国際機関、NGOの取り組みのレビュー


  1. FAO(国連食糧農業機関)
  2. ITTO(国際熱帯木材機関)
  3. UNEP(国連環境計画)
  4. GEF(地球環境ファシリティー)
  5. 世界銀行
  6. CGIAR(国際農業研究協議グループ)
  7. CIFOR(国際森林・林業研究センター)
  8. IUFRO(国際林業研究機関連合)
  9. IUCN(国際自然保護連合)
  10. WWF(世界自然保護基金)
  11. WRI(World Resources Institute、世界資源研究所)
  12. WCMC(World Conservation Monitoring Centre、世界自然保護モニタリングセンター)

国際機関

(1) FAO

http://www.fao.org
FAO(Food and Agriculture Organization、国連食糧農業機関)は農民の生活水準の向上や栄養状態の改善、農業生産の向上などについて国際協力を実現することを目的として、1945年に設立された。加盟国は1998年現在、175カ国とEC。本部はローマ(イタリア)。
 FAOの使命は持続可能な農業と農業開発、自然資源の保全と管理のための長期戦略の推進である。現在、総務、インフォメーション、経済・社会政策、技術協力、農業、水産業、森林、持続可能な開発、の8分野に組織が分かれている。
a) FAOの森林プログラム(FAO Forestry Programme
 FAOにおいて森林問題とは、次世代の需要に応えるために資源を確実に保障するよう経済、社会及び環境の状況を向上させるために森林やその他の資源をいかに活用していくかという点において、最も重要かつ複雑な問題である、と位置付けられている。
 森林問題におけるFAOの使命は「世界の森林の持続可能な経営において、加盟国への支援を通じて人々の幸福を保障すること」である。そしてその目標は:
・ 持続可能な土地利用や食料の保障、さらに国家や地域及び地球的レベルにおける経済、社会開発や文化的価値への貢献
・ 森林システムやその遺伝資源の保全や森林の持続可能な経営及び有効利用
・ 信頼できる確かでタイムリーな森林関連情報の提供
である。
 森林プログラムは次の3つの技術部門に分けられている。
@林業政策と計画:
 有効で持続可能な林業活動は、林業と他の業界との相互作用を認識しているような政策や政策上の枠組みの中で行われなければならない−という観点から、政策開発や制度強化の支援、林産品の生産や取り引き及びその消費に関する情報の収集や評価を行う。さらに、FAOの森林プログラムの活動の中でも優先度の高い分野のひとつとして考えられているコミュニティーフォレストリーについてもこの部門に含まれる。
A森林資源:
 森林や野生資源の評価や管理に関する基礎的な活動を担当している。この部門の下では、あらゆるタイプの自然林や人工林及びその森林が育んでいる生態系の管理のためのガイドラインを設けている。世界の森林の現状に関する情報の収集や評価である、森林資源評価(Forest Resources Assessment)はこの部門の活動の核となるものである。アグロフォレストリー(植栽木間の空き地に野菜などを栽培し、農業収益と林業収益を可能とする農林複合経営)やコミュニティーフォレストリー、森林火災、気候変動の影響などについてもこの部門が担当する。
森林資源評価(Forest Resources Assessment)
世界の森林の現状やその変化に関する情報の提供を目的とする。そのために、各国の森林評価を下に、開発途上国に対し技術支援を行う。そして、途上国、先進国双方の森林資源評価をまとめるほか、世界全体の森林資源評価のデータベースや10年ごとには各国のデータをもとに調査報告書を作成する。次の報告書となる「2000年の世界森林資源評価(Global Forest Resources Assessment 2000)」が現在、作成中である。これは、1990〜2000年の10年間に起きた森林の変化を検証し、1980〜90年の10年間の変化と比較するものである。
B林産品:
 森林資源は経済的に持続可能な方法で利用される場合に限り、その保全と管理が保障される、ということから、あらゆる木材・非木材製品の持続可能な利用に関する問題に取り組む部門である。この部門では、エネルギー利用のための森林のバイオマスの有効利用についても取り組んでいる。
 
b) TFAP(熱帯林行動計画)
 TFAPは、各国が行う熱帯林の保全、造成及び適正な利用のための行動計画作りへの支援事業であり、1985年6月の第7回FAO熱帯林開発委員会で提案され、1985年7月の世界林業会議及び1985年11月の第23回FAO総会において採択・支持された。この計画は、@土地利用における林業、A林産業の開発、B燃料とエネルギー、C熱帯林生態系の保全、D制度・機関の分野についての国際的な行動指針を示したもので、1994年11月現在、熱帯林地域の92カ国において国別の熱帯林行動計画が策定中または、策定済みである。
 1990年5月にはTFAP見直しのための独立評価報告書がまとめられ、実施のための基金を有する独立した機構とする旨勧告がなされ、TFAPに対し助言勧告を行う協議グループ(Consultative Group)の設置が1993年7月のFAO第103回理事会で決定されたが、いまだ実現には至っていない。

c) フィールドプロジェクト
 先進加盟国及び国連開発計画(UNDP)や世界食糧計画(WFP)などの関係国連機関からの任意の拠出金を資金として、1998年には約300件の森林・林業関係のフィールドプロジェクトが開発途上国で実施されている。このプロジェクトの実施において重視されるのは、関連グループや個人を巻き込む直接参加のプロセスについてである。
 フィールドプロジェクトは各国の多様な状況の下で実施され、様々な需要に応えていくが、最近では全体的に、技術支援から各国の自立を促進するという目標と一致した技術協力へと実施内容が移行している。

d) コミュニティーフォレストリー
 地域住民の参加による地域住民還元型の林業を促進するため、125カ国の1万以上もの機関及び個人の支援の下に、「森林、樹木、人々の計画(FTPP: Forests, Trees, and People Programme)を実施しているほか、開発途上国向けの出版物の発行を含む啓蒙・普及活動、住民参加型の新しいタイプのフィールド事業を実施している。
*「森林、樹木、人々の計画(FTPP: Forests, Trees, and People)
地域住民の森林及び森林資源の管理能力を強化することを目標に、1987年に発足したプログラム。政府やNGO、各地域の機関や大学などの協力機関と合同で、地域住民による森林資源の有効利用と管理が調査、研究されている。主な目標は:
・ 住民参加型林業のための方法や手段の研究
・ 各国や各地域の研究所が住民参加型の林業や関連のフィールド事業に取り組むための能力の強化
・ 新しい方法や手段に関する情報や経験の共有

e) 統計情報、技術改良と普及
 世界各国、各地域の森林・林業分野の統計情報や技術開発情報を収集・分析し、林産物年報や技術ガイドブックなどの発行を行っている。
 「世界森林事情(State of the World's Forests)」は2年に1回発行され、政策関連データの要約と森林資源や林産品の生産や取り引きなどに関する情報を掲載している。また、季刊誌「Unasylva」は森林開発が直面している問題の分析を扱っている。

f) 持続可能な森林経営の基準・指標の統一化に関する専門家会合
 モントリオール・プロセスの合意に伴い、基準・指標作りの対象となる森林は、世界の森林面積の87%を占めるまでになったことから、FAOは、1995年2月、「持続可能な森林経営の基準・指標の統一化に関する専門家会合」をローマ(イタリア)のFAO本部で開催した。
 ここでは、現段階においては、これまで作成された基準・指標の適用及び基準・指標づくりへの未参加国における取り組みの推進が重要であり、世界共通の基準・指標の作成や既存のプロセスの統合化は、今後の検討課題であるとされた。

g) 林業関係閣僚会合
 1995年3月、第12回COFO(Committee on Forestry、FAO林業委員会)の開催に合わせ、UNCED(「国連環境開発会議」(地球サミット))合意の実施に政治的な推進力を与えるとともに、FAOの活動に方向付けを行うことを目的として、FAOとしては初めての「林業関係閣僚会合」がローマ(イタリア)のFAO本部で開催された。同会議には108カ国が参加し、うち71カ国からは閣僚が出席して、持続可能な森林経営の達成のための優先的課題などをとりまとめた「林業に関するローマ・ステートメント」が採択され、その結果はCSD(「国連持続可能な開発委員会」)第3回会合に報告された。
 さらに、FAOは、CSD第3回会合に向けて、民間産業部門やNGOの意見の集約を目的として、1995年3月、「UNCEDフォローアップに関する民間林業産業部門会合」と「林業に関するNGO会合」を開催し、その結果は、林業関係閣僚会合に報告された。
 討議の結果、森林の重要性、森林・林業問題の複雑性と分野横断的な取り組みの必要性、自由貿易と環境保全の両立性、これまでの取り組み成果とさらなる今後の取り組みの必要性などが確認されるとともに、
・FAOは、関係国際機関と緊密な連携関係を築くとともに、産業界、NGOなどに対して開放的な姿勢を維持すべき
・FAOは、森林・林業関係予算の一層の拡大を図るとともに、技術・資源情報の収集・分析・普及、技術・政策支援などの分野に的を絞って取り組みを進めるべき
などの事項を含む報告書が採択された。
 一方、作業グループにおいて合意文書の検討が進められたが、最終的には、UNCED合意の実施のためには、特に、
@世界緑化や砂漠化防止を含む、分野横断的な取り組みや効果的かつ総合的な国家森林計画の策定
A持続可能な森林経営の基準・指標の継続的な適用やその実証
B国際協力の充実と二国間・多国間協力の効率化や協調化
C非差別的な林産物貿易の促進と自主的な認証制度の持続可能な森林経営の推進に及ぼす効果の研究
−などが必要であり、FAOは、その技術性、専門性に基づき、優先順位を明らかにしつつ取り組みを進めることとし、また、IPFの活動にも積極的に参画して行くべきとする内容の「林業に関するローマ・ステートメント」を取りまとめた。
 1999年3月には、「林業の持続可能性に関する閣僚会合」がローマのFAO本部で開催された。この会合では、事前に開かれたCOFO第14回会議の結果をもとに、持続可能な森林開発を支援するための国際的な取り組みの必要性や森林火災のための世界的な行動が討議され、2000-2015年のFAO戦略の枠組みが提案され、再び「林業に関するローマ・ステートメント」として取りまとめられた。この宣言では、持続可能な森林管理を世界的に普及させることにより、生態系のシステムとしての森林の本来の姿を維持する必要性を強調している。そして、以下のように約束している:
・ 特に次のエルニーニョ/ラニーニャ現象に備えて、森林火災を防止、管理、監視するための取り組みをさらに調整し強化する。そして、長期的に火災の背景的要因について調査、研究する。
・ 持続可能な森林管理を支援する、分野を越えた政策や活動を広めるために、協力機関との連携を強化する。
・ 第8回UNCSD会議(2000年開催予定)での世界的な森林政策に関する議論のために建設的かつ進歩的な結論が出せるよう、取り組んでいく。

(2) ITTO(International Tropical Timber Organization、国際熱帯木材機関)

http://www.itto.or.jp/live/jpn/
国際熱帯木材協定(ITTA)の運用によって熱帯木材の生産国と消費国の国際協力を図り、熱帯林の保護を目的として、1986年に設立された。本部は横浜市(日本)に置かれ、加盟国は1998年11月現在、49カ国。全加盟国が保有する森林だけで世界の熱帯雨林の約75%を占め、熱帯材取り引きの90%以上を扱っている。研究開発, 造林と森林経営, 生産現地加工の推進, 市場情報の改善など生産消費の立場から熱帯材の保全に取り組んでいる。
ITTOの目標は:
・ 持続可能な熱帯林開発のための各国の政策の改善を推進する。
・ 世界的な熱帯材貿易における加盟国間の協力や協議のための有効な枠組みを作り出す。
・ 熱帯材の国際取り引きの普及や多様化を推進する。
・ 森林経営と木材利用の向上のための調査や開発を推進する。
・ 熱帯材の国際市場をさらに透明性あるものにするために、市場の情報を促進する。
・ 加盟国の産業化を推進するために、熱帯材の現地加工を促進する。
・ 産業としての熱帯材の植林や森林経営活動を加盟各国が支援するようにする。
・ 生産国の熱帯材の輸出市場の向上を図る。

a) ITTAの改訂
1983年のITTAは、UNCTAD(国連貿易開発会議)における「一次産品総合計画」(開発途上国が特に輸出に関心のある産品の貿易の安定を図ることを目的)に基づいて、1983年に採択され、1985年に発効した国際商品協定のひとつである。このITTAは、1994年3月31日が有効期限となっていたため、1993年4月から改定交渉会議が行われてきた。交渉では、新協定の対象範囲(生産国側は、あらゆるタイプの森林が持続可能な経営のための厳しいガイドラインのもとに管理されるようにするため、ITTAの対象範囲を現行の熱帯木材からすべての森林の木材に拡大するように要求)、「西暦2000年目標」の取り扱い(消費国側は、この目標を新協定に盛り込むように要求)などの問題を巡って、生産国と消費国が対立し難航していたが、1994年1月の第4回改定交渉会議において、すべての会議参加国が合意し、1994年のITTAが採択された。
 1994年のITTAは、基本的には1983年のITTAの枠組みを踏襲したものとなっているが、新たにそれぞれ次の点で生産国、消費国の意見を取り入れたものとなっている。そして、森林の保全と管理について、より具体的な内容となっている。目的には以下の項目が含まれる:
・ 世界の木材市場において、全加盟国間で協力や協議、政策開発のための有効な枠組みを提供する。
・ 持続可能な開発のプロセスに貢献し、2000年までに持続可能な経営が行われている森林から生産された熱帯材や林産品を輸出できるように加盟各国の戦略を支援する。
・ 保護主義を引き起こさないため、非差別的な木材貿易を推進するための協議の場を提供する。
・ 森林管理を向上させ、木材を有効に利用できるよう、調査・研究を推進し支援する。

@協定の対象範囲
 基本的には1983年の協定の枠組みの「熱帯木材」を維持したが、一部、市場情報の提供については温帯林なども対象とする。従って、協定の名称、生産国・消費国の区分などは従来のままを維持した。
A「西暦2000年目標」の取り扱い
 協定の目的として明記された。
B新たな基金の創設
 熱帯林の持続可能な経営を達成するため、新たな追加的資金、技術援助を行うための基金(「西暦2000年目標」がインドネシアのバリ島で開催された理事会で合意されたことから、「バリ・パートナーシップ基金」と称される)の創設が明記された。
C協定の有効機関
 4年間とされた(理事会の決定により、3年ずつ2回まで延長できる)。
D貿易差別の禁止
 貿易を禁止したり、制限する措置を認めない規定を設けた。

 また、生産国側から熱帯林諸国だけが持続可能な森林経営を義務づけられるのは不公平であるとの主張が強く行われたこともあり、1994年1月の第4回改定交渉会議において、すべての会議参加国が1994年の協定に合意した際に会議に参加している消費国から持続可能な森林経営の実施に関する公式表明が行われた。公式表明は、温帯林などを有する消費国も自国の森林の持続可能な経営を維持または西暦2000年までに達成することを約束するという共同声明である。

b) 「西暦2000年目標(Year 2000 Objective)」
 1990年の第9回理事会において採択された目標で、「西暦2000年までに、持続可能な経営が行われている森林から生産された木材のみを貿易の対象とする」というもの。95年には、目標の達成のための優先課題7項目が確認された。7項目は@森林政策と法制度の採用、A永久森林地の確保、B影響の少ない伐採の採用、C林業従事者のトレーニング、D伐採量の持続的な生産量への制限、E政治的及び消費者の意識の向上、F森林の調査をデータや知識の評価及び利用に集中させること−である。

c) ITTOの基準・指標
 熱帯林の持続可能な基準・指標については、ITTOにおける政策活動の一環としてUNCED以前に策定されている。
 これは、第8回理事会(1990年5月)において採択された「西暦2000年目標」を含むアクション・プラン(行動計画)が第9回理事会(1990年11月)において採択されており、この目標の達成のための指標として策定され、「熱帯林の持続可能な経営の評価のための基準」として第12回理事会(1992年5月)において採択されたものである。
 この「熱帯林の持続可能な経営の評価のための基準」では、持続可能な森林経営の定義は、「持続可能な森林経営は、森林の本来の価値及び将来の生産性を不適切に減少させることなく、また、自然及び社会環境に対する好ましくない影響を誤って与えることなく、期待される森林の生産物及びサービスの提供を継続的な流れとして行うことに関して、ひとつ、あるいは、いくつかの明白に特定された経営の目的を達成するため、永久森林を経営する過程である」とされている。

d) 木材のラベリング、認証制度
 ITTOでは、1989年に、持続可能な経営が行われている森林から生産された木材のラベリングが提案されたが、採用されるには至らなかった。その後、第13回理事会(1992年11月)から第15回理事会(1993年11月)にかけて、「西暦2000年目標(Year 2000 Objective)」の達成のための方策についてコンサルタントに調査を依頼し、そのコンサルタントによる「熱帯木材貿易と熱帯林の持続可能な経営との間の経済的リンケージ」に関する報告書(バービエー・レポート)をもとに加盟各国による検討・議論が行われた。
 認証制度は、環境と貿易を結ぶ経済的措置の一種であり、持続可能な森林経営を実現するためのひとつの有力な手法として位置付けられている。さらに、森林経営を改善すること及び市場アクセスを確保することを目的とする制度である。
 主な問題点としては、制度の木材市場に与える影響の度合い、持続可能な森林経営の範囲、実施する場合のコスト、制度を運営・管理する組織、制度の導入によるメリットやデメリットなど様々な問題があり、今後これらの多くの問題を解消していく必要がある。
 この認証制度に関し、環境保護意識の高い消費者からの圧力を受けている欧州などの木材業界は実現にかなり積極的な姿勢を見せている。一方、開発途上国では、この制度に否定的なブラジルから、熱帯木材に限らずすべての木材を対象にするならばという条件付きで前向きな姿勢を見せるインドネシアなどまで、その考え方には大きな開きがある。
 従って、今後ITTOに限らず、貿易政策と環境政策をいかに調和させていくかという観点で、いくつもの国際機関で検討・議論が行われていくことになるものと見込まれる。一方、ITTOは、様々な環境ラベリング制度の実態把握を含め、熱帯林に関する差別的でない認証制度の研究を始めている。

e) 他の森林関連機関との協力
 他の森林関連機関との協力は以下の通りである。
・1993年、「熱帯木材生産林における生物多様性の保全に関するガイドライン(Guidelines on the Conservation of Biological Diversity in Tropical Production Forests)を採択。これは森林経営のための重要な目標として、生物多様性の保全のための各国の森林政策や制度を求めるものである。
・今後、GATTとのさらなる協調を模索していく必要があるとされている。これは、GATTと1983年のITTAとの間の矛盾点が充分に解決されていないため、特に必要な課題である。
・CITES(「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」、通称:ワシントン条約)の木材に関するワーキンググループの活動に引き続き参加している。これは、木材の販売・流通実務上の取り扱いの困難性などの問題について条約を効果的に運用するために設置されたもので、国際機関との協力や付属書に掲載されている樹種の貿易の評価などについて討議がなされている。

(3) UNEP

http://www.unep.org/
 UNEP(United Nations Environment Program、国連環境計画)は1972年6月、ストックホルム(スウェーデン)で開催された国連人間環境会議で採択された「人間環境宣言」および「環境国際行動計画」を実施に移すための機関として、同年の国連総会決議に基づき設立された。本部はナイロビ(ケニア)。
 UNEPは、既存の国連諸機関が行っている環境に関する諸活動を総合的に調整管理するとともに、国連諸機関が着手していない環境問題に関して、国際協力を推進していくことを目的としている。設立以来、環境分野における国連システム内外の調整、オゾン層保護条約、気候変動枠組み条約、生物多様性条約などの国際的な枠組み作りなどに大きな役割を果たしてきている。そして、ITFF(Inter-Agency Task Force on Forests)においては、森林破壊の背景的要因と森林保全の分野において、主導的役割を果たしている。
 また、GEMS(The Global Environmental Monitoring System、地球環境監視システム)が設置されており、国際的なモニタリングを調整、活性化し、モニタリングが実施されている分野の環境に関する定期的なアセスメントが実施されている。
 さらに、世界銀行、UNDP(国連環境開発計画)そしてWRI(世界資源研究所)との協力の下、World Resources Report(WRR、世界資源レポート)を発行している。このレポートは2年に1度発行され、150カ国以上もの国の天然資源に関する最新のデータとともに、地球環境の現状に関する分析を内容とする。

a) 森林火災への対応
 1997年と98年には、大規模な森林火災がアマゾンやロシア、東南アジアなどの広範囲にわたって発生した。国連はこの緊急事態への対応を求められ、なかでもUNEPは各国連機関の調整役として中心的な役割を果たした。
・インドネシアの森林火災
 1998年2月、国連はASEAN(東南アジア諸国連合)9カ国の環境大臣から、森林火災に対する国際的な支援を要請された。なかでも、UNEPはこの緊急事態に対応するための各国の地域的取り組みに国連システムが加わるよう、調整役を求められた。これを受けて国連事務局長はUNEPの事務局長を国連による支援の取りまとめ役として任命した。
 UNEPの担当者はUNDAC(United Nations Disaster Assessment and Co-ordination team)の会合に参加、会合の結果はインドネシア政府やASEAN、国連の各機関などに報告された。
98年4月にはUNEPとOCHAによる会議がジュネーブで開かれ、1000万米ドル以上の支援金が拠出されることが決まった。支援金以外にも消火用品やコミュニケーション機器の援助などについても、UNDPやFAO、WMO、WHO、UNESCO及びUNEPからの支援も決まった。
 そして、FAOとも連携して、IFFとITFFとの森林火災問題についての議論に参加している。98年4月に行われた会議では、森林火災に関する共同プロジェクト実施のための250万ドルの拠出がITFFによって合意された。
 また、森林火災による健康への影響に対応するための政策のガイドラインの作成については、WHOと連携している。
 さらに、GEF(地球環境ファシリティー)により750000ドルもの資金提供を受けたプロジェクト(Emergency Response to Combat Forest Fires in Indonesia and to Prevent Regional Haze in South East Asia)も実施している。このプロジェクトはインドネシアの森林火災と東南アジア諸国における煙害の防止を目的とし、ASEANとの緊密な連携を取りながら実施されている。

(4) GEF

http://www.gefweb.org/

 GEF(地球環境ファシリティー)は、1991年3月に開発途上国の地球環境保全を目的とした事業や活動に対する贈与または超低利融資で資金を供給するシステムとして、世界銀行、UNDP、UNEPの3機関の協力体制の下に発足した。3機関はGEFのプロジェクトやプログラムを管理、実施しているが、GEFの事務局はその3機関から機能上は独立している。現在は156カ国がこのプログラムに参加している(1998年3月現在)。
 GEFは当初、パイロット・フェイズとして94年までの3年間のプログラムとして発足したが、94年にはGEF本格フェーズ(GEF T)の枠組みが合意され、その後3年間に20億ドルが増資された。
 GEFの活動対象は@地球温暖化の防止、A生物多様性の保全、B国際水域汚染の防止、Cオゾン層保護、の4分野である。砂漠化や森林破壊のような土壌破壊に関連した活動に関しては、上記の4分野に関連する場合は資金供与の対象となり得る。

・GEFにおける上記3機関の役割
 UNDPは技術援助活動及び能力開発事業、UNDPはGEFの支援活動における科学技術分析の発展の触媒的役割及び環境管理の進展、世界銀行はトラストファンドの受け皿となり投資プロジェクトをそれぞれ担当する。

(5) 世界銀行

http://www.worldbank.org/

 世界銀行は正式名称を国際復興開発銀行(IBRD)といい、1945年に発効した国債復興開発銀行協定に基づき国連内の機関として設けられた。同銀行は、復興及び開発を援助するために、100カ国以上もの開発途上国に対し、資金の貸付や民間貸付に対する保証を行っている。そして持続可能な発展と投資を通じて、貧困を減らし、人々の生活水準を向上させることを使命としている。この使命を達成するためにも、森林問題への取り組みは重要である、と位置付けられている。
 世界銀行の業務は、開発途上国における開発プロジェクトを通じて環境と深く関わっている。国際金融機関の中でもっとも早くから環境問題に着目し、1969年に環境担当アドバイサーを設置、その後すぐに環境問題室を設置した。80年には国連環境計画(UNEP)や他の多国間援助機関とともに、経済開発に係る環境政策と手続きに関する宣言を採択し、86年には自然地域管理に関する政策を採択、87年には環境局を新設した。その後、環境局では世界的な環境問題の顕在化、関心の高まりに対応し、89年に環境アセスメント作業指令を作成するとともに、環境アセスメントの実施や環境改善プロジェクトの実施のため、各国ごとの環境戦略を作成している。
 環境局はその活動分野を汚染と環境経済、水と自然地域、社会政策、地球環境の調整、の4項目に分けている。森林に関してはこのうち「水と自然地域」に深く関わっており、この分野からは、97年度に「持続可能な林産品市場の転換に関するイニシャチブ」、「保全に関するパートナーシップ」、「生物多様性に関する政策」、そして97/98年度には「自然地域及びその生態系管理」について、活動の成果報告書が作成されている。また、この部門では農業及び天然資源部門(Agriculture and Natural Resources Department, AGR)に対し、持続可能な森林管理に関するトレーニングを支援し、北方樹林の保全と管理に関するスタディー・ツアーを組織している。
 世界銀行はIDA(国際開発協会、第二世銀)とともに、開発途上国における開発プロジェクトへの支援を通じて熱帯林と深く関わっている。1987年、世界銀行の総裁は、林業プロジェクトの環境側面を重視しつつ、住民林業並びに社会林業をさらに充実していくことを明らかにした。また、世界銀行は、TFAP提唱機関のひとつであり、国別熱帯林行動計画作成にも積極的な支援を行っている。1990年11月、パリにおいて熱帯林保護を含む気候変動、生物多様性、国際水域の保護、オゾン層破壊などの地球規模の環境問題に取り組むための資金として、3年間で約13億ドルのGEF(地球環境ファシリティー)の設立が決定された。また、91年6月には、CIFOR(国際森林研究センター)を傘下に持つ国際農業研究協議グループ(CGIAR)への出資を行っている。

a) 森林関連プロジェクトへの投資
1991年に森林政策が改定されて以来、世界銀行の森林関連プロジェクトへは総計18億ドルもの資金が投入されている。

b) CEOフォーラム
世界銀行は林産業界の最高取締役との協議の場である「CEOフォーラム」を組織している。この組織の目的は企業の責任者に対し、彼らの政策や業務内容を持続可能な森林経営へと転換させ、導くことである。

c) 世界銀行/WWFイニシアチブ
http://www.worldwildlife.org/alliance/
 1997年6月の国連環境特別総会(UNGASS)では、ジェームス・ヴォルフェンゾーン総裁が演説の中で、「世界銀行は森林の保全と管理を向上させるために主導的な役割を果たす」と宣言。世界自然保護基金(WWF)の森林保全目標を支援するため、両者の間で合意が結ばれた。そして、森林の保全に関する今後の活動の目標として以下の点を挙げているが、これはWWFとIUCNの「生命(いのち)の森」戦略の目標と一致するものである。
・ 2005年までに生物多様性の価値の高い天然林5000万haを新たな森林保護区とする。
・ 2005年までに天然林2億haを持続可能な管理下に置き、独立した認証を受けさせる。このうち1億haは温帯林及び北方樹林地域、そして残り1億haは熱帯林地域とする。
この合意による最初の成果として、98年4月、世界銀行とブラジル政府との間で、アマゾンにおける2500万haを2000年までに新たな森林保護区とすることが発表された。世界銀行からの融資により、ブラジル政府が今後5年から10年の間に新設する森林保護区を明らかにすることが可能となったのである。この決定について、ブラジルのカルドソ大統領は「世界銀行とWWFとのパートナーシップは、自国の生物多様性を保全しようとする国が独自のプロジェクトを実施するに当たり、重要な役割を果たしてくれる」と述べている。

d) アジア開発銀行
http://www.adb.org/
 アジア開発銀行(The Asian Development Bank、ADB)は、アジア・太平洋地域の経済成長と経済協力を進め、開発途上国の経済発展に寄与することを目的に設立された地域開発金融機関のひとつでる。1966年に設立され、本部をマニラ(フィリピン)に置く。加盟国は57カ国(1997年現在)。インフラストラクチャー部に環境課を設置しており、融資に当たっての環境ガイドラインの策定をするなど、環境分野の活動にも力を入れている。
主な機能は、開発途上国の開発への融資、開発プロジェクトの策定・実施などのための技術援助、公共資本及び民間資本投資の促進、開発途上国の開発政策や計画の調整についての支援要請への対応であり、これらの活動を通して、この地域における林業の発展とも深く関わっている。ADBでは、近年、地域社会に必要な生活用の木材および飼料の需要を満たすための社会林業や伐採跡地、せき悪林地、荒廃流域などへの造林に力を入れている。ADBの森林・林業分野の活動の3原則として、
・ 将来、現在の世代に不可欠な森林の各種の保全機能
・ サービスと物の持続的な生産
・ 政策形成や実行上において不可欠な住民参加
が挙げられる。

国際研究機関

(6) CGIAR

http://www.cgiar.org/

 CGIAR(The Consultative Group on International Agricultural Research、国際農業研究協議グループ)は、世界銀行が中心となり、FAOとUNDPとの協力体制の下、1971年3月に設立された。国際研究や関連活動、各国の研究システムとの協力を通じて、発展途上国の農林水産業生産の持続的発展に寄与し、特に低所得者の栄養水準及び福祉を改善することを使命としている。現在、公的及び民間の58機関がメンバーとなり、16の国際農林水産業研究機関を指導、監督している。そして、@農作物の生産量の拡大、A環境保護、B生物多様性の保護、C農業政策の発展、D各国の研究の強化−の5分野に活動の焦点が当てられている。
 CGIARは、環境に適した自然資源の管理に基づいた持続可能な農業発展を推進している。設立当初の目的及び研究対象は、当時深刻な不足に直面していた熱帯諸国の米の増産であった。しかし、その後研究対象は米以外の穀物にも広がり、また、穀物の生産だけにとどまらず、農業システムや政策などについても研究されるようになった。そして1991年には、森林の保全や遺伝資源の利用、森林の生態系の持続可能な管理及びアグロフォレストリーの発展に関する研究を通じて、世界の森林と農地の破壊を抑制しようする多くの国際研究機関や政府を支援するために、林業やアグロフォレストリーもこれに加えられることとなった。林業関連の研究を行うCGIAR傘下の機関としては、以下の3機関があり、それぞれ異なった焦点で研究を進めている。
@CIFOR(国際森林・林業研究センター)森林の保全や再生、持続可能な利用をプログラム(プランテーションを含む)
AICRAF(国際アグロフォレストリー研究センター)アグロフォレストリー、特に持続可能な農業システムにおける多目的な樹木の利用
BIPGRI(国際植物遺伝資源研究センター)農作物と樹木の遺伝資源の保全と利用

 CGIARにおける1997年の林業関連研究に当てられた資金は約3300万ドルであった。これは同機関の研究費全体の約12%に相当する。

(7) CIFOR

http://www.cgiar.org.cifor

 CIFOR(The Center for International Forestry Research、国際森林・林業研究センター)は、森林の消失と破壊に伴う社会的、経済的そして環境上の影響に対応するため、CGIAR傘下の林業研究機関として、1993年、ボゴール(インドネシア)に設立された。CGIARの森林関連事業の主要な実施機関であり、そのプログラムは森林の保全や再生、持続可能な利用に関するものが中心となっている。
 CIFORは、林業やそのシステムにおける共同戦略や応用研究、関連活動を通じ、国家の発展のために適切な新技術の移転や社会組織の新たな手法の導入を促進することによって、開発途上国、特に熱帯地域の人々の持続した福祉に寄与すること使命とする。
そしてその目的は、@バランスのとれた森林管理のための科学的基礎を向上させる、A林産品の持続可能な利用と管理のための政策及び技術を向上させる、B最適な森林利用のための政策及び技術の向上を支援するために各国の研究を強化する、の3点である。そして@森林における生態学的・社会経済学的な関係を理解、A開発途上国の人々のために持続可能な生産技術を開発する、B熱帯地域における土地利用政策決定者に対し分析、情報収集を通じてアドバイス、C国内林業研究能力の強化、というアプローチを通じて上記の目的を達成することとしており、政策研究、天然林の管理と保全、荒廃地造林、林産品と市場、研究支援と情報サービスの5つを柱として、総合的な研究を進めている。
 1994年12月には、CIFORとインドネシアとが「科学、森林、持続性」に関する政策ダイアログを共催し、次のような森林研究における4つの長期的な優先事項が示された。
@森林と人的開発との関係を理解するため、ランドスケープ尺度の区域におけるネットワークの統合された社会経済的及び生物物理的な研究。
A林産物・森林サービスの需給動向及びそれらと森林区域・森林の健全性との関連の調査;持続可能な開発を求め、これらの間のバランスを最大限に活用するための戦略の開発。
Bすべてのタイプの樹木及び森林生態系の広がり、状態及び利用の変化の様式を評価する手法の研究及びこれらの変化の要因の分析。
C持続可能な開発の達成に向けての政策的、制度的な計画の役割の研究。

 また、1994、95年には、「持続可能な森林経営のための基準及び指標の試験」プロジェクトを、ドイツ、インドネシアなどで実施し、様々な基準・指標を実際に適用してみることにより、客観的、費用効果的及び適切な基準・指標の確立を図っている。
 1997年、インドネシア政府とITTOはCIFORにインドネシア、東カリマンタンにある森林をモデルケースとして調査、研究させることに合意した。そしてインドネシア森林省は、調査を基礎とした管理のモデルとしてCIFORに現地の森林321,000haの開発を委託した。このプロジェクトは多目的利用のための長期的な森林管理を目的とする。このモデルを他の地域に応用すれば、世界中の熱帯林における生物多様性や経済資源を維持することに大いに役立つことになろう。

CIFORの1996年から2000年までの優先研究プロジェクトは以下の10項目である。
1. 森林伐採や破壊及び森林地域における貧困の背景的要因
2. 森林の生態系の管理
3. 天然林の多様な資源の管理
4. 森林管理の持続性の評価
5. 破壊された地域または発展の可能性の低い地域におけるプランテーション
6. 生物多様性及び遺伝資源の保全
7. 地域の暮らしと地域社会をもとにした森林経営
8. 非木材製品の持続可能な利用と開発
9. 研究の成果や情報と研究能力の強化
10. 政策や技術、地球規模の変化

(8) IUFRO

http://iufro.boku.ac.at/

 IUFRO(International Union of Forestry Research Organizations、国際林業研究機関連合)は、1892年8月、森林・林業分野の研究機関間の連携強化と研究活動の充実を目的として設立された非政府組織(NGO)である。当初、欧州諸国を中心に組織を拡大し、その後、全世界的な組織となった。現在、115カ国から700以上の研究機関、大学などが参加している。本部は、設立当初はエーベルスワイデ(ドイツ)に置かれていたが、1973年にウイーンに移されている。
 5年に1度程度の頻度で世界大会を開催しており、1893年に第1回大会を開催して以来、95年のタンペレ(フィンランド)での大会で20回を数えている。次回の第21回大会は、2000年、クアラルンプール(マレーシア)で開催される予定で、世界的で大規模な森林研究関連のイベントである。
 このほか、IUFROニュース(季刊)や年報の発行、約200の作業部会(Working Group)による研究集会の開催などが行われている。また、1981年に京都で開催された第17回世界大会の決議に基づき、1983年から、開発途上国特別プログラム(SPDC: Special Programme for Developing Countries)が設けられ、ワークショップ、訓練コース、プロジェクトなどが実施されている。
 91年には森林、気候変動、大気汚染に関する特別専門調査委員会が発足、報告書「森林の生態系における気候変動及び大気汚染の長期にわたる関連性」を発表した。森林の生態系への影響を回避または軽減するために大気汚染を最小限に抑える可能性について、IUFROの科学者たちは長年の間、研究してきた。当初、研究は汚染物資やその様々な発生源が中心だったが、その後研究対象は遺伝学や造林など広範囲にわたっている。
 また、FAO(国連食糧農業機関)などと共同で、森林の監視活動や各国の研究システムの強化、各国間のネットワークづくりのための支援を行っている。

・開発途上国特別プログラム(SPDC: Special Programme for Developing Countries)
1981年に京都で開催された第17回世界大会で決議された「開発途上国における森林資源に関する研究の強化」に基づき、83年に設けられた特別プログラムである。事務局はウイーンのIUFRO本部内に設置されている。開発途上国や経済的に恵まれない国々における森林研究能力を育成することを使命とする。
発足当初は各地域の調査・研究の需要や優先課題を明らかにするため、アフリカ、アジア、ラテン・アメリカにおけるワークショップに重点が置かれていたが、93年に採択されたSPDCの5年戦略において@訓練と教育、A情報サービス、B研究機関間の協力、C科学者への資金援助、D先進国・途上国間の国際的協力の強化、の5項目に移行された。
特に途上国の科学者に対しては、訓練や関連会議参加のための旅費などに対し、資金援助をしている。そしてその資金援助の結果、以前は先進国に限られていた会議などの開催地も現在では全会議の約20%が開発途上国において開かれるようになった。

国際NGO

(9) IUCN(国際自然保護連合)

http://www.iucn.org

 IUCN(The World Conservation Union、国際自然保護連合、本部はスイス、ジュネーブ郊外のグラン。1948年に国家、政府機関、非政府機関の連合体による独立した国際団体として設置された。
 会員は、国家・政府機関179、NGOは700以上(1997年現在)。政府と非政府組織との双方が加盟できる希な国際組織であり、中立的な場を提供している。
活動の使命は「自然資源の利用が公平で生態学的に持続可能なものとし、自然界の健全性と多様性を保全するために、世界の様々な社会に影響を与え、援助すること」とされている。
 1991年にWWFと協力して「新・世界環境保全戦略(持続可能な生活様式のための戦略)」を策定し、世界の69都市でそれを発表したほか、シンポジウムなどを通じて地域ニーズを満たすための種の保存、森林保全などの内容についてのガイドラインを策定・発表している。
 また、保護地域に関してもさまざまな取り組みを行っており、保護地域の管理目的によるカテゴリーの策定や、名前だけの保護区になることを防止するために、保護区に指定された地域のその後の管理システムを検証するプロジェクトを実施している。このプロジェクトは、IUCNで組織されたWorld Commission on Protected Areas(WCPA)により熱帯や温帯地方の国々でのフィールドテストとともに、管理の評価が行われ、保護区の管理の向上を推進するものである。そして、世界銀行やWCMC(世界自然保護モニタリングセンター)、GTZ(…)の協力も受けており、1999年半ばには中間報告書が出される予定である。
 また、IUCNは世界銀行や地球環境ファシリティー(GEF)の活動の強化にも協力している。

(10) WWF

http://www.panda.org/

 WWF(World Wide Fund for Nature、世界自然保護基金)は熱帯林や野生生物の保護などを行っている世界最大の環境NGOである。1961年に設立され、本部はスイス、ジュネーブ郊外のグランにある。名誉総裁はエジンバラ公フィリップ殿下。約450万人の個人会員と約10000の企業・団体を擁し、それらの会費や寄付などによる財源確保、そして27カ国に各国委員会及び5カ国に提携団体を設置したネットワークが形成されている(1999年1月現在)。
 「遺伝子・種・生態系の各レベルの多様性の保全」、「再生可能な自然資源の持続的利用の推進」、「環境汚染の削減と資源・エネルギーの浪費の防止」の3つの活動を通じて、自然の生態系を保護することを使命とする。そして、加速しつつある自然環境の悪化を食い止めるだけでなく、破壊から回復の方向に導き、人類が自然と調和して生きられるような未来を築くことを究極の目標としている。
 森林保護事業としては、森林の保護と適切な利用へ向けて、世界各地でフィールドプロジェクトを行うとともに、国連機関や各国政府などへ様々な政策提言などを行っている。そして実質的な森林の保護のために1995年末より、世界的な森林キャンペーン「WWF Forests for Life(生命(いのち)の森)キャンペーン」を展開している。
 戦略は、1994年に世界の森林に対する以下の5つの戦略(WWFの西暦2000年までの優先課題)を策定し、到達すべき目標、その達成のための仕組みなどを掲げている。
@生態系を代表する保護区のネットワークの確立
A環境に適し、社会的にも有益で、経済的にも発展の可能性を持つ保護区外における森林の管理
B生態学的にも社会的にも適切な森林の回復プログラムの実施
C地球の変化によって受ける森林破壊の減少
D環境を破壊しないレベルでの林産品の消費

 活動としては、種の生息地保護、保護区の設定・管理などのフィールドワーク、国際機関や企業などに対する自然保護施策の強化への働きかけ、環境教育のための研修・イベントの実施、他の団体への援助などを行っている。これまでに、153カ国に1万2000以上の自然保護区の保全などのためのプロジェクトを設置して、その支援を行っている。
 多くの活動をIUCNと連携して実施しており、IUCNは研究分野、WWFは実践分野をそれぞれ担当している。

a) WWF Forests for Life (生命(いのち)の森)キャンペーン
http://www.panda.org/forests4life/
 このキャンペーンでは、次の2つの具体的目標を設定し、取り組んでいる。

・目標1.各地の生態系を代表する森林の保護地域の確立
 現在、世界の森林の約6%のみが森林の保護地域として法的に守られているにすぎないが、これを西暦2000年までに10%以上にする。
 各国政府に働きかけてきた結果、現在までに22カ国の政府が西暦2000年までに、世界の主要な森林タイプのそれぞれ少なくとも10%を生態系を代表する保護地域のネットワークとして確立することを公約している。その22カ国はアルゼンチン、アルメニア、オーストラリア、オーストリア、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、中華人民共和国、コロンビア、ギリシャ、リトアニア、マラウイ、モザンビーク、ニュージーランド、ニカラグア、ルーマニア、サハ共和国、スロバキア共和国、チュニジア、ウズベキスタン、ベトナムである。

・目標2.適切な森林管理の推進
 保護地域外での、環境保全の観点から見て適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続できる森林の管理を推進する。具体的には、独立した機関により、適切な管理がなされていると認められた森林を1998年末までに1000万ha以上とする。
この目標は1998年6月に達成されたため、次の新たな目標として、2001年までに万ha以上とすることが設定された。

b) FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)への支援
http://www.fsc-uk.demon.co.uk/
 独立した第三者機関が、森林管理をある基準に照らし合わせてそれを満たしているかどうかを評価・認証していく制度を「森林認証制度」と言い、現在、世界中すべての森林を対象とし、ラベル付けを伴う形で実際に実施されているものは、FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)のみである。このFSCのシステムで認証された森林は、世界25カ国115カ所、総面積は約1030haに及ぶ(1998年6月26日現在)。
 WWFはFSCの設立に当初から深く関わってきた。現在、多くのWWFの国内委員会がFSCのメンバーに入り、FSCの各国あるいは各地域の取り組みを支援したり、FSCの資金集めに協力したりしている。
 FSCは、環境などを配慮した適切な森林管理がなされているかどうかを信頼できるシステムで評価し、適切な管理がなされている森林を認証する。そして、この森林から出された木材・木材製品に独自のロゴマークを付け、幅広く消費者に流通させようとするものである。これは、木材・木材製品を購入するときに、このロゴマークのついたものを選ぶことにより、適切な森林管理を行っている林業者を支援し、世界の森林保全へ貢献していこうという、森林管理者から、木材・木材製品の消費者に至る様々な関係者が一体化した新たな取り組みといえる。

(11) WRI(World Resources Institute、世界資源研究所)

http://www.wri.org
 WRIは1982年、情報と専門知識を結集し、地球環境を守るために創設された。本部はワシントンDC。
 活動内容は政策の研究、政策オプションの公表や、政府、企業、国際研究機関や環境NGOに対し強力な技術支援を行うことである。そして、現在の活動分野は森林問題のほか、経済、生物多様性、気候変動、エネルギー、持続可能な農業、資源と環境に関する情報、貿易、技術、環境と資源の管理のための各国の戦略など多岐にわたる。

a) The Forest Frontiers Initiative (FFI)
 FFIは開発や政策、世論に影響を与えることによって、世界に残る主要な未開発の森林における管理を推進しようとする5年計画の試みである。アマゾンや中央アフリカ、インドネシア、北米、ロシアの政府や市民グループ、私企業と連携が取られており、森林政策に関する国際的議論においても積極的に政策提案を行っている。
 持続可能な森林経営のために経済が重要な役割を担っている、ということから、森林認証制度Forest Stewardship Council(FSC、森林管理協議会)の強化を推進している。
また、未開発の森林地域では、政策改善の推進のために、政策担当者や活動家、投資者や研究者たちのネットワーク作りに取り組んでいる。林道の建設や農業のための森林破壊による悪影響を最小限に抑え、違法伐採を止めることはこの活動の一部である。

Global Forest Watch(GFW)
 GFWは独立した森林監視プロジェクトである。未開発の森林やその周辺で伐採や採掘などのような開発が行われた場合または事前に包括的な情報を提供する。非政府組織(NGO)や先住民の人々は、地域社会に影響を与えるような開発計画を監視するために、この情報を利用できる。
 現在、GFWはカナダ、カメルーン、ガボン、インドネシアの地域パートナーとともに活動しており、今後は南米、ヨーロッパ、ロシア及びオセアニアにも協力関係を広げようとしている。

(12) WCMC(World Conservation Monitoring Centre、世界自然保護モニタリングセンター)

http://www.wcmc.org.uk/

 WCMCは、生物多様性の保護に取り組んでいるIUCN(国際自然保護連合)、WWF(世界自然保護基金)、UNEP(国連環境計画)の3つの国際組織によって設立された。世界の生活資源の保全と持続可能な利用に関する情報を集約して管理し、国連機関から多国籍企業に至るまでの広範囲にわたる組織へ情報を提供する独立した非営利団体である。
活動は主に以下の3つに分けられる:
・ 生物多様性の現状や価値及び管理に関する情報に広く近づけるような情報の提供
・ 生活資源に関する情報を集め、管理し、解釈して利用できるような能力の開発
・ 他の機関やネットワークの代わりにデータの安全管理や共有を含むデータ管理サービス
 活動分野は森林保護のほか、北極保護、海洋生態系、保護システム、生物多様性の評価、貿易。

a) 森林プログラム 「1996〜2000戦略開発計画」
 タイムリーで、まとまった情報の提供を通じて、森林やその生物多様性の保全と持続可能な管理に関する国際的な、そして地域及び国内の政策や行動を伝えていくことを目的とする戦略計画。
 WCMCの森林プログラムは広範囲にわたる情報の管理と普及のために、WWFやIUCN、UNEP及び他の世界中の保全・開発機関と協力して行われるプログラムである。最近では、生物種や生息地の範囲、保護区に関するデータベースをデータ管理や国際森林政策、能力開発や指標の開発に関する専門的知識に生かそうとしている。IUCNと共同で実施されたプログラムの成果には、生物多様性の地図ライブラリー(Biodiversity Map Library、BML)や、各国のデータから引き出され、編集された世界でも初めての熱帯雲霧林のデジタルマップ、そして熱帯林の保全地図(The Conservation Atlas of Tropical Forests)などがある。
このプログラムの目標は以下の通りである:
目標1.森林保全の政策決定の基礎として、世界、各地域及び各国内の様々な森林に関する地理的データを記録する。
(現状)WCMCでは、Biodiversity Map Libraryを作成し、さらに温帯林と北方樹林に関する包括的なデータを収集しているが、今後は特にマングローブのように深刻な危機に直面している生態系システムに関する詳細な情報の収集も手掛けていく。
目標2.世界中の森林地域の管理と保護に関する情報を記録し、提供する。
(現状)BMLや世界中の公式に保護区とされた森林地域に関する保護区データベース(Protected Areas Databases)の中に関連情報がある。
目標3.森林の生物多様性の保全パターンや優先的課題に関する情報を提供する。
(現状)BMLの中に植物多様性センター(Centres of Plant Diversity)と国際的にも重要でその土地固有の鳥の生息する地域(BirdLife International's Important and Endemic Bird Areas)に関する情報がある。
目標4.樹木の種やその製品の分布や保全状況、管理や取引に関する情報を提供する。
(現状)14000種以上の樹木を含む森林の種の分布と保全の現状に関する情報がある。そのうち約3000種は、世界的にも絶滅の危機に瀕している。
目標5.集められたデータをもとにした一連の政策に関連した森林の状況の指標を開発し、普及させる。
(現状)世界中の森林の生物多様性の指標に関する研究を実施し、各国のパートナーとともに、その指標の状況や脆弱さを評価する作業を行っている。
目標6.各国が自国の森林の持続可能な管理への移行を監視する能力を育て、その活動が実施できるよう、地域的及び世界的な現状に関する情報を各国に提供する。
(現状)ITTOなどと共同で、各国の森林省を支援する枠組みを作り出した。森林資源アカウンティング(Forest Resource Accounting、FRA)として知られる研究は、森林政策と管理の目標を達成し評価する必要のある情報のみに焦点を当てることによって情報利用に係るコストを削減させるものである。現在、FRAはエクアドル、ガイアナ、インドネシア、パキスタンで実施されようとしている。

b) WWFの森林保全監視プログラムに対する支援
 WCMCはWWFの世界の森林の保全を監視するプログラムを支援している。この活動はWWFの「生命(いのち)の森」キャンペーンの一環として行われている。
 WCMCはこのキャンペーンの最初の段階において、世界の森林の広がりや保護区内の森林を示す初めてのデジタル地図であるWWF世界森林地図(World Forest Map)の作成を支援した。この地図は70以上もの国や国際的な情報源から得た詳細な報告書や地図から作られたものであり、そのほとんどは限られた追加情報とともに最近のWCMCのプロジェクト期間中に集められたものである。さらに、80カ国以上の国の森林地図が作製され、報告書やデジタル形式で世界中のWWFの広報担当者に配布されている。1996年9月にはWCMCのホームページにも掲載され、世界中の関心を集めた。


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(財)地球・人間環境フォーラムのページ