PRIポリシーレポート「欧州連合(EU)のバイオエネルギー政策と投資が気候と自然にもたらすリスクへの対応」を和訳しました

2025年07月18日お知らせ

日本の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)で「再エネ」の一つとして支援され、急速に拡大してきた木質バイオマス発電ですが、約7割(容量(kW)ベース)は海外から輸入される木質ペレットやパーム核殻(PKS)を燃料としています。当フォーラムでは特に森林生態系や気候変動対策としての妥当性という観点で、生産地で起きている問題を日本で伝えると共に、FITに対する政策提言に取り組んできました。

昨年12月、ESG投資を推進する国際的な投資家ネットワーク「PRI」(責任投資原則)からポリシーレポート「欧州連合(EU)のバイオエネルギー政策と投資が気候と自然にもたらすリスクへの対応」が発表されました。

当フォーラムでは、本レポートにおけるリスク分析や科学的根拠、EUの政策決定者への提言が日本の政策決定者や金融機関・機関投資家にも有益な示唆を与えると考え、PRIの許可を得て和訳しました。

再エネ政策やビジネスに関わる皆様のご参考にしていただければ幸いです。

日本語版PDF  原文(英語)

 レポートにおけるEUの政策決定者への主な提言内容

①「バイオマスのエネルギー利用」から「自然に基づく気候ソリューション」への転換
  • 再生可能エネルギー目標に対して計上できるバイオマスのエネルギー利用に上限を設定すること
  • 炭素吸収源として、また、2030年の土地利用変化及び林業(LULUCF)部門の目標達成に向けたバイオマス利用を優先すること
②バイオエネルギー由来の排出に対する一貫性のある価格シグナルを出すこと
  • 一次木質バイオマス(森林から直接伐採された丸太や切り株や枝)のエネルギー利用への財政的支援を停止すること
  • 加工・輸送だけでなく、燃焼時や森林の炭素蓄積の損失によるGHG排出を評価すること
③バイオマスに関する一貫性のあるガバナンスの枠組みを構築すること
  • 付加価値の高い用途から使う『カスケード利用』を徹底すること(森の生物多様性や炭素蓄積面の価値も含めて)