国際協力銀行の環境ガイドライン統合に係る研究会 第8回

議事録

 

日時:2001213日(火)午後5時〜

場所:国際協力銀行7階 中会議室

出席者:

メンバー(敬称略、アイウエオ順)

 入柿 秀俊/国際協力銀行開発業務部企画課長

 大村 卓/環境省地球環境部環境協力室室長補佐

 加藤 隆宏/大蔵省国際局管理係兼環境調整係長

 川崎 研一/外務省経済協力局有償資金協力課企画官

 北野 充/外務省経済協力局有償資金協力課長

小林 香/大蔵省国際局開発政策課課長補佐

作本 直行/アジア経済研究所経済協力研究部主任研究員

 佐藤 寛/アジア経済研究所経済協力研究部主任研究員

 原科 幸彦/東京工業大学大学院・総合理工学研究科教授

 本郷 尚/国際協力銀行環境社会開発室第1班課長

前田 匡史/国際協力銀行金融業務部企画課長

 松本 郁子/地球の友ジャパン

 松本 悟/メコン・ウォッチ

 本山 央子/地球の友ジャパン

 森 尚樹/国際協力銀行環境社会開発室第2班課長

当日参加者:(敬称略、アイウエオ順)

川上 豊幸/APECモニターネットワーク

高瀬 国雄/アフリカ日本協議会

 中舘 克彦/国際協力銀行開発業務部企画課調査役

 三好 裕子/国際協力銀行金融業務部企画課調査役

議事録作成:

 坂本 有希、畠中 エルザ/(財)地球・人間環境フォーラム

 

<情報公開について>

原科:<「JBIC環境配慮 情報公開」に沿って説明>環境保全対策は、環境影響の回避、軽減、代償措置の順で講じられるべきものである。

前田:原科先生へのご質問等は、他の資料のプレゼンテーションをあわせて終えてからにしたい。

本山:<「情報公開に関する討議資料」に沿って説明>

川上:私の資料は発表する形態になっていないので、短く口でご説明したい。基本的には、情報公開は早い段階から原則公開で行うことが望ましいこと、適切なインフォームドコンセントとそれ以上に事業者とは異なる意見を取り込んでいけるようなコンサルテーションとコミュニケーションの確保が大切であること、それには情報公開が不可欠なことを言っているつもりだ。現地の制度との関係が一番難しいところだろうが、相手国・民間企業と情報公開に関する協定等を契約前に作っておくことで対応するのがよいのではないか。また、本山さんの資料「情報公開に関する討議資料」では2頁目の「3 JBIC自身による情報公開」1)@にあたる箇所にあるロングリストの作成のことだが、世銀でもアジア開発銀行でも行われている。これは、情報公開からさらに一歩踏み込んで、情報をわかりやすくするためのものである。情報公開から一歩進めるということは、ロングリストの作成であり、きちんとしたコンサルテーションをすることであり、その土台となる情報の公開であり、アセスメント報告書・F/S(フィージビリティ・スタディ=実施可能性調査)のサマリーの作成である。いわゆる情報公開をしただけでは、きちんと伝わっていると言えるかどうかである。

前田:大村さんから提出された資料について発表をお願いしたい。

大村:基本的にはこれまで提出した資料から、情報公開及び協議などに関する部分を抜粋したものだ。前半2頁は借入人に対する融資機関側の要求・関与について、後半は融資機関自身が行う情報公開について、JBICの現行のガイドラインとその他機関を比較したものである。

前田:論点を整理したいと思う。まず、JBICによる情報公開一般に関しては、特殊法人は情報公開法の対象に現在はまだなっていないが、いずれなるので準備中だ。これは、環境・社会開発に限らず、すべての分野における開示請求に応じての公開であるので、これはどちらかというとアカウンタビリティの問題である。それとは別に環境社会開発の中でガイドラインに何を含めるかということだが、これは開示請求に応じての公開ではなく、一定のものに関しては積極的に公開していくということだろう。それには、どの文書を公開の対象とするか、第三者から聴取したEIA(環境影響評価書)等の資料を含むかどうかが論点になる。次に、環境ガイドラインの文脈では、全体をステークホルダーとの合意形成のプロセスと捉えるかどうかということが論点だ。現行のガイドラインでは基本的にアカウンタビリティの観点からの対応で、情報公開法への対応も同様だ。合意形成のプロセスと捉えるのはそこからまた一歩踏み込んだ議論だ。ステークホルダーは多種多様いるが、問題となるのはビジネス情報の機密性、契約関係に入る前の相手方の責務、JBICの融資者としての情報公開の責務の点である。

高瀬:非常に進んだ討議を当研究会でなさっているというお話をうかがい、今日は参加させていただいた。私が以前いたアジア開発銀行・OECFでの経験を踏まえ、今日は具体的な提案をしていきたい。事業計画とEIAの二つが公開され、連動していないと実効性がない。これを念頭に置くと、F/Sの公開を行うのが最も望ましい。しかし、膨大な量であり、秘密性の高い情報を含んでいることも多い。旧輸銀業務については、そもそもF/Sのようなものがすべての案件について存在するかどうかもわからない。現地語に翻訳したり、120日前に公開するということになるとますます難しい。綿密に作業を行って時間を多くかけるのか、23ヵ月くらいで主だった要素を押さえて、迅速さの確保に努めるのかはトレードオフになってしまうと思う。その中間点を見つけるのが非常に大事なことだと思う。

 そこで地球の友ジャパンの資料「情報公開に関する討議資料」の「3 JBIC自身による情報公開」の11)@「支援検討プロジェクト情報の公開」に加えるべき情報がある。プロジェクトの目的、実施内容、プロジェクトの便益とリスクである。このような情報がないと、EIAは充分にはできない。F/Sそのものでなくとも、上記のような要素を含んでいる要約を作ればよいと思う。同時にEIAも公開してもらえばよい。

前田:確認します。F/SまたはEIAの要約を作るということだが、誰が作るべきというご提案だろうか? われわれJBICが作るのか。

高瀬:本来は借入人または事業者がすべて出すべきだが、どちらでも構わない。

前田:コスト面から考えると今のご提案はいいと思うが、公開を前提とした要約版を作るということは、ステークホルダーへの説明資料というようになってしまい、ある意味では情報改ざんということにならないか?また審査開始時点での公開では、費用便益分析が妥当か等のことでこちらが説明責任を負うのは難しい。早期に公開するのであれば、生の情報の方がよいのではないか。

原科:サマリーを出すのはよいと思うが、それを詳細に吟味し直したい人のためのアクセス方法が確保されないといけない。サマリーは現地語・英語・日本語で作るべきだ。

本郷:原科先生の資料に関するご確認です。EIAは、事業者のやることであり、融資機関が環境配慮確認の際にやることとは異なる。情報公開を考える時にもこれはポイントになる箇所だと思う。金融機関が環境面で検討する際に、コメントをもらったり、情報を集めたりするわけだが、それを我々が公開する時には、どのような情報が公開対象となるのか。

原科:国際金融等業務の場合は間にワンクッションあるので、融資機関が直接入手し、判断の根拠としたものになるだろうか。

本郷:つまり、我々が審査の時に使った生の情報の公開ということですね。

入柿:情報公開の際は、JBICのオーナーシップと相手国政府のとは分けるべきだと思う。現行の環境ガイドラインでは「環境アセスメント・レポートは、現地で公開されることが望ましい」としているが、これは相手方のオーナーシップに立ち入り、相手の知らないところで公開することについての懸念からそうなった。相手国政府がオーナーシップを有するものに関しては、L/A(借款契約)の中で公開すべき情報を特定しているが、それでも第三者が関与する調達契約などはカバーできない。案件情報の公開については来年度から、事前評価ということで、全案件について、概要、目的、便益・リスクなどをL/A締結後に公開することになる。タイミングの問題が争点として残るわけだが、前田からも申し上げたように、やはり審査前の公開は無理である。わかっていないことが多く、我々として責任を持てない部分が多過ぎるからだ。タイミングのことと公開のためのサマリー作成はなかなか難しいが、審査後であれば、内部の意思決定のために使われた文書の公開はあり得るだろう。また、要請の前段階で作るロングリストは公開が前提である。これはスクリーニングも何もしていない段階で、要請案件の概要のリストを作成することだ。

本郷:厳密に言うとその段階では環境の問題に関するコメントは一切されていないわけである。

原科:日本では環境影響評価法が施行され、アセスに関する標準形ができたわけなので、JBICにはそういった手続きを踏んでいただくよう私は要請したい。

前田:話は戻るが、JBICが自身で作成した文書と、第三者から徴求した文書とでは情報公開法の観点からは何ら差がない。従って、開示請求があれば、原則すべての文書を公開しなければならない。これは情報公開一般の話だ。今の話は環境社会開発の観点からの開示請求を待たない積極公開のことだ。大村さんの資料「各援助機関・輸出信用機関の情報公開・協議」の借入人に課される情報公開の項目では、世銀・IFCが「影響評価書案とその他公衆協議に提出された書類すべてを全ステークホルダーに公開を義務付け」とあるが、これが我々と異なるところかもしれない。「概要英語版の公開」を融資機関の責任とするのは、我々には少し厳しいように思う。また、相手方に「義務づけ」とあるが、何をもって義務づけるのか。L/Aに盛り込むのか、事前に環境ガイドラインに書いてそれに従っていなければ手続きを停止するというようにするのか。これは一般の情報公開よりも一歩踏み込んでいるわけだが、我々にとってもできることとできないことがあるので、絞って行かないとだめだ。コスト、本当に必要なものが何かを考えないといけない。例えばカテゴリAの案件は必ずEIAの公開があるわけだが、地球の友の資料「情報公開に関する討議資料」では、カテゴリBに関しては簡易な文書の公開を求めている。しかし、実質的には、審査が簡易になっても文書が簡易になることはないと思われる。カテゴリが異なるので、我々が徴求する度合いが違うわけだ。この文言では何を公開するのかがはっきりしない。

松本(郁):この項目が入っていないとEIAとは認められない、というように決めておいて、そのすべての項目を満たしていないものは簡易環境アセスメント情報として受け取るのはどうか。

前田:むしろ徴求して審査してみないとわからないのではないか。カテゴリAのドラフトEIAは公開を義務とし、カテゴリBでは公開が望ましいと慫慂するが、公開の対象は、カテゴリABも同じドラフトEIAとしておかないと、何をもって簡易とするかの説明責任がJBICに課されてしまう。

松本(悟):カテゴリBに関しては、アジア開発銀行では、フルEIAが必要なのか、そのままプロジェクト承認してよい案件なのかを先に判断するInitial Environmental Examination IEE)という手段があるが、JBICにはないということか。

大村:事業を行う時は、環境関連の調査は行われている。それにはいろいろな呼び名があり、JBICは一般論としてその手続きを踏むよういうが、A案件だけに関しては、住民とのコンサルテーションや所轄の官署の承認を含め、定式化された手続きにのっとって下さい、ということだ。これはJBICも世銀もやっている。

前田:カテゴリBの中でも、審査に充分な判断材料がない場合がある。フルEIAが必要かどうかに関わる情報は、情報公開がされていないと我々には情報が入って来ない。ただこれは義務付けることはできない。情報公開をして下さい、と宣言することしかできない。

本郷:EIAはあくまでも事業者が行うものだ。ほとんどの案件はEIAが承認済み、あるいはEIAが終了して最終承認待ち段階。この段階で我々の要求事項を出せるわけではない。それ以前にやっていて欲しいという意思表示のためにガイドラインに書くことになる。国際機関の場合は、最初からイニシアティブをとる場合が多いと思われる。任せておく場合、EIAについては、相手国の作成したものと国際機関の基準との間にギャップがある場合もあり、それをもう一度やり直させるのもあれば、国際機関が自身の基準に現実性がないと判断する場合もある。一般的に国際機関はEIAの終了後、要請が出て来た時に要求事項を出すわけではない。

入柿:円借款でも事情は同じで、EIAがないと審査をしないという手続き形式上、EIAは審査の前に既にあり、パブリック・コンサルテーションは終わっている。我々としては、ステークホルダーとの合意形成が済んでいるという前提に立つ。ただ実質的には、EIA公開後、期間を置いて異議申し立てが出来るようにすることは可能かと思う。しかし、これは合意形成のために我々から情報提供をするというのとは異なる。

原科:私の資料のはじめにある「確認業務を適切に行ったことの説明責任」ということになるのではないか。

入柿:120日前ということと、サマリーの作成は難しいと思う。

本郷:国際金融等業務においては、ビジネスのスピードの観点から公開期間を120日とするのはとても考えられない。審査はできるだけ短く、民間ビジネスを阻害しないようにと配慮している。

原科:B案件については、必ずしもEIAを徴求しないということだが、これからは、JBICB案件についてはEIAをお願いするという実務のやり方を理解してもらうようになればよいわけだ。

入柿:ただ現地の法制度を超えてどこまで要求するのかが一番の争点となる。

原科:JBICのリスク管理と捉えて行えばよいのではないか。

松本(郁):話は戻るが、前田さんがおっしゃっていたのは、カテゴリAについてはドラフト段階でのEIA公開を義務付け、カテゴリBでは、EIA公開は望ましいと言って置いて、公開しないことによる不利益を示して置くことですね?

大村:カテゴリBでは公開を慫慂し、EIAが付いて来なくても受理はするということだ。

松本(郁):ここでのポイントは、適切なコンサルテーションのためには適切な情報公開が必要だということだ。これはABどちらの案件についても言えるはずだ。B案件については、関連する環境情報の公開を義務付けることは困難だろうか。

前田:「義務付け」は難しい。今の議論は、ステークホルダーとの合意形成の観点から、必要なコンサルテーションをあらかじめ現地でとってもらう必要性の話だ。それを保証するのが融資機関の責任だと原科先生はおっしゃった。それを法的に義務付けるのかどうかということだ。A案件については、開示請求の有無にかかわらず、公開を義務付ける。それは相手方の義務の話だが、情報公開法での義務は我々の義務の話だ。

松本(悟):私がひっかかるのは、スクリーニングとの関わりにおいてだ。JBICB案件とした判断が適切であったかをどうやって外部がチェックするかが問題だ。JBICB案件と判断し、認識するステークホルダーの範囲を、現地国内でもステークホルダーとして捉えてもらうことを確保するにはどうするのがよいかということになる。

前田:やはりrecommend(慫慂)ということになる。現地の法制度は大事だが、どこまでベスト・プラクティスを入れるかが問題になる。ガイドラインの中で公開が望ましいと宣言するわけだが、公開しないことへのsanction(制裁)もBは当然Aより少ないが、情報を公開しないということは、我々が判断するのに充分な情報がないとすることができる。

入柿:タイミングの問題はさておき、ABかという判断については我々に情報開示責任があるということだ。

前田:それは積極的に開示するというよりは、開示請求に応えて公開するというわけだ。

本郷:松本さんの「コンサルテーションするために」とおっしゃるコンサルテーションはどのような内容のものか?

松本:それは事業者とステークホルダーとの間の合意が形成されているかということだ。

前田:カテゴリBについては、official lender(公的な貸し手)としての法的な義務はわれわれにはないけれども、資金提供を受けるborrower(借入人)には、利害関係者との合意形成をする努力をしなくてはいけないと一般的に言うわけだ。ただし、我々が徴求したものについては、もちろん情報開示請求に応えるが、相手方に義務付けるには根拠がないと思われる。

 また、本郷課長の言っていた国際金融等業務の話だが、export credit(輸出信用)の本来の目的はsustainable development(持続可能な開発)ではなくbusiness support(ビジネス支援)であるという議論がある。結果的にsustainable developmentに貢献することはあっても、本来の目的ではない。カテゴリAはどちらの業務であっても情報公開に差を付けるべきではないだろうが、Bでも、ビジネス情報の秘密性や本来の目的が違う等の議論を理由とした非公開等をできるだけ排除するためには、情報公開は望ましいと言って置いて広くとるのが効果的ではないかと思う。

作本:カテゴリ分類に関しては、相手国との分類のズレは充分あり得る。またJBICのカテゴリは、日本の物差しであるということは念頭に置くべきだ。さらに情報公開法のない国でこのような情報をそもそも流すか疑問だ。

前田:カテゴリのズレはあっても、我々は第三者の文書であっても本行が徴求したものは原則開示になるということである。

大村:懸念されているのは、A案件でも当該国のアセスメント制度では情報公開が義務付けられていない場合ではないかと思う。これは、情報公開をすべき程度の案件で、それがないと先には進められないとJBICは考える、と相手国に理解してもらえばよい。

作本:その日本側の判断があらかじめ相手方に伝わっていないといけない。

大村:世銀も、当該国の制度の如何にかかわらず、カテゴリA 2回やらないとそれ以上進めないとしている。融資機関のカテゴリに沿う形なので、ズレはほとんど生じないことになる。

本山:カテゴリにかかわらず、適切な情報公開とコンサルテーションは確保されるべきだ。カテゴリBでは最低限提出するものを義務付けることはできないのか。過去には、カテゴリBのものが後で重大な影響を引き起こしたことがあったので、recommendという形では弱過ぎると危惧する。

前田:その場合はカテゴリAのように扱って、本格的な審査をしなくてはいけないわけだ。その判断に使った文書は我々の責任で開示される。

大村:カテゴリBで欲しい情報を、グッド・プラクティスのような形で列挙しておくことはよいと思う。recommendと義務の中間のようなものを言っているように思うが、それは難しいのではないか。それがなければ先に進めないものと、なくても進むが案件の中身で判断されるものと二つしかないように思う。

本山:義務ではないので公開しないということに現地でなると、JBICがきちんと環境面の審査ができるかどうかが心配だ。

川上:JBICとして、住民意見の聴取などコンサルテーションをやるのは可能か。

前田:カテゴリBだけれどAと同等の審査をすべき案件については、あくまでもプロジェクト実施主体に義務付けるのが先決だと思う。我々が情報収集してもいいが、それはあくまでも二次的な傍証であるべきだ。これはコンサルテーションとは異なる。よって、カテゴリBについては、情報公開が不充分の場合であった場合などは、本格的な環境審査をやらねばならないという判断の材料にはなるだろう。

本山:案件によっては、カテゴリBでも情報公開していなかった場合は、Aくらいに審査する可能性があるということですね。

小林:そもそもカテゴリABを区別する必要性はないのではないか。

前田:それは単に設計の問題だ。おっしゃるようなことも有り得るが、現行のガイドラインではEIAを徴求し、厳重に審査するような案件はA、場合によっては厳しい審査もあり得る案件はBといった具合に呼び分けているだけだ。

原科:Bについては簡易アセスのようなものができるということですね。

大村:むしろ、どの案件に関しても環境配慮・利害関係者との合意は必要だが、一定の案件は例えばAと呼び、JBICもその手続きがきちんと行われるか見届け、B案件に関しては、いろいろな効率を考えて、その確認の程度をある一定のものまでとするということだろう。ただし問題があれば徹底的に審査するわけである。

高瀬:少なくとも二段階あるわけだ。相手方が要請して来た時には、まだ案件の概略しかわからない。ただアプレイザルでカテゴリが違うとわかって来れば、審査の段階で何が必要かを言って対応すればよい。

前田:確かに、EIAJBICの関与前に出来ている場合が通常であるので、できるだけドラフト段階で情報公開してもらった方が、こちらの負うリスクも低い。しかし、どこまで義務づけられるかというのは別の問題だ。

松本(悟):情報公開は、充分な合意形成のために存在し、どのカテゴリであるかに無関係で、かつJBICのアカウンタビリティの確保に資するということは、情報公開の原則として明言しておくべきだと思う。

入柿:カテゴリBで、「望ましい」と書くのはよいが、手続きがきちんと出来ているかを確認するかどうかの問題がある。きちんと出来ていなかったら、どうするのかということだ。義務付けになってしまうとカテゴリを分けた意味がない。ベスト・プラクティスは、どうガイドラインに書くかが難しい。

大村:確認は必要だ。確認の結果、出来ていなかった場合は、最終的に大きな影響を及ぼすかどうかを判断することになるだろう。

本郷:「ステークホルダーの意見を聞く」という際のステークホルダーの反応には、両サイドある。現地の制度には賛成し難いという意見もあれば、我々が持ち込んだ概念が全く現地で受け入れられない場合もある。現地の意見をよく聞いて対応しないといけない。

入柿:現地の法制度に従ってやって下さいというのと、JBICのレコメンデーションの内容が違う場合ですね。

本郷:現地の考え方と我々の考え方に差が出た場合にはなぜそのような違いが出て来たかはいろいろな人の意見を聞いて確認することだ。

前田:ステークホルダーの枠が小さかった、偏っていた等の議論は個別案件の中身の話になって来る。ただ最低限EIAは公表してもらわないと、判断する根拠すらないという気がする。カテゴリBEIAを公表していないのは、それだけでかなりのマイナス・ファクターになると思う。

本山:IFCの場合、カテゴリBについては自ら環境情報のサマリーを行っている。そのような形で、環境に関してはこのような項目をチェックして欲しいと事前に相手に示すということはできないのか。

前田:それは今のガイドラインの環境チェックリストがそうだ。ただここでの話は、事前にEIAの公開をしてもらうのが望ましいと相手方に言っておくことだ。

原科:カテゴリBの場合は、レコメンデーションという形で始めて、確認した時に影響が大きそうであればその段階で新たに要求事項を出して、A並に扱うとすればよいのではないか。

松本(郁):JBIC自身による情報公開では、カテゴリAはもちろんのこと、Bの環境関連の情報は公開するわけですよね。

前田:環境情報であろうと何であろうと原則全部公開の対象となる。

入柿:おっしゃっているのは、情報公開法に基づく公開とは異なり、こちらから積極的に30日前とか120日前公開するということですよね。

松本(郁):そうだ。我々の提案は、JBICの環境配慮の方針として、A案件については、EIAの公開、Bについては、環境関連情報の公開を借入人に義務付けた方がよいということだ。

前田:それは我々が公開するのでよいのではないか。

松本(郁):それは私も考えた。120日前の公開が確保されるのであれば、現地で公開されない場合はJBICで公開されたものをみるという可能性はある。

前田:120日前というのはとても難しいが、我々が環境審査をやって得るような情報については、開示請求を待たずに公開せよということは可能だと思う。ドラフトEIAの公開は、我々の関与する前の段階のことだが、それがないと、融資対象としては不適格の可能性が高いとあらかじめ言っておこうということだ。

松本(郁):JBICとしての公開が、L/Aが終わった後では困るということだ。

前田:審査した内容のevaluation reportを最終決定前に公開せよということですね。

川上:JBIC自身の審査責任を果たすために、コンサルテーションが必要だと思う。

大村:前田さんは、JBICが提出されたEIAを公開するのだから、あらかじめ公開するよう義務付けはできるとおっしゃった。それに対し、本山さんのおっしゃったのは、それができるのであれば、チェックリストをJBICで出して、その項目に関しては公開を義務付けるのは可能ではないかということだ。ただ旧OECF業務でもそれに近いことはやっていて、カテゴリAでもBでも、住民移転が発生するような案件に関しては、移転住民の意向が十分聴取されたものでなければならないとしている。国際金融等業務でも、同様の記述があるが、EIAのように定式化できないものは、JBICが要求事項を示して、審査で確認をするのはできるのではないか。

 「情報公開」という言葉が持っている響きは、誰に対してもすべての情報を公開するという印象があるが、ここでいうステークホルダーとの合意形成の議論の中での情報公開は、そんなに広くとらなくてもよいのかも知れない。ただし、規模・影響が大きい案件では、限られた情報提供の範囲での判断には危険が伴うので、ある程度のものになると、定式化して広く情報公開し、意見を聴取して文書化せよというのが、環境アセスメント制度が発達してきた道筋だ。

作本:カテゴリAについて義務付けるという点はよいと思うが、カテゴリBrecommendとするのは、相手方の責務が曖昧なようで、こちらの裁量が大き過ぎてよくないように思う。いっそのこと義務付けないで、JBICの内部プロセスでBAに引き上げると明言するといった対応でABの峻別は明確な方がよいのではないか。また、アジア各国のEIAの公開状況はさまざまだ。近くのコピー機の有無、タイムリーな公開かどうか、政府機関ならまだしも、個々の民間銀行が窓口となっている場合など、実効性には疑問が多い。

高瀬:大変な作業だが、その第一歩を踏み出すことが大事だ。とりあえずのそのステップは今の話以上のことはできないのではないか。

原科:B案件に対するレコメンデーションの中身は、簡易なものをやってくれということでもよい。

本郷:私の理解では、かなり環境影響が大きいものはA、かなり軽微なものはC、残りはBである。つまりBの環境影響はそんなに大きくないので、あまり求めなくてもよいかも知れない。

作本:BAに引き上げる可能性があることは事前に示しておくのがよい。

入柿:確かに現行のガイドラインではカテゴリBの手続きはEIAが要るのか要らないのか曖昧だ。

原科:EA、簡易アセスみたいなものを考えられればよい。

大村:ABはあくまでも銀行側のカテゴリ分けのことだ。Bに関しては相手方の手続きに任せている。ABCのカテゴリにかかわらず必要な住民同意等のことは、カテゴリBは審査でみると書いておくのはすでにかなり厳しいことだと思う。カテゴリAについては手続きまで口を出すが、他のカテゴリについては口を出さないわけだ。

原科:情報公開に関する議論はこの辺にしよう。今後の研究会の進め方だが、具体的なガイドライン案の策定作業はどうしようか?

前田:それはプレゼンテーションが一巡してから今までの議論を集約しながらにしよう。

 

 

次回:2001227日(火)午後5時〜

佐藤−社会開発

次々回:2001314午後5時〜

松本(悟)−モニタリング