「持続可能な原材料調達 連続セミナー」より

2006年6月27日

バイオ燃料輸入に潜む落とし穴
より持続的なバイオマス利用促進を

泊 みゆき (バイオマス産業社会ネットワーク理事長) 

温暖化防止という観点から、バイオマス・ニッポン総合戦略では原油換算で50万klのバイオマス輸送用燃料の導入が見込まれている。しかし、この大量のバイオマスの大部分は海外から輸入されることになる可能性が高い。これは大規模なプランテーションの造成を促すことにつながり、生産現場での環境・社会影響は大きなものになるおそれがある。そこで、国産・地域産のバイオ燃料を優先して導入すること、さらに持続可能なバイオ燃料を導入するためのガイドラインづくりが必要だ。

国のバイオマス政策のもととなるバイオマス・ニッポン総合戦略が今年3月、改定された。改定のポイントの一つは、バイオマス輸送用燃料の本格導入であり、温暖化防止の観点から原油換算50万klの導入が見込まれている。

廃食油からのバイオディーゼル生産などバイオ燃料利用の取り組みは国内でも始まっているが、原料調達の制約などから50万klの9割は輸入になると見られている。具体的にはマレーシア、インドネシアからのパーム油およびブラジルからのエタノール輸入である。

輸入バイオマスの罠

パーム油の生産において環境・社会的にさまざまな問題が生じている。ここ15年でマレーシアのパーム油プランテーション面積は2倍に、インドネシアでは3倍に増加してしており、このままではボルネオ島の二次林がほぼ消滅すると危惧する関係者もいる。

もう一つの問題は、輸入バイオ燃料利用の温暖化対策としての効果である。現在なされている多くのLCA(ライフサイクル・アセスメント)評価では、森林破壊など用地転換に伴う排出や、パーム油製造過程におけるメタンガス発生が含まれていない。こうした面も考慮した上で利用しないと、温暖化防止対策としての効果が上らないおそれもある。

輸入ガイドライン作成を

一方、エネルギー資源や食糧の大半を輸入している現状では、ある程度のバイオ燃料の輸入はやむをえない選択となるかもしれない。ただし、国産・地域産のバイオ燃料を優先し、その利用を阻害しない形で輸入バイオ燃料を導入すること、輸入バイオ燃料については、環境・社会面で問題の大きいものを排除し、できるだけ持続可能なバイオ燃料を導入するためのガイドラインを作成し実効性を高めること――といった対策が不可欠であろう。

さらに、他国が非持続的な資源を大量に消費していたのでは、事態は改善しない。例えば、パームオイル最大の輸入国の一つは食用油として輸入する中国である。世界の資源作物の生産・取引の持続性を向上するよう、日本が国際的な枠組の中で積極的な役割を果たしていくことも重要である。

利害関係者アプローチ

国産・地域産バイオ燃料利用といっても、現状では生産量が少ない、価格が高いといった問題がある。それらを克服する一つの方法として、当バイオマス産業社会ネットワークでは、利害関係者アプローチ(詳しくは『バイオマス産業社会』(築地書館)参照)を提案・推進している。これは、国産・地域産のバイオマス資源をLCAを行った上でグリーン購入・調達の対象とすることなどで市場を拡大し、持続可能性に関心をもつ利用者、あるいは炭素クレジットなどにより、多少割高であっても利用する利害関係者が率先して購入することで、普及を促すものだ。

こうした方策により、バイオ燃料の輸入が、せめて非持続的な経済活動を助長するものにならないよう、関係者の関心を喚起していきたい。

参考1 バイオ燃料の持続可能性を確保するために目指すべき方向性




参考2 輸入バイオ燃料に当たって留意すべき点

輸入バイオ燃料の持続可能性を確保するために以下のような骨子のガイドラインを検討すべきである。

また、世界人口はさらに増加し食糧事情の悪化が予想される中、限られた耕地をエネルギー・資源に回すと食糧不足を加速するおそれがあることにも留意すべきである。

対処例

(2006年6月27日東京都内にて)


関連情報:
持続可能な原材料調達 連続セミナー【全6回】
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