INSIDE CHINA 現地滞在レポート~内側から見た中国最新環境事情第37回 2015年中国環境白書から

2016年10月15日グローバルネット2016年8月号

地球環境研究戦略機関(IGES)北京事務所長
小柳こやなぎ秀明ひであき

5年間の対策を総括

さる6月2日、毎年恒例の2015年中国環境状況公報(環境白書)が発表された。2015年は第12次5カ年計画(2011~15年)の最終年でもあり、5年間に講じた対策と結果の総括も行われているのが特徴だ。

この5年間で最も特徴的なのは大気汚染対策だったといえよう。2013年初から微小粒子状物質(PM2.5)を主たる原因物質とする激甚な大気汚染が顕在化したが、この発生をまるで予期するかのような対策が事前に講じられていたことは注目に値する。すなわち、2012年2月には大気環境基準を改定し、一部の物質の基準値を強化するとともに、新たにPM2.5の基準を追加した。また、測定結果の即時公表を義務付けた。

この新環境基準は全国の都市のモニタリング体制の整備と連動させて段階的に適用することとし、まず2013年には全国の主要74都市で適用され、翌年以降順次適用都市を拡大し、2016年1月から全面施行とされた。その後、激甚大気汚染を受けて対策を強化し、1年前倒しで2015年1月から全面施行になった。従って、2015年環境白書では全国338都市での新環境基準達成状況について評価されている(表1)

この5年間で、第12次5ヵ年計画で定められた主要汚染物質(二酸化硫黄、窒素酸化物、化学的酸素要求量及びアンモニア性窒素。前二者は大気汚染物質、後二者は水質汚染物質)の排出総量削減も目標を上回って達成している(表2)。この理由としては重点対策施設である石炭火力発電所および製鉄所焼結炉などの脱硫、脱硝施設の整備増強及び都市汚水処理場の整備増強が挙げられる。脱硫施設を設置した石炭火力発電所は発電能力で見て5.8億kWから8.9億kWに増加し、設置率は83%から99%以上に増加した。脱硝施設は0.8億kWから8.3億kWに増加し、設置率は12%から92%に増加した。また、脱硫施設を設置した焼結炉面積は2.9万m2から13.8万m2に増加し、設置率は19%から88%に増加した。石炭火力発電所の脱硫施設設置率が83%と元々高かったのは第11次5カ年計画においても排出総量削減目標が設定されていたためである。窒素酸化物は第12次5カ年計画で初めて総量削減対象になったため脱硝施設の整備が急速に進んだ。

また、都市汚水の1日当たりの処理能力は2010年には1.25億tであったのが、2015年には1.82億tまで増加し全国の都市汚水処理率は92%まで達した。しかし、農村における汚水処理施設の設置率は11%程度で依然として低いままである(出典:2015年建設統計公報)。

大気汚染の状況

2015年1月から新大気環境基準が全面施行になり、初めて全国338都市での達成状況が公表された。その概要は表1に整理したとおりであり、PM2.5の達成状況が最も悪く、22.5%となっている。全体の総合評価では21.6%の達成率であった。一方、2013年から継続して測定している74都市の達成状況をみると、同様にPM2.5の達成状況が最も悪く16.2%であった。また、全体の総合評価は14.9%であった(表3)。74都市の方が低いのは大都市や大気汚染対策重点地域などから構成されているためである。一方、この74都市について2013年以降の達成率の変化をみるとPM2.5は4.1→12.2→16.2%と年々改善されてきている。全体の総合評価でも4.1→10.8→14.9%と同様だ。

酸性雨については全国の480都市(区および県を含む)でモニタリングされており、酸性雨が降った都市の割合は40.4%で、酸性雨の発生頻度は平均14.0%であった(図)。硫酸型の酸性雨が多く占め、酸性雨は長江の南から雲南省・貴州省高原の東側地域で発生している。

水質汚染等の状況

その他の環境の状況については誌面の関係上簡単に触れておきたい。

全国967ヵ所の国設測定局での地表水モニタリング結果によると、環境基準の達成率(I~III類の割合)は64.5%であった。また、全国5,118ヵ所の地下水モニタリング結果によると、水質が比較的良かった地点は38.7%であった。

その他に海洋環境、騒音、放射線、自然生態、土地と農村、森林、草原などの状況について記載されている。

 

注)表1および表3で一酸化炭素の濃度の単位に誤りがありましたので、訂正しました(2017年6月23日)。

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