国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会 第6

議事録

 

日時:200119日(火)午後5時〜7時半

場所:国際協力銀行9階 大会議室

出席者:

メンバー(敬称略、アイウエオ順)

 伊藤 美月/外務省経済協力局有償資金協力課

 入柿 秀俊/国際協力銀行開発業務部企画課長

 大村 卓/環境省地球環境局環境協力室室長補佐

 小川 晃範/環境省地球環境局環境協力室室長

 加藤 隆宏/財務省国際局開発政策課係長

 北野 充/外務省経済協力局有償資金協力課長

 木原 隆司/財務省国際局開発企画官

 小林 香/財務省国際局開発政策課課長補佐

 清野 達男/環境庁地球環境部環境協力室技術協力第1係長

 原科 幸彦/東京工業大学大学院・総合理工学研究科教授

本郷 尚/国際協力銀行環境社会開発室第1班課長

 前田 匡史/国際協力銀行金融業務部企画課長

 松本 郁子/地球の友ジャパン

 松本 悟/メコン・ウォッチ

 本山 央子/地球の友ジャパン

 森 尚樹/国際協力銀行環境社会開発室第2班課長

当日参加者:

 天野 裕子/国際協力銀行開発業務部企画課係員

 中舘 克彦/国際協力銀行開発業務部企画課調査役

 三好 裕子/国際協力銀行金融業務部企画課調査役

議事録作成:

 坂本 有希、畠中 エルザ、大河内 淑恵/(財)地球・人間環境フォーラム

 

JBICにおける環境配慮確認の流れについて>

前田:<資料「国際金融等業務における環境配慮確認の流れ」に沿って説明>

資料「国際金融等業務における環境配慮確認の流れ」は時系列で並んでいる。1頁目の借入人からの融資要請は円借款の正式な融資要請というよりapplication(応募)のようなものである。表下の最初の役員会は方針を決め、融資条件を決める交渉を行う権限を付与する。次の役員会は、交渉がまとまった時に貸付契約の調印直前のものである。2頁目<輸出金融>の図はapplicationのかなり前の段階からのものである。図右の融資要請が先ほど申し上げたapplicationである。3頁目の投資金融は、輸出金融より若干融資要請が早いと言える。4頁目のアンタイドローンは投資金融とほぼ同じである。したがって、JBICの関与の仕方、特にタイミング、どれだけ直接的に関わるかの観点からは、輸出金融は投資金融及びアンタイドローンに比べて一番遠いということがわかる。

森:資料<「円借款プロジェクトサイクルにおける環境配慮」に沿って説明>

2頁目JBIC開発各部におけるアプレイザル前資料作成は、ABC分類、想定される環境問題の内容、環境保全対策の内容、モニタリング体制について開発部がF/SEIAレポート等をもとに作成する。国際金融等業務との大きな違いは、関与のタイミングと審査の主体の2点にある。タイミングについては要請の段階のみならず、その前や直前など、できるだけ早くに相手国の出そうとしている案件で環境影響が大きくなりそうなものに関してはEIAレポートを作るよう促したり、必要があればSAPROF(案件促進形成調査)などの形でサポートするツールを活用している。もう一点は、円借款では環境面に関するレビュー、ABC分類や環境問題の内容、対策、モニタリング体制がどうなっているかについては開発部が主体的に行い、それを環境社会室が再確認をすることである。関与のタイミングについては、資料1頁目に戻ると、準備段階のF/Sの作成で、JICA(国際協力事業団)が取り扱う案件の中で、将来的に円借款につながるような案件はJBICの環境ガイドラインにできるだけ沿う形でアセスメントをやってもらうなどの申し入れをJICAに対して行うなどやっている。

松本(悟):「国際金融等業務における環境配慮確認の流れ」の網掛けの部分(JBICによる環境配慮確認が必要と判断された場合)に入るかどうかはどのように決まるのか?

前田:基本的にはカテゴリ分類による。Aは必ず入り、Bについてはケース・バイ・ケースである。Bだが環境配慮が必要と環境社会室が判断した場合は含まれる。

松本(悟):現実的には、これは融資担当各部・環境社会室の協議で決めるのか?

本郷:環境社会室は環境リスクについて意見を述べる。それを受けて融資担当部が環境以外のリスクも勘案して判断する。

前田:融資担当部がアカウントを持っているが、審査部門では、環境問題については環境社会室、カントリーリスクについては国際審査部、企業リスクについては企業審査部が扱うという具合になっている。環境社会室と融資担当部、他の審査部と融資担当部との関係の違いは、環境社会室との関係においては環境ガイドラインという指針があるということだ。それに対し、他の審査部には指針がなく、各々の部の独自の判断を尊重することになる。環境問題に関しては借入人・実施主体とのインターフェイスが重要である。だから他の審査部と比べて融資担当部門の果たす役割が大きいと言える。したがってガイドラインを設けて融資部が恣意的に判断できないような仕組みにしている。円借款とアンタイドローンを比べると、円借款はJICA等他の機関の関与があるが、アンタイドローンの方は融資要請後になってはじめてどういう案件があるかわかる。

松本(郁):国際金融等業務におけるカテゴリ分類はリスク分析を環境社会室が行い、融資担当部が最終的にカテゴリを判断するのですね。

前田:はっきりした基準のあるガイドラインにしたがっていますので。カテゴリBについては網掛けの部分のように手続きをとるかは不明確なところがあるが。

松本:そういう場合は最終的に誰が結論を出すのか?

前田:融資担当部である。カテゴリBだが環境に与える影響が大きいかもしれないといったことは経験からわかるわけだが、その蓄積があるのは環境社会室なのでそういう場合は意見を述べる。JBIC内ではそれが専門的意見なのでよほどのことがなければその意見が尊重される。逆にその意見を容れないのならば、その説明責任は融資担当部が負うわけだ。そしてそれは困難だ。

木原:カテゴリBについても案件概要はすべて環境社会室に送られるのですか?

前田:そうです。

木原:その概要を見れば環境社会室は危ないか危なくないかはわかるのですか?

本郷:環境社会室がコメントをできるのに十分な情報は手に入ります。

松本(郁):カテゴリ分類は環境社会室を通って判断されるのですね。

原科:環境社会室のスタッフだけで判断し、他の専門家のアドバイスは求めないのか?

本郷:網掛け部分に入ると、相当な確率で専門家に頼む。網掛け部分に入るか否かの判断自体は必要に応じて専門家に連絡はとるが、本来そんなに専門的知識がなくてもよいかと思う。

原科:スタッフは何名ですか?

本郷:アシスタントを含め6人で分担している。

北野:網掛け部分の具体的なイメージだが、実質的・追加的な情報収集・調査は典型的にはどのようなタイムフレームで行うのか?相手国の協力は得られるのか?

前田:国による。実施主体の実績・ノウハウ、実施主体にどれだけ影響力を及ぼせるかにもよる。相手方の協力が得られない場合は、要件をみたさないことになり、applicationには応諾できないことになる。三峡ダムなどはその例だ。

本郷:タイムフレームに関しては網掛け部分に入るかどうかの判断は出来るだけ早く行うこととしている。輸出金融で考えると日本の企業はできるだけ早く動かないといけないし、網掛け部分自体に入ると時間がかかるので。問題となるのはカテゴリBだと思うが、セクターによって問題が起こりそうなものは経験的にわかっている。網掛け部分に入ってからの時間はケース・バイ・ケースだ。一般化はできないが12ヵ月で、難しい評価が必要になって来る場合や、案件の進捗に合わせて場合によってはさらに長くなることもある。

松本(郁):融資要請の後、ということはカテゴリ分類ではもうEIA等関連資料は入手されているということか。

前田:カテゴリAについては必ず借入人を通じてEIAを求める。BではEIAをとる場合ととらない場合がある。

原科:カテゴリ分類をした後ということは、網掛け部分に入った段階でEIAをするというわけか。

前田:EIAについてはAに分類されたものはもちろんのこと、Bでは網掛け部分に入るのが決まったものに関してはその通りである。そうでないものはEIAをとらない。

原科:カテゴリ分類について後から問題が生じたことはないのか?

前田:個人的に問題だと考えているのは、国際金融等業務におけるカテゴリAが立地条件のみにより、Bがセクターによることだ。分類の方向性が違う。また、一旦Bとカテゴリが決まると、あとは網掛け部分に入るか否かのみが焦点となって、網掛けプロセスの結果、カテゴリ分類を見直す機会がないことも問題だろう。

原科:そうするとカテゴリ分類については経験上結果として問題が生じたことはないと言ってよいのか?

前田:カテゴリ分類の設計の問題はあるが。

松本(郁):網掛け部分に入る案件数は?

本郷:月に1件ほど。

松本(郁):そうすると年間に1213件でしょうか。

本郷:年にもよる。

松本(郁):国際金融等業務では一つのプロジェクトに輸出金融、アンタイドローンなど同時に出す時、その度に審査をやり直すのか?

前田:そもそも輸出金融とその他を一緒にやることはない。アソシエーテッド・ファイナンシングとして禁止されている。あり得るのは投資金融で融資したものにアンタイドローンを付ける例だ。

松本(郁):その場合は別個に審査をするのか?

本郷:必要に応じる。環境に対する影響も大きく、時間的にも離れていればまたやる可能性もある。時間的に近くて環境影響も小さければ追加的に必要部分だけということになるかもしれない。

松本(悟):円借款の流れについて質問だが、事前通報と交換公文(E/N)と借款契約の明確な違いは何か?どれが最終決定なのか?

森:事前通報は政治的意図表明で、それを文書で確認したのが交換公文であるが、事前通報を行うと後戻りは実態上難しい。

北野:事前通報は法的な意味でのコミットメントではないが、実質的には森さんのおっしゃる効果を持ってくる。事前通報とは供与方針を示して最終手続きに入ったことを先方に通知することなので、コミットメントそのものではないのが、その時点以降に引き返すのは相当な違和感が出てくる。また、E/Nは政府間のことなのでお金を貸すという民事上の契約関係はL/A(借款契約)をもって発生する。

松本(悟):最終意思決定は事前通報でなされたと考えてよいか?

北野:それは言い過ぎだと思う。政府としての意思、JBICとしての意思があって、それは調整しながらやるわけだが、政府の意思決定は閣議決定を経てE/Nで行われる。JBICの意思決定としては、L/Aの個々の条項を見た上で役員会での最終的な承認を経て決定されると理解している。

前田:事前通報とE/Nの間にはあまり時間がないと思うが、E/NからL/Aまで時間がかかってプロジェクトが進んでしまうケースはどうか?

入柿:まれにE/NからL/Aまで時間がたって条件が変わり、L/Aを結ばないケースもあるが、それも相手国政府の承認なしにはありえない。時間的な話としては、事前通報からE/Nまでは40日を置くという通報問題がある。どこから後戻りできるかという観点からいうと、事前通報を行った後は相手国政府の承認なしでは難しい。

松本(郁):40日置くのはなぜか。

入柿:輸出信用アレンジメントの中で事前通報手続きが定められており、コミットメント前にOECDに通報しないといけない。

前田:資料にある事前通報は相手国政府に対するプレッジだが、今の話の事前通報は、タイド・アンタイドどちらに関してもOECDに対して事前に行うというOECD内のルールである。

松本(郁):その情報は公開されていないのですね?

前田:輸出信用アレンジメントの参加国にのみ知らされる。

松本(郁):ではOECDへの事前通報を、相手国への事前通報期間にやるということか。

入柿:必ずしも一致はしないが大体それ位だ。

松本(郁):その時はどのような情報を出すのか。

入柿:案件の概要だ。経済産業省(通産省)が日本政府として行う。

前田:輸出信用アレンジメントと異なる緩和された条件で供与する時にはOECDへの事前通報が必要である。

松本:そうすると国際金融等業務では通報の義務が生じる形態はないのですね?

前田:アンタイドローンでは通報します。OECDの中のECG(輸出信用部会)はそれぞれの融資条件の貿易に与える歪曲効果を監視しているわけだ。

大村:事前通報以降は相手国政府の承認なしには戻れないということは、それまでには環境上の問題をクリアしていないといけないと思う。「円借款の環境審査フロー」の中では、役員会付議を終えてから事前通報なのか?

入柿:交換公文にはJBICがプロジェクトのフィージビリティを確認したら出すと書いてあり、条件付きであるわけだ。JBICの役員会はその条件を満たしているかどうか確認する。そして事前通報後、L/A前に出す。

大村:環境上問題があると、それは役員会審査を通らなかったということで、E/Nを出している案件でもL/Aは結べないということか。

入柿:理論的にはそうだ。事前通報の前の段階では内部的にはかなり詰めている。そこでの報告と、L/A前の役員会での結論とが異なることはほとんどない。

本山:環境審査のクリアランスが全て終わった段階で事前通報するということか?

入柿:審査は全て終わっている。審査結果を政府に報告して政府が最終的にやるか決めて事前通報する。さらにその後の借款交渉の条件を考えてL/A前に役員会にかけられるわけだ。

松本(悟):つまり旧4省庁間の話し合いは少なくとも事前通報前ですね?しかしJBICの役員会はその後ですよね。

北野:むしろJBICの実質的な環境配慮の検討の主要部分はアプレイザルの段階で行われているとの理解ではないか。

入柿:役員会という形式をとるのはL/A前だが、アプレイザルの結果をどう政府に報告するかは担当役員には既に了承済みだ。

原科:最終段階でもう一度クレームをつけられるようになっているが、そこまで行く前にチェックをするアメリカのEIAreferralのようなものですね。

松本(郁):今の話ですと、事前通報の前にアプレイザルは終わっているわけですね。

入柿:一応アプレイザルの結果は出ている。

松本(郁):その報告を旧四省庁の話し合いに出すわけですね。

北野:イメージとしては、政府ミッションには多くの要請案件があり、その中から案件の熟度、優良性などをみて、JBICにどれをアプレイザルの対象としてもらうかを政府ミッションで議論する。それに基づいてJBICはアプレイザルミッションを出してそのアプレイザルの作業の中で環境配慮の主要な確認作業が行われるとの理解ではないか。

松本(悟):日本政府も最近はロングリストなどをつくってかなり事前の段階から案件を把握しようという動きがあるが、それはこの資料「円借款プロジェクトサイクルにおける環境配慮」には反映されていないように思うが、環境配慮含め、これからはこの準備の部分が大きくなると考えてよいのか?

入柿:そうですね。

北野:環境配慮の取り組みは、ロングリストだけではない。ロングリストのできている国は実際のところ少なく、ロングリストが作成されていれば、これに基づき双方ともに良い案件だと思っているが環境面を含め熟度の足りないものについては、EIA等をやってもらわないと先に進めないと相手に早い段階で言うことができるが、ロングリストがなくても、別の形で同じようなプロセスを踏むことができる。

松本(郁):円借款の場合、要請の前の段階で、プロジェクトに関するなんらかの事前要請のようなものがあるのか?

北野:特にはない。基本となるのは要請であり、要請の来た段階ではF/Sが作成済みのものもあれば、EIAが作業中のものもある。その中でどの案件を進めていくかを話し合う。

松本(郁)SAPROFは要請の前にあるが、これはロングリストの案件だけにSAPROFがかかるということか?

入柿:いろいろなケースがある。途上国にはそれぞれの開発計画があり、どういう案件が来るかは大体把握できる。ただ公式・非公式の線引きは難しい。今までは、最終的に要請として来たもののみ公式としていたが、今はそれ以前の相談の段階まで公式の領域としていく方向である。

松本(郁):非公式な要請というのは具体的にはどんなものがあるのか?

入柿:こういうプロジェクトがあり、円借款をお願いしたいと事業実施者が言いに来る場合などがある。それはその国の意思決定とは限らない。そこまで情報公開をすると煩雑ということで今まではためらっていた。事前の話し合いはさまざまなレベルで行われるわけだ。

松本(郁):できるだけ早い段階で情報公開される方がより幅広い意見がもらえて次の提案にもつながると思い、どういった段階なら可能かとおうかがいした。

入柿:最も早いのは公共投資計画など途上国の開発計画作りのところだろう。ただ公式な話になるとロングリストとして出るあたりだろう。

本山:国際金融等業務のアンタイドローンについては円借款のように最終的なL/A前に政府が関わってくることはあるのか。

前田:全くない。プレッジではないが、こういう案件にアンタイドローンを供与したいという旧大蔵省の意図表明は過去にはあった。アンタイドローンの歴史は短いが、初期の段階では融資方針役員会は大蔵省のコンサルテーション後だった。現在は逆であるが、融資方針役員会が終わって、案件が大蔵省にいった時に、総理や大蔵大臣が、外訪の際や外国の要人を迎える際の外交手段として供与したいと意図表明された場合があった。しかしこれはかなりの例外である。円借款との大きな違いは閣議を経たE/Nがないということだ。融資方針役員会を終え、大蔵省の内諾も得て融資条件交渉をするわけだが、難航している時には政府ベースで約束をしてもらうことはある。その後に融資条件交渉は始まるわけだが、相手国の事情での中止・案件差し替え以外は戻ることはほとんどない。通常は役員会を終え、OECDに事前通報して、融資条件交渉、役員会を経てL/A調印だ。環境保全対策がL/Aに反映されず話が全部なくなることはあり得る。

松本(郁):そうすると融資要請を受けてL/Aを結ぶまで約束は何もしていないということか。

前田:そうだ。ごく一部例外的に、法的な契約でない政治的意図表明が行われる場合以外はそうだ。

松本(郁):意図表明できるのはアンタイドローンだけか?

前田:他の金融種類でも行えるが、通常はアンタイドローンだ。

本郷:こういう一定条件を満たせば融資はするだろうという形の条件付きコミットメントをJBICは融資方針役員会で決める。

前田:実質的意思決定はほぼこの1回目の役員会で終わっている。

松本(郁):JBICが意思表明をするのはこの融資方針役員会の前ですか?

前田:後です。融資方針役員会前に外部に公表することはありません。

松本(郁):1回目と2回目の役員会の間はどれ位あいているのか?

前田:交渉次第だ。

本郷:deal break(交渉決裂)してしまうことも当然ある。

前田:契約書の雛形があり、それをJBICが相手方に送る。相手は弁護士とともにコメントをつけて送り返して来る。借り慣れていない国はコメント数も多く、何年もかかってしまう。

松本(郁):JBICが意思表明する意図は?JBICが融資方針役員会の後に、なるべく早く交渉をまとめるためか?

前田:相手方の正規の手続きがきちんと定まっていないこともあり、国会承認が要る場合もあれば、監督官庁の承認が要る場合もある。相手方の事情できちんとした文書で意図表明して欲しいと言って来る場合は条件付きのpreliminary commitmentをする。相手も内部で決済を通すために何らかの正規の手続きを必要とする。ただ6ヵ月たっても融資条件交渉がまとまらない場合は全てを白紙に戻す。終わりに近いがまだ少し残っている場合は12ヵ月の期間延長を行うケースもある。

松本(郁):6ヵ月間有効というのは、業務指針などで決まっているのか?

前田:もっと短いのもあるが大体のところで6ヵ月だ。

本山:環境審査の形式的手続きについてだが、最終的には環境社会室がチェックする環境に関する審査以外にも審査があるわけだが、それらを全部合わせて一つの審査のペーパーができて審査が終わるのか。

前田:案件によって違う。カントリーリスクならば国際審査部が、企業の信用力については企業審査部がある。実際にプロジェクトへの融資を決める時に、国の信用力で貸すのならば国際審査部の意見が尊重されるし、企業の信用力で貸すのならば企業審査部の意見が尊重される。ほぼ同様に環境社会室が存在し、環境配慮について環境ガイドラインに基づいたチェックをする。審査部ごとに別々に出て来て、役員会にいく。

松本(郁):社会環境の審査については、環境社会室だけで、国際審査部、企業審査部は関わらないのか。

前田:環境に関しての権限はないので関わらない。

大村:環境社会室は国際金融等業務であればAおよびBの必要と認められる部分、海外経済協力業務の場合は関わり方の度合は違ってもABC全部の案件を見ていく。やり方はかなり違うが前の組織のやり方をある程度踏襲されているのだろう。そこを統合に際してどうしていくのかについては大きな議論になるかと思う。またABCのカテゴリの分け方も旧輸銀と旧OECFとでは若干違う。例えば国際金融等業務でのAは、海外経済協力業務なら融資をしないというカテゴリになる。国際金融等業務でのBにはおそらく海外経済協力業務のAに相当する案件が入って来る。その場合国際金融等業務で環境社会室が関わる案件−AおよびBの必要と認められる部分と、海外経済協力業務のA案件とは大体同じと考えてよいのか。

本郷:少し異なるが大きな差はない。国際金融等業務では事前にはAおよびBの必要と認められる案件につき詳細な確認を行うが、ABに関しては原則的に、Cは必要に応じてモニタリングがある。ここでは必要あれば環境社会室にモニタリングを支援してもらうので関与はある。国際金融等業務でのAが海外経済協力業務の禁止にあたるというのは少し違う。Aの中で融資できないものもあれば融資可能なものもある。概念的に広くAをとって留意事項を付けている。Bカテゴリはできるだけ広くとるように作っている。発電所ならば大規模なものから小規模なものまで、石炭火力発電所もあれば天然ガスによるものもある。最初から広く定義するかどうかのアプローチが違う。やっていることに大きな違いはないが。

前田:海外経済協力業務のカテゴリAの中で国際金融等業務に入っていないものはAの(1)の「大規模な新規及び改修等のプロジェクト」というもので、大規模であれば入ることになる。これは国際金融等業務だとB種である。そのうち、BなのにA並みの扱いをしなければいけないのは、おそらく網掛けの部分である。大規模であるものや(3)にある「広範囲、多様かつ不可逆的な環境影響を」伴うものであろう。つまりABの設計の部分は両業務で異なるが、「大規模」か「広範囲」かの判断を要する部分は含んでいる。

大村:Bで、A並みの扱いをする時はアセスメントももらうということか。

前田:そうです。

大村:では網掛けの部分はすべてアセスメントを受け取っていると考えてよいか。

前田:そうだ。なぜ国際金融等業務と海外経済協力業務で異なるかというと、旧機関のやり方をひきずっているというよりは、旧OECFの方が環境配慮の歴史が長い。一方、国際金融等業務では環境配慮はかなりの部分を融資担当部が行うので、環境ガイドラインができるだけわかりやすい設計になっており、判断を要する部分は環境社会室がバックアップするようにしている。海外経済協力業務の開発部がプロジェクトに入っているということで強いのに対し、国際金融等業務の融資部は、まさにlender(融資者)としてのリスクを判断する立場にあり、通常あまり案件に立ち入らない。融資部の機能が若干異なっている。

松本(郁):国際金融等業務で役員会にいく、いかない場合はどう違うのか。

前田:案件の規模による。総裁・担当総裁・担当理事がいて、役員会を構成するが、その下には、小規模の案件については副総裁・担当総裁で構成する委員会があって、さらに小規模のものについては、理事決済案件となり、さらに小規模のものについては、部長決済案件となる。アンタイドローンはすべて役員会にかけられる。特に輸出信用など非常に典型的なもの関しては金額で分けて、小規模なものに関しては権限委譲している。普通の銀行と違ってJBICでは国際協力銀行法上、総裁がすべての権限を持っている。それを順次権限委譲している仕組みだ。役員会とは本来総裁が決めるべきことに助言者として副総裁なり理事なりが意見を言う形式だ。例えばアンタイドローンのように判断すべき項目が多いものは、すべて総裁が判断する。委譲の順序は小さい順にアンタイドローン、投資金融、輸出信用である。輸出信用はOECDアレンジメントにしたがって融資条件が決まっていて判断を要することが少ない。

松本(郁):グレーゾーンに入った案件は必ず役員会に行くなど、カテゴリ分類によってどこのレベルに話が行くというのはあるのか。

前田:そういうやり方はしていない。ただ通常特別の配慮を要する案件は役員会にかけられるので、網掛けの部分に入ったものは、総裁決済案件にはあるかもしれないが、理事・部長決済案件ではないだろう。

松本(郁):金額はいくら位から役員会に行くのか?

前田:100億円以上で役員会にいく。

松本(郁):JBICの両業務による環境社会室の権限の違いがあるのか?

入柿:海外経済協力業務は稟議システムになっている。開発各部が稟議書を起案してそれに環境社会室と技術的審査をする部がハンコを押さないと総裁まで進まない仕組みになっている。そういう形式的意味では国際金融等業務と若干異なる。しかし、実質的にはあまり変わらない。

 

<環境配慮手続きの確認について>

松本(郁):<「国際協力銀行(JBIC)による環境審査について 討議資料」に沿って説明(略)>

前田:議論は次回に送りたいと思うが、一点確認させていただきたい。1頁目「1環境審査のポリシーと基準/(1)環境審査に関する基本的考え方/@環境審査の目的」の最初の「すべてのプロジェクトについて環境審査を行なう」と言うと、スクリーニング後のカテゴリ分類はどう行えばよいのか。

松本(郁):もちろんカテゴリ分類が前提となる。環境審査の度合は案件によって異なるだろう。

前田:すべてをスクリーニングするということなら理解できるが。

松本(郁):そういうことだ。

前田:すべてに関して環境審査を行うということではないのですね?

大村:現状でよいということになるが。

松本:そうなりますね。

前田:カテゴリ分類をどう定義するかという議論はもちろん残る。スクリーニングからはずすものは作らないというお話だったわけですね。

松本(悟):資料のこの箇所で重要なのは、「支援する事業が環境や社会、人々に被害を与えないことを確保するため」までの目的を明示しているところだ。

前田:次回だが、松本(郁)さんのプレゼンテーションのうち、環境審査のポリシー、基準、手続きについて大村さんの資料を参考にしながら話し合っていきたい。カテゴリ分類の基準、FIの扱いなどを特に議論したい。情報公開は次次回に回しましょう。

大村:JBICが現行のガイドラインに明示していないこと、または明示していないくても実際に行っていることを中心的に議論した方が効率的ではないか。私個人の意見になるが、実践されていることは、世銀などのようにガイドラインに書いて行く方が批判されないで済むのではないか?書くかどうかの判断はさておき、現在すでに行われていることはJBICから言っていただいて、むしろ議論して欲しい箇所を示していただければよいかと思う。

前田:松本さんの資料の情報公開の前の部分と大村さんの以前の資料に関連して、JBICが実際に行っていることを整理します。

大村:資料「国際協力銀行(JBIC)による環境審査について 討議資料」についての確認だが、6頁目に「環境社会室は〜環境審査の最終的責任を負う」とあるが。

松本(郁):基本的にはJBICが責任を負うと思うが、環境審査の内容については、環境社会室が保証するということだ。審査基準の部分に関しても若干不完全なところが残るので次回も資料を提出させていただければと思う。

前田:3頁目の条約の部分−国際条約、人権やガバナンスについてももう少し加えていただければと思う。今日はこれで終わりにします。

 

 

次回:日程変更/2001125午後5時〜変更前122午後4時〜

JBIC−環境審査手続きの現状について説明

次次回2001213午後5時〜

原科−情報公開