2006年1月25日

ニュースリリース

 

政府・自民党が公共調達から

違法伐採木材を排除する施策を発表

〜大きな前進であると同時に速やかな改善を求める〜

 

1月25日、政府・自民党はグリーン購入法を用いて国の公共調達から違法木材を排除するための施策について発表をした。これは、FoE Japanや(財)地球・人間環境フォーラムなどNGOの働きかけにより、同党政務調査会部会の「世界規模の森林の違法・不法な伐採及び輸出入等から地球環境を守るための対策検討チーム」(座長:松岡利勝衆議院議員)がリーダーシップを発揮して政府内で検討を進めてきたものである。現在は環境省によって同法基本方針の改定内容がパブリックコメント[1]に付されている(締切1月31日)が、2月の閣議決定を経て4月1日より施行される予定となっている。

本措置は、世界屈指の木材輸入国である日本として責任ある対応としての重要な一歩であり、国内外の森林問題に懸念を持っている市民社会としても高く評価をしている。しかしながら、現状の内容では木材の合法性や持続可能性の定義が不足していることや、それらを確認する方法において実効性を十分確保できないことなどの、課題があることも事実であり、措置の導入後も継続的かつ速やかに改善をしていかなければならない。

今後改善が求められる主な問題点は次の5点である。

 

1.合法性の定義が限定されていること
現状の案では合法性は伐採時の法令だけに限定されているが、それ以外にも木材加工・運搬・貿易時における環境面や社会面も含む関連法規に遵守していなければならない。とりわけ、森林法の施行やガバナンスに問題のある国々では、伐採地周辺での地域社会の権利に関する法規が適切に施行されないために伐採業者との対立が生じているケースも多い。伐採により一部の業者や購入者だけが利益を得て、地元の住民が被害を被ることの無いようにしなければならない。具体的な合法性の定義は国際的な場でも検討されているところであるが、日本政府が支援をしてまとめられた「アジア森林パートナーシップにおける合法性の基準」を参照することができる。

 

2.持続可能性の定義が定義になっていない
現状の案では持続可能性は「持続可能な森林経営が営まれている森林から産出されたもの」と記述されているがこれでは定義になっていない。持続可能な森林経営については、国際的にコンセンサスを得ているモントリオールプロセスの指標等を参考に、土地の所有権が明確になっていること、地域社会や先住民、労働者の権利を尊重していること、森林の生産力が持続的に維持されていること、生物多様性や土壌及び水資源が保全されていること、などを含む具体的判断指針を持つべきである。
 

3.合法性の確認が不十分
違法伐採が蔓延している国では、社会的背景が日本とはまったく異なる。書類の偽造や汚職腐敗が日常的に蔓延しており、サプライヤーから「合法です」と書いた書類があるかどうかを確認するだけではなんら効果が無い。合法性の確認には伐採地まで遡ったサプライチェーンの把握と独立した第三者機関による証明が必要である。
 

4.本措置実施状況の独立したチェック体制を
本措置を実施に当たっては、実際に調達された木材製品を事後評価し、適切に合法性・持続可能性が証明・確認されているかどうかを公正にチェックするべきである。調達された木材製品の合法性に疑義が生じた際には、納入業者に合法性を証明する書類の提出を要請するなど、独立したチェック体制を整えるべきである。
 

5.調達サイドの取り組みが書かれていない
本措置のガイドライン(案)に書かれていることは、木材業界に対する指導のみであり、調達側である国の機関としてやるべき事が何らかかれていない。グリーン購入法は本来は国の機関と契約業者に対して義務を課すものであるのだから、調達者としてできる事、やるべき事もガイドラインに盛り込むべきであろう。建築工事であれば、設計、入札、契約、工事・納入の各段階で、違法木材が混入するリスクを減らし、適切にチェックができるような具体的対応策が必要である。

 

改善に向けた開かれた議論を

ガイドライン(案)の冒頭にも書かれているように、本措置は「地球規模での環境保全、持続可能な森林経営の推進にとってきわめて重要な課題である」違法伐採を無くすことを目的とするものである。違法伐採が問題となっている国からの木材に対して有効に機能することができるかどうかの視点で制度を作らなければならない。現状はまだまだ問題の多い状態であると言わざるをえない。

林野庁は、本年4月以降、協議会を設けて本措置の改善を議論する予定としている。協議会では、関係各省庁はもちろん、木材業界やNGOも含めて、公平で開かれた議論を通してガイドラインをより実効性の高いものにしていく必要がある。

“フェアウッド”の利用促進を

またその一方で、木材から他の資材へシフトしてしまうことの無いような配慮も必要だ。化石燃料消費の削減の観点からは、金属やプラスチックなどに比べてバイオマス資源である木材の優位性は絶対的なものである。調達者はこの点も配慮をしながらフェアに(=環境・社会に配慮して)生産された木材を積極的に採用するべきであろう。同時に、国内の木材業者が自ら進んで違法伐採対策に取り組むようなケースに対しては積極的にサポートをしていくべきである。

以上

国際環境NGO FoE Japan 岡崎時春/中澤健一 (tel: 03-3951-1081)

地球・人間環境フォーラム 坂本有希/満田夏花 (tel: 03-3592-9735)

 


[1] 環境省ホームページ「グリーン購入法に係る特定調達品目及びその判断の基準等の見直しの概要(案)に対する意見の募集について(違法伐採関係、ディスプレイ及び自動車)」http://www.env.go.jp/info/iken/h180131a/index.html