フロント/話題と人テルマ・クルーグ(IPCC副議長)

2017年10月16日グローバルネット2017年10月号

コミュニケーションに力を入れ 女性初のIPCC副議長として活躍

テルマ・クルーグ氏

環境省主催の気候変動に関するシンポジウムの基調講演者として9月に来日した。米国の大学、大学院を卒業し、英国の大学院で博士号を取得した華々しい経歴を持つが、実は貧しい家庭出身だという。「母はポルトガルからブラジルに移民。貧しく、教育を受けられなかったので、3人の子供たちには勉強が大事、とくに女性は経済的にも自立できるようにと厳しく育てた。60年も昔の時代の母親の決意には感服する」と言う。

クルーグさんは、20歳の時に夫が米国の大学院に留学することになり、4ヵ月の息子を連れて一緒に渡米。しかし、時間を持て余し「学校に戻りたい」と学費を稼ぐために子育てとさまざまなバイトを両立させ大学に通う。成績優秀者として奨学金を受け、わずか2年半で大学を卒業。大学院にも奨学金で進学し、数学や統計学などで修士号を取得した。母国では、宇宙研究所に勤務し、衛星データを利用したアマゾンの森林減少の見通し測定などに携わり、そこから国連での気候変動交渉にブラジル政府代表として関与する。

2015年10月、IPCC事業全体の運営管理を行うIPCC議長団を選定する選挙で、3人の副議長の1人としてブラジル政府推薦のクルーグさんが選出された。設立後すでに25年以上が経過していたIPCCで女性が選出されたのは初めてだった。IPCCは第6次評価報告書を2021年から発表する予定だが、まずは2018年10月に「1.5℃特別報告書」の発表が予定されており、クルーグさんは本報告書の委員長でもある。パリ協定を踏まえ、気温上昇を1.5℃に抑えるために何が必要なのかを政策決定者に示す報告書になるという。副議長としては、今まで培ってきたコミュニケーション能力を生かし、科学者と各国政府との交渉という重要な任務をこなしている。

仕事大好き人間で、一人息子からは小さい時は寂しい時もあったと文句を言われることもあるそう。でも「15歳の孫からはどうやったらおばあちゃんのような世界で活躍する女性になれるか聞かれます」とうれしそうに話してくれた。出張も多いが、家にいる時は、読書、散歩、料理を楽しむという。「得意料理はブラジル料理でなくイタリア料理」と笑った。66歳。 (亜)

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