。

JBIC今の議論をふまえて検討したい。

川崎:ここでは、第三者の情報を奨励するかしないかが論点。それを心配するのは別のところですればよい。

原科:では、第三者と入れておき、第三者委員会で対応するということだけ決めておくか。

前田:今の議論で論点がずれているのは、ステークホルダーの範囲の問題。提言で「地域住民等ステークホルダー、NGO等の第三者」と分けたのは、ステークホルダーの概念が広いと問題だという議論と、逆に狭くなると情報の範囲が狭くなり問題だという議論があったからこのように書き分けたものである。手続という観点から見ると、無関係で悪意の第三者が出してくる情報を切る場合に、その情報の内容が不適切だから切るという言い方と、関係ないから切るという相手方に対する言い方の問題がある。そのとき比較的わかりやすい話が、ステークホルダーではないという言い方。例えば、手続の話でIFCのオンブズマンは、Local NGOはステークホルダーだが、それ以外は違うと明確に言っていた。手続の問題と一緒にして先送りすると益々混乱するので、ステークホルダーの範囲を章により変えるのか、ここに定義を書くのかを先に決めた方が効率的だろう。個人的には、無関係な第三者の情報提供を奨励するようなことを書く必要はないと思う。そのような情報は放っておいても来る。悪意の第三者を切る場合に、「貴方はステークホルダーではない。」と言うように使い、逆に、必要な情報をできるだけ幅広く入手するという観点から、ステークホルダーを狭く解しない方がよい。コンセプトの整合性の問題だ。「必要に応じ」などの修飾語でごまかすよりは、ステークホルダーの範囲を決めることが大事で、変な第三者を入れないほうがすっきりする。そもそもステークホルダーは誰なのか。情報を入手する相手方としてのステークホルダー、苦情を受けつける相手方としてのステークホルダー、情報公開の対象としてのステークホルダーは同じか違うのか、書き分ける必要がある。これは研究会の積み残しでもある。

JBIC先週、プロジェクトに対し利害関係を有するものということで論点を整理した。

前田:概念をちゃんと書いた方がいい。手続と一緒にするのは一見いいが、混乱するだけである。第三者委員会のあり方のような論点と一緒に議論するのは、議論が混乱するので止めた方がよい。

原科:ステークホルダーの概念はケース・バイ・ケースで変わるとは思わないが。

川崎:前回の議論では、ステークホルダーの範囲はある一定の概念があるので、その言葉について解釈の幅が生じることはないだろう。どういう概念があるかは別に整理するということだった。

JBIC利害関係を有するという言葉をどう解釈するか。

川崎:テキストによって、より意味を明確にするために、提言のように「地域住民等」と限定する修飾語をつけるのはどうか。

前田:先程のIFCの話では、国際NGOは本当に苦情が起きたときに意見を聞く相手としてのステークホルダーではないと言っていた。ここに第三者を併記すると、国際NGOはステークホルダーでないことになり混乱するだろう。ここは、むしろ情報を積極的に求める話でこちらが選べる。

JBIC実際にどんな情報が来るかわからない。見当違いのようなレターも時々くる。

前田:その場合は、ステークホルダーでないと言えばよい。第三者だと適正かを判断しなくてはならないが。

原科:第三者だと無関係と思われる人も入る。ステークホルダーの概念を広くとる方が問題ないかもしれない。地域住民、NGO等のステークホルダーとするか。

川崎:提言では「地域住民等ステークホルダー、NGO等の第三者」となっていたが、第三者という言葉はなくし、NGOは残るということか。

前田:残るが、その中でステークホルダーでないNGOもある。

JBICそういう意味では、NGO2種類ある。

前田:それを言い出すと混乱する、最終的な結語をステークホルダーとしても、すべての国際NGOがステークホルダーではありえないことはIFCも言っている。むしろ、変な誤解を与えないよう、ステークホルダーの中にNGOは入ると書いておく方がよいのではないか。

JBIC利害関係を有するものという整理で何が問題なのか。

前田:それでは、第三者が入ってきて混乱する。

門間:利害関係を有するものだと広く解釈される可能性があるので、かえってJBICがつらいのでは。

川崎:苦情を受けつけるところはもっと限定的にしないとワークしないというのは別途議論した方がよい。ここはどのようなものから情報を受け取るかの話で、「地域住民等、NGO等のステークホルダー」と書けば、ステークホルダーのうちかなり限定された人という表現にはなる。

上村:もう一つ、専門家をどう扱うか。人権の分野では、それまで当該問題に関わっていなかったが専門家としての客観的立場で、国際法上の解釈などを書いた意見書が送られてくることがある。地域住民、NGO、専門家と「専門家」を含むとするのはいかがか。

JBIC3)の後ろで「必要に応じ外部専門家等の意見を求めることがある」とし、そのような場合を想定している。

原科:向こうから来た場合はどうか。

JBICそれは当然聞く。ただ、色々な場合があるだろう。

上村:悪意がなければ、参考にできるだろう。

JBIC悪意があろうがなかろうが情報としては受取る。ここは、どのようなものをはねるかの話。

原科:では、「地域住民、NGO等のステークホルダー」という表現でよいか。

JBIC検討するが、NGOという表現には若干問題があるので。

原科:それなら、第三者を限定しているので、提言の表現の方がよかったかもしれない。

JBIC恐らく、「活用すると書いてあるのだから自分の意見を活用しろ」といった権利の濫用をどう防ぐかという話になる。

川崎:それは、議論を分けた方がよい。権利というのは異議申立ての権利。ここは単に情報が来たときに聞くかの話で、権利義務の話ではない。重要性を認識したが使わなかったという議論はできる。活用の仕方をどう読むかだ。

JBIC断るときの理由として、内容について議論せずに断れるような形式要件を作るのかという話。

松本悟:いずれにせよ、悪意の第三者を排除したいという意向から、逆に善意の第三者まで切り捨てるというようなことのないようにしてほしい。

JBICどう調和を図るかという問題だろう。

川崎:「地域住民、NGO等のステークホルダー」を原案とし、JBICが拒めばまたご説明いただくというのでよいのでないか。

原科:次の「必要に応じ」について。

JBIC協調融資といってもADB、世銀だけでなく、民間銀行もあり、それにより関わり方も色々とあるので、「必要に応じ」とした。

原科:これは、程度が違うだけで、当然やることでは。「必要に応じ」はいらないだろう。

JBIC上の段落は情報を入手し活用。この段落はこちらから発信し交換ということで、発信に重きを置いたつもりだった。わかりにくいならワーディングを考えたいが。

原科:必要に応じ、毎回発信するのだろう。

JBIC毎回はどうか。向こうがいらないというケースもある。

原科:いらないと言われれば、それはそれでいい。

JBIC民間金融機関はこれを見て何をするのかと聞くので、もちろん必要に応じてやるのだと答える。民間金融機関との協調融資で、そこまでしなくても結構だというときもある。

門間:それならそれでいい。「必要に応じ」という言葉は概して、結構だと言われたときだけやらないということはない。「必要に応じ」というのは、JBICが必要かということだ。それでは裁量権が発生してしまう。情報提供して、向こうが活用するかは関係ない。

JBICODAなどでADBや世銀と協調融資するなら問題ないが、一般的に協調融資は民間銀行がほとんどなので、関わり方が色々とあり、すべからく意見交換を申し込むという形になる。

原科:何も問題ないと思うが。

川崎:「必要に応じ」というのは、役所語で自分がやりたくないときに「必要に応じ」やらないと使う場合があるかもしれない。情報交換の内容によっては、ちゃんとしているものもあるだろうし、「適切に」を入れてもよい。

原科:他の金融機関は抵抗を感じるのか。

JBIC全くそういうことが起きえないこともある。国際金融機関との協調融資なら、お互い情報交換をするが、民間金融機関との協調融資では、彼らが責任をもつということでなく、実質的に我々が責任をもって行なうこともある。その場合、そもそも情報交換が行われないこともある。それを義務として書くのに抵抗があるということで、目指しているものを変えようということではない。

門間:民間銀行も環境については気にしているので、この部分をそれほど気にするのか。

JBIC財務省のポイントは我々に裁量権が発生してはいけないということだろう。相手が必要だと認めるときにはやればよいという趣旨か。

門間:向こうの情報がなくて意味のある意見交換にならない場合や、向こうが結構だと言った場合でも情報交換を無理にするのかと聞かれたので、その場合は仕方がないと答えた。相手のニーズがないのなら仕方ない。

川崎:「必要に応じて」を取り、「情報の交換に努め」という表現はいかがか。「必要に応じ」だとJBICが自主的に裁量権をもち却下する可能性が出てくるので。

JBIC役所でいくと、自分の所掌について何の判断もできずに他の省に協議しないといけないという感じか。

原科:一応、アクセスしていただき、だめなら仕方ない。「努め」でお願いしたい。

JBIC:検討する。

川崎:次にドラフト案p.41パラ「情報公開等の状況について、確認を行う」について。

本山:提言にあった、アセスメント制度におけるステークホルダーの関与や情報公開等の状況確認というのは、向こうの制度自体がこのようなものを満たしている制度かをチェックすることだと理解していた。これを読むと、個別案件の審査の話と読めるが。

JBIC個別案件にかかる制度のことで、制度全体の審査は対象としていない。

JBIC環境配慮確認にどのような情報を使うかというとき、アセスメントについて言えば、例えば、付属書に出てくることがちゃんとできるような制度や情報公開等があるかをまず確認するという意味で書いている。

本山:次に、提言では「特に影響が重大と思われる案件」について、専門家によるサイトレビューをすると書いていたが、ここの変更に対する説明を。ドラフト案では「必要に応じ」と入り、また、まとまった表現になっておりいいのかもしれないが。

JBIC カテゴリAだけでなくカテゴリBでも、我々でわからない分野がある場合は、現状でも専門家にサイトレビューに行ってもらっている。カテゴリAに限らず、幅広く必要に応じてということ。

川崎:もう一点、地球の友のコメントp.236の議論だが、基準として用いる国際的諸基準の明示を検討し、案を示すようJBICに求めると提言p.8ではなっていた。

JBIC国際基準として(4)で、「国際機関、地域機関、日本等の先進国が定めている基準」としているが。

松本郁:基準と言った時、何かが見えないとわかりにくいということだったので、事業者にも混乱のないようにしてもらいたい。非自発的移転や先住民の政策についても場合によっては適用すると言っていたが、そういうものを一つ一つ書かなくて特に問題はないのか。

JBIC事業者側との関係ではこれだけ言えばわかる。例えば、国際機関で世銀であれば、Pollution Abatement Handbookを持っていて当該セクターはその中で大体決まってくる。あえて書く必要はない。一方で、世界中探しても例えば、プロジェクトによってはドイツしか持っていない基準を参照したことがある。そのように適当な基準を探さないといけない場合もあるので、Specificに書くよりこのような形で書いたほうが適切だろう。

本山:基本的な考え方はそうだろうが、諸基準についてはある程度、具体的に示した方がいいという議論だったと思うが。

JBIC国際的基準が何かを示すということで、ここでは「国際機関、地域機関、日本等の先進国が定めている基準」と示している。具体的にどのようなものを列挙せよと言うのか。

本山:例えば、IFCなどは、このような基準を使っていると書いてある。JBICもこのようなことを研究されて、作るのかと思っていた。

JBIC先進国も合わせればそれはすごい数になる。また、我々が実際に相手にする方々はこれで十分わかる。また見直しもあるだろう。事実世銀は現在見直しをしている。

松本郁:例えばOPICでも、世銀のどのガイドラインを適用するかを最初に書いていたので、どれを基準にするのか重要なものに関しては書いたほうがいいのではという意図だった。事業者に十分に説明する、あるいは、もうすでによくわかっているということなら、いいだろう。

川崎:では、この点は、JBICが検討した結果、ドラフト案の記述で十分だと考えたということでよいか。

JBICECAでも、同様の表現で十分わかると皆言っている。

本山:次に、第3パラ「環境配慮のあり方…(略)…必要に応じ対応策を検討する」とあるが、対話をして対応策を検討しどうするのか。

JBIC対応策を検討し、最終的には(5)意思決定の反映につながる。どうしてもだめなケースは融資しない。

JBIC環境にかかる基準は、地域の特殊性、地形、風土や社会的バックグラウンドの中で決まってくるもので、外からの基準をそのまま持ってくることが本当に妥当か議論がある。例えば、誰も住んでいないような荒廃地域において火力発電所を建設する場合、日本なみのきびしい排出基準を適用することは必ずしもふさわしくないであろう。そこは当然、プロジェクトの中身や地域状況等を議論してから、コスト・ベネフィットも考えながらより高い基準まで持っていくプロセスが必要だ。一律の基準を押し付けるということでなく、議論をよくして相手が納得するまでの対応を求めるということをここでは言わんとしている。

本山:もちろん基準をもっていき全部やれということにはならないが、これによって問題が起きないということを確保することは必要だ。これだけ読むと、理由を聞き納得したらよく、具体的にどのように意思決定に反映されるのかがわかりづらく、ケース・バイ・ケースの対応に読めてしまう。もう少し書き方を検討できないか。

原科:わかりやすくなる提案を出していただきたい。

JBIC5)に意思決定への反映が書いてある。(5)を通して読んでもわかりにくいか。

川崎:5)があっても、今の箇所を理由に対応策を色々検討したらいいことになったということになるのが懸念なのか。(5)で意思決定に反映すると書いてあり、なおかつ、国際機関等の基準を参照すると書いてあるので、問題ないと思うが。

JBIC我々は対応を求めてやってもらい、できなければ融資ができない場合もあるという意味だ。

松本郁:これをあげた趣旨は、旧輸銀のガイドラインの場合も「大きな乖離がある場合」とあり、その大きな乖離がある場合をどう判断するか裁量が大きかった。さらに、だめな場合にどこまでできるか相談する際、もう一度裁量がある。すると、どこまで参照するということが生かされるのかが曖昧だ。もう少し、はっきりは難しいかもしれないが、書き方の工夫がほしい。

川崎:「対話を行い、その背景・理由等を確認する」としてはどうか。それだと、議論をして聞くが、検討結果を反映しない場合もありえる。

JBICそれでは、低い基準で終わってしまうこともありえるので、やはり対応策を検討しなくてはいけないとまで言った方がいい。

門間:対応策を検討し、十分な環境配慮を確保するということだろう。

JBICそれは(5)に書いてある。

門間:つまり、懸念する人からみると、環境配慮が大きく乖離がある場合に理由を聞き、必要に応じ対応策を検討して、どうなのかということになる。環境配慮が十分されたことが確保されたと言っておいた方が後々いいのでは。

JBIC重複していう必要はない。我々の意図としては、ここの「必要に応じ対応策を検討する」といった内容が全て、環境配慮確認の中に反映される。例えば(5)「環境レビューの結果、適切な……」となる。この検討状況が明確にレビューの結果に反映されていることが書かれていればいいのだろう。

門間:「必要に応じ対応策を検討する」が恣意的な感じがする。それは、環境配慮が適切にされることを確保されるためにやること。それが「必要に応じ」となると、明確ではない。

JBICでは、むしろ、「確認する」と止めておいた方がいいかもしれない。

川崎:それなら問題ない。このままだと、環境配慮をする意味で対応策を検討するならいいが、相手ができないとき、環境配慮が多少疎かになってもいいという妥協策を検討する場合もあると読める。それを融資決定に反映される場合もあると読める。

原科:次に3.環境配慮確認手続き(1)スクリーニングに移りたい。

本山:1点目は、提言の「情報の提供があればなるべく早期にスクリーニングを行う」がないことの理由を聞きたい。カテゴリNをカテゴリCに含めることの確認が2点目。3点目は、提出すべき情報のリスト、様式は現行のスクリーニングフォームを変更するのかを伺いたい。

JBICドラフト案p.51行目「スクリーニングに必要な情報の早期提出を借入人等に求める」と書いてあり、我々が早くやるためにまず情報がないとスクリーニングができないので、まず情報を相手に求め、情報があれば我々もすぐ対応するとうこと。

門間:JBICが早期にスクリーニングすることを書いてもかまわないということか。

JBICかまわない。

門間:では、提言にあるものをなぜ書かないのか理由を説明しないと納得できないだろう。

原科:ドラフト案は提言より積極的な面があると思う。早期のスクリーニングを行うために借入人等に必要な情報の早期提出を求めるという趣旨なら、そう表現すればよい。

JBIC検討したい。

原科:では、カテゴリNをどうするかについて。

JBICスレッシュホールドについては研究会の議論をそのまま受けた形。「10百万SDR」はECAコモン・アプローチと同じ金額。また、研究会でも議論したが、現行のカテゴリ分類でAに当たるものはスレッシュホールド以下であっても、Cにはしないという考え方をそのまま踏襲していく。カテゴリCNを一緒にした話は、あまりカテゴリ分類を多くするのも見栄えがよくないので合せてCにした。

馬場:10百万SDR」の但し書きだが、「付属書(3)に示す影響を及ぼしやすい特性や」「地域」だけと書いてあるが。

JBIC研究会の議論でもあったが、現行のガイドラインの中でのセンシティブなエリア、コンポーネントを持つものという定義はそのまま変わっていない。

門間:金額が小さいので全体のプロジェクトも小さく影響もそうないだろうという理論はわかる。ただ、この前のECGでも質問があったのだが、実は全体のプロジェクトは非常に大きく、JBICの融資額が少しだという場合については書かないのか。

JBIC100%そのようなケースがないわけではない。色々なケースが考えられるので、2行目で「原則として」と入れている。我々もそのようなケースを自動的にCと言うつもりはない。

門間:懸念のあるものはちゃんとやるということか。

川崎:ECGで金額を設けたときには、このような懸念をどう処理されたのか。

前田:プロジェクトの金額ではなく、メンバー・シェアがスレッシュホルダー以下であればよいということである。

川崎:一つの事業を分けていても、自分のところの融資分がその金額にいっていなければよいということか。

JBICまた、我々の言うセンシティブなコンポーネントや立地特性に関わりなく、金額が小さければCとしている。

JBICコモン・アプローチを踏まえ、ベルギーとルクセンブルクはすでに10百万SDR以下のプロジェクトのカテゴリを自動的に落とす処置を取っているということだ。コモン・アプローチや他国に比べれば、我々は厳しい処置になっている。

原科:では、カテゴリのリスト、様式の話について。

松本郁:提言p.10平文で「スクリーニングに際し、…(略)…ガイドラインで示しておくことが望ましい」とあるが。

JBICこれは今準備しているが、まだ終わっていない。できるだけ早くやりたい。

門間:これは最終的にはどのような形で反映されるのか。

JBIC付属書(4)にあるが、本文に時間がとられまだ整理できていない。

原科:では、対照表p.53)カテゴリ別の環境レビューに移りたい。

松本悟:唯一、脚注が入っているが、この意味は。

JBIC環境アセスメントの中に住民移転が入っている場合、アセスメントを見ればわかる。しかし、事業自体が自然環境への影響がほとんど予想されない一方、住民移転は1000人あるという場合がある。そその場合にはA種という判断になるが、アセスメント報告書がないことになる。例えば、小規模な道路のリハビリ事業の場合、そこに不法住民がたくさん住んでいれば、大規模な住民移転が発生し問題となる。ただ、小規模なリハビリ事業で、事業自身の環境負荷は少ない。したがって、アセスメントをやらないという判断がありうる。その場合には、少なくとも住民移転の計画書等を出せと言っている。

本山:他の機関でそういう規定を設けているところはあるか。

JBIC世銀はアセスメントと住民移転とは別になっている。日本の場合も環境アセスメントのなかで住民移転はスコープ外となっていると理解しているが。

原科:住民移転は大変な話なので、アセスとは違う次元の話だ。

JBIC他国でもそのような国は多いと思う門間:形式的に環境アセスメントを要求しても、その中に何も触れていない場合がありうる。そのとき別途その影響を求めるという趣旨なら、この書き方では何もしないように見えるので、それを明文できないか。

川崎:「さらに」の部分、環境アセスメント報告書に非自発的住民移転についての記述が含まれていない場合には、別途提出を求めるということを注にすればよいのでは。

松本郁:一番懸念されるのは、環境アセスメント報告書の提出が義務付けられないと、アセスメントで重要とされる手続きが、非自発的移住の計画書の中で全部抜けてしまうことだ。その計画書に手続きが確保されることが入っていれば心配ないが。

JBICわかった。理解に相違はないので、検討したい。

寺田:根本的なことだが、ここの環境アセスメント報告書は当該国の法令に基づいた環境アセスメント報告書という意味なのか。もっと広い意味なら、別に当該国の法令でアセスメントが義務付けられていなくとも、そのような案件では実査をやらせればよい。住民移転だけが問題になるなら、住民移転のみにスコープを絞ってやればよい。

JBIC我々が入っていくタイミングの時には環境アセスメントが終わっている場合が多い。終わっている場合は、当然のことながら現地の制度に基づいて行われている。

原科:これからは終わる前に事前に情報提供をし、そこをrequireするのではないのか。

JBIC現地の制度に則ったものでなければ現地の承認がおりない。まず現地の手続があるので、それを変更しないとこちらのrequirementに対応できない国もある

原科:自主的に作るならいいのでは。

JBIC現地の制度に基づくものと、我々が形式にこだわるあまり、もう一つ別のものを作れということになってしまう。できるだけ現地の制度に則った形で実質を確保するのが大事だ。

原科:現地の制度プラスアルファの内容でいいのではないか。

川崎:ここの環境アセスメント報告書は現地の法令に基づくアセスメント報告書という意味なのだろう。自主的にやるものは含まれていない。

JBICそうだ。現地のもので不足があれば、別途補足的にやってもらう必要がある。全く別の新しいものを作る必要はない。

川崎:この報告書は現地の法令にしたがった範囲のもので、その場合、住民移転について全く書いてないものもありえるので、別途聞かなければならないという意味だろう。

JBICご指摘は、報告書だけ出ればよいのでなく、むしろ住民の合意を得る等のプロセスが大事ということだろう。それについては、付属書(1)非自発的移住で、なるべく回避すること、合意をして対策をとること、生活の手当てなどをやるよう書いている。「計画等」の「等」は、計画だけでなく、どのようなプロセスかも含め情報をもらい見ていくという意味合いで書いている。

門間:この場合、要件は書いているが、手続きは抜けている。一つの手は、注で、カテゴリAとなる要件が大規模非自発的住民移転のみである場合には、○○の基準を満たすものとし、報告書を出させる、別途報告書を出させると書けばいいのでは。

松本郁:それより、元々の原則論に戻り、国のアセスメントで非自発的移住がカバーされていなければ、JBICが要求するカテゴリAの環境アセスメント報告書の要件を満たしていないので、満たしていないところを追加的に調査してもらい提出してもらうことにするとするべきだ。

JBICここの注書きは、EIAのスコープとして、住民移転を含んでいない国もあるという話だ。

川崎:当該国の法令に基づく「環境アセスメント報告書」には出てこないので、こちらの国の法令を真似て環境アセスメントにこれを入れろというのは言いすぎだろう。その報告書には入っていないが、別途、必要な情報は求める形になるだろう。トータルで情報がカバーされているならいいのか。

松本郁:手続きが確保されていなければならない。例えば、その国で環境アセスメントと呼ばないものかもしれないが、JBICが要求している環境アセスメント報告書と呼ぶものの要件がその報告書の中に入っていないと困る。

JBICそれはわかる。ここは誤解を避けたいだけなので、趣旨は全く同じだ。言い方を考えたい。

川崎:本文を「プロジェクトに関する環境アセスメント報告書を求める」と止め、注を「環境アセスメント報告書の中に住民移転に関する情報が一切含まれない場合には、住民移転に係る基本計画等の手続きの提出を求める」とすればよいのでは。

松本郁:基本計画が、例えば、実施されている国での公用語または使用される言語で書かれていなければならないなど、何を満たしていなくてはいけないのか書かれた方がよい。

JBIC今の案は、そのようなことを含めるようにということだろう。

川崎:基本計画書の中には、○○が入っていることと書いてもよい。

JBIC大事なことは、実質的に同じことをやらなくてはいけないということ。

門間:○○に準じた計画書を提出するなど、同じことを自主的にさせるという考えだろう。

川崎:法律上、EIAと呼ばない国は、むしろ、違うもので出してもらった方がよい。

本山:例えば、世銀が融資するとき、その国でEIAと呼ぶものがない場合に、世銀は世銀のいうEIAを満たすものを作らせるが、JBICはそれはできないということか。

門間:環境アセスメントの定義が世銀とここでは違う。世銀の場合は、その国のアセスメントを言っていないが、ここでは当該国のアセスメントとしている。

川崎:JBICが相手国の環境アセスメント法の中身まで変えさせて、今後、環境アセスメントではこのような要件で出せと、そうでなければ検討しないという権限はないのでないか。

JBIC世銀でも住民移転は別枠になっている。

川崎:相手のものは相手のもので出してもらい、ただし、JBICの基準に照らして不足しているものは別途出してもらえばよいのでないか。

門間:同じような手続きで出してもらえばよい。

原科:では、議論を踏まえて変えていただきたい。

松本悟:丁寧に書いていただきたい。

本山:次の質問だが、提言p.11「本ガイドラインに示す要件を満たした、事業に関する環境アセスメント報告書が提出されなければならない。」が付属書(2)「以下の項目がみたされていることを原則とする。」となっているのも同じ理由か。

JBIC違う。カテゴリAの中でセクターがたくさんある。例えば、砂漠の中で工業団地やプラントを作るとき、排出基準が守られているかはチェックするが、住民移転も何もない場合に、ステークホルダーとの協議などをフルでやっていなくてもよいケースがありうる。プロジェクトの影響の度合いにより、ここに書いてある全てが満たされなくてはならないということではない。よって、「原則」とした。

門間:「原則」と書かない場合、具体的に何が問題なのか。

JBIC事業の特性に基づけば、全く必要のないところまで含まれる可能性がある。

本山:付属書(2)の最後「別表に示す事項が記述されていることが望ましい」という扱いは、もちろん、irrelevantなものは扱わなくてよいからわかる。ここの「原則」というのは、基本的には全部見るということか。

JBICそうだ。ただ、カテゴリAになるものも幅が広い。借入人からすれば金もかかるし、これを全部やるということまでは難しいのではないかということで、プロジェクトに応じたという意味合いで「原則」とつけた。

寺田:環境アセスメント報告書は当該国の法令に基づいて作られたものという定義だったが、付属書(2)を参照すると、本当にそうなのかと思うのだが。論理矛盾ではないか。

JBIC相手国の環境アセスメント制度があり、その中で抜けているものがあれば、スコーピングの中で入れてもらうという意味合いだ。

寺田:この点は整理が必要だろう。

門間:言葉の定義の明確化が必要だ。

川崎:各国が自主的にという意味か。

JBIC相手国の現制度の中で、運用上、これを入れることができるなら、ぜひやってほしいということは言えるだろう。

門間:各国における環境アセスメント報告書が付属書(2)の要件を満たさない場合は、なるべくそういうものを折込んだものを別途出してくれという趣旨か。

JBIC報告書に入っていなければ、その部分を追加的に取るということ。

門間:それが必ずしも明確にされていないので、どこかに書いた方がいい。

川崎:必ず取るとすると、付属書に書いたものが一項目でも欠けた場合、絶対にJBICが検討できないとなるのもいかがか。

JBICプロジェクトの中身に応じて、本当にそこまで必要か判断する。どうしても足りなければ追加的に求めるケースもある。EIAの中で住民の合意形成が十分にできてない場合などは、円借款の場合SAPROFで不足する部分を支援するケースもある。

前田:ECGのコモン・アプローチ付属書I”illustrative” listより「原則として」は強い。企業からは強過ぎるという意見もあるだろうが。

JBIC実際、そのような意見は既に出ている。

原科:「原則」であることをここで確認しなくてはいけない。

松本郁:プロジェクトが実施される国において、環境アセスメント報告書が公開されなくてもよいのか。

JBIC相手国に対し公開するよう働きかける。相手国が公開しないということになっている場合、国の制度を変えろとは言えない。

門間:それで、あきらめる国もあるだろう。「原則」としているのは、相手国の制度を変えさせるということではない。そのような融資等は慎重に考える、ということだ。

JBIC相手国の法律を変えることは実質的に無理なので、同様のことを実質的に確保できるようにしたい。

松本郁:影響が後でわかる場合があるので、提言では、事前に環境アセスメント報告書を公開し、意見ももらおうということにした。公開する、しないよりも、実質的に地域住民等に説明されていることを確保することが重要。

JBIC付属書(23つ目の「環境アセスメント報告書あるいはその概要等は、地域住民等も含め、プロジェクトが実施される国において公開されて」で、「概要等」に関する質問があった。これは、以前申し上げた中国やベトナムに加え、タイやインドネシア、チュニジアなど、環境アセスメント最終報告書を国の制度上公開してない国があるからだ。ただ、そのような国でも現地の住民に対し、概要などを公開し説明している。報告書そのものが公開できない国の報告書を我々が公開するのは抵抗があるので、住民に公開している概要書のようなものを出してもらい、それを我々は公開するということ。報告書そのものの公開も重要とは思うが、住民にちゃんと説明しているということがより重要だと考える。もちろん我々は現地で公開されていない報告書でも、これに基づきレビューをする。

 

松本悟:程度によってはまずいわけだ。

JBICEIAとしてプロジェクトのスペックや立地などビジネス・コンフィデンシャリティーを含むものを出させる国がある。我が国で言うEIAF/Sを合わせたようなものだ。だから、これは地域住民には公開していない。だから、言葉として明確に分けた。概要といっても十分な情報を持つものだ。

松本郁:概要だけ出せばいいということにはならないか。

松本悟:カテゴリAの場合、環境アセスメント報告書をJBICが公開することを保証するということは研究会でも議論したことだが。

JBIC現地でEIAが公開されておらず、使われているのがEIAのサマリーの場合、こちらが作ってくれと言う問題ではない。

寺田:JBICとしては現地の制度に則って作成されたものをもって「環境アセスメント報告書」とみるようだが、そもそも現地の制度と言っても、おっしゃるように多岐に渡っており、これには無理がある。JBICとして何を求めるのか、何をもって「環境アセスメント報告書」とみなすのか、から考え直すべきではないか。JBICがお金を貸す時に何を判断材料として貸しているのかを公開するのが原則だろう。

JBIC我々は確実な配慮確認のためにはビジネス・コンフィデンシャリティーの情報を含めより多くの情報を求めることがある。F/Sを見せてもらう場合もある。「原則」というのはそのようなことを想定したもの。判断材料としたもの総てを公開せよというのでは、我々がF/SF/Sを含んだ形での提出用EIAを見てはいけないということにもなりかねない。

寺田:それはJBICの裁量の範囲ではないか。

門間:ドラフト案p.142パラ「概要等」とは違うということか。

寺田:同じ「概要等」で、違う意味の「概要」を言うのはいかがか。

松本郁:提言p.12の最後から2つ目で述べてある通り、JBICがカテゴリA案件を判断する元の材料をきちんと公開することは保証されていなければならない。

原科:それは大事なポイントだ。

本山:現地で公開されたものが環境アセスメント報告書だというのは問題。JIBCが最低限必要とする環境アセスメント報告書は、途上国でオーソライズされたものであるが、現地で公開されていないものもあるだろう。研究会での議論は、現地におけるアセスメント手続きを踏んでいればそれだけでよいということではなかったはずだ。

JBICいずれにせよ、住民説明のためのEIAはあっても、承認のための環境アセスメント報告書を制度上現地で公開できない国をどうするのかというのが問題だろう。

JBICJBICが環境アセスメント報告書を公開することと、その当該国が公開することとは別の話だ。

寺田:公開しないという制度は、公開を禁止するという制度ではない。環境アセスメント報告書を公開することをこちらはあらかじめ言っておき、当該国は自分達の権利で環境アセスメント報告書をこちらに持ってくるかを決める。こちらは持ってきたものは公開する。公開できないような環境アセスメント報告書なら、お金を貸さないと言えばよい。これは強制ではない。

松本悟:環境アセスメント報告書を出すかは向こうの選択ということだ。

JBIC民間企業は、F/Sは公開しない。また、企業機密や相手国の国防上重要な情報を出すわけにはいかない。

松本悟:国防上の地図などの話をしているのではない。原則論の話だ。

JBIC原則論としても、このワーディングではだめなのか。日本でも環境省はEIAの他に情報を提出してもらうのではないか。

寺田:日本国内のアセス手続きでも、事業のスペック、立地などビジネス上の秘密事項について環境アセスメント報告書に入れることもないし、入っていないからと言って入れろという話にもならない。

JBICしかし、国によっては、日本とは異なりある国では、スペックやレイアウトも含んだEIAを出してもらうこともある。それを日本では公表できない国もある。

JBICその国の制度に引きずられることもあると制度論の話になるが、環境アセスメント報告書は公開できないが、それに該当するものを概要と呼んで公開している国のものをはねるのかという話になる。そちらの懸念は、それが抜け道になるのではないかということだろう。

門間:JBICが必要な環境アセスメント報告書が公開されればよい。それが根本だ。ここでいう環境アセスメント報告書の定義がどのようなものであれ、一定のものが公開されるということではないか。JBICが原則必要だと書いてあることが重要。世銀は必要なものをすべて強制している。私自身も定義を混ぜていたように思うが、やはり根源的な問題は先ほど寺田さんのおっしゃっていた「環境影響評価書」の定義を各国に任せてしまっているところにあるように思う。
原科:周知期間を設けるのは、その必要なものを知らせるためだろう。

川崎:環境アセスメント制度がない国の場合は、相手国の法律を変えるのでないことはともかくとしても、その案件の審査も検討もできないということになるのか。

前田:EIAの定義については、研究会でも相当議論を行った。ここで再度、EIAの定義の議論をreopenすることは非効率である。公開の話では手続が重要。第2パラで、EIAの概要等を地域の言語などで公開することにしたのは、EIA全文を現地語で書くことまでは求めないという趣旨であった。問題は、第3パラで「概要等」と同じ用語を用いていることである。ビジネス・コンフィデンシャリティーを環境アセスメント報告書とF/Sからはずすのは、情報公開法に触れない。研究会でもたくさん議論してきたところだ。ビジネス慣行の範囲だ。ビジネス・コンフィデンシャリティーの話を入れてしまったので、今混乱してしまう。「概要等」という文言はとってしまい、ビジネス・コンフィデンシャリティーは別途説明すればよい。

川崎:3パラで、環境アセスメント報告書等々のもので、JBICの求める十分なものということにして大丈夫か。実務の面で、ODAOOFは違うかもしれないが。JBICで徴求したものを公開する、ということはJBICとしてはそれでいいのか。

前田:世銀は全て義務化しているかもしれないが、第5パラ「望ましい」ということでは提言のままになっているので問題ない。ただ、第3パラ「概要等」と入っているのが問題なので削る。そして、ビジネス・コンフィデンシャリティーを別途記述するのがよい。

JBIC「概要等」という言葉の問題だけだろう。途上国で実質的に公開されているものをこちらも公開すればよいのだろう。

松本郁:そうではない。相手国で公開されているものだけでは十分でない場合がある。ビジネス・コンフィデンシャリティーに関わるものをJBICが省くのはいいが、JBICが融資等の判断の際に使う情報が当該国でも公開されていないことには意味がない。

JBIC承認のためのEIAは公開出来ない国があるが、その場合には住民説明用がある。実質的に同じもの、相当するものでもいいのでは。色々と調べていくうちに、一般論の環境アセスメント報告書と言った場合、それがマジョリティーでない可能性が出てきたので、言葉を追加した。

門間:JBICの定義する「環境影響評価書」を相手に求めればよいということか。

JBICこの点はまた検討したい。

松本郁:議論の進め方だが、まだ、付属書の全体としての在り方、情報公開、第三者委員会の3つの柱について、全く議論がなされていない。

JBIC一通りやることは無理か。JBICとしては、早期にパブリックコメントにかけ、より開かれたプロセスで議論を深めることが重要と考えており、この委員会での議論のためにパブリックコメントが開始できなかったり、パブリックコメントの期間が短くなることは避けたい。一通りコメントを頂いて、大事なポイントは議論し、反映できることは反映し、早くパブリックコメントにかけたい。パブリック・コメント期間中に並行して議論を継続することには異存ない。

川崎:次回の議題設定をすればよい。対照表p.5の残りのカテゴリFIなどをやり、メインの議題をp.6からの情報公開にしてはいかがか。

原科:そうすることとしたい。

 

次回の予定1214日(金)午後5時〜9時(延長の場合もあり。)