韓国、タイでLA21ワークショップ開催  

photo ローカルアジェンダ21を策定している日本と韓国およびタイの自治体によるワークショップが2月(韓国・ソウル)、3月(タイ4都市)で開催された。

 このうち、2月14〜15日、韓国で開催された「ローカルアジェンダ21日韓ワークショップinソウル」では、日韓の地方自治体、政府関係者、NGOなど約130人が参加。日本からは熊本県水俣市、京都府長岡京市、大阪府豊中市、長野県飯田市、東京都板橋区、北海道石狩市、環境NGO「環境市民」、韓国からはソウル特別市、浦項市、仁川市、順天市などが事例発表したほか、学者、NGO、ジャーナリストなどが討議に加わった。

 韓国では昨年、長い間、開発か環境保全かで論議の続いていた東江(トンガン)の寧越(ヨンウォル)ダムの建設が白紙に戻され、多くの国民は国家政策が環境最優先に移行したと認識しているという。70%近い地方自治体がLA21策定に取り組んでいる背景ともなり、「持続可能な共同体に向けてLA21は希望の原動力」(金他均・グリーン連合事務局長)となっている。
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 また、3月13日〜16日にはタイ国内4都市(ランパン、バンプルー、ノンタブリ、バンコク)で開催され、日本からは神奈川県鎌倉市、名古屋市、熊本県宮原町が参加。また周辺都市の自治体、NGO関係者、地域住民が各100人程度参加した。ワークショップでは参加自治体の事例発表、経験、ベストプラクティスの議論に加え、各都市で取り組まれている環境教育やリサイクル運動の現場を視察し、情報交流を深めた。タイでは現在、Municipal League of Thailand内のLocal Agenda 21 Task Force、Thailand Environment Instituteを中心としたローカルアジェンダ21推進のためのサポートが進められている。


ローカルアジェンダ21日韓ワークショップinソウル報告

日韓の地方自治体が LA21で意見交換

 ローカルアジェンダ21を策定・実施している日本と韓国の地方自治体が一堂に会し、情報交換・経験交流を行う「ローカルアジェンダ21日韓ワークショップinソウル」が去る2月、ソウル市内で開かれた。

 日本の環境省、韓国自治行政部、環境部、韓国地方自治団体国際化財団、当フォーラムで構成する実行委員会の主催によるもので、韓国内で両国の地方自治体がローカルアジェンダ21(以下LA21)について取り組み事例を発表し、意見交換するのは初めて。会議最終日の2月15日、ソウル市は32年ぶりの大雪に見舞われたが、会場には地方自治体、政府の関係者、NGOなど73団体、約130人がつめかけた。

 日韓の地方自治体間でLA21についてのワークショップが実現したのは、1997年6月、トロントで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)持続可能な開発に関わる環境大臣会合において、当時の鈴木恒夫環境政務次官が「アジア・太平洋地域の持続可能な開発に向けての取り組みを一層強化していく」と日本政府の国際貢献の一つとして、LA21の普及・促進を表明したことがきっかけ。

 環境庁(当時)は98年度から、当フォーラムに対し、アジア・太平洋地域でのLA21の促進事業を委託し、アジア各国の取り組み状況調査、LA21策定のためのソースブック作成などを行ってきた。さらに、2000年度事業として行われたのが、韓国、タイ(3月13日〜16日に予定)でのワークショップ。

 韓国でのワークショップには、日本側から環境省、熊本県水俣市、京都府長岡京市、大阪府豊中市、長野県飯田市、東京都板橋区、北海道石狩市、さらにNGOとして「環境市民」の代表が参加。韓国側からはソウル特別市、浦項市、仁川市、順天市など7団体が事例発表をしたほか、学者、研究者、NGO、ジャーナリストなどが討議に加わった。

高まる韓国自治体の
LA21策定熱

 韓国には248の地方自治体があり、このうち16の道や特別市を含む130団体がLA21を策定済みで47団体が策定中。95年に地方自治体の首長の公選制が実現し、地方分権・民主化とLA21の策定が地方行政の大きな課題になっている。さらに、2000年6月には、LA21全国協議会が設立された。また同年9月に発足した大統領直属の持続可能発展委員会(President's Com-mission on Sustainable Develop-ment)が、LA21の推進を課題として掲げており、地方自治体の積極的な取り組みの大きな動機づけになっている。

 2日間にわたって行われたワークショップでは、飯田市の田中秀典市長から、市民、企業、行政が一体となって取り組んでいる「環境文化都市」づくり、水俣市の吉本哲郎環境対策課長からは、負の遺産であった水俣のイメージを環境モデル都市というプラスのイメージに変革させた「祈りと再生」の取り組み過程について特別講演が行われ、参加者から大きな共感を得た。

ソウル特別市では
LA21の歌募集

 ワークショップは、日本側、韓国側の先進事例を交互に発表、討論する形で進められた。以下、韓国地方自治体のいくつかの取り組みについて紹介する。

 鉄鋼の都市として日本でも知られている浦項市については、「青い浦項21推進委員会」会長で浦項工科大学教授の南寅植氏が、生態都市(eco-city)づくりへの取り組みについて発表した。

 鉄鋼都市として繁栄してきた浦項市(人口50万人)は、工業団地から出される大気汚染物質や廃棄物に頭を痛める公害都市でもあったが、92年から5年間にわたり、国の環境保全モデル都市に指定され、生態都市に向けての活発な対策がとられてきた。

 その活動は96年からスタートした「青い浦項21」推進の一環として位置づけられ、全市民参加の緑化事業、市民の森の造成、河川浄化事業の実施、下水処理場を環境教育の場として活用するなどの努力が重ねられている。

 韓国で最も進んだ環境対策を進めているといわれるソウル特別市の取り組みについては、ソウル特別市環境企画局長の鞠允鎬氏が発表した。

 同市は、97年に8分野、30の改善目標、426の行動計画からなる「ソウルアジェンダ21」を策定し、計画を進めてきた。2000年1月には環境基本条例を改正し、市民、企業、専門家など100人からなる「緑のソウル市民委員会」に、市長や担当幹部7人が委員として参加することになり、官民協働でLA21を作成・実践・評価する組織として定着している。

 同市は、これに先立ち、「緑のソウル市民委員会」を通じて、小、中、高150校、4万人の青少年に対するLA21の教育(98年)、地下鉄車内でのLA21のPR(99年)、「ソウルアジェンダ21」の歌の募集、環境商品展でのPR(2000年)などを行った。

環境に配慮した
ワールドカップを

 韓国では昨年、長い間、開発か環境保全かで論議の続いていた東江(トンガン)の寧越(ヨンウォル)ダムの建設が白紙に戻され、多くの国民は国家政策が環境最優先に移行したと認識しているという。70%近い地方自治体がLA21策定に取り組んでいる背景にもなっているが、参加した韓国のNGOの代表からは、「地方自治体が環境破壊の先頭に立っていることがまだある。民主的な討論をするためにLA21を活用することが重要で、小さい村レベルでもLA21に取り組むべきだ」との意見も出されていた。

 また、地方自治体の首長公選で活躍したNGOからグリーン連合という環境NGOの組織局長になった金他均さんは、「あるアンケート調査で、ソウルの大学生の87%がLA21について知らないと答えた。低調な市民参加、独創性の不在、宣言的なレベルに留まっていることなど、さまざまな問題点がある。しかし、持続可能な共同体に向けて、LA21は希望の原動力にもなっている」と現状を率直に語っていた。

 このほか、基調講演を行ったLA21全国協議会会長の金貴坤ソウル大学教授は、日韓両国の自治体で環境に配慮した大会にするための「ワールドカップ・アジェンダ21」の作成、日韓青少年による持続可能な発展をテーマにした会議の開催などを提案して注目された。

 会議では、国レベルで進められている日中韓3ヵ国の環境大臣会合のような交流に連動して、地方自治体間でも継続的な交流が必要だとする一方、各国の政府が地方自治体の取り組みを支援し、2002年のリオ+10に向けて、さらにLA21の推進を図るべきだとの提言がまとめられた。 ((財)地球・人間環境フォーラム 平野 喬)

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