国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会 第5

議事録

 

日時:20001218日(月)午後5時〜7

場所:国際協力銀行9階 大会議室

出席者:

メンバー(敬称略、アイウエオ順)

 入柿 秀俊/国際協力銀行開発業務部企画課長

 大村 卓/環境庁地球環境部環境協力室室長補佐

 木原 隆司/大蔵省国際局開発企画官

 小林 香/大蔵省国際局開発政策課課長補佐

 作本 直行/アジア経済研究所経済協力研究部主任研究員

 原科 幸彦/東京工業大学大学院・総合理工学研究科教授

 本郷 尚/国際協力銀行環境社会開発室第1班課長

 前田 匡史/国際協力銀行金融業務部企画課長

 松本 郁子/地球の友ジャパン

 松本 悟/メコン・ウォッチ

 森 尚樹/国際協力銀行環境社会開発室第2班課長

 柳 憲一郎/明海大学不動産学部教授

オブザーバー:(敬称略、アイウエオ順)

 加藤 隆宏/大蔵省国際局管理係兼環境調整係長

 中舘 克彦/国際協力銀行開発業務部企画課調査役

 三好 裕子/国際協力銀行金融業務部企画課調査役

 本山 央子/地球の友ジャパン

議事録作成:

 坂本 有希、畠中 エルザ、大森 明/(財)地球・人間環境フォーラム

 

<環境アセスメントにおけるJBICの要求・関与の現状について>

森:資料の形式は前回の大村さんのに倣って項目に分けた。私からの説明の後に本郷課長に付け加えていただきたい。<「環境アセスメントのエレメントと本行の環境ガイドラインにおいて要求・関与するべき事項の検討(案)」に沿って説明>

本郷:今まで大村さんにいただいたコメントの項目は多岐に渡り、議論もされていない箇所があって、また、我々のコメントの意味を誤解されている場合もあったように思う。そこで少し大胆かとは思ったが、このような資料を今回は用意した。我々が力を入れたのは、議論がすでにあった前半の箇所である。資料の中身に関しては例えば最近EBRD(欧州復興開発銀行)の環境チームとの会合を持ったが、どこまで借入人に影響力を行使できるかという点について彼らとの常識の違いを痛感している。例えばEBRDでは早期の段階からかなり強いことが言える。EBRDが国際機関であり、またリスクの高いプロジェクトで、相手側がEBRDに頼らざるを得ないという状況下だからこそ、極端なことを言うと、EIAをどのようにやるかまで口を出せるのだ。ところがJBICの国際金融等業務においては、ほとんどのEIAは作成・承認を経た段階で、我々がそのEIAの内容を調査するという状況が一般的だ。その段階でEIAの中身について変更すべきである等口を出すのはどの程度効果があるのかかなり疑問だ。むしろ追加的に必要と判断した場合に、別途当事者と話し合いを持つという形にしており、国際機関との大きな差がある。

資料の国際金融等業務のスクリーニングの項目では「正式な融資要請がなされない段階での協議には限界あり」と否定的な書き方だが、実際は内談時のアドバイスは行っている。ガイドラインにおける明示方法が問題だ。

関係者との協議の項目では、「協議」と「情報提供」の言葉の違いは注意を要する。「協議」は「情報提供」を含むと思うが「協議」という金融用語を使う場合、相手側の承認まで含むので、実現は難しい。

柳:EBRDJBICの国際金融等業務の立場の違いを言われたが、融資者の責任(lender's liability)という観点からは、関わっていくタイミングとの関係で古参のEBRDとは責任が違うとJBICは捉えてらっしゃるとの認識でよいだろうか。

本郷:JBICの責任が軽いと言っているつもりはなく、誤解を恐れずに言うと、EBRDのような国際機関はlenderでありつつも、ownerやスポンサーのような役割を果たしていると感じている。

柳:EBRDJBICも、問題が発生したら第三者に責任を問われる、という意味では、立場は同じなのではないか?

本郷:批判を受ける可能性があるという点では実はそうなのかもしれない。ツールや手段の違いを強調したい。

木原:輸出信用等の国際金融等業務での関与のタイミングがEIAができた後と遅くなるのは理解できるが、円借款の場合は、EBRDのように事前にEIAの作成等から関与できるのか。

森:通常はF/S(実行可能性調査)の段階でEIA調査が実施され、このためEIA作成段階から関与することはないが、SAPROF(案件形成促進調査)などのように問題のある案件については注意深くみる。または詳細設計を支援するE/S借款などを使って、本体事業の前にEIAの不足を補うことがある。

入柿:JICA(国際協力事業団)で問題とされているように、F/Sに基づく責任と同様の責任をJBICが負うということになると問題である。EIAの第一義的責任は相手国にある。

松本(郁):SAPROF案件は年に何件ですか?

森:1520件です。年間承諾件数全体が100件ほどなので、2割位です。

大村:今のは環境アセスメントの補完としてのSAPROFは何件かという趣旨の質問だと思います。

松本(郁):そうです。

森:環境問題のみを対象としたものは限られて来る。ただし、最近ではほとんどのSAPROFにおいて環境アセスメントのレビューというものをTORに含めている状況である。

入柿:本格的にアセスを肩代わりするスキームもあったが、JBICがアセスメントの責任を負うことになる問題もあって踏み切れなかった。

松本(郁):先ほどの問題の内容があまりよくわからなかったが。

入柿:lenderではなく環境アセスメント調査者としての責任を問われてしまうということだ。

松本(郁):環境アセスメントについてゼロからやり直すのではなく、追加的なものか。その時に責任を共有するというのは難しいということか。

入柿:共有ではなく、追加的なところに関して、フルに責任を負うことになるということだ。

松本(郁):それは計画の見直しには踏み込めないことになるのか。

入柿:いえ、踏み込める。ただ追加的見直しになる。

本郷:EIAそのものを行った場合lenderを超えてownerとしての責任範囲になってしまう。

原科:費用負担だけ行って、相手国に任せるというのは可能か?

入柿:そこをやりたいのですが、調査のためだけの無償資金供与には今のシステムではツールがない。

作本:国際金融等業務の方で有償では可能か?

入柿:有償ならば円借款の中でやることになる。設計の段階で合わせて環境アセスをやってもらうのはすでに海外経済協力業務でやっている。

本郷:国際金融等業務ではlendersponsorの利害の対立に注意していかないといけない。これは融資段階でもあることだ。

入柿:そこまで今は考えていない。

作本:円借款なのか輸出信用なのかの質的な違いに関わる部分である。lenderの責任として契約の成立前にどこまで踏み込むか否かが重要だ。それに関して環境配慮の開始時期が問題となるわけですね?

 

前田:むしろ逆で、環境配慮の開始時期は、融資の形態によって決定付けられる。しかし今の議論はそういうことではなく、SAPROFは予算上では調査委託費という融資以外の部分である。独立させて融資の前段まで踏み込んで調査をやれないのかという話だ。そうなると何のためにやっていて、調査の結果のオーナーシップは誰にあるのかという問題が生じる。それに対し、今のお話は、元のEIAを完全に見直すということではなく補うのをサポートするということだ。

松本(郁):JICAの話は意味がよくわからないが。

入柿:JICAは契約上ではブロックしていると思うが、JBICでもSAPROFで調査者としての責任を問われるという同じ問題を抱えているということだ。

大村:JICAと円借款の話は全く別のもので、JICAは調査者としての責任を負わない仕組みになっている。もしJBICが同じことをやろうとしたら同様の問題が発生するわけです。

柳:調査を実施すると、その調査結果について瑕疵担保責任を問われることになる。今の話は、JICAでは瑕疵担保責任を問われないように特約を契約に入れているということだ。ECGでの議論について>

前田:ECGの議論がある」と資料「環境アセスメントのエレメントと本行の環境ガイドラインにおいて要求・関与するべき事項の検討(案)」に多いので、補足したい。

ECGの議論では、スコーピングの影響項目に関してはセクターと地理的要因をより明確にしようという日本からの提案があった。関係者との協議の項目では、事務局のペーパーではスコーピングの項目になっていたが、それをアセスメントの項目にすべきとの議論があった。住民協議を義務にするのは反対意見が多い。EIAの公開については、そもそもどういう場合にEIAを要求するのかの議論が終わっていないので意見は割れている。

柳:JBICの議論をECGの議論へ収斂させようとしているのか。ECGは大国もあれば小国もあり、ODA(政府開発援助)でやるのとはスケールが違う。従来の議論と同様になってしまわないか。

前田:ECG会合の結論は来年のサミットまでのG8諸国の共通のガイドラインの策定、それ以外の国は年末までに共通のアプローチを作るということだ。今の段階でそれが代わり映えのしないものになるかはまだわからない。JBICを代表した意見は言えないが、個人的には、ECGでは輸出信用という限られた範囲しかカバーしないので、アンタイドローンや円借款など、JBICのすべての業務範囲での議論が完全にそれに引きずられることはないと思っている。輸出信用でlevel playing field(競争条件が平準化された土俵)を確保するということが、race to the bottom((下方への競争)にならないようにと思っている。ECAグループの議論が「競争条件の平準化」に終始して済まされる時代ではない。公的資金を使っているのだから環境への配慮のように重大なことは仲間うちだけで同じ事を言っているというのでは許されないと思っている。

輸出信用と開発援助という二つの業務を持つJBICはこれからはそういう議論をリードしていきたい。ただしECGのような場で自分たちが援助機関と同じだと声高に叫んでも相手にされないので、徐々に議論を誘導していきたい。ただ日本はこうした国際会議の場で議論する術にたけていないということもあり、本来発言すべきところを発言できない国内のしがらみもあったりするので、そこは段階的に行いたい。アメリカは強い主張をするが孤立している現状があり、これを緩和するには何ができるか、という方向で我々は動いている。したがってECGの議論を言い訳にして低い方に合わせようというのは私個人は全くない。

原科:ECGの議論をリードしていこうということですね。

前田:発言だけが働きかける方法ではない。世界ダム委員会(World Commission on Dams)の発表が好評だったのでみたように、NGOなど色々なルートを通して働きかけていく立場だと思っている。日本と言っても色々な意見を持った人の寄り合い所帯ですので、そこでコンセンサスを得ようとすると、リードをまずなかなか取れない。どうやってそこを両立させるかが私どもの難しいところなんですが。

原科:JICAでも日本がリードする役割を担いたいという話がある。

 

<関係者との協議及びステークホルダーの特定について>

前田:「関係者との協議」の項目で、誰の情報をもとにレビューをするかきちんと借入国とはっきりと共有しておく必要がある。情報源としてステークホルダーからall relevant information(関係のあるすべての情報)を聴取してそれをもとに議論をするというのは相手にとってもleverage(影響力になると思っている。借入国や輸出者からだけの情報に頼るとどの情報がrelevantなのかわからない可能性があるが、その責任をとるのがlenderや保険機関になってしまうケースも出てくる。

「協議」という言葉をめぐっての議論があったが、「協議」とするのは技術的に難しいと思う。「情報交換」「情報ソース」「情報収集」など我々が判断をするときに依拠すべき情報だと我々が認定し、相手方もその認識でやる、ということ大事だ。

原科:「情報収集」だけだと相互性を感じない。「意見交換」くらいの文言でないと一方的だ。

前田:そうですね。これはdue process(適正手続き)の責任を果たすと同時にその情報もインプットしてレビューに役立てるということがないとどこかで間違って結果責任を問われるわけだ。

原科:「協議」という文言は確かに厳しいかもしれない。

本郷:英語にそのまま訳して「consultation」にしてしまうと皆びっくりしてしまう。

前田:ECGはコンセンサスの世界だ。

原科:機能的には「情報交換」、「情報交流」とした方がいいかもしれない。

前田:あまりショッキングな言葉を使うと誰も相手にしなくなってしまう。むしろ広く捉えられる言葉に要素を加えて、アップグレードしていくしかないと思っている。

モニタリングの項目だが、ECAbuyerに対してleverage(影響力)を有するのは輸出品目のdelivery(引渡し)をもって終了するはずだと言っている国もある。したがってモニタリングもできない、と。社会影響の軽減はECAmandate外だとする意見が多い。

松本(郁):社会影響の軽減を図るのもmandate外ということか。

前田:そういう国は有力国含め複数国ある。

大村:環境に関するガイドラインの目的から社会影響をはずすということか。

前田:通っているわけではないが、そう主張する国は複数国ある。

大村:資料「環境アセスメントのエレメントと本行の環境ガイドラインにおいて要求・関与するべき事項の検討(案)」を作成していただいて議論が整理しやすくなったと思う。2ページ目のスコーピングに「チェック項目については大きな乖離はない」とあるが、具体的にはJBICとしての環境審査のところで議論を深めねばならないところだと思う。二つの業務の整合性を持たせるだけでなく、地球環境、有害化学物質などの内容の検討ももう少しすべきだと思う。

「関係者との協議」について質問です。関係者はステークホルダーの訳ですね。右に「関係者の特定がなされるべき旨言及するか」とあるが、これは「借入人に対してステークホルダーを言及すべきである」という一文をガイドラインに入れるべきかどうかという趣旨ですか?

さらに「法的権利を有しないグループは関係者に含まれるか」とあるが、これは当然含まれるのではないか。この記述をしたことに何か特別の理由があるのか。

森:我々のいうステークホルダーは不法住民などを含むが、国によっては認識が違う場合があるのでそのニュアンスを含めている。

本郷:排除するという趣旨ではない。

原科:歴史的に「ステークホルダー」とは紛争研究の分野で20年程前から使われて来た概念で、その問題に利害関係を有する多様な主体を指す。したがって、法的に権利を有していなくとも含まれるものである。だからそもそもがこのような議論にはならないものだと私は認識している。

本郷:しかし色々に使用されてきた経緯があるので、どこまで含めるのかが難しい。

入柿:強制執行をdue processの一つとすると、その人たちをどうするのかが問題だ。

作本:タイの例などをみると、法的権利を有することを条件にしていく方向ではない。

松本(悟):合法的に暮らしているという以外に、慣習法で土地や漁業権などを定めているところもある。世界的な流れとしては、「法的権利を有しないグループ」を排除する方向でないのは確実だ。

作本:インドネシアやマレーシア慣習法で生活している人は訴訟当事者になりきれない。オーストラリアの先住民の権利では、集団で法人化して権利の帰属先を確定する動きがある。

前田:事実として「影響を受ける人々」ということでステークホルダーの定義は十分なのだろう。

原科:ケース・バイ・ケースということになるのだろう。

大村:一番狭い定義は、法的権利を有するということになる。それがaffected people(影響を受ける人々)に広がり、最近ではNGO、専門家などの信頼できる情報を持っている人々を含める考え方となっている。プロセスの中でステークホルダーをきちんと特定することは必要であり、最初のスコーピングの段階で特定するのがアセスメントの流れである。初めに確定して、あとは合理的でなければ排除するということになる。

前田:個別の国の事情に関係なくそれは一般論として言われるのか。

大村:今の流れはそうだ。

本郷:同じ手続きをとってもどこまでステークホルダーに含めるかは、結果としては国によってかなり違いが出る。

大村:そうですね。世間的関心が小さければそれは立ち退き住民にだけになるだろうし、関心が高ければステークホルダーを広くとるということになる。

前田:ECGの原案では「The groups likely to be affected and representatives of non-governmental organizations as well as from the specialists responsible for the EIA」(影響を受ける可能性のある集団やNGOの代表、EIAを行った専門家)となっている。

入柿:景観等の問題で、国立公園、世界遺産に関わってくるとその範囲は広がり過ぎないか?

松本(郁):先住民族の権利についてはアセスメントとは別の項目を設けて、保護すべきではないか。

本郷:ステークホルダーを特定するプロセスを入れることが世界的な流れであると考える。ただどこまで関係者に含まれるのかというのは国によって、ケースによって違う。プロセスが同じでも結果は違う。アプリオリにやるのは難しい。

大村:二つのポイントがある。情報源としては幅広くとった方がいい。わが国のシステムでは、昔は影響住民との協議のみを義務とし、狭い範囲しかステークホルダーとして認めなかったが、今は全国からのコメントを認めている。1969年の米国のアセス法(NEPA)も同様だ。そうは言っても無限定に広いのは困る。国によって、ケースによって違うのはわかるが、JBICとしては、ステークホルダーであるかどうか審査をするということをガイドラインに書くことはできると思う。

原科:スコーピングの段階での情報収集、意見交換などと重なってくる。

木原:ある案件について、関係者という認識のある方は、一定期間内に意見を寄せてもらい、関係者の特定基準に照らしてみていくということか。

大村:先に調査対象を特定しているのは見たことがない。最終的にEIAの中で示されているだけだ。

原科:日本のアセス法によるスコーピングは、新しくできた制度であり十分ではない。アセス先進国におけるスコーピングでは、最初の段階の情報提供はinitial noteと言い、非常に簡単なメモのようなものである。この情報を提供した上で、スコーピングミーティングという会議の場で検討を行ってゆく。

本郷:確認ですが、今の話は借入人が行うスコーピングというより、融資機関側の環境配慮の確認の話ですよね。

原科:そういったプロセスを経たかどうかということである。

前田:evaluation(評価)の段でrelevantな情報として審査すると言っておくということですね。

入柿:しかし我々はそれだけでは済まされない。変わり得るシステムがあればNGOの方々等にご提案いただきたい。

松本(悟):現実にはそのようなコンサルテーションのプロセスが必要になる。これまで問題が起きているケースをみてみると、当事者の意見の吸収が不足していた例が多い。可能な範囲でそういう方向でガイドラインには入れてもらいたい。

本郷:どこまで貸手が行うのか。JBICは今アセスメントを直接やっているわけではないが、事業者と同様の協議をやるべきということか?

松本(悟):違うと思う。審査の話は置いておいて、事業者に関しては、この段で協議の必要性を盛り込むべきだと思う。

本郷:パラレルに動くものなので訊いた。

松本(郁):関連するが、国際金融等業務ではEIAがすでに行われてから確認する場合が多いということだが、IFC(国際金融公社)が定めているように事業者が行うEIAが不十分な場合は見直すというのは、事業者のアセスメントがきちんと行われているのなら二度やる必要はないということだろう。しかし、レポートだけでは確認できないことも多いし、影響が大きいと考えられる場合は融資機関が協議を自らやった方がよいと思う。また情報公開という点からはJBICが融資を検討している段階で、JBICの責任範囲での公開が必要とされると思われる。その後の協議もどのようにするかの情報がないと、いつ情報提供したらいいかわからないし意見交換もできない。事業者に求めるEIAに加えてこれらが行われないと、今まで起こったようなことは防いでいけないと思う。

前田:今の話で、融資の段でJBICに公開を求めているのは何か。

本山:第一義的にEIAだと思う。スコーピングのところでお聞きしたかったが、実はケースとしてはステークホルダーが見落とされることが多い。最初に特定された人と実際の影響を受けた人のズレなどステークホルダーが特定されたことによって生じた問題は実は多い。

前田:確認ですが、EIAの公開、ステークホルダーとの情報交換をすべき、とガイドラインに書くということですね。EIAは相手側であれJBICであれ公開をする。ただしオーナーシップは相手にあるので、公開しないものは不十分であるということにする。さらにステークホルダーの範囲を確認する。それを審査の過程として公開しようということだ。

原科:協議の過程を文書に残すはずなので、EIA全体のプロセスを公開すべき。アセスは本来、事業の必要性、科学的妥当性、社会的公正性を示すプロセスであることから、これらについての検討過程を文書として記録しなければならない。

前田:IFCではそのように途中段階の、今までは非公開だったような箇所まで公開しているのか?

松本(郁):それはない。今、NGOから要望が出されているところである。

原科:ケース・バイ・ケースではプロセスの公開は行われている。例えば、メキシコにおける水資源管理計画への世銀融資の例がある。この場合には、地域住民に対する計画のコンサルテーションが世銀の基準に合っていなかったので融資を保留した。JBICとしてはECGの議論をリードしてやっていくんだというのであれば、EIAプロセスの段階の公開は非常に好ましいと思う。

前田:EIAの公開はすべきであるのはわかる。ただ審査までの段階を公開するのか、そこまで明記しているガイドラインの例はあるのか、という質問だったつもりだ。ケース・バイ・ケースというのはわからない。審査の過程を公開することは、金融機関としては機密性の観点からどうやるのかと思う。

作本:融資決定後に環境を理由にストップをかけることがあまりにリスクが大きいということならば、計画アセスのように、できるだけ早い時期の審査段階にどうにか公表することはできないのか。

前田:そこまで金融機関は大きなリスクでやりたくない。

大村:資料「各援助機関・輸出信用機関の環境配慮の確認手続き(作業中・未定稿・第1版)1218日研究会用」を見ていただくと、IFCはレビュー結果を修正するということではないが、理事会に住民意見が届く制度を作っているし、米輸銀では相手方のアセス書が出て融資申請が行われた段階で公開をする。融資機関としてのリスクを下げるために、審査中も情報を受け付けている。

本郷:本山さんに質問だが、後からステークホルダーが出てきてしまうのを防ぐためにEIAを公開するというのは遅くはないか。本来は、きちんとしたEIA制度が行われていれば、事業者が関係者の了解を得て、その報告を我々は受ける。その上で融資を検討する時に、EIA以外の事項について紛争中のことがあった、ということが公開によってわかるかもしれない。ステークホルダーがEIAを見て初めてその中で問題に気付くというのを狙っているわけではない。

松本(郁):EIA公開もあるが、それ以外にJBICとして融資を検討した時点での案件リストを出すというのもあり得る。EIAの公開では遅すぎたとしてもEIAを見れば影響の大きさはわかる。含まれていないものがあれば、情報提供は可能だ。

本郷:問題があるのになかったと報告を受けた場合などは、他から情報をいただいて問題が明らかになる。

前田:時間になりましたので、今回はこれで終わります。

 

 

次回は200119日(火)午後5時〜

JBIC−情報公開・協議の手続き・プロセスの現状説明

松本(郁)−環境配慮手続きの確認

次次回は2001122日(月)午後5時〜