附属書U アジアのための地域実施附属書

 

第一条 目的

 この附属書は、アジア地域の特別の状況に照らして、同地域の影響を受ける国である締約国においてこの条約を効果的に実施するための指針を提供し及び取決めについて定めることを目的とする。

第二条 アジア地域の特別の状況

 締約国は、この条約に基づく自国の義務を履行するに当たり、適当な場合には、アジア地域の影響を受ける国である締約国において種々の程度で存在する次の特別の状況を考慮する。

P アジア地域の影響を受ける国である締約国の領域内において砂漠化及び干ばつの影響を受け又はこれらの害を受けやすい地域の占める割合が高いこと並びにアジア地域において気候、地形、土地利用及び社会経済体制の多様性が存在すること。

Q 生活手段としての天然資源に対して大きな圧力が加わっていること。

R まん延する貧困に直接関係し、土地の劣化をもたらし及び希少な水資源を圧迫する生産体系が存在すること。

S 世界経済の状況並びに貧困、不十分な保健及び栄養、食糧の安全保障の欠如、移住、避難民、人口の移動等の社会問題の及ぼす影響が重大であること。

T 国の砂漠化及び干ばつの問題を取り扱うための能力及び制度上の枠組みが拡充しているが依然としてこれらが不十分であること。

U 砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和することに関連する持続可能な開発の目的を追求するための国際協力が必要とされていること。

第三条 国家行動計画の枠組み

1 国家行動計画については、アジア地域の影響を受ける国である締約国の持続可能な開発に関する一般的な政策の不可分の一部とする。

2 影響を受ける国である締約国は、適当な場合には、条約第十条2Uの規定に特別の注意を払い、条約の第九条から第十一条までの規定に従って国家行動計画を作成する。二国間及び多数国間の協力機関は、適当な場合には、当該締約国の要請によりそのような手続に関与することができる。

第四条 国家行動計画

1 アジア地域の影響を受ける国である締約国は、国家行動計画を作成し及び実施するに当たり、自国の事情及び政策に従って、適当な場合には、特に次のことを行うことができる。

P 自国の行動計画の作成、調整及び実施に責任を有する適当な機関を指定すること。

Q 地方当局並びに関連する国の機関及び非政府機関の協力を得て、影響を受けている住民(地方の地域社会を含む。)を地方の働きかけによる協議手続を通じて自国の行動計画の作成、調整及び実施に関与させること。

R 砂漠化の原因及び影響を評価し並びに行動のために優先される分野を決定するために影響を受ける地域における環境の状況を調査すること。

S 自国の行動計画において戦略を立案し及び活動を定めるため、影響を受けている住民の参加を得て、砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和するための過去及び現在の計画を評価すること。

T PからSまでに規定する活動から得られる情報に基づいて技術上及び資金上の計画を作成すること。

U 自国の行動計画の実施を評価するための手続及び基準を定め及び利用すること。

V 流域の総合的な管理、土壌資源の保全並びに水資源の増大及び効率的な利用を促進すること。

W 気候学的、気象学的、水文学的及び生物学的要素その他の関連する要素を考慮して、砂漠化及び干ばつの起こりやすい地域において情報、評価及び監視に係る体制並びに早期警戒体制を強化し又は確立すること。

X 国際協力(資金及び技術的資源に係るものを含む。)が関係する場合には、連携の精神をもって、自国の行動計画を支援するための適当な取決めを行うこと。

2 国家行動計画の全般的な戦略においては、条約第十条の規定に従い、参加型の制度に基づき並びに砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和する努力に貧困の撲滅のための戦略を組み入れることを基礎として、影響を受ける地域のための総合的な地方の開発計画を重視する。行動計画の部門別の措置については、第二条Pに規定するアジア地域における影響を受ける地域の多様性を考慮した優先される分野に分類する。

第五条 小地域及び共同の行動計画

1 アジアの影響を受ける国である締約国は、条約第十一条の規定に従い、国家行動計画を補完し及びその実施の効果を高めることを目的として、適当な場合には、小地域又は共同の行動計画を作成し及び実施するために他の締約国と協議し及び協力することを相互に合意することができる。いずれの場合にも、関係締約国は、小地域の機関(二国間又は国の機関を含む。)又は専門的な機関に計画の作成、調整及び実施についての責任を委任することを共同して合意することができる。また、これらの機関は、条約の第十六条から第十八条までの規定に基づく行動の促進及び調整のための中央連絡先として行動することができる。

2 アジア地域の影響を受ける国である締約国は、小地域又は共同の行動計画を作成し及び実施するに当たって、適当な場合には、特に次のことを行う。

P 国の機関と協力して、これらの行動計画において定めることが一層適当な砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和することに関連する優先順位並びにこれらの行動計画を通じて効果的に実行することができる関連する活動を特定すること。

Q 地域、小地域及び国の関連する機関の運用上の能力及び活動を評価すること。

R 地域又は小地域の全部又は一部の締約国間における砂漠化及び干ばつに関連する既存の計画並びにその国家行動計画との関係を評価すること。

S 国際協力(資金及び技術的資源に係るものを含む。)が関係する場合は、連携の精神をもって、自国の行動計画を支援するための適当な二国間又は多数国間の取決めを行うこと。

3 小地域又は共同の行動計画には、砂漠化に関連する国境を越える天然資源の持続可能な管理のための合意された共同計画、能力育成の分野における調整その他の活動についての優先順位、科学上及び技術上の協力(特に干ばつに対する早期警戒体制及び情報の共有)並びに関連する小地域の機関その他の機関を強化する手段を含めることができる。

第六条 地域の活動

 小地域又は共同の行動計画を拡充するための地域の活動には、特に、国、小地域及び地域の段階における調整及び協力のための機関及び制度を強化し並びに条約の第十六条から第十九条までの規定の実施を促進するための措置を含めることができるものとし、また、次のことを含めることができる。

P 技術協力についての協力網を促進し及び強化すること。

Q 技術、知識、ノウハウ、慣行並びに地方の伝統的な技術及びノウハウの目録を作成し並びにこれらの普及及び利用を促進すること。

R 技術移転の要件を評価し並びに技術の適応及び利用を促進すること。

S 訓練、研究及び開発を強化し並びに人的資源の開発のための体制を整備しつつ、啓発計画を奨励し及びすべての段階における能力育成を促進すること。

第七条 資金及び資金供与の制度

1 締約国は、アジア地域において砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和することが重要であることにかんがみ、条約の第二十条及び第二十一条の規定に従って、相当の資金の調達及び資金供与の制度の利用可能性を促進する。

2 アジア地域の影響を受ける国である締約国は、この条約に従い及び次条に規定する調整のための制度に基づき、個別に又は共同して、自国の開発政策に従って次のことを行う。

P 砂漠化に対処し及び干ばつの影響を緩和するための行動において具体的な成果を達成するため、公的な及び民間の投資による資金を供給する制度を合理化し及び強化するための措置を採用すること。

Q 自国の努力を支援する国際協力についての要請(特に資金上及び技術上のもの)を特定すること。

R この条約の実施を確保するために二国間又は多数国間の資金協力のための機関の参加を促進すること。

3 締約国は、アジア地域の影響を受ける国である締約国に対して資金を供給するための手続をできる限り整理する。

第八条 協力及び調整のための制度

1 アジア地域の影響を受ける国である締約国及び他の締約国は、適当な場合には、特に次の目的のための制度を設けることができるものとし、この場合において、当該影響を受ける国である締約国は、第四条1Pの規定に従って指定される適当な機関を通じて行動することができる。

P 情報、経験、知識及びノウハウの交換

Q 小地域及び地域の段階における行動(二国間及び多数国間の取決めを含む。)についての協力及び調整

R 第五条から第七条までに規定する科学上、技術上及び資金上の協力の促進

S 外部との協力についての要請の特定

T 行動計画の実施の監視及び評価

2 アジア地域の影響を受ける国である締約国及び他の締約国は、また、適当な場合には、国家行動計画並びに小地域及び共同の行動計画に関して協議し及び調整することができるものとし、この場合において、当該影響を受ける国である締約国は、第四条1Pの規定に従って指定された適当な機関を通じて行動することができる。これらの締約国は、適当な場合には、その他の締約国並びに関連する政府間機関及び非政府機関をそのような手続に関与させることができる。その調整においては、特に、条約の第二十条及び第二十一条の規定に従って国際協力の機会について合意し、技術協力を拡充し並びに資源を効果的に利用されるように供給することに努める。

3 アジア地域の影響を受ける国である締約国は、定期的に調整のための会合を開催するものとし、常設事務局は、当該締約国の要請に応じ、条約第二十三条の規定に従い、次のことを行うことによって当該調整のための会合の招集を円滑にすることができる。

P 他の調整のための取決めにおける経験を利用して効果的な調整のための取決めに関する助言を与えること。

Q 調整のための会合について二国間及び多数国間の機関に情報を提供し並びにこれらの機関の積極的な関与を奨励すること。

R 調整のための手続を確立し又は改善することに関連する他の情報を提供すること。


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条約本文 第三部
条約本文 第四部〜第六部
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