特集/セミナー報告 SDGsとサステナブルな暮らし~消費を通してより良い世界を築くために「誰も置き去りにしない」持続可能な開発目標SDGs

2017年10月16日グローバルネット2017年10月号

国連広報センター所長
根本 かおる(ねもと かおる)さん

先月号でも特集した持続可能な開発目標(SDGs)。17 の目標のうちの一つに「持続可能な生産と消費」(目標12)があります。今月号では、7 月28 日に東京国際フォーラムで開催されたSDGs ビジネスセミナー「SDGs とサステナブルな暮らし~実践と普及に向けて~」より、持続可能な生産と消費に関する企業とNGO の取り組みを紹介します。(2017年7月28日東京都内にて)

国連広報センター(UNIC)は、ニューヨークの国連本部事務局の日本における出先機関です。いわば、国連にとっての日本における大使館であり、国連が行っている活動や課題について、日本の人たちに届けたい情報を厳選し、日本語に直して発信しています。そして、日本にはユニセフやUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、FAO(国連食糧農業機関)など28の国連機関の事務所がありますが、それら共通の課題について、広報面で調整し、国連システムとして同じ方向性で声を上げていく、という調整役も担っています。また、「日本でこんな面白い動きがある」「こんな素晴らしい企業がある」「こんな素晴らしい消費者の運動がある」といったことを国連本部に伝え、つなげる、という役割も担っています。

「誰も置き去りにしない」を基本理念に生まれたSDGs

国連の使命は、国連憲章にある通り、「国際の平和と安全の維持」「人権の救済と推進」「経済、社会開発の推進」ですが、それらが別個に存在しているわけではなく、それぞれ三位一体でつながりながら成り立っています。この統合的なものの考え方がより進められたのが、2015年9月の国連総会で全会一致で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)です。この前身にMDGs(ミレニアム開発目標)があり、2001年から2015年までの15年間、途上国の社会課題について数値目標を設け、毎年進捗状況を図りながら推進してきました。先進国にも多少関わりがありましたが、それは国際開発協力などにおける関わりのみであって、先進国の国内課題に関わるものではありませんでした。

MDGsの推進により、「貧困人口の割合の半減」などは、2015年という最終年を待たずに達成できました。しかし、サハラ砂漠以南のアフリカでの前進など、積み残した課題もたくさんありました。

同時に、この15年間で新たに見えてきた課題もあります。その最たるものは気候変動です。日本で暮らしていても台風の大型化や海流の変化など、感じることはたくさんありますが、太平洋の南の小さな島国などは、海面上昇によって国の存続が危ぶまれています。

そして格差も新たな問題です。国と国の間の格差だけでなく、途上国・先進国いずれにおいてもその国内での格差がどんどん広がっています。今年1月、世界の富豪トップ8人の資産と世界人口の下位半分にあたる36億人の資産の合計がほぼ同じであるというショッキングな推計が国際NGOによって発表されました。また、日本でも、7人に1人の子どもが貧困ライン以下の生活をしていると厚生労働省の調査によって明らかになり、状況は深刻です。それだけ格差は広がっているのです。格差を放置すると、それがいろいろな意味で暴力的な過激主義や不安定化、さらには平和維持の問題につながります。

そのようなことから、国連持続可能な開発会議(リオ+20)が開かれた2012年から国連が音頭をとり、丸3年かけて、「誰も起き去りにしない」を基本理念に生まれたのがSDGsです。SDGsには17の目標、169のターゲット、そしておよそ230の指標があります。

日本でも学習指導要領に

SDGsの大きな特徴は、先進国にも途上国にも普遍的に適用される共通言語だということです。そして17の目標が別個に存在しているのではなく、それぞれをつなげながら取り組むことができ、一つの目標で大きな前進があれば他の目標でも自ずと前進が見られるようになります。さらに、指標で進捗を図ります。国連では最新データに基づき、毎年1回進捗状況に関するレポートを出しています。今年6月には「2017 SDGs Progress Report」が発表されました。

MDGsでは一定の層を上に引き上げればその効果が下にもトリクルダウン(滴り落ちる)する、という平均値で考える方法をとっていました。しかし、女性や障がい者、難民など最初から置き去りにされがちな脆弱な立場にある人をすくい上げていくようにしなければいけない、と強く打ち出され、それを2030年までに達成するためにバックキャスティングして、今、何をしなければいけないのかを考える、という大胆な発想が求められたのです。

日本では、小学校は2020年度、中学校は2021年度、学習指導要領の改訂に合わせてSDGsを盛り込むことが方針として決められました。これは啓発という意味でも大変重要なことだと思います。

複数の目標の達成が可能なSDGs

「置き去りにされがちな人」の中には若者がいます。若者を代表して、2014年にノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんが、SDGsが採択された2015年9月のサミットの場で、とても力強い演説を行い、「問題意識を持ち続け、声を上げ続ければ誰でも世の中を変えることができる」と訴えました。

マララさんが力を入れているテーマは「女の子の教育」です。これをSDGsに当てはめてみると、まず目標4(質の高い教育をみんなに)、目標5(ジェンダー平等を実現しよう)に関係します。そして、教育を受けた女の子が後に就職すれば、より収入の高い、働き甲斐のある仕事に就ける、ということで、目標1(貧困をなくそう)や目標8(働きがいも経済成長も)にもつながります。さらにお母さんになったとき、子供をより健やかに育て、栄養のある食事を与えることができる、ということで目標2(飢餓をゼロに)、目標3(すべての人に健康と福祉を)、賢い消費者になれる、ということで、目標12(つくる責任つかう責任)、さらには自信を持って和平交渉のテーブルにも付くことができるということで、目標16(平和と公正をすべての人に)、などにつながっていくのです。

SDGsを自分事化して自分なりのアクションを

さらに、今日お集まりの皆さんも「消費者・生産者としてSDGsの推進に大きく貢献できる」ということをお話ししたいです。例えば、今、違法・無報告・無規制で行う漁業が問題になっており、海の資源が脅かされていますが、「そのような漁業で捕られた魚は扱っていません」という認証マーク「海のエコラベル」(MSC認証)の付いた魚を販売し、選択することができます。

このように誰もがSDGsに関わることができるのです。一人ひとりが自分にできるSDGsアクションというものを考え、行動に移し、続けてもらえればと思います。

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