事例報告 A
 地球の温度を下げ、北京オリンピックに緑を−北京地球村環境教育センターの活動レポート
  リ・リ/北京地球村環境教育センター プロジェクトマネジャー


北京地球村環境教育センターの概要

 ご存知のように、地球温暖化問題は二酸化炭素の排出量に関連する。コンピュータの精密計算によれば、100年以内に地球の温度がまた2〜3℃上がるとみられている。気候変動がもたらした影響によって耕地が砂漠化し、氷山や氷河が溶け、沿岸地域の住民たちの居場所がなくなる。また、地域的な旱魃が起き、水資源が不足し、湿地の面積が少なくなり、生物多様性にも影響を与える。

 現在、中国の経済発展は9%の高速度を維持しており、エネルギー需要の増加が全国的な電力不足をもたらしている。しかも発電の75%は石炭に頼っており、CO2の排出量は世界2位にまで上った。専門家と環境活動家が「再生可能なエネルギーを開発することこそ、中国の発展の障害となっているものを解決してくれる道である」と指摘した。地球村は一民間NGOとして、「持続可能な消費を推進し、エコライフを唱え、市民のライフスタイルを変換させる」ことを使命として活動している。

@テレビ番組の制作
 1996〜2001年に、エネルギーと消費、気候変動が環境にもたらした影響などに関する番組を独自で制作し、CCTV(中国中央電視台<中国中央テレビ>)で放送した。2004年には、海外(日本、韓国、アメリカ、ドイツ、カナダなど11ヵ国)の環境保護活動および再生可能エネルギーの普及状況を紹介した番組を制作し、CCTVと地方テレビ局で放送している。私たちの番組制作は、環境保護の背景、NGOの視点、番組制作スタッフの専門化の三つの特徴を備えている。

Aエネルギー記者クラブの組織化
 2003年にエネルギー記者クラブを組織し、記者と専門家の意見交換を図っている。クラブには70人あまりの会員がおり、そのほとんどがマスコミ業界のスペシャリストである。エネルギー記者フォーラムを8回、エネルギー記者スター表彰式を主催し、国内外から注目を集めている。

B中国初の持続可能な消費フォーラムの開催
 2002年に、中国消費者協会、中国太平洋経済協力全国委員会と協力し、「中国初の持続可能な消費フォーラム」を開催し、国内外の200人の専門家と民間団体の代表が集まり、中国式の持続可能な消費について活発な意見交換を行った。


政府の意思決定に助言

 エネルギー記者フォーラムの開催により、市民の環境意識と政府の意思決定に影響を与えることができた。遼寧省丹東市は都市美化のため、屋根に設置した太陽熱温水器を撤回することを決定したが、地球村が記者に働きかけた結果、太陽熱温水器を保留することができた。エネルギー記者の記事を読んで、黄菊副総理が「省エネ建築物」の建設を推進する政策を打ち出すことを建設部に命じた。「申年で中国電力がピンチ」という記事を黄菊氏は高く評価している。
2004年8月に、地球村が政府要人を招いて、ブラジルの高速道路システム(閉鎖式道路)を視察した。地球村の代表は、全国人民代表大会環境資源委員会が主催した再生可能なエネルギーシンポジウムにも参加した。


広がる市民の参加

@ エコ電力世論調査

2001年に、天恒持続可能発展研究所、中国消費者協会と協力し、内モンゴルから風力発電を北京に導入することに対して世論調査を行った。アンケートでは「少し高いお金を払ってでも、エコ電力を使ってみたいか」の問いに対し、90%の人が「はい」と答えた。

A “エコ照明”をコミュニティに
中国エコ照明プロジェクト推進事務局と連携し、2003年6月から「中国省エネウィーク」期間中に、北京市において「エコ照明」キャンペーンを行い、省エネ電気商品の使用を訴えた。北京椿樹園コミュニティにおいて、“省エネ、汚染の防止、再生可能エネルギーの開発”をテーマとした「エコ照明」住民フォーラムを開催した。これはコミュニティでエコ照明を買える工夫をすることによって、エコ照明の普及を狙ったものである。またエコ照明の使用状況からCO2、SO2の削減量を計算することができる。例えば、省エネ型25Wの電球は普通の100W の電球と照明効果が同じであり、節電率が75%高く、電気代も75%安い。住民はこの結果に非常に驚いていた。

B エアコンを26℃に
 現在、(5ッ星など)星で等級が表されるホテルはエアコンの温度設定が26℃を下回るところが多い。北京の場合、エアコンの設定温度を現在の24〜26℃から26〜28℃に変更すれば、4〜6億Kw/hの電気が節約でき、電気代も1.8〜2.7億元を節約できる。そこで地球村のボランティアが市内で「エアコンを26℃に」キャンペーンを展開した。
 地球村の子供記者がインタビューに応じてくれた五つの都市の市長に、「エアコンを26℃に」キャンペーンを紹介し、市長から参加の承諾を受けた。26人の国内外のボランティアも地球村の活動に参加してくれたうえ、「この活動を友達、家族、国に広げて行きたい」と話してくれた。

省エネホテルに表彰状を贈呈

 国都大飯店は一番最初に「エアコンを26℃に」キャンペーンに参加したホテルである。マネジャーは今後も活動に参加し、企業のイメージアップを狙うという決意を表明した。北京国際飯店の広報部マネジャーも賞を手に「活動に参加するモチベーションがさらに上がった」と喜んだ。凱賓斯基飯店アジア太平洋エリアマーケティングマネジャーは「この活動を世界に広げてほしい」と励ましてくれた。

 「エアコンを26℃に」キャンペーンの第2弾は冬の電気ピーク期を迎える前に行なわれた。民間団体と連携し、記者発表会を開き、「いつもの温度より1℃を低く」と訴えた。10月末に、オリンピック組織委員会環境部、選手委員会と連携し、オリンピック指定ホテルに3,500枚の承諾カードを配った。

 地球村は一つの草の根組織としてエコライフを推進するために活動してきた。「政府をバックに、コミュニティを拠点に、同趣旨団体、マスコミと連携する」が私たちのモットーである。私たちの地道な努力によって、環境保護、エコライフなどがただのわかりづらい単語ではなくなり、政府が市民の声に耳を傾けてくれるようになった。これは私たちにとって何よりの報いである。今後も民間団体の立場を活かして、環境保護活動に取り組んでいきたいと思っている。